アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
922号

★インド
  紅茶農園の女性労働者がスト

 ケララ州の紅茶プランテーションの3年ごとの協約交渉が難航する中で、女性労働者を中心に約32万5千人が自然発生的なストライキに入っている。労働者の要求は、基本給を現在の1日232ルピーから500ルピーへ引き上げることである(1ルピーは約2円)。


 「フロントライン」誌10月14日付は次のように報じている。
 「女性労働者たちによる自然発生的な運動がケララ州のプランテーションを席巻し、男性中心の労働組合を出し抜いて、この産業における不平等と男女格差の拡大に大衆的な注目を集めている」。


 同誌によると、ケララ州ムンナールのカナン・デバン・ヒルズ・プランテーション(KDHP)の女性労働者たちは「ペンガル・オトルマイ(女性の団結)」という旗の下に結集し、ストライキに入った。闘いは瞬く間に州全体に拡大した。
 KDHPでは昨年12月末で協約が失効した後、政府が主宰するプランテーション労働委員会(PLC)が数度にわたって開催されてきたが、経営側は「実際の賃金は労働者が主張しているよりも45%高い」ことや、生産性の低下、販売価格の下落、外国との競争を理由に、大幅賃上げはできないとして労働者の要求を拒否している。


 8月22日に、同社の株主総会でボーナスを8.33%に引き下げることが決定された(これまでは19%)。この決定が労働者たちの怒りの引き金になった。主要な労働組合はこれまで通りの方法で交渉を続けようとしたが、組合リーダーのやり方に反発していた女性労働者たちが自然発生的に順法闘争に入った(農園での労働時間は1日8時間だが、収穫期にはノルマを超えた収穫に対して割増賃金を払う制度によって、実質的には11〜12時間労働となっている)。
 3つの労働組合(AITUC、INTUC、CITU)の支部組織は、労働者たちが9月の収穫期に生産量を減らしたことを非難し、統制処分をちらつかせたが、労働者たちは闘いを継続した。


 KDHPはタタ・グループが1983年に英国企業から買収した。タタ・グループは現在では世界第2位の飲料メーカーとなっている。
 ムンナールの農園労働者の多くはかつての奴隷労働者の末裔であり、カースト制度によって移動や転職を制限されており、会社が提供する劣悪な条件の住居に集められている。
 ケララ州の労働組合はこれまで、農園労働者の権利の発展のために大きな役割を果たしてきたが、幹部の汚職や経営側との癒着がしばしば問題となり、また、近年では経営側との協調的なやりかたが目立っている。


 「キャッチニューズ」紙10月10日付によると、9月1日に労働者たちはペンガル・オトルマイを結成し、同日に仕事を切り上げて、丘にある居住地区までデモ行進し、道路に座り込んだ。別の農園の労働者たちが次々に集まってきた。
 ペンガル・オトルマイでは交渉代表として6人のリーダーが選ばれた。ダリットの女性たちが先頭に立つことによって、賃金をめぐる闘争が広範な抑圧に対する闘いへと発展した。
 PLCでの交渉が進展しない中で、10月3日にはペンガル・オトルマイの5人の労働者がハンストに入り、6日にはこの5人に代って24人がハンストを開始した。
 3つの労働組合も10月1日からストライキに入っている。


 

★トルコ
  政府対応に怒りのデモとゼネスト

 10月10日に発生したテロ事件をめぐる政府の対応に対する怒りと疑惑が広がる中、同12日に「ファシストによる大虐殺に抗議し、友人たちの死を追悼する」ための全国的なストライキが行われた。
 呼びかけたのは4つの労働組合と13年のガジ公園占拠運動から生まれた「6月運動」である。12〜13日にかけて各地で労働者、学生、クルド人支援団体などの活動家がデモに参加した。


 アンカラでのテロは、「労働と平和と民主主義のための集会」の会場で発生し、128人が死亡、200人以上が負傷した。12日のゼネストを呼びかける宣言は次のように述べている。

 「われわれは戦争に反対して平和を求め、暴力と抑圧に反対して自由と民主主義を求め、腐敗と搾取に反対して労働者の権利を求める闘いのために集まった。……私たちは悲しみ、怒り、追悼し、そして闘い続ける」。


