アジア@世界
769号

●韓国
5・16大田の労働者集会への弾圧に抗議する

 以下は、韓国民主労総の声明(5月18日付)である。
 韓国の民主主義と人権が後退している。韓国政府と警察は、極度に暴力的な行動によって人権と労働者の基本的権利を踏みにじっている。
 5月16日の大量逮捕は、政府とコリア・エクスプレス(大手の物流会社)の経営者が行ってきた労働組合への抑圧を隠蔽するための警察による意図的な暴力だった。ILOの緊急の介入や国際社会からの批判にもかかわらず、政府はそれを無視し、強権的な措置を繰り返している。私たちは李明博政権の労働組合弾圧を強く非難する。
 5月16日の大田での労働者集会だけでも486人の組合員が逮捕された。これは李明博政権の発足後で最大である。そのほかに100人以上が負傷した。衝突を引き起こしたのは政府と警察である。平和的なデモが保証されていたならば起こるはずのなかった衝突である。警察は平和的デモを阻止し、デモ参加者を挑発した。次に警察は、それによって引き起こされた衝突を口実にして労働者を逮捕した。デモが終わった後でも、レインコートや組合のジャケットを着ていたすべての労働者を無差別に逮捕した。高速道路の出口やレストランや歩道で逮捕された者もいる。それは正当な法律の執行ではなく、報復的な行動だった。
 多くの被逮捕者は警棒や盾で殴られ、怪我をしていたが、警察は応急手当用の医薬品をすぐには提供しなかった。多くの者は警察署やビルのホールの床で、濡れた衣服のままで一夜を過ごした。一枚の毛布もなかった。重傷者は、治療を受ける前に供述調書にサインすることを求められた。戦争の捕虜でさえ、そのような扱いは受けないだろう。これは甚だしい人権侵害であり、過去の独裁政権の下でのみ行われたことである。
 デモ隊と警官隊の衝突は残念なことである。警官隊にもデモ隊にも負傷者が出た。しかし、衝突の背景にあるのは、大統領の反労働者的政策である。対立が起こったのは、コリア・エクスプレス社が輸送料を30ウォン値上げするという団体協約を破ったためである。会社側は自分たちの行為を反省するのではなく、今では貨物輸送労働組合(CTWU)との交渉も拒否している。会社側が敢えてそのような行動を取るのは、政府が反労働者的な政策を取り続けているからである。ILOは韓国政府の態度に深い懸念を表明し、最近、この問題に介入することを宣言した。
 韓国政府は貨物輸送労働組合と韓国建設労働組合(KCWU)に対して、「特殊な雇用関係」にある労働者、すなわち生コンクリート輸送トラックの運転手やダンプ・トラック、貨物輸送用トラックの運転手の組合員資格を「自主的に」剥奪することを命令し、この命令に従わない場合は、組合の登録を取り消すと脅した。私たちはILOに対して、韓国政府のこの命令に関して介入することを求めてきたが、ILOは5月4日付の私たちへの書簡で、私たちの要請を受け入れたことを通知した。
 ILOの介入は、労働組合に対する政府のこのような命令や脅迫が労働者の権利の重大な侵害にあたることを意味する。ILOの介入によって、この権利侵害は国際社会の嘲笑の対象となった。政府の甚だしい弾圧は、貨物輸送労働組合光州支部のリーダーだったパク・ジョンテ氏の死と、5月16日の衝突をもたらした。
 民主労総は一連の出来事を、政府による民主主義と労働者の権利と人権への攻撃とみなしている。私たちはそれに対して、しかるべき反撃を行う。私たちは政府に対して、もしパク・ジョンテ氏が死を賭して解決を求めた問題が解決されないならば、大衆的なストライキに訴えることを警告する。また、民主主義を守るために人権団体や市民団体、社会団体、進歩的政党と共同の闘争を組織する。
 民主労総は政府に対して、労働政策の考え方を転換するよう訴える。また、国家警察庁長官の辞任と、大量逮捕に対する大統領の直接の謝罪を要求する。この要求が受け入れられなければ、私たちは闘争を強化する以外に選択はないし、すべての責任は政府にあることを宣言する。

