インドネシア:300万人がゼネストに参加
10月31日と11月1日、全国で300万人の労働者がストライキに参加した。
10月31日付AFPは次のように伝えている。
「インドネシア全国の労働者が木曜日(10月31日)、賃上げを要求して2日間のストライキに入る。これは東南アジア最大の経済国での最も新しい労働争議であり、人々は高成長の利益の分配を要求している。高インフレによって生活費が高騰していることから、この数ヵ月の間に最低賃金引き上げの要求が高まってきた」。
KSPI(インドネシア労働組合連盟)のサイド・イクバル委員長によると、「生活費が高騰し、家賃を払えない多くの労働者が、家を出て、橋の下や下水管の中で生活することを余儀なくされている」。
労働者にとっては特に、6月に実施された石油価格の値上げ(ガソリンが44%、ディーゼルが22%)が大きな負担となっている。
イクバル委員長は、「(われわれは)インフレに対応するためのまともな賃上げを要求しているだけだ。われわれ労働者は経済に大きな貢献をしてきたのに、なぜ踏みつけられるのか」と付け加えた。
ストライキは34州のうち20州で行われ、衣料産業から鉱山までさまざまな産業の労働者が参加した。
首都ジャカルタでは30万人がストライキに入り、ベカシ工業地区で40万人がデモに参加した。
ジャカルタでは今年から最低賃金が200万ルピアになった(1円=約115ルピア)が、KSPIは370万ルピアへの引き上げを要求している。
11月1日付の「ジャカルタ・ポスト」によると、リアウ諸島州のバタムでは千の外国企業が休業となった。経営者たちは工場の警備に地元の青年団を動員した。工業地区の入口前では、FSPMI(インドネシア金属労働組合連盟)が集会を開き、青年団のメンバーたちと対峙した。工場の経営者は従業員が組合の行動に参加しないように、休暇を与えた。空港や港湾には、組合による封鎖に備えて治安要員が配置された。経営団体の推定によると、バタムにおけるストライキによる損害は1日あたり2千万米の規模である。
南スワラジのマカサールでは約千人の労働者と大学生が集まって、225万ルピアへの賃上げを要求した。
ストライキに参加したアスリアニさんは、「毎日の食費だけで精一杯、ほかの支出のために毎月借金しなければならない。家族を持つ労働者はもっと大変だ」と語る。労働者たちによると、南スワラジの企業はこの数年間利益を増やしているが、労働者の賃金は変わっていない。
メダンでは、インドネシア労働組合(セルブンド)が、油脂用パームのプランテーションの経営団体に対して、プランテーションにおける労働組合の承認を要求した。
*要求とかけ離れた低額回答に、再びストライキの準備へ
11月1日、労働力省は12の州が2014年の最低賃金の引き上げを決定したと発表した(「ジャカルタポスト」、同日付)。
ジャカルタでは、州当局は最低賃金を11%増の244万ルピーとすると発表した。これに対してKSPIのイクバル委員長は、「労働者はこの決定に対して州行政裁判所に異議を申し立て、われわれの要求が満たされるまで市役所前での抗議行動を継続する」と宣言した。
米国:地方選挙・住民投票で労組・市民の草の根闘争前進
*ニューヨーク市長選挙
11月5日に行われたニューヨーク市長選挙で、民主党推薦のビル・デ・ブラシオ候補が73%の得票を獲得して圧勝した。
ブラシオ候補は、富裕層への増税と警察官による威圧的な尋問の廃止を訴え、左派の「ワーキングファミリー党」(WFP)や労働組合、市民団体の強力な支持を得て、20年にわたる共和党市政への不満と怒りを結集した。
ニューヨーク市はこの20年間、共和党のジュリアーニ(94〜01年)およびブルームバーグ(02〜13年)市長の下で富裕層優遇と治安の強化を特徴とする政策を進めてきた。その結果、貧富の格差が拡大し、昨年には下位20%の世帯の平均所得が約9千、上位5%の平均所得が約44万となっている。
ブルームバーグはロンドンや香港との都市間競争を掲げて、ミッドタウン・イースト地区の再開発計画を進めてきた。これは不動産業者の利権のために住民を犠牲にする政策で、コミュニティー団体が強く反対している。
また、主にアフリカ系住民やアラブ系、ラテンアメリカ系住民に対する「ストップ・アンド・フリスク」(無差別に呼び止めて所持品検査をする)に対する不満と批判が高まってきた。08年から12年の間にニューヨーク警察は延べ290万人の市民に対して所持品検査を行った(このうち85%は有色人種)。