 12〜13日のデモの参加者たちは、6月の選挙以降に拡大しているトルコ国内およびシリアにおけるクルド人たちへの国家による暴力の中止を要求した。
 トルコ政府は12日、ISISの犯行の疑いがあると発表したが、多くの人は公式発表を信頼していない。情報機関が把握していなかったことや、反クルド人の感情を煽る動きと関連して、政府の直接または間接的な関与を疑っている人たちもいる。
 爆発の直後に警察が消防車や医療関係者の通行を妨害したことや、事件翌日に犠牲者の追悼のために現場へ集まろうとした人たちを警官隊が阻止したことに対しても怒りが起こっている。政府は事件に関するメディアの報道を規制し、フェースブックやツイッターへのアクセスも規制されている。 (「コモン・ドリームズ」誌10月14日付より)


 「ハリエット・デイリー・ニューズ」紙同13日付によると、イスタンブールでは警察がデモを許可せず、阻止線を張り、催涙ガスを使って規制しようとした。デモ参加者たちは病院の中庭で座り込みを行った。

 

 

★チュニジア
  UGTTなどに各国労組から祝福

 ノーベル平和賞に選ばれた「チュニジア国民対話カルテット」の一翼を担ってきたチュニジア労働総同盟(UGTT)に各国の労働組合から賛辞と祝福のメッセージが送られている。
 UGTTなどの民主団体は11年の民主革命以降、政権をめぐる抗争や暴力的テロの危機の中で、憲法制定をはじめとする民主化の促進に大きく貢献してきた(本誌13年1月1.15日合併号および14年2月15日号参照)。
 また、UGTTは13年と15年のチュニスでの世界社会フォームの開催でも中心的な役割を担った。


 以下は「イコール・タイムズ」紙10月13日付に掲載されたUGTTのハウシン・アバシ書記長のコメントである(一部抄訳)。


 私は組合活動の中で育ってきた。私たちの主要な関心はこの国の労働組合とさまざまな社会的要素を結束させることである。私たちの運動には何度も起伏があったし、財政的な問題もあった。しかし私たちは他の国の経験から、戦争と紛争の後では対話が必要であることを学んだ。


 革命の後、私たちは深刻な対立と、対立するイデオロギーを経験してきた。言葉の上での中傷から始まり、政治的暗殺にまで至った。私たちはこの状況とその発展を深く憂慮した。暴力を放置しておくなら、この小さな国にとって極度に危険なことになることを理解した。私たちは歴史に学び、危険を予想しなければならなかった。


 多くの対立があり、政党を分かつ多くの違いがあることを私たちは見てきた。彼らはみな急進的で非妥協的な立場に固執し、一般大衆の関心に目を向けなかった。統一のためのいくつかの試みがあったが失敗した。私たちは労働組合として、自分たちの責任を果たすことを決断した。1つの独立的で中立的な党が必要であり、その党はすべての人たちの信頼に値するものでなければならないと私たちは考えた。


 私たちは組合の中で討論して、ロードマップを作り上げた。市民社会の諸団体を巻き込み、政党にも働きかけた。私たちは彼らに、「あなた方はこの国と人民を支配するために闘っているだけだ」と率直な意見を述べた。また、どちらが勝っても、生き延びる最小限の可能性もない国を統治することになるだけだと述べた。
 困難もあったが、最終的にはイデオロギー的な対立や政治的対立を超えて進むことができた。コンセンサスは徐々に広がりはじめ、最終的にはこの国のすべての政党が1つのテーブルに着いた。


 私たちは憲法の制定に関する結論に到達した。また、選挙を実施するための独立的な委員会などの機関を設立することができた。私たちがやったことは、予想される紛争や暴力に先行して対話が行われることを保証することだった。私たちは責任を引き受け、対話を運営し、対話は紛争を克服する道を開いた。


 私たちは、まだ対話を開始し、平和を実現するのが困難な地域の中に存在している。しかし、私たちの努力を結集するならば、労働組合と市民社会は大きな役割を果たすことができると私は確信している。そうすれば私たちは大きな破滅を回避して、世界の平和を促進できるだろう。対話が最も重要であり、それこそが紛争を終わらせる唯一の道である。


 第1に、私たちは難民や国を逃れる人たちの問題を深く憂慮している。第2に、緊急の問題として、シリア、レバノン、イラク、その他の国の問題に人道的な解決が必要であり、紛争の根本的原因をなくす方法を考え出す必要がある。第3に、湾岸諸国における自由を束縛し労働者の権利を侵害する法律を非難する必要がある。


 よりよい世界は可能である。特に、私たちが経済的および社会的な利益を満足させることができるなら。すべての国で平和に向かって進むことを希望しよう。労働組合が果たすべき役割があり、それは対話によってなされなければならないことを証明するために行動しよう。 

 

 

 

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 〒112-0005 東京都文京区水道2-11-7三浦ビル2階 Tel:03-6912-0544 Fax:03-6912-0744