アジア@世界              喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
980号

★グローバル:国際女性デー、各国で女性のストライキ・デモ

 「今年の国際女性デー(あるいは少なくともウェブサイトの『国際女性デー・ドット・コム』)は、メットライフ、アマゾン、マクドナルドやそのほかの企業が主催した。これらの企業は「#Balance for Better」(ジェンダー・バランスによってより良い世界を)を公式スローガンとして採用した。

 私にはそれが適切な英語かどうかわからない。より良い何を目指すのか?どちらにしても私は『バランス』と聞くとついスヌーズ・ボタンに手を伸ばしてしまう。社会主義フェミニストである私は『バランス』を望んでいない。私は資本主義システムという腐ったリンゴの運搬車をひっくり返したいのだ。
 それが常に国際女性デーに活力を与えてきた情熱だった。資本家たちがお好みのハッシュタグを付けるのは勝手だが、国際女性デーはラディカルな運動をルーツにしている。今年もラテンアメリカとヨーロッパを中心に、女性たちはストライキでこの日を祝福した」

(リザ・フェザーストーン、「ジャコバン」誌3月8日付)

 

 アルゼンチンではACT(アルゼンチン労働者センター)がストライキを呼びかけた。昨年8月に中絶合法化の法案が上院で否決されたことへの怒りや、女性に対する暴力への抗議を表すために数万人の女性がデモに参加した。

 女性への暴力に反対する「ニ・ウナ・メノス」(一人も犠牲にしない)運動の呼びかけ人の1人のマルタ・ディロンさんは「私たちの運動は時代を変えてきた。性差別的な暴力はもはや容認されなくなっているし、性的嫌がらせは容認されなくなっている。……多くのことが変わった」。

(「AP」3月9日付など)

 

 スペインでは昨年に続いて今年も、最大労組のーつであるUGTをはじめ多くの団体が参加して同一賃金や女性の権利を訴える2時間のストライキが行われ、約600万人が参加した。

 マドリードでは女性たちが「自由、平等、博愛」、「服装で労働の価値は変わらない」などのスローガンを掲げて通りや広場を埋め尽くした。
 イタリア、フランス、ギリシャなどでも労働組合によるストライキが行われた。ポルトガルでは家庭内暴力によって殺された女性たちを追悼する日として、官庁に半旗が掲げられた。

 ニューデリーやジャカルタでも家庭内暴力、職場での性暴力や雇用上の差別に抗議するデモが行われた。

(「ガーディアン」3月8日付)

 

★メキシコ:輸出加工区で賃上げ要求の山猫ストが勝利

 米国との国境沿いのマタモロス市のマキラドーラ(輸出加工区)で1月中旬から労働者たちが「20・32」(20%賃上げと3万2千ペソのボーナス)という要求を掲げて自発的なストライキ(山猫スト)に入った。
 労働者たちは工場の門前でピケットを張り、スト破りたちの入構を阻止し、寒空の中でたき火をしながら野営を続けた。当初は労働組合からの支援もなかった。

 

 大部分の労働者の賃金は時間給20ペソ前後であり(1ペソは約5円)、物価高の中で困窮している。メキシコの労働組合は労働者の要求を代表することよりも企業や政府との協調を重視する傾向が強い。しかし、最低賃金引き上げを公約したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)新政権の下で、ソーシャル・メディアでの支持の広がりを背景に、闘争はすでにいくつかの重要な成果を収め勝利しつつある。

 

 自動車シートを製造し、世界の3分の1のシェアをもつアディエント社の工場の門前でピケットを張っている労働者たちによると、ストに入った後、組合からも経営者からも誰も話に来ない。経営側が車でピケに突入しようとしたこともあった。労働者たちは恐怖を感じるが怯えてはいない。

 

 ストに参加しているブリア・モントヤさん(47歳)は、「私たちの多くはシングルマザーで、一人で子どもを育てています。だからここに集まっているのです。私たちは20%賃上げと3万2千ペソのボーナスという正当な権利を要求しています」。

 

 労働者たちはまた、現在の組合を追い出して、新しい独立的な労働組合を結成したいと考えている。
 現在、CTM(メキシコ労働者連盟)傘下の4つの組合がマキラドーラの労働者を代表しているが、これまでこれらの組合はすべて政府に支配され、経営者に有利な協約を結んできた。しかし1月に4つの組合の一つで、同市で最大の組合SJOIIM(日雇い・産業・マキラドーラ産業労働組合)のリーダーたちが、組合員からの圧力に押されて、経営側との交渉に入った。

