★バングラデシュ
衣料労組のリーダーが不当逮捕
バングラデシュの首都ダッカのアシュリア工業地区で12月に数万人の労働者が賃上げ等を要求してストライキに入り、多くの工場が約1週間にわたって操業中止となった。
この闘いに対する報復弾圧の中で、政府は戦時を想定して制定された「特別権限法」によって多数の組合リーダーを逮捕、拘留している。
以下はインダストリオール・グローバルユニオンの1月5日付の声明である。
インダストリオールはバングラデシュにおける衣料産業労働者、労働組合リーダー、労働者人権活動家に対する迫害の即時中止を要求する。
衣料産業における恐るべき反動として、この2週間の間に11人の組合リーダーと労働者人権活動家が1974年の特別権限法の下で逮捕された。同法は戦時に適用される非常事態法である。
同時に、1600人以上の労働者が解雇され、警察は労働者や組合リーダー約600人を送検した。
この弾圧は12月12日にダッカのアシュリア地区で行われたストライキの後に起こった。 同日、労働者たちは最低賃金を現行の月68ドルから190ドルに引き上げることを要求してストライキに入った。
工場所有者たちは賃上げを強硬に拒否した。この国での賃金は世界で最も低い水準であり、住宅費や日用品、医療費が高騰しているにもかかわらずである。
ストライキへの報復として衣料製造輸出協会(BGMEA)は59の工場で生産を中止し、工場所有者たちは1600人以上の労働者を解雇した。
ストライキが行われたウィインディ・アパレル社とファウンテン・ガーメント社は239人の労働者を刑事告訴した。ヘミーム・グループも1千人の労働者に対して損害賠償請求を準備していると報じられている。
現地からの情報によると、今、多くの衣料労働者が怖くて工場に戻れないと言っている。警察の迫害を逃れるために故郷へ帰った労働者もいる。現地のインダストリオール加盟組合の事務所の大部分が閉鎖されるか荒らされている。
同国のインダストリオール組合評議会はすべての被拘留者の即時釈放と、警察によるすべての送検の取り消しを要求している。また、ILOにBGMEAとの交渉の仲介を要請している。
インダストリオールは他の組合や運動団体と共同で、バングラデシュの工場から製品を仕入れている衣料ブランドに対して、バングラデシュ政府に拘留されているすべての組合リーダーの釈放と、訴追の撤回と組合リーダーや労働者人権活動家に対する迫害の中止を求めるよう要請する書簡を送った。
バングラデシュには独立的な労働組合や労働者活動家への暴行、拷問、死の脅迫をはじめとする忌まわしい歴史がある。
2012年には活動家のアミヌル・イスラムが殺害された。ヒューマンライツ・ウォッチや他の第三者機関がこの事件への同国の治安当局者の関与を強く疑っている。
インダストリオールのウォルター・サンチェス書記長は次のように述べている。
「バングラデシュの衣料産業における労働組合や労働者に対する弾圧を続けることは許されない。インダストリオールは政府が拘留されているすべての組合活動家とリーダーを釈放し、多数の衣料労働者に対する訴追を取り消すよう要求する。政府の弾圧は彼ら・彼女らを沈黙させることはできないし、われわれを沈黙させることもできない。衣料労働者には基本的な権利である団結権があり、生活できる賃金を得る権利がある。政府が衣料産業の労働者を人間として扱わないのなら、この国の重要産業である衣料産業を失うことになるだろう」
★フィンランド
基本所得制度を試験的に導入
フィンランドでは1月1日から、25歳以上58歳未満の失業者から無作為に抽出された2千人を対象に、ベーシックインカム(基本所得・BI)制度が試験的に導入されている。対象者は従来の失業手当の代わりに月560ユーロ(約6万8千円)をBIとして無条件に受け取る。試験期間は2年間(18年末まで)で、BIはこの期間中の就労の有無や求職活動に関わりなく支給される。
KELA(フィンランドの社会保障機関)によると、この実験は失業手当の煩雑な手続きを簡素化し、貧困と失業(現在は8・1%)を減らすことを目的としている。
英国「ガーディアン」紙1月3日付は次のように報じている。
「(この制度は)1797年にトーマス・ペインがすべての個人に対する『基本資本給付』を提唱して以来、経済学者や政治家の間で流布されていた構想の最初の国家規模での実験である」。
