アジア@世界              喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
986号

★香港:キャセイ・ドラゴン航空が組合委員長を解雇

 「反送中」(容疑者送還条例改正反対)運動の中で、キャセイ・パシフィック、キャセイ・ドラゴンの労働者たちもストライキに参加した。

 8月21日にキャセイ・ドラゴン航空は突然、同航空の乗務員組合の施安梛委員長(香港航空乗務員総工会副委員長)を解雇した。
 施さんは同23日、職工会連盟(工盟)と共に記者会見を行った。

 以下は「香港01新聞」および「香港経済日報」のウェブ同日付からの抜粋である。(翻訳は稲垣豊さん)

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 「反送中」デモの中で、航空業界の労働者も7月末の空港第1ターミナルビルでの「いっしょに飛ぼう」集会で、政府が五つの要求に答えるよう求めた。
 その後、ウェブで8月5日のストライキ集会が呼びかけられ、香港航空乗務員総工会に加盟する7つの組合がストライキ支持を表明した。


 この間、キャセイではCEOのルパート・ホッグ氏と営業最高責任者のポール・ルー氏を含む複数の幹部が辞職している。

 「いっしょに飛ぼう」集会の当日、東京から香港へ向かうフライトで乗客にむけて英語で事態の概要を紹介したあと、広東語で「香港人はがんばろう 何事にも気を付けて」と語った機長がその後に辞職している。

 さらに、これまでに2人のパイロットが解雇され、他の2人のパイロットが辞職している。

 

 施さんは17年間キャセイ・ドラゴン航空で働いてきたが、8月19日から21日にかけての北京・杭州へのフライトの途中で、杭州へのフライトの前に突然仕事を中止するよう告げられ、21日に会社に呼び戻された。そこでフェイスブックへの投稿のアカウントが確認されたのちに解雇された。解雇の理由は明らかにされなかった。

 

 施さんによると、中国民航局は8月9日に香港キャセイ航空に対して「航空安全リスクについての重大な警告」を送った。そこには「キャセイの乗務員が『暴力的衝突』に関与しており、暴動罪で起訴されているにもかかわらず乗務を続けていることから、航空安全に深刻な脅威となっている」と書かれていた。

 このような指示は前代未聞であり、多くの職員は中国が航空権限を用いて会社に圧力をかけていることに脅威を感じている。

 

 彼女によると、フェイスブックへの投稿の内容は「反送中」運動とは関係なく、誕生日を同僚と祝う内容が書かれたポストイットを壁に貼り付けたものだったが、悪意ある人間がそれを「航空関係者のレノン・ウォール」などと偽造したという・・・。
(訳注:香港では運動支持者がカラフルなポストイットにメッセージを書いて街頭の壁に貼るスタイルが定着しており、レノン・ウォールと呼ばれている)

 

  「17年もキャセイ・ドラゴンのために働いてきたにもかかわらず、会社はーヵ月の解雇予告手当を払ってすぐに解雇したのです」。

 施さんは、会社が中国民航局から圧力を受けていたことは知っていたが、会社を守る香港人として、そしてすべての同僚と同じように民航局の規定を順守するようずっと努力してきたが、これ以上何をすれば屈服しなくてもいいのか、理解に苦しむという。

 また彼女は、直前に経営陣が辞任したことに触れ、これは職員の士気に大きな影響を与えた、経営陣は会社を守りたい一心で、搭乗クルーの名簿を中国当局に提供しなかっただけなのにと擁護した。

 

 

★米国:通信労組がストライキ

 米国南東部の9州で全米通信労組(CWA)に結集するAT&Tの労働者約2万人が、同社による不当労働行為に抗議して8月24日午前0時からストライキに入った。

 ストが行われたのはアラバマ、フロリダ、ジョージア、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピー、ノースカロライナ、サウスカロライナ、テネシーで、いずれも2019年大統領選挙で共和党が勝利した保守的な州である。

 

 労働協約が8月に期限切れとなり、新たな協約をめぐってCWAは医療費手当、雇用の安定等を要求してきた。
 CWAの第3地区のリチャード・ハニカット副委員長によると、「組合は組合員の懸念を取り上げ、解決策を見つけるために誠実に協力することをめざしていたが、交渉の過程でAT&T側は決定権限を持つ担当者を派遣していないことが明らかになった。そのため交渉は行き詰まっている」。

