★ギリシャ:電力民営化反対で政府の強権的スト規制と対決
電力公社(PPC)の労働者がPPC民営化計画に反対して7月5日に48時間ストに入った。
ギリシャ政府はトロイカ(EU、欧州中央銀行、IMF)の緊急金融支援の前提条件としてエネルギー市場の自由化を約束、その一環としてPPCを2015年に民営化するため法案を議会に提出している。
PPCの最大労組GENOP・DEHのスタマティス・レリアス委員長は、同1日にこの法案に反対する波状ストを宣言。「電力は公共のものであり、国家の管理下にとどまるべきだ」と語った。GENOP・DEHはギリシャ最大の労働組合であり、トロイカ反対の街頭デモの最先端で闘ってきた戦闘的組合である。議会の最大野党、SYRIZAは組合の要求を支持し、法案に反対を表明している。
PPCはギリシャ電力の70%を供給し、電力小売市場の100%を支配している。また、亜炭鉱を保有している(採掘量は世界最大)。政府はPPCの株式の51%を保有し、PPCの事業の30%を分離して民間企業への売却を計画している。
観光シーズンと重なるPPCの波状ストに対しギリシャ政府は「2千万人の観光客をクーラーが使えない状態にすることは許されない」と激しく非難している。
同4日に裁判所は、PPCでのストを「違法であり、権利の乱用である」と決定を下した。さらに、裁判所の決定の受け入れを拒否した組合に対し、政府は同5日、「民政動員令」を発動。
「民政動員令」は、国家の非常事態下で公共サービス確保のために、職員に出勤・就労を命じる権限を政府に与えており、公務員ストの禁止のために頻繁に用いられている。「民政動員令」はPPCの1万9千人の従業員に対して発令され、違反した場合は逮捕される可能性がある。
GENOP・DEHの前委員長のニコス・フォトポウロス氏は組合員に対して、出勤・就労命令を破り捨てるよう呼びかけ、「われわれがいなければ弁は開かない。われわれがいなければ電力は作れない」と語った。
SYRIZAは「民政動員令」が憲法違反であると批判し、電力民営化に関する国民投票を提案している。いくつかの政党と無所属の議員がこの提案への支持を表明している(共産党は保留している)。
48時間スト2日目の6日午後、GENOP・DEHは、波状ストは同日深夜で終結、今後は他の形態で闘争を継続すると発表した。
(「ロイター」7月1日付、「ファイナンシャルタイムズ」同5日付、「グリークレポーター」同6日等より)
★英国:公務員攻撃に抗し全国でスト、数十万人がデモ
7月10日、教員、消防士、自治体職員など約100万人以上の公務員労働者がストに入った。
同日のBBCによると、全国で6千校が休校になり、多くの美術館や博物館が休館になった。ダービーではごみ収集が止まった。いくつかの空港では、国境管理に関わる職員のストに伴う発着陸の遅れがアナウンスされた。
ロンドンでは、公務員の6つの組合が呼びかけたデモに数千人の労働者が雨の中を参加。トラファルガー広場での集会に合流した。「公正な賃金を」、「リビングウェイジ(生活賃金)」などのスローガンが唱和された。
労働者たちは、「経済の回復が伝えられているがそれが労働者の所得に還元されていない、また、この4年間に賃金凍結と賃上げの上限の設定(1%)のために所得が4千減った」と指摘している。
同日付の「ガーディアン」は次のように報じている。
木曜日(7月10日)、イングランドとウェールズの全域で数十万人が集会、ピケット、デモに参加。学校職員や消防士、看護士・介護士や、ごみ収集作業員、その他の地方自治体職員と共に、実質賃金と生活水準低下に抗議のデモを行った。
このストは計画された一連の闘いの一環であり、英国におけるこの3年間で最大のストとなった。それはキャメロン首相(保守党)が進めようとしているスト制限のための法改定をめぐる政治的対立を促進した。
同首相は、スト要件を、スト投票での過半数の賛成(現行法)から、全組合員の過半数へと改定することを提案している。これに対してビジネス・イノベーション担当大臣のヴィンセ・ケーブル(自由民主党)は労働者の基本的権利を侵害するものだと批判し、「国会議員に選ばれるのに有権者の過半数の支持が必要とされていないのに、労働組合にそのような高いハードルを設けるべきでない」と指摘している。
同首相の広報官は、「公務員のストはどんな場合でも違法だ」というコメントを発表した。
