★フランス
首相権限で雇用改革法を強行通過
雇用改革法に反対するストライキとデモが拡大する中、6月22日にパリ警察長官は、労働組合が同24日に予定していたデモを禁止すると発表した。これは6月14日のデモで参加者と警官隊の暴力的な衝突があったことを理由にしている。労働組合によるデモが禁止されたのは1960年代初頭以来初めてである。
この決定に対しては与党内からも大きな批判の声が上がった。また、国民党のルペン党首やサルコジ前大統領さえ、「民主主義に反する」、「合理的な理由がない」と批判した。
政府とCGTの交渉の結果、デモ禁止は撤回されたが、デモコースは大幅に制限された。
24日のパリのデモは6万人が参加した(警察発表は2万人)。大量の警官が動員されたほか、少なくとも85人が予防検束された。
雇用改革法の上院での審議は6月14日から始まり、より企業寄りの修正を加えた上で6月28日に法案が可決された(賛成185票、反対156票)。
6月28日には全国で反対デモが行われ、パリでは5万5千人が参加した(警察発表は1万5千人)。この日、エアフランスの航空管制官などがストライキに入った。エッフェル塔もストライキのために休業となった。
CFDT(社会党系)の全国評議会は6月20日に法案に賛成する立場を再確認する声明を発表し、「最初の法案は労働組合の動員の成果として大幅に修正された。原案は新自由主義に偏っていたが、修正された法案は一貫性があり、バランスが取れている」と評価した。
修正可決された法案は再び下院に送られたが、7月5日に政府は再び憲法49条3項(首相の権限で下院での採決なしで法案を成立させることができる)を使って法案を成立させた。 [原案が5月10日にこの権限を使って下院を通過している。本誌6月15日号を参照]
与党の社会党内でも、反対派の議員はこの法案が行き過ぎであり、労働者が闘いの中で勝ち取ってきた権利を脅かすと非難している。一方、保守政党の間ではこの法案では規制緩和は十分でないという批判が強い。
同日、法案に反対する国会議員の一部は国会前で抗議のデモを行った。この日、パリ市内でも反対デモが行われ、大量の警察官が動員された。
この数カ月の一連のストライキとデモに関連して逮捕者の数は2千人に上っている。
法案は再び上院に送られ、7月下旬にもう一度下院に戻されて最終的な決定が行われる予定である。
(「フランス24」6月28日、「ロイター」7月5日付等より)
★中 国
ウォルマートのストが拡大
中国のウォルマートで5月から導入された新しい勤務時間制度をめぐって、労働者の不満が拡大している。
ウォルマートは中国で433の店舗を設立し、10万人以上を雇用している。新しい勤務時間制度は、1日8時間制を廃止し、月174時間以内であれば経営者が自由に1日の労働時間を割り振ることができるというもの。このような制度は中国では、季節による変動が激しい業種にのみ認められている。
以下は香港の「チャイナ・レイバー・ブレティン」誌7月4日付のレポートである。
中国で少なくとも3つのウォルマートの店舗で200人以上の労働者が7月1日からストライキに入っている。労働者たちは会社が導入しようとしている新しい勤務時間システムに反対しており、また、新たな組合選挙を要求している。
7月1日に江西省南昌市のウォルマート第5782店の130人以上の労働者が「ウォルマートの労働者は立ち上がろう!」、「総合的勤務時間システムにノー」と叫びながら店内でデモを始めた。
前日に会社は労働者の希望に反する新しい勤務時間システムを一方的に導入した。労働者たちによると、経営者は新しいシステムを使って、活動家に対して見せしめに超勤手当てを削減するかも知れない。
同2日には同市の第2039店の約30人の労働者、同4日には四川省成都市の第209店の60人の労働者が連帯してストライキに入った。
3つの店舗の労働者はいずれも同様の要求を掲げている。一方的に導入された総合的勤務時間システムの撤廃、食費補助と皆勤ボーナスの基本給からの分離、現職の職場労働組合委員長の弾劾、労働組合の民主的選挙である。
南昌の第5782店の労働者の代表のドュアン・ユーさんは、「私たちは5月に労働省と南昌市の労働組合連盟に要求を提出しましたが、何の回答も受け取っていません。職場の組合委員長は経営者に逆らうことを怖がっています。だから労働者にはストライキ以外に選択肢はありませんでした」と語っている。
