アジア@世界
799号

●チリ
「サンホセ鉱山の落盤 会社は警告無視 救出にも参加せず」

 チリ北部のアタカマ州コピアポ近郊のサンホセ鉱山の落盤事故で地下に閉じ込められている33人の家族が、鉱山を所有するサン・エステバン・プリメラ社が安全警告を無視し、法律に違反していたと、訴訟を準備している。
 会社側は、現在、破産申請を検討しており、労働者が救出されても救出されるまでの間の賃金を払えず、裁判で損害賠償の命令が出ても応じられないと言っている。
 24家族の代理人のエドガルド・レイノソ弁護士は、「誰かが責任を負わなければならない。幸いにも労働者たちは生存しているが、彼らと家族が受けた被害は甚大だ」と述べている。
 サン・エステバン・プリメラ社がチリ北部のアタカマ砂漠に保有している鉱山では、この6年間に3人の労働者が死亡、06年だけでも150人以上が負傷している。
 同社の安全対策責任者だったビンセロット・トバール氏は、「会社は、災害防止に必要なもっとも基本的な対策を実施しなかった。彼らは常に生産を急がせた」と証言している。彼は09年に、会社側が安全のための提案を採用しなかったことに抗議して退職した。会社側は彼が2人の労働者の死亡に責任があると主張している。
 彼によると 同社は04年から10年までの間に種々の安全監督機関から42件の罰金を科せられており、07年には安全要件を満たすまでの間、操業停止を宣告された(08年に操業再開)。
 地下に閉じ込められている労働者の1人であるルイス・ウルスアさんは、「私たちは通気口を伝って上へ上ろうとしたが、梯子がなかったので上がれなかった」と言っている。07年に死亡事故が起こった後で、梯子の設置が勧告されていたにもかかわらずである。
 労働者の家族たちは、08年に改善勧告が実施されていなかったにもかかわらず鉱山の操業再開を許可した政府の監督機関に対しても訴訟を計画している。ピネラ大統領は、この監督機関の3人の最高責任者の辞任と、労働者安全委員会の設立を求めた(「モントリオール・ガゼッテ」8月26日付より)。
 サン・エステバン・プリメラ社は金鉱、銀鉱を経営している小さな企業で、補償を支払う能力どころか、救出作業にさえ参加していない。救出作業は国営のコデルコ社によって行われている。
 鉱山労組は、政府が08年にこの鉱山の操業再開を許可した責任を追及し、政府に対して地下に閉じ込められている労働者への補償のほか、他の270人の労働者の休業中の賃金の補償を要求している。
 労組のリーダーのエベリン・オルモスさんは「政府は私たちの仲間が救出されるまでの間、私たちの賃金を全額支払い、救出後は退職金を支払ってほしい」と語っている。ローレンス・ゴルボーン鉱山相は、労働法の下でそのような支払は禁止されていると述べ、この問題については裁判所の決定に委ねることを示唆した。
 さらに、家族たちにとって最大の心配は、労働者たちの身体的・精神的健康状態である。現在、救出のための穴を掘るための試験的な作業が、オーストラリアから輸入した機械を使って行われているが、本格作業が開始された後、労働者たちは穴の近くに落ちてくる瓦礫(約4千トン)を自分たちで除去しなければならない。2ヵ月以上にわたって、30度近い高温の中で、休みなしに作業を続けなければならない。(「インデペンデント」9月1日付より)

