●台湾
「『反貧困メーデー』に約1万人派遣労働反対を訴える」
全国産業総工会、団結工聯などの労働団体が共同で呼びかけた「メーデー・労働者反貧困大行進」に約1万人の労働者が参加し、「派遣労働の禁止、労働組合の自主堅持、台湾−中国自由貿易協定の民主的監視、雇用保険の損失の政府による補填」の4つの主要要求を掲げた。デモは自由広場から出発し、行政院へ進む予定だったが、監察院の前で警察が用意した柵によって阻止された。警官隊との衝突を避け、その場で抗議のパフォーマンスを行った。
組合弾圧に抵抗している洋華労働組合(訳注)を支援する青年たちは、防護服や高校の制服、血だらけのドクロのマスクなどで登場し、ハイテク産業における冷血無比な経営者に抗議した。労災被害者や実習生たちは、労働者の血にまみれたHTC社の携帯電話のボイコットを訴えた。
台北市産業総工会の組合員は、顔を赤く塗り「労働組合ゴー・ゴー・ゴー! 派遣労働ノー・ノー・ノー」と叫び、台北市政府による労組弾圧に抗議した。桃園県産業総工会は「子どもたちに派遣労働をさせたくない」という大きな横断幕を掲げて、派遣労働反対を訴えた。
大きな労働組合の色とりどりの旗が翻る中、今年の隊列には少なくないニューフェースも登場した。洋華労働組合以外にも、劣悪な労働環境の改善を政府に訴えている「ソーシャルワーカー労働組合準備会」、ハゲタカ中国ファンドによる買収に抵抗している南山生命保険労働組合とその青年支援グループ、メーデーの日も働かなければ食べていけない低賃金の先住民の労働者たちの代わりに参加した基督教長老会のメンバーなども参加した。楊秋興・高雄県知事(民進党中央常務委員)もデモに参加したが公式の発言はなかった。
「呉敦義(首相)はでてこい!」というデモ参加者の叫び声のなか、行政院政務委員(無任所大臣)の薛承泰が出てきて四大要求に対して回答した。機動隊員の護衛の下で街宣車に立った薛承泰は、あいさつの最初に「労働者の友人の皆さん」と語りかけたが、参加者は「友人なんかじゃないぞ」と答えた。その後、薛承泰は持っていた文書を読み上げたが、「われわれも労働者が労働組合に加入することを支援する」「呉敦義首相も、労働者と同じ立場で、労働者の権利の保障に全力を挙げる」と述べるにとどまった。
その後、各労働組合の代表が牛糞に似せた泥状の物を、総統府と行政院が描かれたパネルに向けて投げつけるパフォーマンスでこの日の行動を終えた。
メーデーに先立って4月15日に行った記者会見で、全産総委員長の施朝賢は、「ここ数年、政府の政策は労働者の力をそぎ落とし、賃金を低く押しとどめてきた。労組法草案は労働組合の自主権を阻害し、台湾の労働者を大量の外国籍労働者によって置き換え、派遣労働形態を放置し、雇用をさらに不安定化させる。中国との自由貿易協定が締結されれば労働者は深刻な影響を受ける」と指摘した。台北市産業総工会委員長の蒋萬金は、「政府部門において進められてきた民間への業務委託政策が、労働者の労働条件が悪化してきた元凶である」と強調した。
(訳注)洋華光電は携帯電話などのタッチパネルを製造する会社。09年12月に組合が結成されたが、その後5名の組合役員と10名の組合員が解雇された。携帯大手のHTCやサムスン、LGなどが主要顧客。
(「苦労網」特約記者・陳寧および徐沛然によるレポートの抜粋。翻訳 稲垣豊)
●香港
「工盟のメーデーに3500人」
香港職工会連盟(CTU)が呼びかけた「貧富の格差反対」メーデー大行進」に3千500人が参加した。
ヴィクトリア公園のサッカー場で開かれた集会で、CTUの新委員長の潘天賜が「最低賃金を33香港ドルにすること、労働時間の規制と団体交渉権を法的に保障すること」等を要求するメーデー宣言を読み上げた。
