アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
910+11号

★バングラデシュ:ラナプラザ・ビル倒壊から2年 問われるファッションブランド

 バングラデシュ・ダッカ近郊で2013年4月に、衣料工場が入居していたラナプラザ・ビルが倒壊し、労働者1138人が死亡した惨事の2周年(4月24日)を前に、国際産別労組のインダストリオールとUNI、および消費者運動団体「クリーン・クローズ・キャンペーン」は、同ビルの工場から製品を輸入していた国際ブランドが4月24日までに犠牲者への補償基金の不足額を支払うことを求めるカウントダウン・キャンペーンを開始した。


 この3団体はILOと協力して補償交渉を進めてきた。補償を申請し、確認された5千人余の人たちに国際的基準に基づく公正な補償を行うために少なくとも3千万ドルが必要だが、3月24日の時点でラナプラザ献金信託基金に払い込まれた基金は、バイヤー企業、バングラデシュ首相の基金、および他の民間のドナーからの献金を合わせて2150万ドルであり、850万ドルが不足している。申請者は同日の時点で補償額の7割程度しか受け取っていない。


 ラナプラザ・ビルの工場と取引関係があったブランドの一部は、基金への支払いを拒否してきた。ベネトン・グループは、国際的な批判が集中したことから、今年2月20日に基金への拠出を決定したことを発表した。ほかにウォルマート、マンゴー、チルドレンズプレイスが、拠出額が少なすぎるとして批判されている。拠出を約束したが、まだ拠出が確認されていない企業もある。


 インダストリオールのユルキ・ライナ書記長は「イメージがすべての産業なのに、衣料ブランドは正しいことをするのに驚くほど時間がかかっている」と指摘している。
 UNIのフィリップ・ジェニングス書記長は、「時計は刻々と進んでおり、私たちはまだ支払いが完了していないすべてのブランドが4月24日までに支払いを完了することを期待している。それ以下のことは受け入れられない」と述べている。
 クリーン・クローズ・キャンペーンのイネケン・ゼルデンラストさんは、「ラナプラザの犠牲者たちはブランドによる空約束や見せかけの同情にはうんざりしている。約束が今すぐに実行されることを望んでいる。自分たちの人生を続けていくためにである」と述べている。


 3団体はこのほかに、工場安全協定の運営委員会にも参加している。同協定には現在、世界の200のブランドが署名しており、協定の対象となる工場は約1500となっている。約200万人の労働者がこの協定の対象となる工場で雇用されていることになる。

(以上、インダストリオールのウェブより)

 

*補償要求の被災者、米で逮捕

 

 3月12日、米国ニュージャージー州にあるチルドレンズプレイスの本社前で、バングラデシュ労働者連帯センターの代表のカルポナ・アクテルさん(39歳、12歳の時から衣料産業で働く)、ラナプラザ・ビル倒壊で負傷したマヒヌール・ベグムさん(18歳)が支援の活動家たちと共に、補償金の支払いを求める行動を行った。

 アクテルさんたちが同社のCEOに宛てた書簡をポストに投函しようとしたとき、警官隊が「建造物不法侵入」でアクテルさん、ベグムさんを含む27人を逮捕した。
 アクテルさんたちは2時間後に釈放された。


 アクテルさんとベグムさんは、3週間にわたって米国を訪問し、16の大学でチルドレンズプレイスとベネトンに対する補償金支払い要求の運動への支援を訴えた。
 オンライン・ニュースの「バングラ・ニュース24」によると、同国の衣料産業の有力者が「アクテルさんは外国から金をもらって衣料産業を破壊しようとしている」と発言している。
 アクテルさんは、そのような非難は全く間違っており、「雇用は重要ですが、私たちは尊厳のある雇用を望んでいるのです。ボイコットには何の意味もありません」と述べている。

(英国「ガーディアン」3月15日付より)

 

 

★インドネシア:ジャカルタの水道、再公有化へ 『水の権利』求める運動に弾み

 中部ジャカルタ地方裁判所は3月24日、スエズ社およびアエトラ社との水道民営化のための契約を無効とする決定を下した。同裁判所は、この官民パートナーシップ(PPP)契約がジャカルタ市民の人権である水への権利を侵害していると判断した。
 この判決は住民、労働組合、水への権利を求める活動家たちの連合による長年にわたる抵抗運動の成果である。


 ジャカルタの水道民営化は1997年に、スハルト政権の下で、住民の知らない所で決定され、開始された。事業を請け負った企業は、利益を増やすことだけを追求し、サービスは改善されなかった。水道サービスを利用できる戸数は約束を下回ったし、漏水率も高いままだった(44%)。水道料金は4倍になった。公営のスラバヤ市と比べて2.7倍である。
 国際公務労連(PSI)のローザ・パバネリ書記長は、次のように述べている。


 「この判決はジャカルタ市民と労働者だけでなく、世界の水の権利を求める運動の勝利である。それはまた、世界銀行やアジア開発銀行の思慮のない民営化戦略の破綻の新たな証明である。私たちは世界銀行やアジア開発銀行に、インドのマイソール、ナイジェリアのラゴスをはじめとするすべての水道・下水の民営化計画を直ちに中止することを求める」


 2月20日には、憲法裁判所が04年に制定された水資源法が無効であるとする決定を下している。この決定は、水資源が公益のために管理・分配されなければならず、民間企業が水資源に対する権利を独占することはできないと述べている。
 今後の再公有化の進め方は政府に委ねられる。ジャカルタ市の水道再公有化はパリ、ベルリン、ブダペスト、ブエノスアイレス、アクラ(ガーナ)、ダルエスサラーム(タンザニア)、クアラルンプールに続くものである。

 インドネシアにおける2つの判決は、4月12〜17日に韓国で企業主導の世界水フォーラムが開催されるのを前に、水への権利を求めるグローバルな運動に大きな弾みとなる。


(「トランスナショナル・インスティテュート」のウェブ、3月25日付より)

 

 

 

 

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 〒112-0005 東京都文京区水道2-11-7三浦ビル2階 Tel:03-6912-0544 Fax:03-6912-0744