★エジプト:革命3周年取材弾圧にジャーナリスト組合が抗議声明
2011年のムバラク独裁体制打倒3周年にあたり、カイロで反政府デモ(1月25日)を取材中のジャーナリスト19人が逮捕された他、警察官の発砲により日刊紙「アルワフド」とオンライン新聞「アルバディル」の写真担当記者が負傷。
エジプト・ジャーナリスト組合は抗議声明を発表、「治安部隊は、かつてないやり方でジャーナリストへの弾圧を続けている。それは彼らの声を沈黙させ、抗議運動についての情報を知り、その現場へ赴(おもむ)く権利を妨げようとする絶望的な試みだ」と非難した。
同組合は内務相と警察責任者に弾圧の責任者への法的措置を講じることと、政治グループ(政府系とムスリム同胞団系の両方)によるジャーナリストへの攻撃の中止を要求している。
同組合は「(エジプトを)打倒されたムバラク政権や、罷免されたモルシ政権の時代に逆戻りさせようとする強権的なやり方」を今後も暴露していくという決意を明らかにしている。
(「アフラム・オンライン」、1月28日付)
検察庁は1月29日、「アルジャジーラ」の4人の外国人ジャーナリストと、16人のエジプト人ジャーナリストを刑事裁判所に起訴したと発表。エジプト人ジャーナリストの容疑は「テロリスト組織のメンバーである」、「国民の統一と社会的平穏を阻害している」等である。
4人の外国人はオーストラリア人、オランダ人と英国人2人で、昨年12月に「エジプト人と共謀して、国際社会に対してエジプトは内戦に突入しつつあると信じさせるために、嘘の情報や噂を放送した」という容疑で逮捕されていた。
(同、1月29日付)
●最低賃金をめぐる闘い
11年の革命の後、モルシ政権とその後の軍政の下で、労働者の要求は実現されてこなかった。現在、最低賃金をめぐる問題が大きな焦点となっている。労働組合は1200エジプトポンド(EGP、1EGPは約15円)を要求している。
エジプト独立労働組合(EFITU)のリーダーのマレク・バヨウミ氏は、「私は政府に対し労働者の要求に応じるべきと警告している。政府にはまだその計画がないが、労働者のことを気にかけなかったら、第三の革命が起こるだろう。工場で、政府内で、そしてあらゆるところでだ」と述べている。
(「イコール・タイムズ」1月23日付)
EFITUの前委員長アブ・エイタ氏は、昨年のモルシ政権罷免後、軍主導の政権の労働相に任命されている。独立労組出身の労働相の下で、結社の自由など労働者の要求実現が期待されたが、未だ実現していない。EFITUの幹部たちは、それは議会選挙(日程は未定)が終わってからだと考えている。
アブ・エイタ労働相は、公共部門の労働者に対しては1月末から1200EGPの最低賃金を導入すると約束した。しかし、まだ多くの不確定要素が残っている。また、民間部門については、経営団体からの強い抵抗が予想される。
一方、労働者間で苛立ちが募っている。カイロ公共交通局でのストのリーダーのアリ・ファトウ氏は「われわれは1月末まで待つ。もし最低賃金がすべての労働者に適用されなければ、いたるところでストが起こるだろう」と述べている。
(同)
しかし、労働省広報担当者は、「エジプトの労働者は経済危機がどれほど深刻かを知っており、今抗議運動をすることが反愛国的だと知っている」と述べている。アブ・エイタ労働相は1月14〜15日に実施された憲法の国民投票に向けた呼びかけの中で労働者に対して「自分たちの利益よりも国民の義務を守る」ことを求めた。
エジプト労働組合連盟(ETUF)はシシ国防相を中心とする政府と連携しており、内部における反対派を「テロリスト」として非難している。
●医療制度改革要求し医師組合がスト
医師組合は医療制度改革を要求して1月1日から8日間、全国で部分的ストライキに入った。
医師組合は、医療専門職に関する新しい法律で報奨金制度が導入されようとしていることに反対し、一律賃上げを要求している。
薬剤師組合も同様の要求を掲げてストライキに入った。
医師組合は医師の最低賃金引き上げを要求して、11年5月、12年10月にもストライキに入っている。昨年12月には、30年にわたって組合を支配してきたムスリム同胞団に代わって、独立的なグループの連合からなる新しい執行部を選出している。
(「アフラム・オンライン」1月1日付)
ムスリム同胞団の労働組合への影響力は後退しており、1月にはエンジニア組合(約1万6千人)でも、ムスリム同胞団に代わる新執行部が選出されている。
★チュニジア:UGTTが憲法制定に重要な役割