●中国
パナソニック・北京工場のリストラに抗議、数百人が門前行動

 以下は「ラジオ・フリー・アジア」の5月15日付の報道の要約である(翻訳、APWSL日本委員会・稲垣豊)。
 日本の松下電器(パナソニック)グループは、北京のブラウン管テレビ工場の閉鎖を計画しており、それによって3千人以上が職を失う。これに対して数百名の労働者が連日、工場外で座り込んで抗議している。
 深センでも、ある電子部品工場が倒産し、百名以上の労働者が影響を受けている。5月14日には東カン市の労働者の肖青山が当局の弾圧に対する抗議行動を行った。……
 北京の松下彩色顕管(カラーブラウン管)公司の労働者数百名が、前日に続き正面ゲートの前に集まり、形を変えたリストラに抗議した。「工場は2日も操業していない。いま組合の代表が管理職と交渉をして、(リストラ)計画の撤回を求めている」とある労働者は語った。「これは抗議ではなく、自分たちの権利を主張しているだけです。私たちは働きたいのです」
 インターネットへの労働者の書き込みによると、会社側は「内部構造改革」と銘打ち、労働者全員の解雇を提案した。それによると、年末までに自主退職かレイオフのどちらかを選択しなければならない。もし自主退職を選択すれば退職補償金を一括で支払うが、(企業が積み立ててきた)社会保障金は受け取れない。レイオフを選択すれば、従来の賃金を大幅に下回る640元(1元は約15円)が毎月支払われる。景気の悪化に加え、大部分の労働者が40歳に達しており、20年もこの工場で働いてきた労働者が、そう容易に転職することはできない。こうした理由から今回の行動を呼びかけ、経営陣に計画の撤回を迫っているという。
 同社の秘書室は取材に対し次のように回答した。「近年ブラウン管テレビの需要が激減しており、グループは関連の生産ラインの閉鎖を決定した。法律と協約にのっとって計画を進める。現在、管理局が従業員代表と交渉中であり、計画はまだ決定されたものではない。計画を策定した後に組合に提示し、組合が従業員の意見を聴取する予定であり、まだ確定案というわけではない」。
 松下彩色顕管公司は、1987年に設立され、3千500人を雇用している。パナソニックは、今年初めに全世界で1万5千人をリストラし、日本国内13工場、海外14工場を閉鎖すると発表した。今年2月には、北京の関連会社で提示された自主退職案をめぐり600人の労働者が経営陣のオフィスに詰めかけ、日本人3名を含む管理者を6時間も缶詰にするという事件も発生している。

