★フィンランド:
「週4日・1日6時間労働」を提唱するサンナ・マリーンが新首相に
1月初めにフィンランドのマリーン首相が「週休3日制の導入を検討している」との報道が欧州を中心に世界各地で伝えられた。
マリーン首相は、12月10日、同3日に辞任したアンティ・リンネ前首相の後任として選出された。新内閣は女性12人・男性7人、平均年齢47歳という斬新な構成が注目されている。
同首相は17年に社会民主党の第1副党首に就任し、19年6月から前政権の下で交通・通信大臣を務めた。
「週4日・1日6時間労働」は同首相が昨年8月にトゥルクで開催された社会民主党結成120周年記念のパネル討論で提唱したものであり、新政権の政策として掲げられているものではない。
「ヘルシンキ・タイムズ」19年8月19日付によると、マリーン交通・通信大臣(当時)は、次のように語っている。
「週4日・1日6時間労働を次の目標にできない理由があるのか?8時間労働は最終的な真実なのか?私は人々がもっと多くの時間を家族や愛する人たちとともに、あるいは趣味や文化などのために使うに値すると確信している」。
質疑の中で彼女はこの提案が近い将来フィンランドの現実になることを期待している。
オンライン誌「スクープミー」12月19日付は次のように報じている。
「6時間労働制は隣国スウェーデンのヨーテボリで15年から実施されている。同市の高齢者介護施設と私立病院で2年間試験的に導入された結果、労働者たちはより楽しく、健康になり、労働効率も向上した。
人員を増やしたためコストは上がったが、雇用が増えたため税収も増え、病休が減り、傷病手当も減った。
すでにスウェーデンのハイテク産業では6時間労働が標準となっている。
トヨタでは03年から6時間労働が導入されており(賃金は同じ)、その結果生産性も収益も上がっている」(スウェーデンでの試験的導入について、詳しくは本誌15年10月15日号を参照されたい)
英国「ガーディアン」紙1月6日付は次のように論評している。
「労働時間短縮は生産性を向上させる。(19年)8月にマイクロソフト日本が週4日制を試験的に導入した結果、生産性は約40%向上した。
メルボルンのある機関の調査によると、6時間労働になると従業員たちは無意味なメールを送ったり、だらだらと会議をしたり、インターネットに没頭するような非生産的な活動を減らさなければならなくなる。
英国ではエレクトラ・ライティング、シンク・プロダクティブ、ポートゥカリス・リーガルズなどの企業が週4日制に移行して成果を上げている。
TUC(労働組合会議)の調査によると、労働者の45%が週4日労働制を望んでいる」。
「労働時間削減は自然環境にもよい。週労働時間の短縮によって1人あたりの二酸化炭素排出量を減らすことができるし、買い物や料理に時間をかけることができ、プラスチック容器に入れて配送される食品に頼ることが少なくなる。……
週労働時間短縮には多くの利点があるが、魔法の解決策ではない。……ヨーテボリの実験は、コストの増大を理由に中止された。経営者たちは労働時間を短縮すれば人員の確保が大変で、顧客のニーズに対応するのが難しくなると憂慮している。労働者たちは労働時間が短いと怠け者と思われると恐れている。
しかしこれらの問題は克服できない問題ではない。
そもそも労働時間の短縮は新しいことではない。産業革命以来、労働時間は短縮されてきた。
英国で1919年に週労働時間が54時間から48時間に短縮されたとき、生産性や競争力に何の影響もなかった。
20世紀半ばに米国のケロッグ社は長期にわたって6時間労働制を維持し、成功してきた。それが廃止されたのは同社の経営者が他社の労働慣行に合わせたいと考えたからであり、生産性や競争力が理由ではない。
もっと楽しく、しかも効率的に働き、環境への悪影響を少なくすることは十分に可能である。
話がうますぎて信用できないと思われるかもしれないが、それが近い将来には標準となるかもしれない」
★フランス:無期限ストを支えるオンライン・カンパ
年金改革に反対する無期限ストライキが36日目に入った1月9日、全国で45万人がデモに参加した。
パリでは朝の通勤時間に道路の渋滞が200キロに及んだ。
