カンボジア:衣料工場で賃上げと逮捕者釈放要求で残業拒否
2月24日、200以上の衣料工場労働者が、最低賃金引き上げと1月のストライキ(本誌2月1日号を参照)で逮捕された21人の釈放を要求し、午後4時から一斉残業拒否に入った。28日まで続けられる。
要求が受け入れられない場合、3月8日に公開フォーラム、12日から自宅待機等が計画されている。
カンボジア労働組合連合(CCU)のロン・チュン委員長は「労働者たちは来月(3月)のストライキに大きな関心を寄せている」と語っている。 (「プノンペンポスト」紙、2月25日付)
経営者たちは、残業拒否は一部の労働者だけで、大部分は通常通りに働いていると述べている。
しかし、最大の自由労組であるカンボジア衣料労働者民主組合連合(C・CAWDU)のアス・ソーン委員長によると、129工場の15万人以上の労働者が残業拒否に参加。多くの労働者は、1月3日に警官隊の発砲で労働者が死亡した現場まで国道沿いにデモを行った。
ソーン委員長によると、18の労働組合や支援団体が各地で行動への参加を呼びかけるリーフレットを配布している。
ILOの「カンボジアの工場の改善プログラム」の技術顧問のジル・タッカー氏によると、同国の労働法では週60時間を超える労働は禁止されているが(法定労働時間は48時間)、実際は、衣料工場では週60時間は平均であり、日常的にそれ以上の残業が行われている。
米国のソリダリティー・センターのデーブ・ウェルシュ氏は、「問題は、残業手当の未払いではない。労働者たちは労働契約が不安定で、保証されている賃金では生活できないため、極端に長時間の残業を余儀なくされていることだ」と指摘している。 (「ザ・カンボジアデイリー」同25日付)
工場によっては、労働者全員が残業を拒否したところもあり、一方で、経営者からの工場閉鎖の脅しによって大部分の労働者が残業に応じたところもある。
フン・セン首相は同25日に、工場労働者に対して、ストライキは衣料産業を破壊する、参加するべきではないと警告した。政府系の5つの労働組合も連名で、3月に予定されているストライキに反対するリーフレットを配布している。このリーフレットでは、ストライキが政治的動機によって扇動されており、それに参加すれば工場や仕事を失うことになると警告している。 (同紙、同26日付)
メキシコ:カナダでの季節労働者の組織化を政府が監視
全米食品・商業労働組合(UFCW)はカナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州の農業季節労働者の組織化に成功してきたが、メキシコ政府は組織化にかかわった労働者のブラックリストを作り、彼らの帰国後、カナダの農業季節労働者プログラム(SAWP)の下での再就労を妨害してきた。
以下は、カナダのウェブ新聞「rabble.ca」2月21日付に掲載されたレポートの抜粋である。
スタン・レイパー氏とUFCWがBC州で物議を醸(かも)すこと、つまり労働組合の組織化をやってのけた移住労働者のグループを支援するようになってから約4年になる。
UFCW傘下の農業労働者連合(AWA)の全国書記であるレイパー氏は、彼と労働者たちが闘ってきた多くの裁判について、「それは困難なプロセスだった」と語る。
2010年2月に、BC州アボッツフォードの花卉(かき)会社、シドゥー&サンズ・ナースリーで、メキシコからの季節労働者たちがUFCWの支援を受け、組合を結成。当初、この会社の従業員は160人前後で、移住労働者と国内労働者が混在していた。UFCWに加盟したのは移住労働者で、SAWPを通じてカナダに入国した。
臨時の移住労働者は、経営者からの報復を恐れているので、組織化は困難だ。したがって、労働者が組織されたことはUFCWにとっては1つの勝利とみなされた。
しかし、ハッピーエンドではなかった。何人かが、思いあたる理由もないのに、就労のためにカナダに戻ることができなくなった。他の労働者たちは自分たちが組合を作ったシドゥー&サンズへは戻らずに、他の農園へ分散した。
次に、シドゥー&サンズの移住労働者たちが組合不承認のキャンペーンを始めた。これが成功すれば、やっと作った支部が解散に追い込まれる。
この請求は11年4月にBC労働委員会に提出された。UFCWは、組合支部を分断するための工作が行われていると疑い始めた。
「彼ら・彼女らは農業季節労働者だ。彼ら・彼女らがどうして組合不承認の手続きを知ったのだろうか」とレイパー氏は言う。
