★イラク:
電力労働者のストで15万人の正規雇用化を勝ち取る
インダストリオール傘下のイラク電力部門労働者総連合(GTUESE)は非正規雇用制度に反対して臨時労働者の権利を要求して2月から政府との交渉を開始し、デモや発電所での座り込みを継続してきた。
イラク政府はこの数年間、非正規雇用を増やし、電力セクターでは現在、非正規雇用労働者が3万人以上となっている。この労働者たちは正規労働者と同じ仕事をするが、賃金は半分で、遅配となることも多い。また、社会保険や年金からも除外されている。
非正規労働者は17年4月に労働組合を結成し(当初は組合員3千人)、同12月に従来の組合と合併してGTUESEとなった。
今年2月に、多くの労働者の賃金遅配が5ヵ月を越える中、組合は電力省との交渉を開始し、正規雇用化と社会保険・年金への加入などの要求を提出した。3月15日と28日にはバグダッド、バスラをはじめ10の州でデモを行った。
4月2日にGTUESEは解雇撤回などの要求を掲げて全国の発電所で座り込み闘争を開始した。労働者たちは発電・送電設備の占拠などの戦闘的行動を展開した。
政府は公共部門の労働者が社会保障法の対象ではないと主張してきたが、5月18日に労働社会省が公共部門の労働者も社会保障法の対象であるとする声明を発表した。これによって電力部門だけでなく、これまで社会保障が適用されていなかった15万人の労働者の権利が法的に保護されることになった。
これはイラクの労働者と労働組合にとって大きな勝利である。バスラ労働組合連盟のハシュメヤ・アルサダウェ委員長は「(最近の)選挙を通じて人々の間に、自分たちも石油収入の恩恵を享受することを求める機運が生まれている。」と指摘した。
5月12日に実施された国会選挙では外国(主に米国とイラン)の干渉を終わらせ、国民の社会的要求に応えることを公約に掲げる連合[訳者注・前政権と現政権の両方を批判してきたサドル師とイラク共産党を中心に世俗主義を掲げる勢力が結集]が勝利した。
インダストリオールのケマル・オズカン書記次長は「イラクの労働組合は再びこの地域に重要な先例を築いた。
……イラクは豊富な石油を産出している。人々がこの富の恩恵を受けるべきである。イラクの労働組合運動はこの国の社会的公正の非常に強力な擁護者である」と語っている。
(インダストリオールのウェブ、4月11日および5月18日付)
★米 国:
教員ストが全米での緊縮・企業減税への抵抗を主導
2月のウェストバージニア州での教員ストの勝利(本誌4月号参照)のあと、ケンタッキー、オクラホマ、コロラド、アリゾナの各州で教員がストに入り、いずれも勝利している。教員は自分たちの賃金・労働条件の改善だけではなく、この数十年間民主・共和両党によって繰り返されてきた企業減税に反対し、教育や公共サービスのための予算確保を要求してきた。
最近の世論調査では、「教員は十分な賃金を得ている」と回答したのは4人に1人であり、回答者の4分の3が「教員はストライキを行う権利がある」と答えている。
4月26日にはアリゾナ州フェニックスで教員と支持者5万人がデモに参加し、コロラド州でも数千人が州議会へのデモに参加した。
ケンタッキー州では、学校予算の確保のための新税に対する知事の拒否権が撤回されたが、年金引き下げは阻止できなかった。オクラホマ州では減税を阻止できなかったが、教員たちは07年以来初めての賃上げ(年6千ドル)を勝ち取った。ウェストバージニァ州ではストライキによって年功制の解体とチャータースクールの拡大という提案が撤回された。
アリゾナ州は長年にわたって右派の教育政策のための実験場となっており、チャータースクールに在籍する生徒の割合が17%(全国で最高)である。教育ジャーナリストのジェニファー・バークシャーさんによると「アリゾナ州はコーク兄弟やベッツィ・デボスにとってのグラウンド・ゼロであり、彼らは教育貯蓄口座(ESA)と呼ばれるシステムを導入しました。バンク・オブ・アメリカは、親がホームスクール、家庭教師、学校用品、あるいは私立学校の入学料などの費用を支払うために使うデビット・カードを発行する契約を結んでいます」。
デボスはテレビのインタビューで次のように話している。