 2月5日現在で、SJOIIMの支部がある48の工場で「20・32」の要求を経営側が受け入れた。その結果、約3万人に新しい協約が適用される。

 また、アディエント社など30社でストライキが続いている。国境沿いのレイソナからティファナまでのすべてのマキラドーラで同様の闘いが準備されている。

 

 新政権はこれまでの政権のようにストライキを違法として処罰したり、暴力的に抑圧する政策を取っていない。

 またNAFTA(北米自由貿易協定)の改訂に伴って労働法の改定(組合役員選挙や協約承認での秘密投票の権利など)の動きも、闘争の拡大の背景にある。
 しかし「20・32」運動の勝利はまだ一時的であり、ストライキ参加を理由にした解雇(法律上は違法)がすでに1500人に達している。

 

(「北米ラテンアメリカ会議(「NACLA)」のウェブ、3月1日付より)

 

★フィリピン:スミフル労働者の権利を守れ。河野外相訪比時にマニラで集会

 河野外相は2月9~11日、フィリピンを公式訪問し、在ダバオ総領事館開館式典に出席した。

 マニラでは同8日、日本のスミフル(住友商事系、「完熟王」のブランドでバナナを輸入)のミンダナオの農場での労働者のストライキに連帯するNGOや労働者のグループが、ドゥテルテ大統領に対して、河野外相との会談でスミフル労働者の問題を取り上げることを求めて集会を開いた。

 

 EILER(エキュメニカル労働者教育研究所)のロシェレ・ポラス代表は「河野外相はこの地域の平和と安定への日本の支援を確認したが、日本の多国籍企業スミフルにおける労働者の権利の侵害、赤狩り、暴力的襲撃と農園労働者ダニー・ボーイ・バウチスタさんの殺害について沈黙した」と語る。

 

 ミンダナオ島のコンポステラバレー州のスミフルのバナナ農園の900人の労働者たちは昨年10月初旬に、団交権などを要求してストライキに入った。これに対して警察が暴力的な弾圧を繰り返し、出荷場でのピケットへの襲撃や組合リーダーの自宅への侵入、組合事務所への放火なども繰り返された。同30日にはバウチスタさん(31歳)が銃撃によって殺害された。

 スミフルは最高裁にストライキ中の労働者の退去と1日につき3800万ペソの損害賠償を求める訴訟を起こしたが、裁判所はこの請求を却下した。最高裁の決定の前日に労働雇用省はこのストライキが公益に重大な影響を及ぼすとして係争を同省の管轄下に移した。

 

 ナショナルセンターであるKMUは戒厳令下のミンダナオでの闘いへの支援を呼びかけるため、マニラ市内でキャンプを設営し、泊まり込んでいる。
 マニラでは戒厳令は布告されていないが市当局はキャンプの強制撤去の警告を繰り返している。

 2月8日のマニラでの集会はキャンプの強制撤去への反対を訴えた。

 

 スミフルは1日1900万ペソの粗利益を上げているにもかかわらず(1ペソは約2円)、労働者の賃金は1日わずか365ペソである。

 ポラスさんは「河野外相はこの地域の経済の活性化の努力を支援すると言ったが、この地域の経済の生命であり推進力である労働者の保護も強調するべきだ」と指摘する。

 

(「ブラットラット」紙2月11日付など)

 

★米 国:教員スト、次々に勝利

 コロラド州デンバーのデンバー教員組合(DCTA)は成果主義賃金システムの是正などを要求して2月11~13日、ストライキに入った。このストライキは08年以降10年余にわたる教育予算削減と企業手法による教育に対する反乱である。

 

 ストライキを背景とした交渉を通じて、新しい協定では基本給と年功・学歴給の割合が引き上げられた。教員の給与のための支出が総額2300万ドル増額され、この学校区の5500人の教員・養護教員・カウンセラーに平均11・7%の賃上げとなる。給与等級は30等級から20等級に減らされ、成果給は制限されることとなった。

 

(「レイバーノーツ」誌2月19日付より要約)

 

 

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