アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
900号

★ベルギー:「労働改革」に反対して12万人がデモ、12.15全国ストへ

 ベルギーの主要労働組合、キリスト教労働組合総連合(ACV・CSC)、労働総同盟(ABVV・FGTB)、自由労働組合連合(CGSLB)は10月16日、政府の緊縮政策と退職年齢(年金支給年齢)引き上げに反対する一連の地域ストと12月15日の全国ストを呼びかけた。地域ストは11月24日以降、月曜日ごとに行われる。


 10月に発足したミシェル首相の連立内閣は、18年までに財政赤字削減目標を実現するためとして、年金支給年齢の引き上げ(65歳から67歳へ)、賃金と物価のスライド制の廃止、医療・福祉予算の削減などの政策を発表した。
 11月6日、労働組合が呼びかけた緊縮政策と「労働改革」に反対するデモがブリュッセルで行われ、12万人が参加、この30年間で最大の労働者のデモとなった。
 同日付「ロイター」は次のように報じている(抄訳)。


 木曜日、ブリュッセル中心部で、新しい中道右派政権の改革とコスト削減政策に反対する概ね平和的なデモの後、ベルギー警察と、港湾労働者等多数のデモ参加者の間で衝突が起こった。
 約10万人がデモに参加した。これは今後数週間に計画されている一連のデモとストの最初だった。
 ミシェル首相は同日午後に主要3労組のリーダーと会談したが、何の明確な譲歩も示さなかった。
 労働組合によると、港湾、金属等の労働者の他に学生も参加し全体で12万人がデモに参加した。
 SNCB(国鉄)によると、全国からブリュッセルに集まるために8万枚の予約切符が販売され、15の専用列車が増発された。労働組合はバス500台をチャーターした。
 ACVのリーダーのマーク・リーマンズさんは「これは明らかな警鐘だ。人々は怒っている。政府の政策は完全に偏っている」と語っている。


 26年ぶりに政権から排除された社会党の活動家たちは、(緊縮政策が)労働者を苦しめ、金持ちには何の影響もないと不満を述べている。
 ルポ前首相は「私は人々の懸念を共有する。政府の措置は不公正だ」と語っている。
 中央銀行のルク・コーエン総裁は、「ベルギーは公的債務をGDPの100%まで削減し、競争率を高めなければならない。今行動しなければ次の世代が直面する問題を大きくするだけだ」と述べている。


 同日付の「AP」は、次のように指摘している。

 「ベルギーは戦後、雇用者と労働者の間の団体交渉の伝統が続いており、これまでの連立政権は広範な世論を反映し、社会的な対立を抑制できていた。しかし現在の連立政権は経営者寄りの3つの政党と、中道派のキリスト教民主党の連合であり、市場自由主義的な政策を明確に打ち出した最近では初めての政権である」。

 

 

★南アフリカ「COSATUが最大労組NUMSAを除名

 11月8日、COSATU(南アフリカ労働組合会議)の特別中央執行委員会で、最大労組NUMSA(南アフリカ全国金属労働組合、約35万人)の除名を決定した。
 NUMSAはANC(アフリカ民族会議)政権とCOSATUのリーダーたちが進めている新自由主義的政策に反対して、5月7日の総選挙でANCへの支持を拒否した(詳細については本誌3月1日号を参照)。
 以下はNUMSAの同9日付の声明の要旨である。


 われわれが南アフリカの労働者や広範な大衆に警鐘を鳴らしていたことが本当に起こってしまった。11月8日、土曜日の早朝(午前1時ごろ)、COSATUの特別中央執行委員会はNUMSAの除名を決定した。賛成33、反対28だった。
 われわれはこの徒党的で無責任な行動に対する怒りと失望を表明する。少数のリーダーたち(その多くは自分の所属組織からの信任を得ていない)が自分たちだけの多数決で、220万人の組合員の将来を決定してしまったのだ。 


 COSATUは規約に基づいて運営される組織であり、規約は必要が生じたときに、一定数の組合が民主主義的手続きに基づいて要求した場合に特別全国大会を開催することを定めている。
 NUMSAはこの規約に基づいて特別全国大会の開催を要求した。ANCの政策が労働者階級に与えている否定的な影響が看過できない状況にあったからである。
 最も重要な対立点の1つは、規約が定めるように労働者階級の利益を擁護するのか、ANC、SACP(南アフリカ共産党)との三者連合のために労働者階級の利益を犠牲にするかである。


