★チュニジア: 民主革命から4年、公正な社会めざす女性たち
革命から4年を経たチュニジアでは新憲法の制定、選挙の実施などを実現したが、まだ闘いの途上である。現在も女性たちが闘争の最前線に立っている。
ウェブ紙「イコール・タイムズ」は3月8日、国際女性デーにあたって、暴力のない公正な社会を作るために一貫して闘ってきた女性6人のインタビューを掲載している。
以下はその抄訳である。
リナ・ベン・メニさんは人気のブロガー。13年8月に警察官による暴行を受けた。
「私は07年に『チュニジアの少女』というブログを開設しました。人権と表現の自由は重要であり、ブログの検閲はある種の暴力です。女性のブロガーが攻撃されるのは女性だからです。ベン・アリ政権が倒れてからは言葉による暴力がひどくなっています。……私への脅迫があまりにひどいので、内務省は私に警察官による保護を提供しました。ところが、警察官の保護の下で、警察官による暴行が起きたのです」。
マリアン・トゥーレさんは学生で14年10月にチュニジアにおける人種差別主義に関する公開状発表で注目を集めた。
「……友だちと学校の前にいたある日、(人種の違いを理由に)子どもたちが私に石を投げつけ、侮辱的な言葉を投げかけました。7歳の私にです。それを親が笑ってみているのです。……でも、チュニジアは私にいい影響も与えました。特に、女性の地位がそうです。チュニジアの女性たちは一定の地位があり、法律の上でも大きな保護を受けています」。
バスマ・カルファウォイさんの連れ合いで、弁護士で左派の活動家だったチョクリ・べライドさん。彼は13年2月に暗殺された。
「暗殺の後、私は暴力に暴力で応えてはならないと訴えました。暴力には思想と言葉で応えようと訴えて、『暴力に反対するチョクリ・べライド基金』を設立しました」。
ムバルカ・ブラヒミさんも連れ合いのモハメド・ブラヒミさんが13年7月に暗殺された。彼女は現在、野党、人民戦線のメンバーで、14年10月、国会議員に選出された。チュニジア議会は217人中、女性が68人(31%)を占めている。
彼女は、議席を並べている夫の暗殺に加担した議員の一人に、「私はあなたとは政治的意見が違うし、あなたを裁判にかける証拠もあるが、私は誰も傷つけることはできないと言いました。その党の議員の中には、私に近づかない人もいます」。
メリエム・ベン・モハメドさんは12年に警察官2人にレイプされた。事件隠蔽のために、彼女は「公序良俗に反する行為」(最高量刑は6ヵ月)で起訴されたが、国際的非難を受けて彼女の起訴は取り消され、加害者の警察官は14年の判決を受けた。彼女は2年にわたり14回の審理に出廷した。
「……新聞が事件を取り上げました。アメリカでも。彼ら・彼女らが裁判所に向けて書いた手紙は効果的でした。チュニジアは国際的イメージを気にしたからです」。
チュニジアでは14年11月に議会に女性に対する暴力に関する法律の草案が提出されたが、審議が遅れている。
レイラ・ガーロールさんは衣料労働者。12年に勤めていた工場(従業員300人)が突然閉鎖された。それ以降、「チュニジア経済・社会的権利のためのフォーラム」というNGOで衣料労働者の権利のための運動を進めている。
「……革命前の方がよかったです。今では経営者は国家の弱さと査察の不在につけ込み私たちの権利の侵害を強めています。私は失業中で、国の医療保険証が有効期限を切れているこの2ヵ月は必要な治療や投薬を受けられません」。
14年6月に裁判所はレイラさんの工場の労働者解雇は不当で、経営者は解雇時にさかのぼって賃金を支払えという判決を下したが、会社(本社はベルギー)はまだ支払いを行ってない。
★米国: ウィスコンシン州で組合弱体化狙う「労働権法」制定
ウィスコンシン州で3月9日、組合費の義務的徴収を禁止する等の「労働権法(Right to Work)」が制定された。
反労働組合法ともいうべき「労働権法」は、民間企業の労働者は組合加盟も、組合費納入も自己裁量であるとの内容で、それにより働く権利が確立されることはない。ユニオンショップ制や組合費納入を義務付ける団体協約の違法化であり、労働組合を弱め、民主党基盤弱体化を直接の狙いとしている。
南部やロッキー山脈地域の諸州では40〜50年代から導入されており、これらの州では労働組合の組織率が極端に低く、賃金水準も低いことが知られている。
2010年の中間選挙での共和党勝利を契機に、共和党と企業ロビーが労働組合の影響力が比較的強かった中西部を中心に「労働権法」の導入を進めてきた。
ウィスコンシン州では、10年に選出されたウォーカー知事が、11年に公務員の団体交渉権を大幅に制限する法律を導入し、同年2〜3月に州議事堂占拠を中心とする全州的な抗議行動が展開された。