11年にUFCWにリークされた文書も、メキシコ政府が介入し、労働者たちがカナダに戻るのを妨害したという推測を裏付けている。メキシコ労働省の文書に、ある組合員の名前が、「組合員であり、カナダに再入国させてはならない者」として記載されていた。この文書はUFCWのウェブに公開されている。
SAWPの下では、メキシコ側がカナダに入国する労働者を承認し、彼ら・彼女らに関するすべての責任を取り、必要なら資格を停止することになっている。
カナダでは外国政府に対する外交上の免責が規定されているため、メキシコ政府の不当な行為についてメキシコの法廷で立証するのは非常に困難である。
UFCWは元メキシコ大使館職員から、問題のブラックリストが存在していたとの証言を得たが、大使館側は元職員の証言であっても、外交上の免責の対象となるので、審理の中で彼に証言させないと主張した。BCの労働委員会は2年前に、メキシコ政府側の主張を支持する決定を行った。
今年1月15日に、BCの州最高裁判所は労働委員会の決定を覆し、この元職員の自発的証言を認めることを決定した。これはUFCWにとっては大きな勝利だが、メキシコ政府はまだこの決定に対して控訴を準備している。
移住労働者にとっては、政府が「一時的」とみなしている仕事が、4年間にわたる闘いの場となっている。負けられない闘いである。
「どういう結果になろうとも、われわれは最後まで闘う」とレイパー氏は語っている。
フィリピン:コールセンター労働者の健康に深刻な問題
フィリピンにおけるBPO(業務外注化)産業は経済成長の重要な推進力となっており、「サンシャイン産業」として注目されているが、労働者の離職率が毎年30%と異常に高い。
マニラは今では、インドのバンガロールに次いで世界第2位のBPOの発注先となっている。
BPO産業は堅実に成長しており、16年までに250億ドル規模になると予想されているが、ミリアム・サンチャゴ上院議員は、この成長がコールセンター労働者の状況を反映していないと指摘する。
同議員は13年7月に、コールセンター労働者の団結権を保障するために上院法案57号(「コールセンター労働者の権利憲章」)を提案した。同議員は、「われわれのBPO産業が最も基本的な国際労働基準を満たしていないなら、われわれのBPO産業の躍進を世界に誇ることはできないと指摘している」。
コールセンターの労働者の42%以上が深夜労働に従事している(ILOの調査による)ことから、「権利憲章」は労働者の健康の保護についても規定している。
業界団体によると、フィリピンのコールセンター労働者の数は13年には90万人に達し、16年までには130万人に増えると予想される。
欧米の顧客のニーズに対応して、英語を話せて、深夜労働にも応じる労働者を多数確保できることが大きな要因になっている。
コールセンターには、自分の専攻分野に関連する雇用を見つけられない新卒者が殺到している。収入が他の業種よりも多い(ILOによると、2倍近い)。しかし、コールセンター労働者は緊張を強いられる環境に起因するストレスから睡眠障害に至るまで、深刻な健康上のリスクにさらされている。
自由労働者組合(FFW)の委員長のソニー・マトゥラさんは、「権利憲章」を支持しているが、コールセンターの労働者を組織化するのは難しいと認めている。多くの労働者が、組合を作ったら解雇されると恐れているからである。
BPO産業労働者ネットワーク(BIEN)の委員長のイアン・ポルキアさんによると、「権利憲章」は、BPO企業には1995年の特別経済区域法(労働組合活動を規制している)が適用されるという経営側の主張に挑戦しているということである。
マトゥラさんはまた、コールセンター労働者の健康問題は緊急に対処しなければならないと指摘する。ILOの調査によると、睡眠障害や疲労のほかに、不眠症、眼精疲労、首・肩・背中の痛み、喉の問題などがある。マトゥラさんによると、麻薬中毒や、喫煙による呼吸器疾患などの生活習慣に関連する問題も多い。
BIENによると、コールセンター労働者の初任給は月1万2千〜1万5千ペソの範囲である(1ペソは約2.3円)。毎日2時間の残業で月に3千〜5千ペソの残業手当が得られる。現在のマニラでの最低賃金は9320ペソである。
しかし、マトゥラさんは「ディーセントワーク(まともな労働条件)は賃金だけでなく、労働条件、団結権、社会的保護、社会的対話の権利を含まなければならない。それらの側面が無視されている」と言う。
たとえば、労働省の職業安全健康センターの規定では、夜勤は連続2週間に制限され、その後に2週間は昼勤務にしなければならないが、コールセンターではこの規定が守られていない。
(「イコールタイムズ」2月28日付より抄訳)