デモ隊は行政長官・曽蔭権と「最低賃金を時給20香港ドル以下に」と発言した飲食業界職能選挙区出身の張宇人議員の双頭怪獣の人形を先頭にデモ行進。デモ隊は午後4時半に政府庁舎前に到着、集会を続けた。移住労働者組織の代表は、「家事労働者の労働は過酷でありILOが提唱している家事労働者に関する国際条約を支持するよう香港政府に求める」と発言した。
CTU書記長の李卓人(立法会議員)は、貧富の格差の原因のひとつが、業界別選挙区選出議員が労働者の権利や待遇改善、公平な分配のための法案にことごとく反対してきたことにあると指摘し、5月には業界別選挙制度に反対する一連の活動を行うと述べた。
集会の最後に、行政長官と労働福祉局に宛てた請願書、33香港ドル以上の最低賃金を要求する街頭署名で集まった7千8人分の署名を関係部署に手渡した。
●ギリシャ
「EU・IMFの『緊急支援』と緊縮政策の導入に怒りのゼネスト」
ギリシャでは、財政破綻とEU・IMFによる「緊急支援」を口実に、パパンドレウ政権が選挙公約に反して公共支出の削減、公務員の賃金・ボーナスの凍結、消費税引き上げ等の財政再建策を決定。
これに対してギリシャ労働者総連合(GSEE)と公務員組合(ADEDY)は2月10日、2月24日に続いて5月5〜6日に3度目のゼネストとデモを行った。
ADEDYのスピロス・パパスピロス委員長は「政府は、月に500ユーロ(約5万6千円)の年金で生活する人たちから金を取り上げるよりも、ほかにできることがあるはずだ」と語っている。
同5〜6日、空・陸・海すべての交通が止まった。学校、病院や多くのオフィスが休業した。アテネをはじめ多くの都市で大規模なデモが行われ、約10万人が参加した。デモは全体的には平和的だったが、国会前でデモ隊の一部と警官隊の間で暴力的な衝突が起こった。また、何者かによる放火によって、銀行労働者3人が死亡した。
5月20日にもストライキが計画されている。
5月11日放送の「デモクラシーナウ」のインタビューで、英国のコメンテーターのタリク・アリ氏は次のように指摘している。「……これ(緊縮政策への怒り)はギリシャで、非常に激しい形で爆発した。予想されていた通りである。なぜなら、ギリシャでは労働組合が依然として力を保持しているからである。彼ら・彼女らは(この闘いに)多くのことがかかっていると感じている。このような政策が進められたらギリシャの平均的市民の生活水準はまっさかさまに下降してしまう。歳出削減は貧しい人々に深刻な影響を及ぼすが、金持ちにはほとんど影響を及ぼさない。ギリシャでも他の国でも人々は、なぜ自分たちが犠牲になり、危機を引き起こした銀行家たちは処罰されないのかと問うている」。
欧州労連(ETUC)のジョン・モンクス委員長は5月5日に、ギリシャ労働者のゼネストに連帯して次のように発言した。「ギリシャの危機に対するEUのこれまでの対応は消極的で、混乱していたが、今ではギリシャだけでなくヨーロッパ全体にとって、危険なものになっている。……前政権はゴールドマンサックスや他の人たちに唆されて財政状態を粉飾した。ギリシャの金持ちたちは税金を逃れて、外国の高級住宅地で住居を買っている。これは許されないことだ。ヨーロッパとギリシャの政府は、社会的パートナーとも協力して経済再建計画を確立する必要がある。それはデフレを招く歳出削減や需要を縮小させる賃金切り下げではない。……われわれに必要なのは誠実さである。問題の原因を誠実に説明し、低コストの融資を可能にし、よりよい未来へ進めるようにすることである」。
英国TUC(労働組合会議)のEU・国際関係局長のオーウェン・チューダー氏は、歳出削減は貧しい人々を直撃する一方で、国債の投機的売買で巨額の利益を上げている金融市場は野放しになっていると指摘し、労働組合は金融取引税(「ロビンフット税」)を要求すべきであると主張している。
