★米国:メーデーに各地で「人民ストライキ」
コロナ・ウィルスのパンデミックの中、各地でメーデーの行動が行われた。
アマゾン、インスタカート(食料品の即日配達サービス)、ホールフード(食品小売チェーン)、ウォルマート、ターゲット(ディスカウントショップ)、フェデックス(国際宅配便)の労働者たちは職業上の安全と健康の改善および危険手当を要求して一斉病休や昼休みデモなどの行動に参加した。
このほか「家賃ストライキ」、「人民の救済」と労働者の権利を優先した経済復興計画を要求する自動車デモやオンライン・キャンペーンなどさまざまな行動が行われた。
ミシシッピ州ジャクソンでは地域の連帯経済をめざす労働者・市民のネットワーク「コーポレート・ジャクソン」が「コロナ危機を終わらせ新しい世界を作り出すためのゼネストに向けた行動」を呼びかけた。
同州ではテート・リーブズ知事が商店の部分的再開(通常の50%)の行政命令に署名している。
以下は独立メディア「デモクラシー・ナウ」で5月1日に放映された「コーポレート・ジャクソン」の共同代表のカリ・アクノ氏とのインタビューの抜粋である。
Q.「コーポレート・ジャクソン」の行動の呼びかけは何を目的としていますか?
A.5月1日はトランプ大統領やテート・リーブズ知事をはじめとする共和党知事たちがすべての科学的根拠を完全に無視して何百万人もの労働者を無理やり職場に戻そうとしていた日です。
私たちは「いつ安全に仕事に戻れるかは私たちが科学的根拠に基づいて決める」という明確なメッセージを伝えるためです。
今日、数百万人の人々が行動に参加するでしょう。この行動は当面この国で必要とされる重要な運動のスタートとなるでしょう。なぜなら、感染の危機が去った後でも経済的危機は続くからです。だから私たちは資本家が災害からの復興の中で労働法の規制の緩和や労働時間延長、賃金引き下げを押し付けることに対して、先に手を打っておかなければなりません。
Q.どういう人たちが集まっているのですか?大部分の労働組合ではストライキをるのは労働協約の改定の時だけですが、その枠組みの外で労働者の草の根の運動をどのように組織したのですか?
A.第1に、状況が本当にそれを要求していたということです。
私を含めて何人かが以前にSARSなどのウィルスを経験してきました。SARSで親しい友人を亡くしました。これは10年ほど前のことでした。
そこで私たちはウィルスの問題についてまわりの人たちへの教育を始め、まずこの問題を重大な問題として考えるよう促しました。というのも、「単なる悪性のインフルエンザだ」、「すぐに収まる」という会話がよく聞かれたからです。
次に、私たちが何かを呼びかけるときは、とにかく電話をかけまくり、労働組合の何千人もの組合員に働きかけました。思った以上の支持が集まりました。直接に参加できない人も多いですが、全国で草の根の労働者による驚くほどの数の行動が起こりました。
こうして3月から始まった「山猫スト」が今でも続いています。
Q.今日の「ニューヨーク・タイムズ」に今の運動の国際的な側面に関する興味深い記事があります。
今、米国の企業がメキシコのマキラドーラ(輸出加工区)の米国向け製品の工場の操業を継続しようとしており、一方でメキシコ政府はこの地区のすべての産業を停止したいと考えています。
コロナ・ウィルス感染によって多くの工場労働者が死んでいるからです。
たとえば自動車の座席を製造しているリア社の工場ではすでに13人の労働者が死亡しているにもかかわらず、会社はメキシコ政府の要請を無視して操業を続けています。
米国政府はこれらの工場はメキシコにとってではなく米国にとって非常に重要だと言っています。米国の産業のためだけにメキシコの労働者が仕事を続けなければならないというのはとんでもない話だと思いますが・・・。
A.その通りです。カリブ海地域でも同じようなことが起こっています。
……トランプ政権は人の命というものを何とも考えていなし、感染に対して何の準備もしてこなかったし、感染が広がり始めた時にも労働者を守るために、あるいは労働者の安全を確保できるレベルに生産を減らすために与えられた権限を行使しようとせず、それどころか多くの州にPPE(個人保護用装備)の供給を拒否した。
私たちがこれから相手にしなければならないのは犯罪的な企業です。