12年のリコール選挙を乗り切り14年に再選されたウォーカー知事は、反労働組合エースとして16年大統領選の有力候補となっている。
同知事は14年の選挙前には、2期目の任期中には「労働権法」は取り上げられないだろうと語っていたが、2月20日に議会の共和党議員たちが突然、法案を提出し、知事も、法案が可決されれば承認すると表明した。
労働組合を中心に、11年の闘い同様の厳寒の中、議事堂内外で連日、数百人から数千人の集会が開かれた。経営者団体や共和党支持者の間でも、強硬な反組合的姿勢への危惧が広がっていた。
しかし、議会の両院を支配している共和党は、公聴会も早々と打ち切り、2月24日に上院労働委員会、同26日に上院本会議、3月6日に下院で法案を採択、9日に知事が法案に署名して発効させた。同州は、「労働権法」が導入された25番目の州となった。
同知事は、「働く自由法は、労働者には労働組合に加盟するかどうかを選ぶ自由を与え、経営者には事業をウィスコンシン州へ拡張あるいは移転する新たな強力な理由を与える」と述べている。
オバマ大統領は、この法律を「新たな反労働者法」であるとして、ウォーカー知事を名指しで批判する声明を発表。
同大統領は「ウィスコンシンは労働によって築かれた州であり、労働者を擁護してきた誇るべき過去がある。だから知事も、この法律が勤労者のアメリカのための勝利であると述べたのだ。私は知事に、労働者の賃金の引き上げ、有給休暇の保証によって、勤労者のアメリカのための政策で勝利し、点数を稼ぐことを勧める」と述べている。
同州のAFL・CIOは同10日、この法律が憲法違反であると、執行停止を求める訴訟を提起した。
12年に「労働権法」が導入されたミシガン州では、組合組織率が導入前の16.6%から14.5%に下落。一方、インディアナ州では逆に9.1%から10.7%に上昇。
ウィスコンシン州では組織率はウォーカー知事の就任前の14.4%から11.7%に下がっている。特に、全米教員連盟傘下の組合の組合員数は3分の1になり、州の従業員数も大幅に削減され、組合員数が70%減少した。
(「ニューヨークタイムズ」紙3月6、9日付等より)
労働組合の敗北
同州ラクロスの組合オルグのデビッド・グッドナー氏は、「イン・ジーズ・タイムズ」紙3月2日付で、次のように指摘している。
「2011年冬にウィスコンシンを席巻した蜂起は、下からの、直接行動の運動であったことによって、国民の想像力を喚起した。しかし、労働運動は致命的な失敗を犯し、その後も同じ失敗を繰り返してきた。組合リーダーたちは職場における行動を拡大し、ゼネストに向けて進むのではなく、動員を解除し、裁判や選挙に運動を流し込んだ」。
ウィスコンシン専門職従業員評議会(WPEC)・全米教員連盟(AFT)第4848支部の組合員のバーバラ・スミスさんは、「レイバーノーツ」誌3月5日付で次のように指摘している。
働く権利法の導入は予想されていたが、労働組合の主流は、この法律に反対する経営者たちとの共闘に期待をかけ、この共闘を壊さないために大衆的な集会・デモを控えてきた。実際、大手の建設業者を含む400の企業経営者がこの法律に反対を表明した。AFL・CIOは最後の段階でテレビでの広告を流し、州都マディソンやミルウォーキーでの集会を呼びかけた。駆けつけた労働者たちの意気は高かったが、舞台裏では組合リーダーたちは始めから敗北主義に陥っていた。
再組織化への道
2011年の闘いの中で生まれた草の根の活動家グループ、ウィスコンシン・ジョブ・ナウ(WJN)のジェニファー・エプス・アディソンさんは、「都市と農村、労働者と貧困層の連合の確立という進歩的な伝統に戻る必要がある」と述べている。
WJNは州最大の都市、ミルウォーキーを中心に活動している。ミルウォーキーは住民の27%がアフリカ系米国人で、かつては産業都市として栄えたが、現在ではハーレーダビドソン等、いくつかの企業が残っているだけで、州の中でも最も貧困な地域となっている。また、同州はアフリカ系米国人の検挙率が全国一である。
WJNは昨年10月にファーストフード店の労働条件の改善を求める行動を組織し、40人の逮捕者を出した。12月にはアフリカ系米国人の権利を擁護する全国的な行動に呼応して、高速道路を占拠した。
ジェニファーさんは、「共和党が地域への支配を強めている今でも、まだ人々は信じられないほどの力を持っているし、地域に機会と公正をもたらす道はいろいろある。そのような一歩一歩が州全体、そして全国に影響を及ぼしていく」と語る。
(英国「ガーディアン」紙3月1日付)