1月26日、チュニジア制憲議会は結社の自由、団結権、スト権、ジェンダーの平等などを明記した。新憲法を承認した。
ITUC(国際労働組合総連合)は、新憲法制定を称える声明の中で、次のように述べている。
「……UGTT(チュニジア労働総同盟)は、市民社会や他の民主的勢力と連携して、制憲プロセスの行き詰まりを打開し、成功を保証するために精力的な努力を払ってきた。チュニジアは半世紀にわたる独裁体制を終わらせ、アラブ革命の揺りかごになった後、民主主義への道に決定的な一歩を踏み出すことによって、ふたたびこの地域におけるモデルとなった」。
特に、2013年前半におけるアンナハダ党(政権党、イスラム系政党)と非イスラム派の緊張と対立の拡大の中で、UGTTは民主主義的憲法の制定と選挙の実施に向けてイニシアチブを発揮した。
以下はオックスフォード大学教員(アラビア語・文学)のモハメド・サラ・オムリ氏のレポート「UGTT-チュニジアの政治的仲介者」(「チュニジア・ライブ」紙のウェブ、1月22日付)の抜粋である。
……革命前も革命後も政府とは対立的関係にあったにもかかわらず、UGTTは紛争を平和的に解決する資格を持っているだけでなく、自身の立場を擁護する観点から調停案を提起できるこの国の唯一の組織だろう。
2011年1月以降、革命の最初の段階においてUGTTは中心的調停者であり、政治的仲介者であった。同時にUGTTは、35万人以上の非正規雇用労働者の正規雇用化や、教員をはじめ多くの部門の労働者の賃上げなど、歴史的成果を実現してきた。
チュニジアが革命的な調和の段階から政治的・イデオロギー的な分岐と対立へ移行する中で、UGTTは政治への関与を継続しながら、特定党派による支配を避けるという課題に直面。しかし、政治活動を抑圧されていた左派が労働組合活動に集中するという歴史的要因によってUGTTは政治的に左寄りの立場を維持してきたし、イスラム教政治勢力が台頭している時期には、さまざまな左派がUGTTとの連携を強めてきた。そのためUGTTはイスラム教政治勢力の支配を逃れることができた。
現在の力のバランスと、深刻な政治危機の理性的な管理がUGTTとそのパートナーであるチュニジア人権協会、法律家協会、UNICA(チュニジア商工連合)によって維持されているのは注目すべきことだが、不思議なことではない。今日、すべての政党がUGTTを通じて、UGTTの提案を基礎として発言している。
UGTTの提案は、現政府の解散、非政治的な政府の任命、制憲議会の作業の短縮、UGTTへの暴力的襲撃を繰り返してきた「革命防衛同盟」の解散などである。
★中国:日立金属が組合結成要求の労働者を解雇
広州の日立金属の工場で、労働組合の設立を要求してきた労働者活動家が、会社側が組合員募集を開始した10日後に解雇された。
シュ・シャオメイさんは昨年、社会保険料支払いを要求して工場労働者を組織したが、その数ヵ月後の8月、管理職から記録保管室助手へと配置転換され、彼女の机の真上に監視カメラが設置された。
彼女は再三、社内規則違反の警告を受けた。今年1月3日にも警告を受け、同14日に最終警告を受け、雇用契約を打ち切られた。
シュさんは「私が組合委員長になることを会社は恐れている。そうなれば労働組合法によって私は守られるので、その前に追い出したのだ」と語っている。
労働組合法第51条は、組合役員の組合活動への報復措置を禁止している。
心強いことに、地区及び市の総工会はシュさんを支持しており、彼女に無料法律相談を提供、交渉に応じるよう会社側に働きかけている。弁護士は会社側に「シュさん勝訴の可能性が高い。日立は工場を動かせても、裁判所を動かすことはできない」と警告した。
他の活動家たちも、会社側による偽組合設立阻止のために行動を起こしており、民主主義的な組合選挙の即時実施を要求している。
日立金属の広州工場は1997年の設立以来、労働組合が存在しなかったが、昨年4月に1人の労働者が労災で脊髄に大きな障がいを負ったことをきっかけに1500人の労働者の怒りが爆発した。
労働者たちは被害を受けた労働者への会社側の扱いに抗議する署名を集め、シュさんは地域の労働者支援グループに支持と助言を要請した。
「向陽花(ひまわり)女性労働者センター」のスタッフは、日立が労働組合を設立していないことや社会保険料を支払っていないのは労働者の権利の侵害だと指摘した。
日本の親会社への手紙を含むさまざまな活動の結果、会社側は1月3日に労働組合設立のために、組合員の募集を開始し、その10日後にシュさんを解雇した。
(「チャイナ・レイバー・ブレティン」1月24日付)