全国で教員の3分の1がストに入っており、パリでは数十校が休校となった。
エネルギー労働者もストライキに入り、製油所が操業を停止した。
フランスの国際向けニュース専門チャンネル「フランス24」は12月29日の
放送で、長期ストライキを支えるオンライン・カンパについて伝えている。
以下は同チャンネルのウェブ版からの抜粋である。
鉄道労働者の左派組合で、CGTと共にストライキを牽引しているSUDレールのファビアン・デュマ書記長は「仲間たちは収入を失っている。もっとも強く決意していた人たちはあらかじめ準備して、おカネを倹約していた。しかし、それは特に低賃金の労働者にとっては困難だった。」
彼の組合はストライキを継続するために、連帯カンパに頼っている。デモのたびにカンパ用の瓶が回されるのはおなじみの光景である。
しかし、今はオンライン・カンパが大きな収入源になっている。
SUDレールが開設したクラウドファンディングの口座には、現在までに4万3千ユーロ以上が集まっている。
他の組合もクラウドファンディングを呼びかけている。
クラウドファンディングで最大のカンパを集めているのはCGTの情報通信(インフォコム)支部の組合員が始めた「連帯基金」で、これまでに150万ユーロ以上を集めている。
「連帯基金」は16年のストライキ(オランド政権の下での労働法改定に反対)の中で始まったが、現在では年金改革反対のストライキの支援基金の共通の受け皿となっている。
集まったおカネはピケットラインで闘っている労働者に再分配される。分配の基準はスト参加者と組合によって決定される。同24日にはパリ地下鉄のストライキに参加している組合員に25万ユーロが分配された。
フランスの労働組合の多くはスト基金を積み立てていない。
最大労組のCFDT(鉄道部門では4番目)はスト基金を積み立てている唯一の組合であると主張しており、組合費から基金を積み立て、ピケットに参加した組合員、に1時間あたり7ユーロが支給される(この基金は経営者に対する訴訟に費用にも使われる)。
それでもストライキ中の労働者にとって、1ヵ月分の賃金を受け取れないこの年末年始の休暇は厳しい試練だと同組合の幹部は言う。
労働協約に基づいて年末ボーナスを支給される場合には厳しさが多少緩和されるが、それでも足りない場合はローンに頼るしかない。ストライキを離脱して就労する組合員も少なくない。
国鉄の労働者のストライキ参加率は当初の55%以上から、現在では8・5%まで下がっている。
フランス24のインタビューに対してあるスト参加者は次のように語った。
「たしかに仕事に戻った仲間もいるが、彼ら彼女らはまたストライキに戻ると言っている。ストライキを数日休むだけだ」
★インド:
モディ政権の人種主義・反労働者的政策に反対、2億5千万人がスト
1月8日、CITU(インド労働組合センター)の呼びかけに応えて全国で2億5千万人がストライキに入った。
CITUは以下の要求を含む12項目の要求を政府に提出している。
・物価抑制のための緊急措置(公的配給システムの確立、投機的取引の禁止など)
・失業対策のための雇用機会創出
・基本的な労働法の完全実施
・すべての人に適用される社会保障
・月1万5千ルピーの最低賃金(1ルピーは約1・5円)
・就労年齢のすべての人に年金の保証
・同一労働同一賃金
・反労働者的立法の中止
デモの中ではモディ政権による一連の民営化や、ヒンズー至上主義的なCAA(市民権修正法)、NRC(全インド国民登録簿)の導入に反対するスローガンも掲げられた。
与党BJP系の労働組合を除くすべての労働組合がストライキに参加した。野党の国民会議もストライキを支持した。
金融・保険部門では10の労働組合、合計100万人以上がストライキに入ったため、30億ドル以上の取引がストップした。
鉄道線路が占拠され、全国で交通が麻痺した。
炭鉱労働者60万人もストライキに入った。
メディアの統制のため限られた情報しか入手できず、ストライキの実際の影響はまだわからない。
同日午後11時の段階でのグーグル検索の結果では、西側メディアでこの世界最大のストライキに触れた記事はロイターの短い記事だけであり、そこでは「インドで数万人がストに参加」となっている。
(「ミント・プレス・一一ユース」1月8日付より)