アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
947号

★アイスランド
  2時38分に女性たちが一斉にスト

 10月24日、労働組合と女性団体の呼びかけで全国で数千人の女性がジェンダー間の賃金格差に抗議して午後2時38分から一斉にストライキに入った。


 アイスランドはジェンダー間の平等については世界で最も進んだ国だが、それでも女性の賃金は平均的に男性より14〜18%低い。ストライキを呼びかけた労働組合と女性団体によると、これは1日8時間労働なら女性は午後2時28分以降無給で働いていることを意味する。


 首都レイキャビクでは、勤務先のオフィスや店、工場、学校から退出した数千人の女性が都心の広場に集まった。
 この行動には前例がある。1975年10月24日にアイスランドの女性が1日ストに入った。推定によると女性の90%がこのストライキに参加した。女性たちは自分たちの社会的地位が低いことに抗議して、一斉に職場を退出し、家事・育児も拒否した。


 05年には女性たちは午後2時8分以降の労働は無給であるとみなして、この時刻にストライキに入った。08年は午後2時25分だった。
 05年以降の111年間でジェンダー間の賃金格差縮小は時間に換算すれば30分であり、1年に3分にも満たない。このペースでは格差がなくなるのは52年先になる。


 アイスランド労働者連盟のギルフィー・アーンビョンソン委員長は次のように語っている。

 「アイスランドでは60年前に、ジェンダーの違いを根拠に差別することは禁止されています。賃金協約は教育レベルや職種を考慮に入れてもかまいませんが、男か女かを考慮に入れてはなりません。目標に到達するまであと50年も待つなんて誰も我慢できません。ジェンダー間の賃金差別か他の賃金差別かが問題なのではありません。是正するのにあと50年もかかるというのが問題なのです。それは一生かかるということです」

 

(「アイスランドレビュー」10月24日付、英国「インディペンデント」10月25日付より)

 

★ブラジル
  インダストリオール大会でルラ前大統領が演説

 10月4日から、インダストリオール・グローバル・ユニオンの第2回大会がリオデジャネイロで開催された。開会セレモニーでは右翼からの司法やメディアを動員した攻撃と闘っているルラ前大統領が次のように発言した。

 

 私は1969年に労働運動に参加しました。当時は24歳でした。72年に現場労働者としての代議員になり、75年にブラジル金属労働組合の支部委員長になりました。80年には当時の軍事政権によって活動を禁止されました。私たちがストライキを組織したからです。


 スイス・ダボスでの世界経済フォーラムでも飢えを無くし、貧しい人たちを意思決定のプロセスに参加させることは可能だと発言しました。彼らが銀行を救済したのと同じように貧しい人たちを救済すれば、世界の飢えを終わらせることができるでしょう。

 金融システムを救済するために14兆ドルが使われました。その結果が現在の状況です。そのお金を生産的投資に使い、雇用を創出していたなら、私たちはもっとよい生活ができたでしょう。

 問題の解決に労働者を参加させていれば、多くのエコノミストや経済学博士たちよりも彼ら・彼女らは、はるかに賢明な決定をしていただろうと私は確信しています。……


 ブラジルでは良質の雇用を創出し、強い、持続可能な経済を建設するために真の進歩が実現しつつありました。しかし右翼によるクーデターはすべての成果を無に帰そうとしています。
 私たちはまだ残っている民主主義的空間を活用する必要があります。私たちは勝ち取った権利を守るため闘い、違ったやり方があることを全世界に知らせる必要があるのです。

 

(「インダストリオール」のウェブより)

 

★ベトナム
  FTA・TPP対応で労働法改定の議論

 ベトナム政府はTPPおよびEUとの間のEVFTAの締結に伴って、ILOの「労働における基本的原則および権利に関する宣言」(1998年)に準拠した労働法改正の検討を開始している。


 10月24日にはハノイで、ILOとベトナム労働・戦傷者・社会省の共催で「べトナムのグローバル経済への統合」に関するワークショップが開催され、社会的対話、労働生産性、労働条件改善が課題であることが強調された。

