★フランス:年金改悪に抗議の無期限スト
フランスで19年12月5日、マクロン大統領の「年金改革」に反対する無期限ストライキが始まり、主要都市で大部分の交通機関が運休、全国で150万人がデモに参加した。
国鉄(SNCF)は労働者の60~90%がストライキに入り、列車の90%が
運休した。教育省は教育関連の労働者の40%がストに参加したと発表しているが、組合によると小中学校の労働者の70%がストライキに入っている。
マクロン大統領は就任以来、「金持ちたちの大統領」として、企業に対する税制上の優遇措置や公共事業の民営化と労働者に対する既得権の剥奪を警察国家的な方法で進めてきた。
フランスの現在の年金制度は第2次世界大戦後に、ブルジョワ政党がナチスへの協力のために信用を失い、共産党や労働組合の影響力が強まった時期に導入された労働者の連帯をベースにした制度であり、労働組合の「聖域」となってきた。
今回の「改革」案では、現在の42の年金制度(公務員、国鉄、自営業などに分かれている)を一本化し、拠出額に応じた一律の給付率を導入する(拠出額をポイントに換算し、ポイントあたりの給付額を一律にする)ことによって特定部門の優遇をなくすとされているが、その詳細は明らかにされていない。
多くの労働者は給付額が30%程度引き下げられるだろう。しかも将来の政権がポイントあたりの給付額を一方的に変更することができる。
また、給付開始年齢(定年)は62歳のままだが、給付を遅らせるほど金額を増やす仕組みを導入することで退職年齢の引き上げをはかろうとしている。
10月16日にCFDTを除くすべての労働組合ナショナルセンターが共同で、労働者の意志によって延長できる無期限ストライキの呼びかけを発した(フランスの労働者は1995年には3週間のストライキによって「社会保障改革」を撤回させている)。
マクロン大統領は同20日に「12月5日のストライキは特権的な人々が公平な年金制度のための改革に反対することを目的とする運動である」と発言して、攻撃を開始した。
「公務員の特権」に人々の怒りを向けさせる狙いである。しかし、メディアの世論調査では回答者の60~70%がストライキを支持すると答えている。
11月には医師と医療労働者が待遇改善を求めるデモを行った。また、教員の自死をきっかけに労働者たちの過酷な労働条件に対する憤りが拡大した。
学生、消防士、弁護士、パイロットなどもデモに立ち上がった。
18年11月から始まった黄色いベスト運動も、11月3日に開催された第4回全国総会で12月5日のストライキへの参加を決定した。
最大の労組ナショナルセンターであるCGTのマルティネス書記長は黄色いベスト運動に対して当初は冷淡な態度を示していたが、今回のストライキへの参加を歓迎した。
マクロン政権が18年春に一連の新自由主義的政策を強引に進めはじめた時から、人々は怒りを募らせていたが、CGTや他の組合リーダーたちがおずおずとした、限定的な抵抗しか呼びかけないことに失望していた。
一連の敗北の後に、18年11月に黄色いベスト運動が自然発生的に全国に広がり、世論調査によると70%の人々に支持されている。
グローバル気候ストライキの巨大なデモや、11月23日の女性への暴力に反対するデモ、農民たちのデモ、移住者や少数者の運動も相互に連動しはじめている。
(「Zネット」19年12月3日および同5日付け等より)
★香港:区議会選挙で5人の左派労働運動活動家が当選
11月24日に実施された香港の区議会選挙で、地域における労働運動や社会運動の活動家による新しい政党「社區前進」の5人の候補が全員当選した。
「社區前進」は九龍地区で長年にわたって労働者のストライキへの支援や、立ち退きに抵抗する行商人・露天商への支援などの草の根の活動を行ってきた活動家と若い世代の活動家が連携し、この間の逃亡犯条例反対の運動の中で、5つの要求と合わせて、労働者階級の要求やフェミニズムの主張を掲げてきた。
以下は「社區前進」から旺角南区議に立候補し、当選したデレク・チュー・コンウェイ(朱江瑋)氏がウェブ誌「ローサン」(「流傘」)誌によるインタビューで語った内容の要約である。
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労働問題とフェミニズムは「社區前進」にとって2つの重要な問題である。
