★ブラジル:ワールドカップに抗議して全国でデモ
ワールドカップ開幕直前の6月5日、サンパウロの地下鉄労組が無期限ストに入った。組合は生活費高騰のため12.2%の賃上げを要求。当局の回答は8.7%である。
5日間のストの中で42人の労働者が解雇され、各地で警官隊による攻撃が繰り返された。裁判所はストの差し止め請求を認め、違反した場合は高額の罰金を支払わなければならないとする決定を下した。
組合は同9日に、ストを2日間停止して、組合員投票の実施を発表し、10日から運行が再開された。しかし組合投票では数千人の組合員がストの継続に賛成した。
リオデジャネイロでも、空港の地上勤務の職員や清掃作業員が6月12日に24時間ストを計画していたが、裁判所が差し止め請求を認める決定を下した(違反した場合、1時間につき約23万ドルの罰金)ため、中止を余儀なくされた。
競技場周辺ではワールドカップ反対のデモに1万人が参加。MST(土地を持たない農業労働者運動)の活動家たちは市内の道路や会場近くの駅を一時占拠した。首都ブラジリアでは、土地の権利を求める先住民がデモを行い、警官隊に矢を放った。
ブラジルでは昨年6月のバス料金値上げ反対のデモ以来、さまざまな社会階層がそれぞれの要求を掲げてデモに参加しており、特にワールドカップへの批判が高まってきた。
110億ドルもの国家財政が投入された。ずさんな建設工事のために少なくとも8人の労働者が労災で死亡した。開催地周辺で25万人以上の住民が関連工事のために退去を求められた。
07年に招致が決まった時、ブラジルの圧倒的多数の人々が歓呼したが、最近の世論調査では61%の人々が開催に批判的だ。ルセフ政権の強硬な姿勢と警察官の暴力に対しても批判が高まっている。反対運動やテロを警戒して、会場や選手の警備のために国家財政から8億5千万ドルが投入されている。
公共部門の労働組合はワールドカップと10月の大統領選挙を射程に入れて、攻勢を強めようとしている。
(「イコールタイムズ」6月12日付、「ガーディアン」同日付、「Zネット」同日付など)
★中国:スミダの広州工場で組合結成に対し妨害
スミダ・コーポレーション(自動車・家電用電子部品の製造・販売)の広州工場(従業員6千人余)で労働者たちが自主的な労働組合結成を呼びかけてきた。これに対し会社側は御用組合結成を画策、地区の総工会もそれを容認してきた。
スミダ・コーポレーション(旧称、スミダ電機、本社は東京都中央区)は、1989年に韓国・馬山自由貿易区の工場閉鎖をめぐる韓日労働者の共闘で知られている。中国では84年から中国・広州市番禺区で委託加工を行っている。他に太平(広東省東完)、南寧(広西省)、上海、常徳(湖南省)、吉安(江西省)、宿遷(江蘇省)に工場がある。
組合の役員選挙をめぐって、状況は緊迫している。
「中国スミダ労働者から働く仲間への訴え」(6月11日付)によると、スミダでの賃金は基本給が1630元で、この地域の最低賃金(1550元)を少し上回るだけのため、残業なしでは生活できない。また、社会保険と住宅積立金においても多くの違法問題がある。
「13年9月に千人余のスミダの働く仲間が署名し、代表を選び、各方面に対して会社側の違法行為を訴え、労働者の権利実現のために、工場側に交渉をせまり、社会保険の未加入期間分の追納、賃金引上げなどを要求しました。しかし工場側は武装警察大隊を呼んで、私たちの代表を会議室に閉じ込めてしまいました。私たち労働者は団結と闘争を堅持し、最終的に2014年までに、02年以降の社会保険料の追納をかちとりました。
しかしそのときの闘争の不十分さにより、実現した成果も充分とは言えませんでした。さらに、率先して闘った10人全員が解雇されてしまったのです!
