コロンビア:ゼネストが拡大、20万人が親米・右派政権に抗議デモ
8月19日に農民・農業労働者のデモから始まった闘いが、鉱山労働者、教員、医師、トラック運転手、学生など広範な人々によるゼネストへと拡大中。同20日には全国20の州でのデモに約20万人が参加。
各地でのストと道路封鎖の影響で、首都ボゴタでは果物や野菜の流通が止まっている。各地で警官隊による暴力的な弾圧が続いており、政府は労働者や農民の闘いを「FARC(コロンビア革命武装勢力)による破壊活動」であると非難している。
最大労組のCUT(中央労働組合連合)の声明は「(このストは)サントス政権が反労働組合的で不人気な政策による状況を非難するものである」と指摘している。全国農場労働者組合(NUFW)のエデルト・ディアス委員長は、EU、米国、カナダとのFTA(自由貿易協定)により安い農産品が輸入されるようになる一方で、燃料や肥料の価格が高騰していると指摘。
サントス政権が進めてきた新自由主義政策の結果、コーヒー、カカオ、砂糖産業が危機に瀕しており、農民・農業労働者たちはこれらの産業に対して政府の支援を要求している。
また、サントス政権は多国籍鉱山企業に対する優遇政策を進め、鉱山労働者の闘争を暴力的に弾圧してきた。
医療労働者たちは民営化等の一連の「改革」に反対しており、トラック労働者たちは低賃金とガソリン価格の高騰に抗議している。
(「コモン・ドリームズ」8月25日付、「VOXXI」同27日付など)
チリ:郵便労働者が賃上げ要求でストライキ」
コレオス・デ・チレ(国営郵便会社)の労働者が賃上げを要求し8月7日午前0時からストを実施。労働者たちは10日前から職場放棄で経営側と継続交渉をしてきた。
組合側は、郵便労働者の賃金は法定最低賃金を下回っていると指摘し、4万5千ペソ(1ペソは約0.2円)の賃上げを要求している。
労働者たちはサンチアゴの旧市街と市の中心部を結ぶピオノノ橋の一角を占拠。橋とフェンスに巨大な旗と、スローガンを書いたバナーを広げている。
この場所に、象徴的な意味がある。郵便労働者20年のマルセロ・オリバレスさんによると、「この橋は労働者階級と上流階級の分裂を象徴している」。川の旧市街側の労働者居住地区にはゴミや川岸の木片が散乱している。反対側は巨大広告やオフィスビルが並んでいる。
支援者たちがこの場所に集まり、闘争歌を歌ったり資金や食料をカンパする。地元の画家がカラフルな壁画の制作を手伝う。スト中のホームセンターの労働者たちもやってきて、郵便労働者といっしょに市内をデモ行進した。
郵便物の集配は1ヵ月間ストップしており、各国の国際郵便事業者も顧客に遅配を警告している。
メキシコ:貨物列車の脱線で移住労働者8人が死亡
8月25日午前3時に、メキシコ東部のタバスコ州で中央アメリカからの移住労働者250人以上を乗せた貨物列車(8両編成)が脱線、同28日までに8人の遺体が見つかっている。このうち身元が確認された6人はすべてホンジュラスから許可証なしに来た人たちである。
この列車は、グアテマラとの国境近くから、メキシコを縦断、米国との国境まで運行されている。
中央アメリカ諸国から米国へ移住しようとする人たちが、多い時で数百人、この列車の屋根に乗って移動しており、非常に危険なことから「野獣(ビースト)」と呼ばれている。
近年、メキシコから米国への移住は減っているが、中央アメリカからメキシコ経由での移住は急増している。昨年、米国の国境管理当局が逮捕したメキシコ人以外の移住者数は、9万9千人と前年の2倍以上、大部分は中央アメリカ出身だ。その背景にはそれぞれの国での貧困と暴力の拡大がある。
中央アメリカからの移住者は、走行中の列車の屋根に飛び乗る危険だけでなく、メキシコの警察官の腐敗や犯罪行為、ギャングによる誘拐や恐喝、殺人などの危険もある。
(8月25日付「AP」、同28日付「グローバルポスト」など)
エジプト:6月30日の政変後の労働運動
以下はMERIP(中東研究情報プロジェクト)のウェブに掲載されたジョエル・ベイニン氏のレポート(8月23日付)の要約である。
ムバラク政権打倒後に開花した独立的労働運動は、「タマロド(反乱)運動」が6月30日に呼びかけたモルシ政権退陣要求のデモを熱烈に支持した。