チューは07年の金属労働者のストや11年のエレベーター工場のストの支援のほか、中国本土の労働者の闘争への連帯運動に関わってきた。
また、創立メンバーの多くはNGOやコミュニティー活動の中で職場における女性の問題を取り上げてきた。
「社區前進」はまた、立法会が地区の貧しい人々に開かれたものにするためにさまざまな提案を行ってきた。
当選したら、立法の手続きをもっと透明化し、人々が政策決定に直接に関与できるようにしたい。
「社區前進」は今回の運動に最初から参加しており、もちろん5つの要求を支持してきた。
組織の性格は伝統的な政党というよりもプラットフォームに近い。政治的立場は明確だが、まだ長期的な政治的計画を持っているわけではない。
「社區前進」として結集した目的のーつは本土派(香港の自決・独立を目指す)と一線を画すことだった。状況によっては本土派と共闘することもあるが、一部のグループの中国本土出身者への差別や排除を煽る主張に反対している。
自由民主派については、基本的には現在の体制や現状を維持するという立場であると考えている。このグループは自分たちの目的やそこへ向かう道筋が明確でない。
「社區前進」も長期的計画はまだないが、政治的活動を草の根レベルから、特に女性労働者や露天商などの間での活動から始めなければならないと考えている。
彼ら・彼女らは体制派の主要な票田となっており、中国政府は労働者階級を分断しようとしている。
本土派は香港アイデンティティを強調することによって、自由民主派が見落としていた中国と香港の間の力学を明らかにした。この戦略は多くの人々を引きつけ、鼓吹した。
しかし、街頭でデモ参加者に暴力を振るう警察官たちも香港人である。李嘉誠(リ・カシン)などの大富豪も香港人である。香港人という枠組みで考えることには限界がある。
労働者階級には大きな可能性があり、それは今回の運動では十分には発展していないが、「社區前進」はここに依拠しようとする。
今回の運動では「三罷」(出勤、登校、商業のストライキ)が平和的抵抗を主張するグループだけでなく、直接行動派(アナーキスト、本土派、その他のグループからなる)にとっても最も強力な武器となった。
しかし、その潜在的な可能性を実現するためには、人々の意志に依存するだけではなく、組織しなければならない。この目標を長期的に豊富化していきたい。
香港は米中貿易戦争によって形成されている地政学上の神経に触れた。しかし、これは始まりにすぎない。
2047年まで何度も闘いが起こるだろう。われわれはそれに備える必要がある。
★コロンビア:「市民ストライキ」、全国で100万人がデモ
11月21日、全国市民ストライキ委員会の呼びかけに応えて全国で労働者、農民、先住民族、市民がドゥケ政権の新自由主義的政策や暴力支配に抗議するデモに参加した。
コロンビアでは大多数の人々が正規に雇用されておらず、職場における集団的行動に参加できないため、「市民ストライキ」が抵抗の主要な方法となっている。
労働者や学生は職場や授業を放棄してデモに参加し、農民や先住民族は道路を封鎖する。
百万人を超える人々が政権の腐敗、生活苦、年金改革、最低賃金の引き下げに抗議し、また、民主主義的権利の保障、弾圧や軍事化の中止、失業対策を求めて街頭に出た。これはコロンビアの歴史の中で最大のデモである。
コロンビアでは2016年に政府とコロンビア革命軍(FARC)の和平合意が成立したが、約束された改革は実施されず、和平合意以降にも全国で700人以上の社会運動団体や地域のリーダーが殺害されている。
市民ストライキに対しても政府は事前に運動団体への強制捜索を行い、多くの活動家を逮捕した。
21日には軍と機動暴動鎮圧部隊の共同作戦によってカウカ渓谷地域で3人が殺害され、全国で数百人が逮捕された。
抗議運動が拡大する中、政府は懐柔策を打ち出し、「対話」を呼びかけた。しかし、最大労組のCUT(統一労働連盟)のヒルベルト・マルチネス執行委員によると「政府は人民の組織との対話ではなく、いかさま師たちとの対話について語っているだけだ。空約束はたくさんだ。彼らはわれわれの要求を知っている。社会福祉と労働権である」。
(「Zネット」19年11月23日および27日付より)