成都の第209店の組合委員会のメンバーのヤン・ダイシンさんは、「私たちの組合の委員長は上級管理者です。ウォルマートがこの前のスタッフ会議で総合的勤務時間システムを始めて提案した時、彼は姿を見せませんでした。今日投票を実施したら労働者たちが彼の弾劾に賛成投票をするのは間違いありません」と語っている。
第2039店の活動家のトゥ・チュンヤンさんは、「私たちがストライキに入ったのは、私たちの声を聞いてもらうためです。しかし私たちはストライキが最終的な目標ではなく、単なる手段であることも理解しています」と語っている。
トゥさんによると、ストライキは経営者にやり方を変え、労働者と交渉することを強制した。「ゼネラルマネージャーはこれまでは非常に傲慢で、ウォルマートを訴えたければ訴えろと私たちに言ってきました。しかしストライキの後、彼は労働者の要求は上司に伝えると言い、私たちに我慢するよう求めました」。
第209店のストライキは続いているが、南昌の2つの店では同3日に経営側が7日以内に労働者の要求に回答すると約束し、労働者たちは職場に戻った。
同誌の7月7日付のレポートは今年上半期に中国で起ったストライキの特徴をまとめている。以下はその要約である。
今年前半の6カ月間に1454件の抗議行動があった。大部分は賃金の遅配、事業所の閉鎖に関連するものである。前年同期と比べると18.6%増えている。
建設労働者による抗議行動がその40%を占める。最も増えているのは交通労働者のストライキで、前年同期の127件から205件となっている。このうち85%がタクシー運転手によるものである。スマホのアプリを使った配車サービスとの競争のため、タクシー運転手が大きな圧力にさらされている。
鉱山労働者のストライキは74件、前年同期の約2倍である。鉱業の不振が続いていることを反映している。今後数年間に約100万人の鉱山労働者が失業すると予想されている。3月9日には黒竜江省双鴨山市で鉱山労働者が賃金遅配に抗議して大規模なデモを行った。
製造業でのストライキは356件で、このうち55%が広東省などの沿岸部4省に集中しており、かつての急激な経済成長を牽引してきた地域における製造業のいっそうの衰退を反映している。
東北部におけるストライキ件数は前年同期とほとんど変わっておらず、この地域の主に国有の重工業部門において当局が一定の安定を維持できているようだ。
将来の労働争議の新たな焦点になりそうなのは小売およびサービス部門である。これらの部門の多くの労働者は正規の雇用契約も社会保険もなく、非常に長時間の労働を強いられ、賃金や労働条件の突然の変更に脅かされる。
最近のウォルマートの販売スタッフや聯合通信(通信事業者、英語名は「チャイナ・ユニコム」)の労働者のストライキはこれらの部門の労働者が日常的に直面している問題を象徴している。
★スリランカ
自由貿易区の労組活動規制に抗議
6月22日、カツナヤケ自由貿易地区で、この国の自由貿易地区における重大な労働組合差別に抗議して3千人の組合員がデモを行った。このデモは6つの組合が参加する独立的な労働組合連合が呼びかけたものである。
15年1月の大統領選挙と8月の総選挙の後、多くの雇用者たちは自由貿易地区から労働組合を排除するための労働法改定を要求してきた。自由貿易地区では組合承認の拒否、組合を中傷する宣伝、職場での組合差別、脅迫、暴力的攻撃の脅し、停職や解雇などの事例が増加している。
今年初めに政府は2千ルピーの賃上げを発表したが(1ルピーは約0.7円)、自由貿易地区の多くの経営者はこの賃上げを実施していない。また、職場におけるセクシャルハラスメントも増えている。
組合は政府が介入して、このような「労働組合から自由な貿易地区」を目指す動きを止めるよう要求している。政府はEUの特恵待遇の回復(人権問題を理由に停止されている)を求めてきたが、経営者のこのような態度はそうした政府の努力を妨げていると組合側は指摘している。
デモに参加した労働者たちは、暴力的攻撃の脅迫の中止、組合を団体交渉の相手として認めること、労働組合活動を理由に解雇されたすべての労働者の復職、組合活動破壊のための臨時労働者の雇用の禁止、セクシャルハラスメントを行った管理者の処罰などの要求を掲げた。
(インダストリオールのウェブより)