アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
872号

スペイン:教組内反対派が教育改革法反対ストで広場占拠

 メキシコ教員組合(SNTE)内の左派活動家グループCNTE(全国調整委員会)は、エンリケ・ペニャ・ニエト大統領が導入しようとしている教育改革法に反対し、8月下旬以降全国でスト、デモ、道路封鎖などの闘いを拡大している。
 法案は9月1日に下院、同4日に上院で採択されたが、その後も闘争は拡大、首都ではソカロ広場に数千人がテントを立てて泊まり込んだ。
 ソカロ広場は独立記念日(9月16日)の式典会場になっており、政府・警察がテント排除のために警官を大量動員し、放水車を配置したため、緊張が高まった。同13日にCNTEがソカロ広場からの退去を決定したため、暴力的排除は回避された。
 以下は、米国「レイバーノーツ」誌掲載のダン・ラ・ボッツ氏のレポート(9月10日付)の抜粋である。

 

 メキシコの独立的・民主的教員運動は40年にわたって大衆的なデモや数万人規模の座り込みを組織してきた歴史がある。しかし、現在全国各地で―南はオアハカから、北はチワワまで―展開されているような戦闘的で、広範な闘いはこれまでなかった。
 教員たちは公共のビルやメキシコシティーの国際空港、高速道路の料金所を占拠。06年にも戦闘的なストを展開したオアハカ教員組合を中心に、約3万人が数日間にわたってソカロ広場を占拠した。


 抗議運動のきっかけは、議会での教員評価制度の導入などを目的とした教育改革法の採択だった。さらに、各州における賃金や労働条件も関係している。
 しかし、CNTEは教員の労働問題だけではなく、国営石油会社PEMEXの民間投資への開放や金持ち優遇の新しい税法にも反対している。CNTEは、ペニャ・ニエト政権の政策全体に反対する無定形な全国的な運動の先頭に立っている。


 CNTEは9月11日に「全国市民スト」(ゼネスト)を呼びかけ、約60の労働組合、農民団体、地域団体が支持を表明している。大多数の労働組合は、政権党のPRI(制度的革命党)の支配下にあり、反政府のゼネストには参加しない。
 メキシコ教員組合は教育改革法を支持しており、同9日の全国評議会では、CNTEのゼネストの呼びかけに対し「内乱予防戦略」が必要だと宣言している。
 ペニャ・ニエト大統領とPRIは教員との対決姿勢を鮮明にしている。ペニャ・ニエト大統領は交渉には応じるが妥協はしない、教育改革法は施行すると言明。エミリオ・チュアイフェット教育相は、SNTEとだけ交渉し、CNTEとは交渉しないと述べている。

 

米国:ファストフード・チェーン労働者のスト、58都市千店に影響

 8月29日、ファストフード・チェーンの労働者数千人が一斉にストに入った。中心的な要求は時給15ドルと労働組合の権利である。
 今回のストは58の都市に拡大し、約千の店舗が影響を受けた。


 いくつかのレストランは休業した。従業員数人がストに参加した店では、管理者たちが必死で交替要員をかき集めていた。
 シアトルのジミー・ジョン(サンドイッチ店)は管理者だけで営業し、配達を中止。ヒューストンのバーガー・キングは、昼食時を含むシフトの労働者の多くがストに入ったため、昼食時は閉店した。
 メンフィスのマクドナルドでのピケット行動には約50人の労働者と支援者が参加した。ストに参加したアンソニー・キャセイさんは「マクドナルドは年間に50億ドルも稼いでいるのに、労働者を奴隷のように扱っている。この賃金では生活できない」と訴えた。ラトヤ・ジョーンズさんは「ここで働いて1年近くになる。7.25ドルは生活できる賃金ではない。私はシングルマザーで、3人の子どもがいる。その日暮らしだ」と語っている。


 ニューヨークでは、ミッドタウンのマクドナルドでのピケット行動に政治家や聖職者を含めて約300人が参加した。ブロンクスの労働者のビアンカ・ラミレスさんは、「もし経営者が自分の店で働かなければならなかったら、きっと15ドルの賃金と労働組合がほしいと思うだろう」と語った。参加者たちはこの店を一時的に占拠した後、デモで次の店へ向かった。昼休みには、市内各地での行動を終えた人々がユニオン・スクエアに集まり、政治家や組合リーダーたちが発言した。
 ロサンゼルスでは労働組合活動家や支援者約300人がマクドナルドでのピケット行動のあと、サブウェイを一時的に占拠した。
 シアトルではジミー・ジョン、サブウェイなど30の店舗でストが行われた。