●エジプト
「軍事法廷で民間企業の労働者に有罪判決」

 8月30日、軍が保有する工場で劣悪な安全対策に抗議してストライキを行った8人の労働者に対して、軍裁判所で有罪判決が下された。この労働者たちは民間企業に雇用されており、軍裁判所に提訴されたこと自体が不当である。
 労働組合・労働者支援センター(CTUWS)代表のアデル・ザカリアさんは「最初から不当な裁判だ。民間の労働者が軍隊の法律に基づいて起訴されることはあってはならない」と指摘。軍裁判所では、被告の市民的権利、憲法で保証されている権利が侵害されている。裁判は通常は迅速で、非公開。厳罰が下され、控訴できない。
 8月3日に、カイロの南にある軍所有の工場で窒素容器が爆発、ヘルワン・エンジニアリング社の労働者1人が死亡、6人が負傷した。同社の労働者たちはただちに座り込みストに入った。その後、ストを先導したとされる8人が「故意に生産を停止し、会社の財産を破壊し、公務執行を妨害した」という容疑で起訴された。
 8人の弁護人のハフェス・アブ・セアダさんは、「労働者たちは会社の安全無視が仲間の死をもたらしたことに抗議した。これは軍の工場での民間労働者の問題であり、民事裁判所で争われるべき問題だ」と語っている。
 ザカリアさんによると、弁護側は裁判書類をコピーすることが許可されず、抜粋を閲覧することのみが許可された。「軍事機密」が含まれているという理由によってである。
 裁判は8月22日に始まり、同30日に5人の被告に、工場の設備を破壊したことに対して、半年から1年間の懲役(執行猶予付き)と1人1千ポンド(1エジプトポンドは約15円)の罰金を、3人には無罪を宣告した。生産停止と公務執行妨害については訴えを退けた。
 判決後にアブ・セアダさんは、「判決は予想ほど厳しくはなかったが、裁判の本当の目的は、軍の施設内での労働者の抗議行動は容赦しないという政治的メッセージを送ることだった」と述べた。
 エジプトでは公共セクターと民間セクターの両方で労働者の闘争が広がっており、ILOは6月にエジプトにおける労働者の権利の侵害・抑圧を指摘する報告書を発表している。エジプト経済的社会的権利センター(ECESR)によると、09年には労働争議が478件起こっており、そのうち184件が座り込み、123件がストライキ、106件が集会・デモの形態をとっている。
 アムネスティー・インターナショナルは、「エジプト政府は、職場の安全という労働者の正当な要求を抑圧するのをやめて、労働条件や職場の安全を改善するために最大限の努力をするべきだ」と指摘している。(「インタープレス・サービス」8月31日付より) ◎イラク「警察が電力労組の本部を接収」  7月21日朝、イラク南部バスラの電力労組の本部を警察官が急襲、フセイン・アル・シャフニスターニ電力相の命令により組合本部を閉鎖すると通告した。  警察官たちは組合員名簿、劣悪な労働条件を記録したファイル、デモの呼びかけのリーフレット、コンピューター、電話機などを押収し、組合員を退去させ、建物を封鎖した。  シャフニスターニの命令は、電力省が管理するすべての発電所における労働組合の一切の活動を禁止し、組合の銀行口座から備品に至るまでのすべての資産を没収するというものであり、命令に従わない者は05年の反テロリスト法により逮捕される。  バスラの電力労組は、7年間にわたって、労働組合の権利、電力省との団体交渉を要求し、外注化、民営化に反対して闘ってきた。  イラク政府は労働組合運動への抑圧を強化しており、この数ヵ月間に、石油労組のリーダーに逮捕状を発行し、組合役員を遠隔地へ配転し、油田、港湾、製油所での組合活動を禁止し、組合が銀行口座を開設したり、組合費を徴収することを禁止した。  米国企業はマリキ政権に対して石油と電力の民営化を迫り、送電線網の建設のためにGE(ゼネラルエレクトリック)だけでも30億jの契約を受注した。しかし、イラク全国の発電能力はいまだに6千メガワットの水準であり、米軍によって破壊される前の水準の3分の2まで回復したにすぎない。バスラの住民はいまだに1日数時間しか電力の供給を受けていない。米国企業が供給する部品の大半は既存の設備で使用できない。彼らは常に銃を携えた民間警備員に守られてしか行動できない。  6月19日にはバスラとナシリアの住民が、この電力事情への怒りのデモを行った。住民たちは「刑務所の方が家より快適だ!」、「130億ドル(電力復興のための基金)はどこへ行った?」と叫んだ。警官隊の発砲で1人が死亡した。電力相が辞任し、前石油相のシャフニスターニが後任に任命された。   電力労組の委員長のハシュメヤ・ムフシンさん(イラクの全国労組で初めての女性委員長)は、米国のAFL・CIOの大会に招待され、各地で組合活動家と交流して民営化反対・労働組合の権利への支援を訴えた。アメリカ国際労働者連帯センター(AFL・CIOの加盟団体)と英国TUC(労働組合会議)は、イラクの労働組合を支援するために、ヨルダンに物質的支援とトレーニングのためのセンターを設立している。  バスラでは、石油労組、電力労組をはじめ多くの組合が、産業や組織の違いを超えて、政府の組合解体攻撃に抵抗するため「イラクの労働組合の権利を守るための共同委員会」を結成し、国際的支援を呼びかけている。(「レイバーノーツ」8月31日付より)