同紙によると、人工知能・ロボットなどの技術の普及によって将来における雇用の不安が広がる中で、ヨーロッパ各国でBIをめぐる議論が活発化しており、フィンランドでは左派は貧困削減の観点から、右派は社会福祉制度の合理化の観点からこの実験に注目している。
オランダのユトレヒトなど5つの都市、カナダのオンタリオ、英国のスコットランドのいくつかの都市でも17年度中にBIの試験的導入が計画されている。
ユトレヒトの実験では、給付対象を、1.職活動を条件に給付、2.無条件で支給、3.地域のボランティア活動に参加した場合に加算、4.加算するがボランティア活動に参加しなかった場合は加算分を返済の4つのグループに分けて、それぞれの効果を比較する。
英国のウォーウィック大学のロバート・スキデルスキー教授(政治経済学)は次のように述べている。
「信頼できる予測によると、西側世界では今後20年以内に既存の全雇用の4分の1ないし3分の1をオートメーション化することが技術的に可能である。生産性向上に連動して一律基本所得(ユニバーサル・ベーシック・インカム、UBI)を引き上げていくことによって、オートメーション化の成果が少数の人だけではなく多くの人々に共有されるようにできるだろう」。
経済学者のハワード・リードとスチュワート・ランズリーはUBIが安定的な所得を保証するだけでなく、「各個人の金銭的な独立性と、仕事と余暇、教育、ケアの選択の自由を拡大し、無報酬の労働の巨大な価値を認識させる」と指摘している。
英国でBI制度導入のためのネットワークを設立したガイ・スタンディング教授は、「ガーディアン」紙1月12日付の投稿で次のように述べている。
「20世紀の所得分配システムは回復不可能なほど崩壊している。グローバル化、技術革新、フレキシブル雇用への移行はますます多くの所得を金融資産やいわゆる知的財産を保有する不労所得者へ集中させ、労働者の実質賃金は停滞している。プレカリアートの所得は低下し、不安定さを増している。慢性的な不安定さは最低賃金法や税控除や収入調査に基づく給付によっては克服されない」
「(これらの試験的導入では)BIを支給した時の人々の行動の特定の側面(訳者注・労働意欲がなくなるかどうか等)についてのみを評価できるが、(UBI)の提唱者たちはより根本的な側面、すなわち社会的公正、自由、経済的安定を論拠としている。短期間で、比較的少数の人々を対象とした試験ではこれらの側面については評価できないだろう。……
しかし、結果が報告されるようになれば、UBIが実現可能であり、指摘されてきた否定的な影響は起こらないことが証明されるだろう」
★英 国
鉄道運賃値上げ反対・再国営化を
英国では鉄道料金が頻繁に値上げされ、現在では通勤費は平均的な労働者の所得の7分の1に達しており、ヨーロッパ平均の6倍である。この10年間では鉄道料金の上昇率は賃金や物価の上昇率の2倍であり、これは鉄道民営化の失敗を示すものであるという批判が広がっている。
1月2日から全国一斉に新たな値上げが実施され、ロンドンでは平均的な通勤定期が月387ポンド(約5万3千円)となった。
市民団体と鉄道労働者の組合は全国の100以上の駅で料金値上げ反対と再国有化を求める宣伝活動を行っている。
RMT(鉄道海運交通労組)のミック・キャッシュ書記長によると、サザンレール(オーナーはフランス人)などの会社は英国での利益をフランスやその他の国での事業に回している。
英国の鉄道では昨年以来、合理化・人員削減計画をめぐって労働組合の闘いが続いている。同9日にはロンドンの地下鉄でTSSA(交通従業員組合)・RMTの労働者3700人が人員削減に反対して24時間ストに入った。乗客サービスに関わるスタッフの削減は駅における安全にも影響を及ぼす。
サディク・カーン・ロンドン市長(労働党)は「ストライキは全く無意味だ」と非難したが、労働党のコービン党首は鉄道労働者への支持を表明した。
同10〜12日にはサザンレールのASLEF(運転士組合)とRMTの労働者が業務内容の変更に反対してストライキに入った。会社側は列車のドアの開閉を運転士が行うように変更しようとしているが、運転士たちは安全上問題があるとして拒否している。
(「ガーディアン」紙1月3、9、10日付より)