★米国・シアトル市 : 障害者の最賃適用除外を違法化
ワシントン州シアトル市では14年5月に、同市の最低賃金を段階的に時給15ドルまで引き上げる(19年5月までに全労働者に適用)ことを決定した。
その後、最賃引き上げの動きは同州の多くの市や他州に広がっている。
一方で同市では1930年代以来の最賃適用除外措置(障害者などを最賃以下で就労させることができる)が存続してきた。障害者の権利を擁護する人々は長年にわたって州および連邦レベルでこの措置の廃止を求めてきた。
同市のエド・ムレイ市長とリサ・ハーボールド市会議員は昨年7月に、同市の最低賃金に関する条例を改正して、障害者を最賃以下で就労させることを禁止することを提案した。同市の労働基準局で改正案が検討され、今年4月2日に市議会で可決された。
ムレイ市長は提案にあたって述べた。
「私たちの歴史的な最賃15ドル条例の核心は、シアトル市に普遍的な平等を実現することだった。障害者を最賃以下で就労させることを許すような抜け穴はこの目標を掘り崩す。私たちはそのような誤りを是正し、私たちの約束と価値に忠実であろうとする」
シアトル障害者委員会のシャウン・ビックリー共同委員長は市議会での公聴会で次のように発言した。
「今日すべての問題を解決することはできませんが、今日、私と私の仲間たちは皆さんに、障害者に対等の価値があることを法律で認めること、そして他の人たちと同じ最低賃金を保証することを求めています」
(「シアトル・メディアム」17年7月28日付、「シアトル・メット」18年4月3日付)
★ニュージーランド : 21年までに最低賃金を生活賃金の水準に
ニュージーランドでは政府が昨年10月に、21年4月までに最低賃金を20NZドルに引き上げる(1NZドルは約80円)と発表した。これによって21年には最低賃金が現行の生活賃金20.55NZドルに近づき、週40時間労働で年収が4万2700NZドルになる(本誌17年12月号参照)。
最新の賃金統計によると、17年第2四半期に賃金が最賃水準に近い労働者は約7万6千人で、全労働者の3%だった。
グラント・ロバートソン財務相は「私はこの動きが誰からも歓迎されるわけではないことを知っているが、これは生活費に足りる賃金が保証され、労働者に公平で、家計を維持するのに十分な分け前を分配するためのものだ」と述べている。
賃金を生活賃金の水準に上げて、それ以降も生活賃金の引き上げに準じて賃金を引き上げることを約束した企業にはニュージーランド生活賃金認証システムから認証が与えられる。ただし、認証を得るためには請負労働者を含むすべての労働者が公正な賃金を受け取り、労働組合への加入が認められる等の基準を満たしていなければならない。
生活賃金キャンペーンの全国代表のアニー・ニューマンさんによると、生活賃金を支払っている企業の多くは従業員の研修にも多くの投資を行っている。
現在、104の企業が生活賃金認証を与えられている。トンズ社(オーバニック豆腐製造)は13年以降、生活賃金認証を受けている。同社は「利益だけではない企業」という企業理念を掲げており、ジェシー・シャルマーズ社長は「フルタイムで働いていて家計費を稼げないようなことがあってはならない」と語っている。彼女によると、「生活賃金を採用してからは従業員の定着率が100%になった。優秀で献身的な従業員を擁していることは決算
にも良い影響をもたらす」。
(「スタッフ」紙8月12日付)
★メキシコ : 新政権の労相、大幅引き上げ約束
7月1日に実施された大統領選挙で左派候補のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールが当選し、12月1日に就任する。
新政権の労働・社会福祉相に指名されているルイサ・マリア・アルカルデは8月8日、新政権は最賃引上げに尽力し、北部地域では2倍への引き上げをめざすと約束した。
メキシコの現在の最低賃金は88・36ペソ(ーペソは約6円)で、連邦政府が設定している健康な生活のための基準より7ペソ少ない。
アルカルデ次期労相は、「この問題でメキシコ中央銀行と協議する予定であり、われわれはすでに産業界や労働団体とも協議している。明らかなことは、そして私が確約できることは、われわれは最低賃金の引き上げを推進するということであり、それによって北部の地域では最低賃金が2倍になるだろう。われわれの考え方は、最低賃金(の役割)を回復させて、自分の仕事で生計を立てている女や男が尊厳を持って生きられるようにすることだ」と語った。
同次期労相によると、南部と南東部で計画されているカンクン・パレンケ間の鉄道やテウアンテペック地峡地域開発などのプロジェクトが牽引する経済成長によって賃金上昇が可能になる。
メキシコ経営者連合(Coparmex)は17年末にConeval(全国社会開発会議)が設定している福祉水準に沿って賃金を引き上げることを提唱したが、現在もこの主張を続けている。同連合のグスタボ・デ・オヨス会長は今年末までに最低賃金を少なくとも100ペソまで引き上げるべきだと語っている。
アルカルデ次期労相は若手の法学者(30歳)で、新政権では最年少の閣僚となる。新政権では「若者は未来を作る」という職業訓練制度の導入を担当する。
(「メキシコ・ニューズ・デイリー」8月9日付)
★ドイツ、ポーランド、スペイン : アマゾンで一斉にストライキ