11年に始まったウォール街占拠運動は、このような状況への抵抗の始まりだった。ブラシオ氏はズコッティー広場の占拠にも参加し、警察官による排除に反対した。また、公立病院の閉鎖に抗議する闘いでは逮捕されたこともある。
ブラシオ氏は富裕層増税の目的として、すべての幼児に対する就学前教育(3〜5歳児を対象)の保障を掲げ、富裕層に対しても「あなた方の成功をねたんで、あなた方の財産を取り上げようというのではない。すべての子どもたちに、あなた方と同じように成功する機会を保障するために協力してほしいと言っているのだ」と語りかけた。
ニューヨーク州のクオモ知事(民主党)はブラシオ氏の「富裕層増税」という政策に反対している。公約実現のためには議会の支持と議会外の強力な運動が必要とされるが、同市の市議会選挙でも、労働組合や市民団体が支持する候補が多数当選した。
ブラシオ氏を支持して草の根の選挙運動を展開したWFPのダン・カンター代表は「デモクラシーナウ」のインタビュー(11月8日放映)で、「われわれはオキュパイ運動が作った世界の中で生きているのだ」と語っている。
WFPは通信労組やSEIU(サービス従業員組合)などの労働組合を中心とする連合組織で、各種の地方選挙で最低賃金の引き上げ、富裕層増税などを訴える候補を当選させることを目指しており、ニューヨークの他5つの州に活動を広げている。
*ティーパーティー系右翼の後退
同日に行われた他の首長選挙でも、労働者・市民に支持された候補が健闘し、ティーパーティー系の候補が惨敗した。
バージニア州知事選挙では、スコット・ウォーカー(ウィスコンシン州知事)とティーパーティーの応援を受けた共和党右派のケン・クチネリ候補が落選した。一方、ニュージャージー州では共和党のクリス・クリスティー候補が当選した。彼は共和党の穏健派と言われており、次期大統領選挙での共和党の有力候補である。彼はスコット・ウォーカーの応援の申し出を断り、共和党右派と一線を画した。
ボストン市長選挙では、建築労働者組合のリーダーのマーティン・ウォルシュ候補が当選した。共和党はウォルシュ氏が2011年のウィスコンシンの闘いに連帯を表明している映像を使って同氏を攻撃しようとしたが、逆に同氏への支持を高めてしまった。
*住民投票で最賃引上げが可決
地方選挙と同時に実施された各種の住民投票でも、いくつかの画期的な勝利が報告されている。
ニュージャージー州では、最低賃金を8・25に引き上げ、毎年生活費に合わせて自動的に引き上げるという憲法修正条項が可決された。
ワシントン州シータック市では、シアトル空港と空港関連施設(ホテル、駐車場、自動車レンタル)の労働者の最低賃金を15jに引き上げる提案が支持された。対象となる労働者は約6千人である。他の州でも議会に対して最低賃金の引き上げや生活賃金(リビングウェイジ)制度の導入を求める運動が広がっている。
イリノイ州では同性婚を合法化する提案が支持された。同州は同性婚を合法化する15番目の州となる。シアトル市ではゲイであることを公表しているエド・ムレイ州上院議員が市長に選出された。
しかし、ワシントン州では、遺伝子組み換え食品のラベル表示を義務づけるという提案が45%対55%で否決された。ラベル表示に反対するキャンペーンは、州外の農業団体やモンサント等の企業から2200万の資金を得ていた。
コロラド州では教育予算の拡充のための増税の提案が(公教育の充実を訴える教員組合と、学校の民営化を推進する企業グループが呉越同舟で「共闘」したにもかかわらず)34%対66%で否決された。
「ハフィントンポスト」紙11月9日付は次のように論評している。
「……いくつかの後退もあったが、進歩派にとっては歓迎するべきことがもっとたくさんある。大企業とティーパーティーと宗教右翼の神聖ならざる同盟に背を向けるように流れが変わった。ノースカロライナ州の『モラル・マンデー』運動、移住者の権利を求める戦闘的な運動、女性のクリニックを州の財政削減から守るための闘争、低賃金の労働者のストライキ、投票の権利の抑圧に対する市民的不服従の行動、そしてグローバルなエネルギー企業に対する学生を中心とする運動これらすべての抵抗運動の拡大が、地面の下で蓄積してきた進歩的運動の発芽を反映しており、それが選挙にも影響をもたらしはじめた」。
(「ザ・ネーション」誌、「ハフィントンポスト」紙、「デモクラシーナウ」等より)