最も古い労働NGO(1990年代に設立)であるCTUWS(労働組合および労働者サービスのためのセンター)は、タマロドが呼びかけた署名運動に20万人の署名を集めた。EFITU(エジプト独立労働組合連合)、EDLC(エジプト民主労働会議)、PCAW(アレクサンドリア労働者会議)の3つの独立労組もこの署名運動および6月30日のデモに参加した。6月30日のデモにはこれらの活動家を含めて200万人以上が参加した。
タマロド運動は早期の大統領選挙実施を要求していたが、この大衆運動を背景に政権を掌握した軍はその後、ムスリム同胞団に対する強権的弾圧を進める一方、労働運動への弾圧を強化している。
軍に支持されたマンスール政権は、EFITUの初代委員長のカマル・アブ・エイタ(ムスリム同胞団との連立政権に参加していたカラマ党の国会議員でもある)を、労働力・移民相として入閣させた。また、カイロ大学教授(労働法)で、独立労働組合の支持者であるアフマド・ハッサン・アルブリを社会連帯相に任命した。
アブ・エイタはモルシ政権打倒の後、「前政権の下でストを主導した労働者は、今は生産活動を主導するべきだ」と宣言した。彼はその後、新政権がスエズ・スチール社の戦闘的なストを弾圧するのを黙認した。アブ・エイタは新しい労働法の起草を担当するが、内閣の多数を占める新資本家の閣僚たちや軍が、彼の起草する労働法を承認する可能性はほとんどない。
EFITUの内部では、アブ・エイタの入閣と軍の民政移管ロードマップへの賛否をめぐって激しい論争が行われてきた。
執行部の多数派は、アブ・エイタの入閣は労働運動の勝利であり、アブ・エイタは政府内で労働者の要求実現のために努力すべきであるという立場である。執行委員会は軍の民政移管ロードマップを支持する声明を発表している。
しかし、執行委員の一人であるファトマ・ラマダンさんはアブ・エイタの任命を、運動を取り込むための策略であると考えている。彼女によると、アブ・エイタは、事前にEFITUに相談することなく、「労働者はストの武器を放棄すべきだ」と発言した。ラマダンさんは次のように述べている。「労働組合連合として、われわれの役割は労働者のすべての権利ストの権利を含めて守ることだ。労働者に対して、国民経済を活性化させるという口実で労働者の権利を放棄することで企業家の利益を擁護するよう呼びかけることはできない」。
ラマダンさんは軍と旧政権(ムバラク政権)の残党が6月30日の運動を簒奪(さんだつ)したと考えている。
PCAWも、スト運動の中止を呼びかけたアブ・エイタの発言を受け入れないことを表明している。
EFITU内のラマダンさんたちや、PCAWや、ECESR(エジプト経済社会権センター)は6月30日のデモを支持したが、7月8日のマンスール暫定大統領の憲法宣言や、軍の民政移管ロードマップには公然と反対している。
PCAWはビブラウィ暫定首相がムバラク政権崩壊直後の時期に軍によって閣僚に指名されたことや、新自由主義の信奉者として知られていることから、強い不信感を表明している。ECESRは、憲法宣言が6月30日のデモを呼びかけた政治勢力や団体との協議もなしに発表されたことや、社会的・経済的権利に関する言及がないことを指摘し、「革命の原則に反する立憲クーデター」であると非難している。
6月30日のデモを支持したCTUWSは、軍主導の政権に対しては支持も批判も表明していない。CTUWSと連携してきた労働組合は2011年夏にEFITUを脱退し、13年4月にEDLCを結成した(186組合が加盟)。2011年10月にアレクサンドリアで荷役会社の1500人の労働者のストを指導して懲役3年の判決を受けたユスリ・マルーフ氏(13年7月に控訴審で逆転無罪)が、EDLCの委員長に就任した。このことはEDLCのスト権擁護の立場を明確にしている。
暫定政権の意図が明らかになり、また、強権的な弾圧が繰り返される中で、アブ・エイタへの批判が強まっている。
ムバラク打倒以降の労働運動の主要な成果は、独立労働組合およびその連合組織の確立と、最低賃金の確立(月700ポンド=約1万円)である。ただし最低賃金制が実際に実施されるかどうかは不確かである。これらの成果は街頭における直接行動によって勝ち取られたものである。ムバラク打倒以降も数千人の労働組合活動家が、ストや座り込みへの参加を理由に逮捕あるいは解雇されてきた。
現在、独立労働組合の中心的な課題は、被解雇者の復職、臨時雇用労働者の正規雇用化、最低賃金を1500ポンドへ引き上げ、最低賃金制の確立、スト権の擁護、労働組合の自由に関する法律の制定である。これらの課題は、軍によって担がれた政府を通じてではなく、継続的な大衆的行動によって獲得できるだろう。