先週、アマゾンの最高経営責任者、ジェフ・ベゾスの保有資産が1500億ドルに達したことが報じられる一方で、全ヨーロッパでアマゾンの労働者数千人が7月16日から3日間、ストライキに入った。
スペインのCCOO(労働者委員会)傘下の労働者が、アマゾンのプライムデー2018(7月16~17日)に照準を合わせて呼びかけた。
今回のストライキはこれまでで最大規模。
ドイツでは13年にアマゾンの業務センターの労働者が同社での最初のストライキを行った。Verdi(サービス労組)のレナ・ウィッドマン全国書記によると、「最初は純粋に賃金の問題でした。生活費を確保することがすべてでした。今では、それだけではなく、リスペクト(人間として尊重されること)の問題であり、対等に話ができるかどうかの問題でもあります」。
最初のストライキの後、アマゾンはドイツの労働者に定期的な昇給を実施するようになり、一部の倉庫では換気や照明が改善された。しかし、アマゾンはこうしたささやかな改善すら団体交渉に基づく協約として成文化することを拒否してきた。
先週の3日間ストライキには6つの業務センターの約2400人の労働者が参加した(ドイツのアマゾン労働者の総数は1万6千人)。
ポーランドで、アマゾンは14年に倉庫を開設した。ポーランドは賃金水準が低く、労働法の規制が緩く弱い。最近刊行された『隘路-物流労働者がグローバル・サプライン・チェーンを止める』という本にはポーランドの倉庫に関して次のような記述がある。
「大部分の従業員は立ったままか、歩き続けている(1つのシフトで数キロ歩くこともある)。多くの仕事は重い商品や箱を持ち上げたり、重いカートを押すといった非常に単調な反復作業である。アマゾンは24時間の操業を望んでおり、ポーランドでは労働者は週に4回、10時間のシフトをこなさなければならない。30分の休憩時間は無給である。シフトのスケジュールは毎月変わり、昼勤と夜勤が入れ替わる。
このようなシフトは労働者の睡眠のリズムを妨げ、重大な健康上の問題を引き起こす。また、プライベートな生活を組み立てることがむずかしい。
病休を理由に解雇された労働者は次のように書いている。
『アマゾンでは毎日、安全について聞かされるが、現実は違う。誰もがアマゾンでの競争に耐えられるわけではない。人が機械のように扱われている。しかし、機械は故障したら停止するが、人間はそれさえできない』」
また、アマゾンの東欧進出によってドイツの労働者のストライキの効果が減殺される恐れがあった。そのため15年にドイツとポーランドの現場活動家たちが初めての国境を超えるアマゾン労働者集会を開催し、その後この集会が繰り返し開催されている。
ポーランドの労働者たちは「労働者のイニシアチブ」というラディカルな労働組合を組織した。
「労働者のイニシアチブ」は04年にポーランドの政府系組合の官僚主義や政府の反労働者的政策への無対応に反発して結成され、物流産業や医療、教育、文化部門を中心に活動している。
同国の労働法ではストライキは全従業員の過半数の賛成を必要とするため、アマゾンの労働者たちはドイツでのストライキに呼応してスローダウン(作業速度を落とす)の行動を行ってきた。組合員の一人であるマグダ・マリノウスカさんは「労働者の健康・安全に関する法律や私たちの権利が無視されている中で、アマゾンは私たちをスキャブ(スト破り)として利用することによって他の業務センターでのストライキを無視できると考えたのでしょうが、私たちはそれを拒否しました」と語る。
サービス部門の労働組合の国際組織であるUNIもアマゾンに対する国境を越えた闘争を支援している。
昨年11月にはイタリアの労働者が初めてストに参加、ドイツのVerdiと共闘した。この闘争の結果、イタリアの組合はアマゾンでは初めての団体協約締結を勝ち取った。
スペインではCCOO(労働者委員会)が全国のアマゾンの労働者の過半数を組織しており、今年3月にマドリードの物流センターで最初のストライキを行い、2千人の労働者のうち98%が参加した。しかし、アマゾンは報復として多数の臨時雇用労働者を解雇した。そのため労働者たちは5月に「アマゾンとの戦争」を宣言して今回のストライキを呼びかけた。
(「イン・ジーズ・タイムズ」7月26日付)
★香 港 : 桂士科技(中国)争議に連帯広がる
中国・深センの佳士科技(JASIC)の労働者の労働条件の改善、組合結成をめぐる闘いは、民主的な労働組合を求める地域の労働者や、それを支持する広範な学生を結集しつつあり、国際的注目が集まっている。
香港では労働組合や市民団体がJASICの労働者に連帯する行動を続けている。
8月1日に職工会連盟(HKCTU)と市民団体の代表約30人が、独立労組の結成を呼びかけて逮捕された30人の労働者の釈放を要求して中国政府の駐香港特別行政区連絡弁公室までデモを行った。
その後も支援活動家や学生への弾圧が続く中で、同29日に二度目のデモが行われ、約30人が参加した。参加者はデモの後同弁公室前で中国政府宛ての請願書を配布した。
現地では7月27日に労働者が逮捕された直後に、労働組合結成の権利と逮捕された労働者の釈放を要求するためにJASIC労働者連帯支援(委員会)が結成され、その後、全国の大学生が支援に駆けつけ、スピーチやパフォーマンスやデモで連帯を表明している。
今回の弾圧は15年の12月3日の広東省での一斉逮捕(本誌16年1月1・15日合併号参照)以降最大規模である。
(職工会連盟のウェブより)