●フランス
年金制度「改革」に反対して270万人がデモ
9月7日、サルコジ大統領の年金制度「改革」に反対しCGT、CFDTなどの労働組合が全国220の都市でデモを行い、270万人が参加した(政府の発表では110万人)。パリでは27万人がデモに参加した。
公共部門の労働者がストに入り全国の鉄道の半分が運休、パリの地下鉄も止まり、パリ空港の出発便4分の1がキャンセルとなった。
この日、「改革」法案がエリック・ブルト労働相によって国会に提出された。ブルト労働相は不正献金問題の渦中にあり、野党からの大ブーイングの中で「改革」は「勇気と理性」を表し、「社会協約の重要な要素」と述べた。「改革」は、法定の定年を60歳から62歳に引き上げ(2018年までに)、年金給付開始年齢を65歳あるいは67歳まで段階的に引き上げ、保険料納付期間を40・5年から41・5年への延長により制度破綻を回避するという。
これに対し社会党のマルティーヌ・オブリー党首は、「法律上の60歳定年は、社会的公正に関わる問題。高齢化の問題は考慮が必要だが別の方法があるはず」と批判。
ATTACなどが年金「改革」反対の署名を呼びかけ、大きな反響を呼んでいる。この呼びかけは、次のように指摘している。すでに93年以来の一連の「改革」により給付水準は20%低下し、格差が拡大している。定年延長の一方で、企業は定年前退職を強要している(平均離職年齢は59歳)。若者の失業増大にもかかわらず、退職年齢の引き上げは世代間対立を煽る。しかも、給付率の変動が想定されているため、低賃金労働者はさらに長期間働き続けねばならない。
本当の問題は、金融危機と不況による財政赤字の膨張であり、財政赤字削減は資本家への課税強化で実現するべきだ。これは公正と連帯のための政治的選択である。
下院は9月10日に定年延長の提案を可決した。年金「改革」法全体については同15日に採決が予定されている。上院では同月後半に採決が予定されている。
6つの主要労働組合は、同23日に、再び大規模なストとデモを計画している。世論調査では、年金「改革」については賛否が拮抗しているが、労働組合のストに対しては国民の3分の2が支持しており、また、サルコジ大統領の支持率は30%台に下がっている。
9月7日のストとデモに先立って、同6日に全国の大学および高校の教員が労働条件改善を要求してストに入った。
同4日には、サルコジ大統領によるロマの人々の排斥・国外追放策に抗議して、パリ、マルセーユ、リヨンなど130の市でデモが行われ、約10万人が参加した。パリでは、ロマの人々を先頭に、人権団体、労働組合などの活動家数万人(警察発表は1万2千人)がサルコジ政権の民族排外主義を強く非難した。(「フランス24」、「AP」、「BBC」より)
●スペイン
「労働市場改革」に反対して9・29ゼネストへ
サパテロ政権の「労働市場改革」に反対して2大労組、CO(労働者委員会)とUGT(労働総同盟)は9月29日にゼネストに入る。スペインは08年末の不動産バブルの崩壊により深刻な経済危機に陥り、失業率が20%に達している。
サパテロ首相の社会労働党政権は、解雇規制の緩和、公務員の賃金の5%削減、定年の引き上げ(65歳を67歳に)などの「労働市場改革」を打ち出し、「すべての国は、よりよい明日のために今日を我慢している」(訪日中の記者会見)と訴えているが、COのリーダー、マリソル・パルド氏は「政府は労働者に危機の犠牲を押し付けようとしているが、危機の責任は労働者にはない。不当だ」と語っている。
スペイン経済は2000年代初頭には自由市場の成功例として称賛され、財政も比較的健全で失業率も低下していた。しかし、それは住宅バブルによるもので、最盛期には建設産業がGDPの16%、雇用の12%をもたらしていた。バブル崩壊後は、百万戸以上の新築住宅が売れ残り金融機関も危機に陥り、失業者は460万人を超えている。
サパテロ政権は、当初、公共支出を通じた景気刺激策を試みたが、IMFや他のヨーロッパ諸国の圧力により緊縮財政策に転換。「労働市場改革」を導入しようとしているが、労働組合はこれを「雇用の権利に対するこの30年間で最も重大な攻撃」とみなしている。
スペインの経営者は低賃金とフレキシブルな雇用契約により利益を追求してきた。その結果、外国資本の支配による自動車産業を除き、ハイテクの製造・サービス部門が発展していない。そのため貿易収支が赤字で、金融、観光、建設に過大依存するようになっている。