●イラク
「警察が電力労組の本部を接収」

 7月21日朝、イラク南部バスラの電力労組の本部を警察官が急襲、フセイン・アル・シャフニスターニ電力相の命令により組合本部を閉鎖すると通告した。
 警察官たちは組合員名簿、劣悪な労働条件を記録したファイル、デモの呼びかけのリーフレット、コンピューター、電話機などを押収し、組合員を退去させ、建物を封鎖した。
 シャフニスターニの命令は、電力省が管理するすべての発電所における労働組合の一切の活動を禁止し、組合の銀行口座から備品に至るまでのすべての資産を没収するというものであり、命令に従わない者は05年の反テロリスト法により逮捕される。
 バスラの電力労組は、7年間にわたって、労働組合の権利、電力省との団体交渉を要求し、外注化、民営化に反対して闘ってきた。
 イラク政府は労働組合運動への抑圧を強化しており、この数ヵ月間に、石油労組のリーダーに逮捕状を発行し、組合役員を遠隔地へ配転し、油田、港湾、製油所での組合活動を禁止し、組合が銀行口座を開設したり、組合費を徴収することを禁止した。
 米国企業はマリキ政権に対して石油と電力の民営化を迫り、送電線網の建設のためにGE(ゼネラルエレクトリック)だけでも30億ドルの契約を受注した。しかし、イラク全国の発電能力はいまだに6千メガワットの水準であり、米軍によって破壊される前の水準の3分の2まで回復したにすぎない。バスラの住民はいまだに1日数時間しか電力の供給を受けていない。米国企業が供給する部品の大半は既存の設備で使用できない。彼らは常に銃を携えた民間警備員に守られてしか行動できない。
 6月19日にはバスラとナシリアの住民が、この電力事情への怒りのデモを行った。住民たちは「刑務所の方が家より快適だ!」、「130億ドル(電力復興のための基金)はどこへ行った?」と叫んだ。警官隊の発砲で1人が死亡した。電力相が辞任し、前石油相のシャフニスターニが後任に任命された。
 電力労組の委員長のハシュメヤ・ムフシンさん(イラクの全国労組で初めての女性委員長)は、米国のAFL・CIOの大会に招待され、各地で組合活動家と交流して民営化反対・労働組合の権利への支援を訴えた。アメリカ国際労働者連帯センター(AFL・CIOの加盟団体)と英国TUC(労働組合会議)は、イラクの労働組合を支援するために、ヨルダンに物質的支援とトレーニングのためのセンターを設立している。
 バスラでは、石油労組、電力労組をはじめ多くの組合が、産業や組織の違いを超えて、政府の組合解体攻撃に抵抗するため「イラクの労働組合の権利を守るための共同委員会」を結成し、国際的支援を呼びかけている。(「レイバーノーツ」8月31日付より)

●中国
「GP電池カドミウム被害労働者の陳情行動を暴力集団が襲撃」

 以下はGP電池カドミウム被害労働者の8月25日付の声明の抜粋である。GP電池では昨年12月にもストライキ中の労働者に対する暴力事件が起こっている(本誌2月1日号)。同社でのカドミウム被害については本誌05年6月1日号を参照されたい。(翻訳 稲垣豊)
 超覇電池(GP電池)での労働により体内のカドミウム量が基準値を超えた100人以上の元労働者が、8月16日から広東省恵州市政府への陳情行動を行ってきました。GP電池との交渉は1週間続きましたが、GP電池は被害者の要求を拒否しました。
 同24日午前11時30分ごろ、GP電池の入口前で抗議行動を行っていた仲間が、300名以上の正体不明の暴漢に殴られました。暴行を受けたのは、交渉にあたっていた代表たちでした。特に楊小紅は重傷で、他の2人も入院しています。
 ゴールドピーク・グループ(GPグループ、GP電池の親会社、香港)は04年に、私たちに対して最後まで責任を負うことを約束しました。カドミウム被害を受けた労働者との間で、身体機能が正常に回復するまで責任を負うという協定にも署名しています。
 その後、毎年何人かが病状が悪化し、現在は22人が「中毒」のレベルにまで達しています。カドミウム中毒が原因で死亡したのではないかと疑われる労働者もいます。
このように病状がますます悪化する人が増加する状況にも関わらず、GPグループは協定を破棄しようとし、1人2万元(約25万円)という一方的な提案を私たちに迫り、私たちが署名を拒否した直後に、この暴力事件が発生しました。
 同じGPグループの捷霸社(深セン)でも、働く仲間たちがカドミウム中毒または基準値オーバーという被害を受けています。
 深セン捷霸社は最近工場を閉鎖しましたが、カドミウムの基準値をオーバーして離職した仲間たちは、私たちが04年に離職したときよりも良い条件でした。1万元の補償金、労組からの5千元の補助金、毎月300元の栄養補助費(2度の検査で正常値が確認されるまで)というものです。この数日の私たちの行動は、政府が介入して恵州GP電池にも同様の補償を行わせることを求めたものでした。
 今回の暴行事件は早くから計画されたものです。でなければ、わずか3時間で300人もの暴漢を呼び集めて襲撃できるでしょうか。暴漢たちは交渉代表の顔をどうして識別できたのでしょうか。現場にいた仲間によると、一日50元で雇われたと暴漢たちが話していたとのことです。またある労働者は、警備員の制服を着た2人が暴漢らを連れてきたといいます。
 私たちは今回の暴力行為に対して非常に憤り、強く抗議します。
 私たちは、政府がすぐにこの暴力事件を徹底して調査し、凶悪犯罪者を逮捕し、黒幕を厳しく処罰することを要求します。そしてGPグループとGP電池は負傷者に対して治療費および補償金を支払うべきだと考えます。

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