アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
945号

★中 国
  広東省の活動家に有罪判決

 9月27日、広東省番禺(パンユー)地方裁判所は昨年12月に逮捕された労働運動活動家3人に「社会秩序を妨げるために群集を集合させた」として有罪判決を下した。
 3人は番禺労働者センターの活動家で、07年に当局によって同センターが閉鎖されてからも活動を継続し、労働者のストライキなどの運動を組織してきた。(昨年12月の弾圧の詳細については本誌16年1月1・16日合併号参照)


 同日付のAPによると、同センターの代表の曽飛洋(ゼンフェイヤン)は4年の刑(執行猶予付き)を宣告され、朱小梅(シュシャオメイ)と湯歓興(タンファシン)は1年半の刑(執行猶予付き)を宣告された。
 以下は不当弾圧に抗議する香港の職工会連盟、アジア・モニター資料センターなど10の労働運動団体・社会運動団体の同26日付の声明の抜粋である。


 昨年12月の弾圧では50人余の労働運動活動家が取り調べを受け、そのうち7人が拘留もしくは消息不明になった。拘留された人たちは弁護士との面会も禁止された。
 曽飛洋は逮捕から6カ月間にわたって弁護士と面会できず、政府系メディアは彼に汚名を着せるためのキャンペーンを展開した。さらに、拘留された人たちの家族たちも監視と、暴力の脅迫、言葉での脅しの下に置かれてきた。
 今年8月には4人の人権弁護士が「国家の転覆」を企図したという容疑で3年から7年の刑を宣告された。9月22日には北京の弁護士で、多くの活動家の弁護にあたってきた夏霖(シャリン)が詐欺の容疑で12年の刑を宣告された。


 世界人権宣言の第11条は、すべての刑事被告人の弁護の権利を明記している。市民的および政治的権利に関する国際規約の第14条3項は、刑事被告人の弁護士との面会の権利を保証している。……中華人民共和国憲法の第125条は「被告人は弁護の権利を有する」と明記している。


 本日、3人の労働運動活動家が法廷に立つ。昨年12月以降に広東省警察が行ってきた行為が被拘留者の権利侵害を繰り返しており、家族に対する監視や嫌がらせが行われていることから考えて、私たちは以下の意見を表明する。
 労働者の法的権利が侵害されている時、彼ら彼女らが自らを組織し、社会的な支持を求めるのは当然のことである。それが工場に損失を与えるとしても、それは「社会秩序を妨げるために群集を集合させた」わけではない。労働者の団結権と団体交渉権は尊重されるべきであり、労働者や労働運動活動家は労働者の権利を擁護することにおいていかなる犯罪も犯していない。私たちは労働団体のスタッフへの政治的迫害の即時中止と彼ら彼女らの即時釈放を要求する。

 

 

★インド
  ゼネストに1億5千万人が参加

 9月2日、モディ政権の労働政策に反対するゼネストが行われ、ヒンズー民族主義系のBMSを除くインドの10の主要労組が参加した。参加人数は1憶5千万人(推定)で、史上最大規模といわれている。

 

 商工会議所の推定によるとストライキによる損害は1800億ルピーである(1ルピーは約1.5円)。労働組合のゼネストは1991年にラーオ政権の下で新自由主義的政策が導入されて以降17回目であり、09年以降だけでも12回目である(前回は昨年9月)。
 CITU(インド労働組合センター)によると、ストライキはすべての産業分野で行われ、炭鉱やその他の鉱山、電力、機械、石油、防衛、電信、金融などの戦略産業でも経営者や監督官庁、政府からの警告を無視して貫徹された。


 ハリヤーナー、パンジャブなど7つの州では、交通ストや自動車労働者のストなどで完全に経済活動がマヒした。左派が州議会の多数を占めるケララ州では、州の首相がゼネスト支持を表明した。
 西ベンガル州では警察と州政府与党系の暴力集団が労働者の集会を妨害しようとした。また、デモに参加した労働者20人が逮捕された。しかしストライキは弾圧や脅迫をはねのけて貫徹された。ハリヤーナー、アッサム、ウッタルプラデーシュなどでも警官隊と労働者の衝突が起こった。


 ゼネスト前日の同1日には、ガーガオンの公安当局がマウリ・スズキ労働組合のリーダー12人と交通労組のリーダー22人を逮捕した。デリーでは無期限ストに入っていた国立病院の看護師たちに市当局が非常時業務確保条例(EMSA)を発動し、看護師たちは警察に連行され、数時間にわたって拘束された。


 労働者は12項目の要求を掲げた。主な要求は、次の通りである。
1 物価高騰を抑制する緊急措置。
2 雇用創出のための具体的措置。
3 基本的な労働法規の厳格な適用と違反者に対する処罰。
4 全労働者に対する社会保障。
5 最低賃金を1万8千ルピーに上げ、物価にスライドさせる。
6 年金を月3千ルピー以上に引き上げる。
7 政府が正規職や継続的業務の下請け化を抑制するための政策 を実施すること。
8 国営・公営企業への投資の削減をやめること。
9 鉄道、軍事、その他戦略産業への外国からの直接投資の規制。
10 労働法の一方的な改定に反対。

(「Znet」9月4日付および12日付のレポート等より要約)

 

★サウジアラビア
  財政危機で建設労働者に未払い

 サウジアラビアでは国家財政危機のため、大規模建設プロジェクトの工事代金や、国軍のインド、パキスタン、スリランカからの兵士の賃金が数カ月にわたって支払われていない。
 政府は石油価格の下落が原因としているが(国営石油会社アラムコは負債が1千億ドルに達しており、支払い不能状態になっている)、その一方でイエメンへの軍事介入、反政府勢力への空爆に莫大な費用を投入している。


 3万人余の労働者が政府に対して苦情を申し立てている。インドとパキスタンの政府は同国に対して、自国の労働者への賃金支払いを求めており、緊急に労働者への食糧支援を行っている。
 サウジの報道では、外国人労働者に対する排外主義的なコメントが目立つようになっている。

(英国「インディペンデント」紙9月9日付より) 

 

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