★メキシコ:「教育改革」に反対して教員がスト
教員組合の左派グループ、全国教育労働者調整委員会(CNTE)は、ペニャニエト大統領が進める「教育改革」に反対する闘いを続けている(本誌13年10月1日号に関連記事)。
CNTEは6月1日から、13年に導入された教員評価制度(雇用継続のためには評価を受けなければならない)の撤回等を要求してオアハカ、ミチョアカン、グレロ、チアパスなどの州で無期限ストライキに入った。
同1日にメキシコシティーでは数百人の組合員がデモを行った。同3日には約200人の組合員がオアハカ州のソソコトラン国際空港を封鎖した。同5日にはミチョアカン州の州都モレリアで、CNTEが呼びかけた「教育改革」反対のデモに12万人が参加した。
6月7日に中間選挙(連邦議会と9つの州の知事など)が予定されていたことから、政府は5月29日に教員評価制度の導入の無期限凍結を発表してストライキの回避を図った。しかし、CNTEは「教育改革」の全面撤回と他の要求(学生の授業料の廃止、教員の賃上げ、昨年9月に誘拐され、行方不明になっている43人の学生の安全な帰還)が受け入れられるまでストライキを継続し、6月7日の中間選挙をボイコットすると宣言した。6月10日にはメキシコシティーで5万人が「教育改革」反対のデモに参加した(政府発表は5千人)。
以下は、「テレスール」(ベネズエラの国際放送)6月6日付の、メキシコ教員組合(SNTE)のモハメド・オタキ・トレド代表のインタビューの要旨である。
−−あなた方の要求は何ですか? その実現のために何を提案していますか?
組合は(13年に改定された)憲法第3条と73条の撤回を要求しています。第3条は教育の民営化を規定しています。このままでは公教育はなくなり、教育は義務でも無償でもなくなります。第73条では、学校の校舎やその他の必要な設備の費用を保護者が負担することが求められています。組合は、このような民営化の計画に反対しています。
−−教育相や政府との交渉で何か進展がありましたか?
CNTEの闘争戦略は、動員し、交渉し、さらに動員するということです。オアハカ州では11項目の要求を提出し、そのうちのいくつかは進展があります。政治犯の釈放や未払い賃金の支払いについての要求です。しかし主要な要求である憲法第3条と73条の撤回や教育改革の問題、また、連邦政府が導入しようとしている懲罰的な教員評価制度については進展していません。
−−メキシコ政府はオアハカ州の教員の行動が暴力的であると言っています。組合の側に 暴力的な行動はあったのでしょうか?
私たちは保護者や学生、教員、市民が協力して、意識的な方法で市民に働きかけてきました。これが運動の草の根の基盤となっています。しかし連邦政府がこの運動を軽視し、責任のある態度を示さないので、そのようなタイプの行動を行わざるをえませんでした。私たちはまた、連邦政府が警察や準軍事組織による弾圧を使い、また広範なメディアを使って運動を不当なものとして扱い、保護者や学生たちとの衝突を煽っていたことを知っています。
−−あなた方が裁判所を占拠しようと計画していると聞いています。メキシコシティーでそんなことが起こったら警察が直ちに介入するでしょう。そのような衝突を避けるために、別の交渉方法を考えていますか?
オアハカ州では先例があります。06年6月14日に抑圧的な政府に対する歴史的な闘争があり、その運動の中から民衆議会が生まれました。13年には私たちはメキシコシティーの国際空港を占拠して警官隊と対峙しました。現在私たちは、オアハカの地方的な要求を掲げた闘争と選挙ボイコットを計画しています。連邦政府から回答が得られない場合、13年の時のように、メキシコシティーで大衆的な動員と大衆的なストライキを呼びかける可能性も考えています。
−−選挙ボイコットをどの程度まで行う計画ですか?