労働組合は、このような発展モデルを転換し、技術・技能への投資によって生産性を高め、経済バランスの回復を提案。また、財政健全化は、累進課税の強化と税回避(資産や利益を低税率の国へ移す)防止により実現できる。また、政府はバブル崩壊に直撃され、危機に陥っている地方貯蓄銀行(カハス)の民営化を進めようとしている。COの地方役員フェルミン・アレランド・モラス氏によると、カハスは地方政府の管理下にあり、労働者も一定の発言権を持っており、労働者や小企業にとって重要であり経営危機は誇張されている。
9・29ゼネストは、欧州労連の「ヨーロッパ行動デー」に合わせて呼びかけられた。すでに5月28日に鉄道のスト、6月8日に公共セクターのスト、6月29日にはバスク地方のゼネスト、9月9日にはマドリードでの大規模なデモが行われている。このように労働組合の抵抗は拡大している。しかし、政党レベルでは、サパテロ政権の政策に反対しているのは「統一左翼」(IU)だけで、議会での影響力も後退している。IUは現在、新自由主義に反対する新しい連合を呼びかけている。これはATTACなど運動団体や従来の社会労働党支持者にも呼びかけられている。
サパテロ政権の支持率は21%まで下がっており、右派の人民党が支持を拡大している。この状況の中で9・29は、政府にとっても、労働組合や市民運動にとっても、決定的なテストとなるだろう。(「ベルセロナ・レポーター」8月17日付、AFP8月31日付等より)
●中国
日系工場で数百人の女性労働者が残業代削減抗議のスト
以下は「深セン新聞ネット」9月8日付の報道の要約である。
(翻訳 稲垣豊)
9月7日午後1時、深セン市龍崗宝龍工業区のブラザー工業の数百名の労働者は、新たに導入された管理制度および時間外手当などに対する不満から、工場敷地内に集まって会社に対して再検討を要求した。龍崗区および当該地区の政府部門の担当者らが現場に駆けつけ対応し、労働者への説得作業に当たっている。労働者たちは冷静で、過激な行動はみられない。
現場では、ベージュ色の制服をきた女性労働者たち数百人が、敷地内の空き地に出揃い、仕事を放棄していた。警察等がブラザー工業の正門前に警戒線を張り、工場関係者以外の立ち入りを禁止している。
ブラザー工業は日系企業で、おもにプリンターを製造している。ある労働者(03年3月入社)によると、この工場では毎日朝8時から夜9時半まで働かなければならず(昼休みが1時間)、時間内に終わらない場合は残業をしていた。残業代を含めて月1千500元ほどの収入があった(1元は約12円)。
しかし、今年7月1日から深センの最低賃金が引き上げられ(900元→1千100元)、それに伴って残業手当も引き上げられたが、会社側はコスト引き下げのために、新たな規則を導入した。その日のノルマは規定時間内に終え、残業時間を減らせというものだ。
労働強化のため、「忙しすぎてお茶を飲む時間もない。トイレにいくにも他の人に作業を代わってもらわないと、ノルマを終えられない」と労働者たちは訴える。また、ノルマのない日は休みになるが、ノルマが多くて週末に仕事をする場合は以前の休みと振り替えになり、休日出勤手当がつかない。
「……賃金は以前に比べて数百元も少なくなり、作業量は大幅に増加した。これが今後もずっと続くようであれば耐えられないし、体がもたない」と別の労働者は語る。……だからみんなで一緒に仕事を停止し、みんなで集まって、会社に改善を求めたという。
龍崗区共産党委員会宣伝部によると、昨日(7日)、ブラザー工業のトップが会社を視察に訪れた際、一部の労働者たちが休暇の入れ替えや休日出勤の賃金を2倍にとの要望を出した。しかしその場では回答を得られなかったことから、数百名が作業を停止して、会社に回答を迫ったという。
地区の関係部門の担当者らが現場で説得などに当たっている。労働者は冷静で過激な行為には及んでいない。昨日(7日)の午後六時ごろまでに生産は正常化し、関係部署が会社側と労働者代表との交渉の調停にあたっている。……
以下は、インターネット上の書き込みからの抜粋である。
「今日(9月7日)、ブラザー工業(株)の小池利和・代表取締役社長が深センのブラザー工業の視察に訪れた際、賃金・残業代のあまりの低さ、休みの入れ替え、生産ラインの速度の速さ、厳しいノルマ、立ちくらみするほどの業務負担などに不満を持つ全工場の労働者が改善を求めたが、会社側は回答を先延ばしにしたので、ストに突入した。労働者たちは正面ゲートと裏門を封鎖したので、交通が一時混乱し、警察などが封鎖線をはった。
○ 香港の「チャイナ・レイバー・ブレティン」誌のウェブ版によると、ブラザー工業でのストは4日間続き、会社側が基本給の100元引き上げ、諸手当の増額、ノルマの軽減を提示したことを受けて終結した。