Q.あなたがたは行動の一環として、家賃ストライキや、消費者に特定の店のボイコットを呼びかけていますが、それについても説明してください。
A.私たちは誰でも参加できるように、たくさんの入り口を用意しようと思っています。最初からストライキに参加できる労働者は多くありません。
私たちの運動は「ゼネストに向けた行動」であり、メーデーだけの行動ではありません。
家にいる人たちには、家でストライキをするように呼びかけています。今日は仕事をせず、ズームやジスティーを使ったオンラインの活動にも参加しないようにです。
また、意識的な家賃ストライキを呼びかけています。家賃やローンを払える人にも、払えない人への連帯のしるしとして、払うのをやめることによって金融機関にメッセージが伝わるように協力するよう呼びかけています。
また、フィジカル・ディスタンス[身体的接触を避ける行動]を呼びかけ、その一環として自動車デモを計画しています。
それからもちろんアマゾン、ホールフードなどの労働者の行動もあります。
だから今日はすばらしい日になると思います。
私たちはこれをさらに継続して、いくつかの基本的な要求が実現するまで毎月最初の1日をストライキの日にしたいと考えています。
Q.アーチストのデヴィッド・トボックマンは次のように言っています。
「なぜ私たちは命を危険に曝すような条件で働かなければならないのか?
まず感染を止めて、それから資本主義経済を再開しようって?経済を再開したら、支配階級にとって治療の方法やワクチンを見つける必要なんかないではないか。
彼らは自分たちの専用コミュニティー(ゲーテッド・コミュニティー)でくつろいで、私たちが死ぬのを放置するだろう」。
どう思いますか?
A.まったくその通りだと思います。CNNやMSNBCの報道を見ていても、企業や政府が何万人もの人を犠牲にするつもりであることは明らかです。
「命よりも大事なものがある」と言っている人がいますが、最も恥ずべき言説です。
私たちは利益よりも命を先に守らなければなりません。
★イタリア:コロナ危機の中、食糧生産を支える移住労働者
ヨーロッパではコロナ危機の発生以来、食糧などの必需品の生産のために農業労働者、特に移住労働者が不可欠の役割を果たしていることが認識されてきた。
この中で、国境封鎖によって特に東欧からの季節労働者の入国が阻止されていることは、EUの多くの国で労働力不足と食糧不足を引き起こすという懸念が広がっている。
イタリアではルーマニア、ブルガリア、ポーランドなどの国からの約37万人の季節労働者が今年は入国できなくなる。イタリアの食糧生産の25%以上がこの労働者に依存している。
政府は最近失効した居住許可証の期限を6月15日まで延長すると発表したが、農業労働者の不足を補うには足りない。
いくつかの農業団体は年金生活者や学生、失業者をこの部門で雇用できるようにするバウチャー制度の導入を提案しており、いくつかの右派政党もこの提案を支持している。
しかし、労働組合はバウチャー制度は農業労働を一層不安定で、危険なものにすると批判している。
農業団体はまた、EU圏内の季節労働者の自由な移動を認める「緑の回廊」の設立を求めており、イタリアの農業相もこの提案を支持している。
EU域外からの季節労働者の割り当て数も2011年以降減少している。
この減少分が亡命者や難民、第三国からの就労許可証のない労働者で補われていることは公然の秘密である。
イタリアの農村における生活条件の悪化も深刻な問題である。特に南部では多くの移住農業労働者は隔離された宿舎、テント村、スラムで密集して生活し、水や下水などの基本的なサービスも提供されていない。そのためウィルスが広がった場合には重大な影響が心配される。
多くの全国的団体、労働組合、労働者は「違法」とみなされている移住労働者の「合法化」を要求してきたが、それが今、一層重要になっている。
極右派はこれに反対しているが、農業相は賛成している。
政府の最初の案は農業、漁業に限定して「合法化」するとしているが、それだけでは不十分である。全産業の移住労働者に就労許可だけでなく安全な環境を保証しなければならない。
農業・食糧生産における公正な労働条件とエコロジー的な持続可能性が求められている。
労働力の不足ではなく労働者の権利が不足しているのである。
(「オープン・デモクラシー」、4月29日付より)