●パキスタン
ラホールでの組合活動家への一斉捜索で34人を逮捕

 パキスタン北部のパンジャブ州で労働組合活動家への一斉捜索が行われている。以下は「ザ・ネーション」紙ウェブ版5月27日付の報道である。
 この1週間に、ラホール市をはじめ州全体で少なくとも34人の労働組合活動家やリーダーが逮捕されている。このほかに、警察は1千300人に対し、組合活動への参加を理由に起訴しようとしている。
 パキスタン労働党(LPP)とパキスタン全国労働組合連盟(NTUFP)によると、警察は深夜に組合リーダー宅を強制捜査し、34人以上の組合員を逮捕した。同党と同連盟は、「労働者の権利については、ムシャラフ独裁政権と現在の民主的なパンジャブ州政権の間に何の違いもない」と指摘し、「労働者自身が組織化しようとしただけで、工場所有者の要請で逮捕されるのは、シャバス・シャリフ(州首相)政権が恥ずべきこと」と非難。
 同党と同連盟によると、ファイサラバードを中心に衣料労働者を組織している「労働者国民運動」(LQM)の30人は、「殺人未遂」、「強盗」、「営利誘拐」のデッチ上げで逮捕され、2人のリーダーには、「ファイサラバードのカマル衣料工場で組合を組織した」という本当の罪状も付け加えられた。
 LPPのファルーク・タリク代表は記者会見で、ラホールでもカーペット産業統一労働組合の書記長でNTUFPのリーダーでもあるニアズ・カーン氏を含む4人の逮捕を明らかにした。カーン氏は以前から、インターウッド工場の労働争議への関与に対しCIAから警告を受けていた。警察は昨夜からインターウッド労組活動家の自宅を一斉捜索しており、その際女性への非礼な行動を行った。  LPPとNTUFPは27日に警察弾圧に抗議、インターウッドやカーペット工場の労働者への全国的デモでの連帯を呼びかけている。
 同じ記者会見で、NTUFPのユスフ・バロチ委員長は、「人々は今では資本主義が、飢え、貧困、屈辱的な扱い、抑圧、戦争、しかもたらさないことを理解しはじめており、この2カ月間に全国で農民の大衆運動や労働組合活動の高揚などの形で抵抗が拡大している」と述べた。
 労働者教育基金のハリッド・マフムド代表は、この間、諜報機関員による脅迫がNTUFPリーダーに繰り返されていることを表明した。同代表によると、5月23日にインターウッド社(家具製造)で組合活動を理由に解雇された労働者の一部が同社の近くに集まっていたとき、重装備の警官隊が突然労働者に襲いかかり、警棒で殴打した後、4人の労働者を逮捕した。警察は工場所有者の組合活動への抑圧を公然と支持している。

●イラン
メーデー・デモへの弾圧に抗議する国際キャンペーン

 イランではバヘッド・バス社(テヘラン)労働組合、ハフト・タベ社(イラン南部・クゼスタン州の国営製糖工場)労働組合、イラン自由労働組合等の独立系労組・労働団体がメーデー組織委員会を形成、メーデー当日、テヘランで集会を開催し、約2千人が集まった。
 警察は数日前から活動家の尾行や脅迫電話等の妨害を行い、当日も集会開始の数時間前から制服・私服警官が公園中心部に陣取った。バヘッド・バス社等の企業の警備員も、参加者チェックのために動員された。警察は一日中、参加者の写真やビデオを撮影していた。
 集会が始まって間もなく、「労働運動万歳」、「労働者の団結を」のスローガンが公園を包み込み始めたとき、警官隊が攻撃を開始。多くの参加者が警棒で殴られ、血を流しながら逮捕・連行された。参加者たちを解散させるために催涙弾が使われ、150人が逮捕された。
 5月9日現在で、まだ100人が拘留されている。イラン自由労組によると、ジャファル・アジム・ザデ委員長など多くの被逮捕者は拘置所で激しい暴力を受けている。
 メーデー組織委員会は弾圧に抗議し、全逮捕者の釈放を求める国際キャンペーンを呼びかけている。イラン国内の50の組合・団体がこの呼びかけに署名している。国際労働組合総連合(ITUC)、国際運輸労連、国際食品労連、教育インターナショナルは6月26日に全世界でイラン大使館への抗議行動の組織化を呼びかけている。

●パレスチナ
西岸地区でイスラエル兵による労働者・市民への攻撃続く

 パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)のシャヘール・サアド書記長は5月21日、イスラエル兵によるパレスチナ人労働者・市民への攻撃のエスカレーションを非難した。
 アフメド・モハンメドさん(35歳)とモハメド・ハッサンさん(29歳)は、同20日夜、仕事の帰りにタルクミアの町のチェックポイントを通りかかった時にイスラエル兵によって射撃され、重傷を負い入院した。同21日早朝には、村の洗濯屋で働くジャマル・カセムさん(17歳)が逮捕された。前夜から翌朝にかけて、26人のパレスチナ人が逮捕された。いずれも何の根拠もない不当な逮捕であり、人権を侵害する犯罪行為である。

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