ドイツ議会で社会民主党の一部は、メルケル首相のギリシャ救済計画に対し、金融取引税が含まれていないことを理由に棄権した。
欧州議会では欧州緑の党のコーンバンディー氏が、ギリシャ政府に歳出削減を要求しながら、兵器の売却を継続しようとするフランスおよびドイツの政府の偽善を激しく非難した。
ギリシャ政府は、歳出削減策を強行する一方で、危機の原因を作ったとされる米国の投資銀行に対する訴訟や、富裕層の脱税の摘発を進めようとしている。
ギリシャの危機はEU全体に拡大しており、闘いはこれからだ。
●米国
「アリゾナ州の新移民法に抗議、スポーツ選手も同州をボイコット」英国
4月23日、アリゾナ州のジャン・ブリュワー知事は「不法移民」の規制を目的とする新たな移民法(SB1070)に署名した。この法律によると、警察官は「不法移民」の疑いがあるとみなした者を拘留することができ、移住者が滞在許可証を携行しない場合は犯罪とみなされる。施行は8月からとされている。
この法律は全国でも例のない抑圧的な法律であり、特にラテンアメリカ系住民に対する嫌がらせと差別を煽るものである。
オバマ大統領は同日、この法律について「われわれがアメリカ人として抱いている公正さの基本的な概念と、われわれの安全を維持するために不可欠の警察官と市民社会の間の信頼関係を脅かす」と非難した。
トーマス・ジェファーソン法律学校教授のマージョリー・コーンさんは次のように指摘している。
「この法律は警察官が民族や人種を根拠にして『不法移民』の疑いがあるとみなし、尋問することを禁止していない。警察官がアイルランド人やドイツ人を居住証明書の確認のために拘束するとは思えない。この法律はアリゾナ州で通行する非白人を潜在的犯罪者とみなすものだ」(「Zネット」4月29日付)。
メキシコの外務省は、同州に在住するメキシコ市民の権利と、同州との関係についての懸念を表明した。ロサンゼルスのロジャー・M・マホニー枢機卿は、警察に在留許可証の提示を求める権限を付与することは「ナチズム」であると非難した。
メキシコに隣接するアリゾナ州には、米国に滞在する約1千80万人(推定)の許可証を持たない移住者のうち46万人が在留し、建設、農業、レストラン、保育等の労働に従事している。
移住者の権利を擁護するグループや労働組合はSB1070の撤回を求めて、アリゾナ州に対するボイコット運動を展開。大リーグのアリゾナ・ダイアモンドバックス(同州の「広告塔」となっており、球団オーナーは同州の共和党の後援者)の試合、グランドキャニオンの観光、ビジネス会議などがターゲットとなっている。
バスケットボールのスティーブ・ナッシュ選手(南アフリカ生まれで、カナダで育った)らが属しているフェニックス・サンズは、メキシコの祝日にあたる5月5日の試合に、ラテンアメリカ系のファン向けイベントで使うジャージを着用することによってSB1070に反対する意思を示した。会場の外でもSB1070反対のデモが行われ、試合の中継でもゲストの元選手たちがアリゾナ州を強く非難した。ナッシュ選手はESPN(スポーツ専門のチャンネル)のインタビューで次のように語っている。「NBAリーグは多文化的だ。選手は世界中から来ており、私のチームメートにも他のチームにも外国人がたくさんいる」(5月6日放送の「デモクラシーナウ」による)。
プロ野球大リーグの労組(選手会)はSB1070反対の声明を発表。大リーグの選手の27・7%がラテンアメリカ出身であり、多くの選手が自身や家族の問題としてこの問題への関心を表明している。ベネズエラ出身の有力選手は、2011年のオールスターが同州フェニックスで開催されるならボイコットすると表明している。
ロサンゼルス、ミルウォーキー、ボストン、サンフランシスコなどの市議会では、アリゾナ州に対するボイコット(同州との金融取引や同州の企業との取引の中止)を呼びかける決議が準備されている。