 ドアン・マウ・ディエップ副労働相は今こそベトナム政府は生産性を高め、労働条件を改善するためにこれらの分野における政策を見直すべきだと述べた。


 ILOベトナム事務所のチャン・ヒー・リー所長は、持続可能な生活条件を保証するために競争力のある経済が必要であると強調した。また、グローバル化が労働者にもたらす否定的な影響を最小限にするために、持続可能なビジネス環境と柔軟な労働市場が必要であると述べた。

 

 チュオン・タン・サン・ベトナム社会主義共和国主席は9月24日に、ベトナム労働総連合(VGCL)との会合で組合活動の改善を促した。この会合で同主席は、ASEAN、WTO、TPP等を通じて国際経済との統合が加速化しており、それが労働者や労働組合に多くの影響をもたらすことを強調した。

 また、VGCLとその支部はその活動を刷新し、多様化させる必要があり、特に非国有部門における組織化を進めるべきであると指摘した。VGCLは現時点で2万6千余の労働協約を締結しており、全企業の75.7%で組合が組織されている。

 

 祖国戦線のグエン・ティエン・ニャン議長は9月20日にVGCLとの会合で、グローバル化の圧力の中で、VGCLは労働者が直面する問題を予測し、それに取り組まなければならないと指摘した。

 また、組合を中小企業に広げること、労働者と経営者の協調的な関係の確立を率先する有能な組合スタッフの育成が必要であると述べた。


 VGCLは祖国戦線に対して労働者のための法律・規制の確立や、社会保険・健康保険に関連する監督の強化のために連携することを提案した。

 VGCLは920万人余の組合員を擁しており、今年1〜7月に労働関連の政策の実施を監督するために1万1千件余の調査を実施し、14万人余の労働者に法律相談を提供した。
 この会合では、企業による社会保険・健康保険・雇用保険の拠出金(10人以上を雇用する企業は拠出を義務付けられている)の不払い・過少払いに対処するため、社会保障局とVGCLが連携する(企業の拠出状況に関するデータの提供など)ことが合意された。


 社会保障局によると、企業による保険拠出金の未払いは累積で14兆ドン(1ベトナム・ドンは約200分の1円)に達している。

 VGCLは民事訴訟法の下で違反企業を訴えることができる。

 

(「ベトナム・ニューズ」9月21日付および26日付、「ハノイ・タイムズ」10月27日付より)

 

★ベトナム
  ホーチミン市の党書記がスト激励

 ベトナム共産党ホーチミン市委員会のディン・ラー・タイン第一書記は8月23日、タントゥアン輸出加工区の視察中に、同市の労働総連合のトラン・キム・イェン委員長と会見した際、「ホーチミン市の労働総連合はストライキに成功したことがあるか」と尋ねた。同委員長が「ありません」と答えた時、同第一書記は「そのような経験がないのなら、大胆に挑戦するべきだ」と述べた。


 ディン第一書記は、「これまでのストライキはすべて労働者自身の信任によって行われたと聞いている。ほとんどのケースで、ストライキの結果、労働者の要求が認められていることに注目すべきだ。つまり労働者の要求は正当だった。なぜ労働組合は労働者のための合法的なストライキをやらないのか」と語った。


 タントゥアン輸出加工区の組合リーダーは、「組合はストなしで要求を実現するべきであり、自然発生的なストライキは危険だ。有能なリーダーと、適当な手続きが必要だ」と反論したが、同第一書記は「問題は労働者が組合役員を自分たちのリーダーだと考えていないことだ。この問題を深刻に考えるべきだ」と答えた。

 

(「トイ・チェー(若者)・ニューズ」8月23日付)

 

★韓 国
  移住労働者支援のセンターが設立

 ベトナム労働総連合(VGCL)のグエン・バン・ガン副委員長は10月10日、韓国・ソウルで開催された移住労働者支援センターの設立記念セレモニーに出席した。
 このセンターは6月22日にVGCLと韓国民主労総の間で合意された2カ国間協力プログラムの一環として設立される。


 韓国には雇用許可システムの下で約7万5千人のベトナム人労働者が就労しており、民主労総は社会保険・社会保障、最低賃金の引き上げ、労働衛生・安全の面で支援を提供する。
 同副委員長は、VGCLと民主労総が老若男女の移住労働者の権利を保護するために情報と経験を交流することを称え、ベトナム人労働者が団結し、法律を守り、受入国の社会に溶け込むことを期待すると述べた。

 

(「ベトナム通信」10月12日付)

 

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