 サービス従業員組合(SEIU)は昨年7月にニューヨークでのファストフード・チェーンのストを支援するために40人のオルグを派遣し、その後もこの闘争を積極的に支援している。
SEIUのオルグ活動の成果として、メンフィスでも初めて行動が行われた。マーチン・ルーサー・キング牧師が1968年に清掃労働者の闘争を支援したメンフィスで、1963年のワシントン行進の50周年の翌日に行われたこの行動は、アメリカ労働運動の歴史が継承されつつあることを象徴している。メンフィスではスト参加者たちは、ピケット行動の後、公民権運動記念館まで行進した。

(「レイバーノーツ」同30日付より)

 

米国:港湾労組がAFL・CIOを脱退

 以下は「レイバーノーツ」誌8月31日付のマーク・ブレンナー氏のレポートの抄訳である。


 米国西海岸の港湾労働者を代表しているILWU(国際港湾倉庫労働組合、6万人)は8月30日、AFL・CIOからの脱退を発表した。
 戦闘的伝統と進歩的な政治的立場で知られるILWUは近年、他組合との競合に直面してきた。とくに、北西部太平洋岸地区の穀物輸出ターミナルで、2011年以来の基本協約をめぐる重要な闘いの中でこの問題が深刻化している。
 ILWUのロバート・マケラス委員長は、8月31日付のリチャード・トゥルムカAFL・CIO委員長に宛てた書簡の中で、これらの管轄権をめぐる争いを脱退の理由のひとつに挙げている。


 マケラス委員長はワシントン州バンクーバーを基盤とする第4支部出身だが、競合組合の組合員がILWUのピケットを無視して就労する事態が発生している。
 マケラス委員長はまた、国民皆保険制や移民法をめぐるAFL・CIOの妥協的立場を批判している。
 ILWUはマッカーシー時代にCIOから追放され(共産主義者とみなされた)、1988年にAFL・CIOに加盟するまで独立労組だった。
 ILWUの決定の最大の理由は、現在、ピュージェット湾−−コロンビア川地区で穀物の荷役に従事している3千人の港湾労働者の労働協約をめぐる闘いに関係している。
 この地区の港湾労働者は、米国の穀物輸出の約30%、小麦の輸出の約半分を扱っている。


 昨年12月にILWUと北西部太平洋岸地区穀物荷役業者連盟の間の交渉が決裂した後、同連盟加盟の4業者のうち、ユナイテッド・グレーン(UG)とコロンビア・グレーン(CG)が最終回答を提示した。この回答はストの挑発を意図したものである。一方、ILWUはTEMCO社(大手アグリビジネス企業、CHSとカーギルの合弁企業)との間で個別協定を締結した。
 今年2月にUGはILWU第4支部(ワシントン州バンクーバー)の組合員をロックアウトした。5月にはCGがILWU第8支部(オレゴン州ポートランド)の組合員をロックアウト。ILWUの組合員がピケット闘争を展開している中で、電気労組(IBEW)や他組合の組合員がピケットを無視して就労している。IBEWはさらに、AFL・CIOの中で、この地域の港湾における保守および修理の業種について、ILWUの管轄権に異議を申し立てる手続きを開始した。


 ILWUは2011年に、EGT(穀物ターミナルを管理する大手企業)の最新ターミナルでの雇用および雇用条件をめぐって、ターミナルの占拠などの直接行動を含む激しい闘いを展開。その結果締結された協定は、従来の基本協約から後退した内容が含まれていた(労働時間、人員の基準など)。 TEMCOとの個別協定にもその内容が反映されている。しかし、雇用者たちはさらに大幅譲歩を迫っている(12時間シフトの導入、先任者優先制度の無視など)。
 このような厳しい状況の中で、ILWUの組合員たちにとって、他組合との競合は一層の困難をもたらしている。ILWU第4支部のケージャー・クラボウ委員長によると、ILWUは分裂を回避するためにAFL・CIOの機関を通じていくつかの提案を行ってきたが、7月に開催されたワシントン州のAFL・CIO大会では、開催地のごく近くでILWUの組合員たちがピケット闘争を続けていたにもかかわらず、ILWUの提案も支援要請も無視された。

 「これらの大きな組合が、支援や連帯の方法を考えるのではなく、政治を弄ぶのを見るのは悲しいことだった。せめて、組合員たちになぜピケットを超えてはいけないかを説明することに、同じぐらいの関心を向けてくれていれば……」と彼は言う。


 AFL・CIOからの脱退は、連帯を渇望している現場組合員を満足させ、また、ILWUが官僚的な上品さよりも組合の原則を優先させるチャンスを提供している。しかし、それだけでは、経営者からのカサにかかった攻撃に反撃し、オートメーション化による組合の無力化を阻止し、譲歩の拡大に歯止めをかけることはできない。
 この衝撃が再び活動家を活性化させ、組合のスローガンである「一人への攻撃は全員への攻撃」を行動に移すことを期待しよう。

 

 

 

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