「解決がなければ選挙もない」というスローガンは、私たちの要求に耳を傾けさせるための圧力の手段です。これで進展がなければ大規模な全国的ストライキを呼びかけるしかないでしょう。
★カナダ:トヨタ工場組合結成へ再挑戦
カナダ最大の民間部門労働組合UNIFOR(組合員数30万5千人)は、13年にカナダ自動車労組(CAW)を吸収した後、オンタリオ州ケンブリッジとウッドストックのトヨタ工場の組合結成を試みてきた。UNIFORは6500人の労働者の過半数を確保し、14年4月に従業員投票に臨もうとしていた。ところが投票開始の数日前に、会社側が従業員数は実際には7500人であると発表したため、UNIFORは従業員投票を中止した(7500人の過半数を確保できそうにないため)。その後、他の工場からのオルグの協力も得て組織化を継続したが、成果が上がらず、15年2月には組合結成を事実上断念した。
その後、トヨタは4月に、これまでケンブリッジ工場で行われてきたカローラの生産をメキシコに移転する計画を発表した(2019年操業開始)。この発表によって労働者の間には失業の不安が高まり、UNIFORのキャンペーンへの関心が高まり、門前でのビラまきや電話会議などの反応が以前とは比較にならないほどよくなっている。オルグたちは正規雇用、一時雇用双方の労働者に組合カードへの署名を呼びかけている。
会社側はカローラの生産を移転しても、代わりに中型車の生産を始めるので雇用の心配はないと説明している。しかし、勤続11年のシンディ―・ヴェニエラさんは「カローラの生産が終わったら設備を入れ替えるでしょう。その間の休業期間を利用して正規雇用の労働者(時給34カナダ・ドル)を非正規雇用の労働者(時給20カナダ・ドル)に置き換えるかも知れません。団体協約がなければ、誰も安心できません」と指摘している(1カナダ・ドルは約100円)。
UNIFORのチーフエコノミストのジム・スタンフォードさんによると、「以前は労働者たちは組合に入ると職を失う危険があると思っていましたが、今では組合が自分たちの職を守ってくれるかも知れないと考えています」。
トヨタにおける組合結成が成功すれば、もう1つの組合のない工場であるオンタリオ州アリストンのホンダ工場や、全米自動車労組(UAW)が力を入れているミシシッピー州の日産工場の組織化にとっても大きな刺激となるだろう。
(「オートモーティブ・ニュース」5月23日付)
★バングラデシュ:ラナプラザ犠牲者賠償目標到達
「クリーン・クローズ・キャンペーン」は6月8日に以下の声明を発表した――。
クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)は、ラナプラザ・ドナー信託基金が、大口の匿名の寄付によって目標の3千万ドルに到達し、キャンペーンが大きな勝利を収めたことを喜びをもって発表します。
CCCは2013年4月の災害以降、衣料ブランドや小売店に対して犠牲者への補償のために基金の拠出を求めてきました。
それ以来、全ヨーロッパ、全世界で100万人以上の消費者が、倒壊したビルに入居していた5つの工場と取引していた有名ブランドに対する行動に参加しました。そのような行動によって多くのブランドがついに基金に拠出しましたが、4月24日の2周年の時点で集まった金額は2400万ドルで、目標に達していませんでした。最近数日間に大口の寄付によって、基金は目標額に到達しました。
CCCのイネケ・ゼルデンルストさんは次のように述べています。
「この日は待ち望まれていた日です。これによってこの災禍の犠牲になったすべての家族が、当然受け取るべき補償を受け取ることができ、これからは自分たちの生活の再建に集中することができます。これは公正のための特筆するべき瞬間です。これはこの2年間キャンペーンに参加した全ヨーロッパの市民と消費者の支援なしには不可能だったでしょう。私たちは力を合わせて、ヨーロッパの消費者が自分たちの衣料を作っている労働者について気にかけているということを再び証明したのです。そして自分たちの行動が本当に変化をもたらすことができることを」。
ラナプラザ・ドナー信託基金は、ラナプラザ・ビル倒壊の犠牲者とその家族の失われた収入と医療費に充てることを目的として、14年1月にILOによって設立されました。同年11月にラナプラザ調整委員会は、この基金の対象となる5千人余の人々に国際基準での補償を支払うには約3千万ドルが必要であると発表しました。しかし関係するブランドや小売店が迅速に十分な拠出を行わなかったため、今日まで補償の支払いが完了していませんでした。
CCCは今後も、この信託基金では対象とされていない苦痛や苦難に関する補償を必要とする人々を支援し、また、将来、このような災害の補償がもっと速やかになされるよう政策変更を求めます。
CCCはILOバングラデシュが400万人の衣料労働者を対象とした全国労災救援計画を提唱していることを支持します。また、ヨーロッパの政治家たちに対して、ブランドや小売店の責任を明確にするために供給チェーンへの規制を強化するよう求めます。