 NUMSAの最大の罪とされたのは、NUMSAが大会でANCの政策によりもたらされた結果について議論し、COSATUの政治的独立を主張したこと、そしてわれわれの大会の決議をCOSATUの特別全国大会で議論するよう求めたことだった。
 ANCの基本政策であるNDP(全国開発計画)は親アパルトヘイト的だった民主連合が提唱した政策の切り貼りであり、「成長・雇用・再分配(GEAR)」は戦闘的かつ大衆的な綱領であった「自由憲章」を反故にする内容である。
 マリカナ鉱山でも、農業労働者のストでも、軍は資本家の側に立って介入し、生活できる賃金を要求した労働者たちを虐殺した。


 COSATU中央執行委員会のNUMSAに対する処分は恣意的である。これまでもNUMSAだけでなく他の組合もANCや三者連合の政策を批判してきた。組合費や政治活動費を納入していない単組もある。しかし、中央執行委員会がそのことを理由に処分したことはない。

 もう1つの問題は、NUMSAが提唱している「バリュー・チェーンの組織化」(関連産業の組織化)である。これは他の組合でも行われていて、それに伴う組合間の競合も一般化している。
 COSATUのリーダーたちの規約違反の行動や分裂主義的な行動についてもわれわれの立場を繰り返しておこう。

 食品合同労組(FAWU)が13年4月に特別全国大会の開催を要求し、他の8つの労組の支持により規約上の要件が満たされたにもかかわらず、COSATU議長はこれを拒否した。バビ書記長に対する停職処分は高裁判決によって取り消された。第2副議長はすでに出身労組から脱退しており、資格がないにもかかわらず中央執行委員会に出席している。

 NUMSAの今後の方針については大会と大衆集会を開いて話し合う予定である。闘いは終わっていない。われわれはNUMSAのすべての組合員に対して団結を維持し、COSATU議長を中心とする徒党によるNUMSAの除名という規約違反の決定を拒否することを呼びかける。


 今日、COSATUのリーダーたちはエリジャ・バライ(初代議長)やジョン・ゴモモ(元議長)の組合、多くの労働者の犠牲と血と汗の上に築かれてきた組合を意図的に破壊しようとしている。NUMSAは今後も、別の形で、COSATUの中で活動を続けることを決意している。地方のリーダーたちに、COSATUのあらゆるレベルの会議・集会に大挙して参加することを呼びかける。
 NUMSAやCOSATUの旧リーダーたちを中心に、NUMSAを排除するための特別なプロジェクトが進められており、自分たちが作った南アフリカ金属電気労働組合(MEWUSA)を使って労働者を分裂させようとしている。われわれはこれに対して反撃を準備している。
NUMSAは13年12月の特別大会の決議に基づいて、14年12月に全国的な統一戦線を結成する。


 われわれは15年3月の中央委員会で、「社会主義のための運動」の活動を強化する。われわれは依然として労働者階級の独立した政治機関を追求する。連帯こそが力であり、団結こそが力である。

 

 

★米国:サンフランシスコ市で最賃15ドルに引き上げ

 11月4日、連邦議会の中間選挙と合わせて実施された住民投票で、サンフランシスコでは同市で働くすべての労働者を対象に、18年までに最低賃金を15ドルに引き上げる法律が可決された。
 シアトルでも6月に「最低賃金15ドル」が市議会で可決されているが、シアトルでの完全実施は21年で、ただし、例外規定が設けられている。
 SEIU(サービス従業員組合)第1021支部のアリサベス・アレキサンダー副委員長は、「シアトルがみんなを元気づけた。シアトルが基準を設定した」と語る。同支部はカリフォルニア州北部で5万4千人を組織しており、住民投票の運動の中心を担った。


 サンフランシスコでは今年初めから、労働組合が地域のさまざまな団体と協力して署名を集め、大キャンペーンを展開してきた。
 可決された法律によると、同市の最低賃金は現行の10.74ドルから、16年1月に11ドル、5月に12.25ドル、17年に14ドル、18年に15ドルに引き上げられる。その後は生活費の上昇に見合って引き上げられる。シアトルのような、小規模企業に対する例外措置はない。
 同市の商工会議所は例外規定を設けた別の法案を提案したが、「提案J」(組合を中心とした団体の提案)が76%の支持を獲得した。
 オークランド市では最低賃金を15年3月から12.25ドルに引き上げる法案が可決された。
 アラスカ、アーカンサス、ネブラスカ、サウスダコタの各州でも最低賃金引き上げが州民投票によって可決された。


 アレキサンダーさんたちは、最賃引上げと同時に、「小売産業労働者の権利憲章」運動を進めている。不安定な就労時間をなくし、労働者が決まった時間に働けるようにするためである。

(「Zネット」11月10日付より抄訳)

 

 

 

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