「教育システムって何のことですか?そんなものはないのです!あなたはシステムですか?そうではありません。あなたは個々の生徒であり、教師であり、そして親です」
同州のダグ・デュセイ知事がESAの試験的プログラムを導入した時、親たちを中心に「セーブ・アワ・スクール(私たちの学校を守ろう)」という連合組織が結成され、11月の選挙の際に行われる州民投票でESAプログラムの完全中止への賛否を問うための署名を集め、すでに必要数の署名が集まっている。教員のストライキと合わせて、新たに公立学校への支出のための新しい税を導入するための住民投票の署名が開始された。
カリフォルニアなどの民主党知事の州でも、教育予算の確保のために企業や富裕層への増税を求める州民投票(2020年に実施することをめざしている)のための署名運動が始まっている。
マサチューセッツ州では16年にチャータースクールを大幅に増やす計画についての州民投票で、マサシューセッツ教員組合(MTA)を中心とする反対運動が大差で勝利した。ヘッジファンドや投資ファンドが3500万ドルを投入して賛成運動を展開したにもかかわらずである。
MTA(11万3千人)を率いるバーバラ・マデロニ委員長は12年のシカゴ教員組合のストライキ闘争に触発されて、現場から組合を活性化させてきた。
これらの新しいリーダーたちの最も重要な特徴は、ストライキを武器として活用することへの強い信念である。
新しい教員運動のダイナミズムは、効果的なストライキを実現するために求められる組織的な作業によってもたらされる。なぜならストライキの成功は労働者が自分たちの未来について真に決定権を行使できることにかかっているからである。
この新しい世代のもうーつの特徴は、企業に味方する民主党に挑戦することがーつの選択肢ではなく、不可欠の選択であると理解していることである。
(「ザ・ネーション」紙5月9日付より要約)
★中 国:
全国で食品配送労働者が待遇改善求めてストライキ
食品配送業者間の競争が激化し、労働者の賃金が引き下げられる中、5月1日以降全国で少なくとも15件のストライキとデモが行われている。
多くの争議は大手デリバリー・チェーンのメイタンに関係している。
メイタンは資産額が400億米ドルであり、労働者を徹底的に搾取していることで知られている。最近では6月4日に太原市(山西省)でメイタンの契約労働者たちが賃金水準、配送時間、保険や高い事故発生率の問題で抗議のストライキに入った。
労働者はメイタンが直接に雇用するのではなく、個人請負契約の下で働いているが、労働条件はメイタンのオンライン就業規則で決められている。
労働者の多くは、自分の都合に合わせて注文を受けることができるという約束に惹かれて食品配送産業で働くようになった。しかし、5月10日に発表された最新版のアプリでは、労働者が注文を受けるのを拒否した場合、配送経路や配送期限に問題があるという理由の場合でも、罰則が課せられる。
1キロあたりの賃金は下がり続け、現在では1件の配送に対する最低賃金がわずか3・6元(1元は約17円)となっている。3キロの配送に対する賃金は6元で、配送期限が40分から36分に短縮され、遅れた場合の罰金が引き上げられている。
しかも車両の燃費や修理費、携帯電話の料金は自己負担である。
多くの労働者はこれでは家族を扶養できないと話している。
損賠保険と医療保険のために毎日3元の保険料が労働者の口座から引き落とされるが、事故を起こした場合でも保険会社は有効な免許証と登録がない場合(多くの労働者が該当し、メイタンもそのことを知っている)や、違法な運転をしていた(期限内に届けるためにはそうするしかない)場合、保険金の支払いを拒否する。
労働者たちによるとメイタンが使用しているアプリでは、指定経路と距離計算が百度(バイドゥー、よく使われている検索エンジン)などの信頼されているアプリによる検索結果と大きな差があり、また、交通規制などが考慮されていない。
労働者たちがこれらの不当労働行為についてSNSに投稿した時、そのアカウントが凍結または削除された。そのため、苦情を申し立てる唯一の手段がストライキだった。
(「チャイナ・レイバー・ブレティン」6月5日付より)