労働党はストを支持することは拒否したが、同党の「影の内閣」のマイケル・ダガー官房長官は、この紛争の大半の責任は政府側にあると指摘し、政府の低賃金労働者に対する高飛車な態度を批判して、「大金持ち揃いの内閣が英国で最も低賃金労働者を悪者にしている嘆かわしい光景が繰り返されている」と述べた。
組合リーダーたちは労働党がストを支持しなかったことを批判している。
UNISONのリーダーのデーブ・プレンティス氏は、「労働党は腹を決める時だ。公共サービス労働者は労働党の本来の支持者であり、労働党からのゆるぎない支持に値する筈」と述べている。
小学校教員のシェイラ・キャフリーさんは「私がストに参加したのは、政府がいつもゴールポストを動かしているからだ。子どもの教育よりもマークシートに記入することが全てになっている。子どものために全力を尽くすよりも、自分のために、自分が隣の教室の教師よりも優秀であると証明することが大事なのだ」と述べている。
フランシス・モード官房長官は、公務員賃金の抑制は英国の債務支払いに必要であり、最も低賃金の労働者には保護措置があると主張する。
彼は公務員ストへの国民の支持は低下していると述べ、保護者や知事がボランティア教員を送り込みストを封じることができるように法律を変えることもありえると示唆した。
オンライン紙「ユニオンニューズ」によると、7月10日の公務員ストは広範な人々によって支持されている。
同紙の世論調査によると、回答者の59%が政府による公務員賃金への攻撃は不当だと考えており、2010年の選挙で保守党に投票した人たちの間でも52%が賃上げを支持している。
公共サービスをめぐる議論について、労働組合を信頼するという回答が52%で、メディア(25%)、政府(23%)を大幅に上回っている。18〜34歳の年齢層では64%が労働組合を信頼すると答えている。
2010年の選挙で自由民主党に投票した人の80%、労働党に投票した人の84%がストを支持しており、18〜34歳の年齢層では80%、55〜64歳の年齢層では76%が今回のストを支持している。
★カンボジア:衣料労働者の生存のための闘い
衣料工場で働くライ・スレイ・ボパさんは、欧米ブランドの衣料品縫製で10時間のシフトが終わったら、同僚と小さな共用の部屋に帰り、残り物を食べ、床の上に寝る。
彼女の1日は、この国の約65万人の衣料労働者と同様に単調で、体力を使い果たし、食事は貧弱だ。5歳になる娘と会うこともめったにない。娘は田舎でボパさんの両親が世話をしている。
「衣料工場での生活は厳しいが、お金が必要なので我慢している」とボパさんは言う。
近年、この国の衣料産業に資本と注文が殺到する中で、新しい企業の多くは、法律上の要件について知らないか、知っていても気にかけない。
1月の暴力的衝突や(警官隊の発砲で4人の労働者が死亡、本誌2月1日号を参照)、工場で頻繁に繰り返される集団的な失神によって、かつては模範的とされていたカンボジアの衣料工場への欧米ブランドからの懸念が高まっている。
抗議運動に関する報道や、わずかな賃上げにもかかわらず、状況はほとんど変わっていないと労働者たちは言っている。
ボパさんは最近、仕事中に気を失ったという。原因は衣料品に使われている化学成分の煙を吸い込んだことだった。病気で休むと給料を引かれるので、病気でも働く。時には徹夜の作業もある。
ボパさんは月給約130ドルのうち50ドルを家族に送金している。娘が自分よりもよい生活ができるようになることが唯一の希望だと言う。
トン・サム・オルさんは生後1ヵ月の赤ん坊がいる。工場には託児施設がないので、赤ん坊を親に預けるか、工場をやめるしかない。
彼女は少額だが有給の産休を取得できたが、多くの工場はそれを避けるために女性を短期契約で雇用している。妊娠した労働者の労働協約を解約した企業もある。
地域法律教育センターのモウン・トラさんによると短期間の契約は、労働者を従順にさせる上でも効果的である。労働者たちは残業を拒否したり労働条件に抗議するのをためらう。病気の時でも勤勉に働く。「まるで現代の奴隷工場だ」と彼は言う。
現在政府内で検討されている新しい労働法は、労働者の団結権と争議権を一層制限したものになると予想されている。カンボジア労働組合連盟のロン・チュフン委員長は「法案が成立すれば労働組合の自由はなくなってしまうだろう」と述べている。
1月のスト以降、散発的なストで組合活動家10人余が逮捕・起訴されている。5月末には1月のストに関連して活動家23人が逮捕・起訴された(その後、執行猶予判決で全員が釈放された)。
(AFP、7月12日付より抄訳)