 CWAはNLRB(全米労働関係委員会)に提訴した。

 

 第3120支部(フロリダ州マイアミ)では協約交渉中に組合員がUV保護用のアームスリーブに組合のバッジを着用していたが、管理者がそれを理由に7人に職務停止を命じた。

 組合は緊急集会を開き、組合員たちは管理者のさまざまな嫌がらせについての不満を訴えた。

 いつもは40人ほどしか集まらない組合の集会だが、今回は300人が集まり、満場一致でストライキが決定された。
 ストライキは約5日間続き、同28日に暫定合意が成立したため終結した。

 

(8月24日ABCニュース、「ザ・ネーション」誌9月2日付より)

 

★ヨーロッパ:EUは難民救援活動の犯罪化をやめよ
   労働組合・人権NGOが共同声明

 ヨーロッパでNGOや人権団体による難民・移民の救援活動に対する刑事罰の適用が相次いでいる。
 6月30日にはシーウォッチ(地中海で難民・移民の捜索・救助活動を行っているNGO)の救助船「シーウォッチ3」の船長、カロラ・ラケッテさんが上陸地のイタリアで「改正国家安全保障法」(サルビー二法)の適用によって逮捕された。

 

 ラケッテさんの船はリビアからの40人の移住者を乗せていた。欧州人権裁判所はシーウォッチの上陸許可申請を却下した。

 船上では生命の危険が切迫していたため、船はイタリアの海岸警備隊の制止を突破して同国のランペドゥーザ島に到達した。

 

 7月3日にイタリアの裁判所が、ラケッテさんの行為は人道的な立場からのもので、イタリアの国境警備の権利を意図的に侵害するものではなかったとしてラケッテさんの釈放を決定した。
 ETUC(欧州労働組合連合)やヨーロッパ各国の人権団体、難民・移民救援グループ、NGOなど109団体が7月23日に「EUは移民・難民との連帯の犯罪化をやめるべきだ」という共同声明を発表した。

 以下はこの共同声明の抄訳である。

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 ヨーロッパで移民・難民との連帯の犯罪化が急増している。

 ReSOWA(「移民と亡命に関する調査・社会的プラットフォーム)の最新の調査によると、現在11の加盟国で49件の事件について合計158人が捜査・訴追を受けている。人道的活動で有罪とされた人の数は15年の10人から18年には104人へと10倍に増えた。

 

 対象となっているのはボランティア、活動家、NGO、救助船の乗組員、移民の家族、ジャーナリストのほか、市長や司祭も含まれる。

 最近における「シーウォッチ3」の船長、カロラ・ラケッテさんの逮捕は、移住者の生命を救い、EU加盟国が国際法やEU法で義務を負っているにもかかわらず提供していない人道支援を提供したことで人々が非難されている現実を示す最新の例である。

 

 多くの問題は国境管理の円滑化に関するEU指令において犯罪の定義が曖昧で、人身売買に関連する密入国と人道上の活動を区別していないことに関連している。

 

 EUの諸機関と加盟国は困窮している人々を支援する人々や組織を犯罪扱いすることをやめなければならない。
 そのためにわれわれは以下のことを要求する。

 

 EUに対する要求


●EU指令を改定し、人身売買に関連する密入国について国連の「国際組織犯罪防止条約人身取引議定書」に準拠して明確に定義し、人道上の活動を明確に除外すること。

 

●連帯活動への捜査・訴追に関する独立したモニタリングを導入すること。

 

●公海上の人道的救援のためのEU捜索・救援隊を設立すること。

 

 EU加盟国に対する要求

 

●人道的な捜索・救援活動への妨害をやめること。

 

●社会サービスや医療サービスの提供者、警察、労働監査官が出入国管理当局との情報共有を求められないよう保証すること。

 

 EUと加盟国に対する要求

 

●移民への人道支援と連帯を促進する環境を整えること。市民社会のスペースに対する制限を撤廃し、人権活動家への人権侵害や活動の妨害を防止すること。

 

●入国許可証を持たない移民への人道支援を含む市民社会の活動のためにEUの基金を活用できるようにすること。

 

●安全かつ恒常的な経路の確立を含む適切なEU移民政策を実施すること。

 

 

 

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