私たちは労働組合を持つことでしか会社と対等に交渉できないことを理解しました。……自分たちの労働組合を法に従って設立することは、現在何よりも重要なことなのです。ここで強調したいのは、法に従って、私たち労働者がコントロールする労働組合、つまりは赤色労働組合を設立する、ということです」。
「……14年5月16日、私たち数名の組合準備会のメンバーが、上部機関である地域労組に組合準備会の届出をした際に、会社側がすでに黄色労働組合結成の準備を進めていることを知りました。狡猾な会社は、私たちの決意の固さをみて、先に黄色労働組合をつくり、搾取や抑圧を続ける戦術にでたのです。ここに、労使双方による、スミダ労働組合の主導権争いが正式に幕を開けたのです。
……会社は組合選挙の準備を進めています。彼らは業務の上下関係を通じ、私たちの仲間の立候補を妨害し、会社のいうことを聞く人間を委員長選挙の候補者に推薦し、労働者自身の労働組合の誕生を抹殺し、会社にコントロールされた黄色労組を設立してこれからも搾取を続けることを狙っています!……」
労働者たちは上部機関である大龍街道労働組合の妨害についても、広州市総工会に対して要請文を送っている(6月11日付)。それによると、6月9日に広東省および広州市総工会の各級機関のメンバー10名がこの工場の10名の労働者代表と会合した際に、@3日以内に(会社側の)労組準備会の業務の進展状況、準備会メンバーの名前と経歴を公布し、準備会に一定の比率で生産ライン労働者を参加させること、A透明、公開、公平、公正な民主的選挙を行うことなどに合意した。6月10日午後に準備会メンバーの名簿が公表されたが、@従業員名簿に記載されていない者が含まれている、A別の事業所の従業員が含まれている、B一部のメンバーは自分が準備会のメンバーであることを知らなかった等の問題が判明している。
「……以上のような状況に鑑み、大龍街道労働組合は準備会の状況の確認を行わずに準備会の成立を許可したことは無責任な行為であると言わざるを得ません。このような理由から、会社による労組結成準備会は多くの問題と違法状況が存在するとともに、会社と大龍街道労働組合に対する私たちの信頼を大いに損ねており、組合法の重大な違反でもあります。私たちは会社の違法行為に対して、広州市総工会が介入することを求めるものです」。
会社側は6月10日に「準備会」の名簿を公表し、6月10日から16日の間に組合選挙を行うと発表した。6月13日午後から、自主的労働組合を求める活動的なメンバーに対して「囚籠作戦」、すなわち厳重な監視と行動の規制を実施し、トイレに行くときでさえ監視者が尾行している。
(翻訳 稲垣豊)
★バングラデシュ:衣料労組への妨害、組合リーダーの解雇が続く
バングラデシュでは、昨年4月のラナプラザ・ビルの倒壊の惨事以降、国際的な批判の高まりの中で、労働組合法が改定され、衣料産業における労働組合活動が原則的に自由化された。この1年間で130余の工場で新たに組合が結成された。しかし、組合の結成は依然として非常に困難で、多くの犠牲を伴っている。
最近の事例として、ダッカ郊外のガジプールのラアジ社(地域の衣料工場と契約している洗濯工場、従業員約400人)で組合活動に対し悪質な妨害が続いている。
以下は、この工場の労働組合の組織化を支援してきた「統一衣料労働者連盟」(SGSF)のナズマ・アクテル委員長からの緊急アピールである。
ラアジ社の労働者は、残業手当の不払い、残業の強制、その他の労働法違反の問題に対処するため、SGSFの支援を受けて労働組合を結成し、今年1月16日に組合登録が受理されている。
組合登録が受理された直後から、組合役員に対して仕事をさせない等の嫌がらせや脅迫が続いている。4月以降は執行委員のほかに一般組合員にも同様の嫌がらせが行われている。組合の会計のロジナさんは妊娠中にもかかわらず夜勤を命じられている。また、組合の切り崩しを目的として、非組合員の賃金を引き上げ、組合員の賃金を据え置いている。4月16日には組合書記長のナズルル・イスラムさんが会社に呼び出されて暴行を受け、解雇を通告された。
組合はダッカの労働局に苦情申し立てを繰り返しているが、何の対応もない。
ソリダリティー・センター・バングラデシュ(米国AFL・CIOの支援組織)は、4月23日に労働雇用省に、労働組合の活動を保護するための適切な措置を取ることを求める要請書を送付した。
この要請書の提出の後、組合員に対する攻撃はさらに強まっており、組合員に対する解雇や暴力が頻発している。
組合活動を理由に解雇された労働者の数は60人に達している。会社側はナズルル書記長をはじめ3人の組合員に対して、でっち上げの刑事告訴を行った。
組合は3月に会社に団体交渉を申し入れたが、会社側は拒否している。これは労働法に反している。
組合の会計のロジナさんも5月18日に解雇された。被解雇者の代わりに雇用された労働者たちは、採用にあたって組合に加入しないことを確約させられている。
SGSFは次の要求を掲げて、支援を訴えている。
◎解雇の即時撤回と、解雇期間中の賃金の支払い
◎組合との団交に応じること
◎3人の組合員に対する告訴の取り下げ
◎組合活動への妨害をやめ、責任者を処罰すること