アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
929号

★ギリシャ
  年金改革に反対して船員がスト

 チプラス政権がEUからの金融支援の条件として同意した年金改革をめぐって、労働組合、農民、漁民、弁護士・医師などの広範な層の間で不満が拡大している。2月4日には二大労組が24時間ストに入る。
 これに先立ち、1月27日に船員組合が48時間ストに入った。同日付の「ロイター」によると、この日、各地の港でフェリーが停泊したままだった。


 チプラス政権が提案している年金改革が導入された場合、多くの人々にとって年金の保険料が月収の20%に跳ね上がる。
 船員組合のレフテリス・サリダキス委員長は「われわれがストライキに入ったのは、この国で最も古くからあるわれわれの基本年金基金が廃止されるからだ」と語っている。彼は2月に法案が国会に提出される時には行動を強化すると付け加えた。
 農民は農業への減税の削減に抗議して、この数日、全国で高速道路の封鎖を繰り返している。彼らは象徴的な行動としてアテネの労働者居住地区で約50トンの農作物を配った。
公証人たちは3日間のストライキに入り、弁護士、エンジニア、医師などの専門職の人々と共に街頭デモに繰り出した。

 

 

★フランス
  タクシー、航空、病院、学校でデモやスト

 1月26日、約2,100人のタクシー運転手がウーバーなどの新規参入業者の違法な営業の取締り強化を要求して主要道路を封鎖、タイヤを燃やしたり、発煙筒を投げるなど激しい抗議行動を行った。
 あるウーバーの運転手は車に卵をぶつけられ、暴行を受けた。タクシー協同組合のイブラヒマ・シラ代表は「今日は私たちの生存がかかっている。会合や交渉はもうたくさんだ」と語っている。

 20年間パリでタクシーを運転してきたラヒム・エダラットさんは「以前は1日10組から12組の客があったが、今ではその半分だ。これまでで最悪の年だ」と語っている。
 警察発表によると、パリとその周辺で14人が暴力・放火で逮捕された。
 パリ西部のポルトゥマイヨでは数百台のタクシーが集結し、翌朝まで道路を占拠した。
 オルリー空港とドゴール空港では航空管制官が賃金と労働条件をめぐってストライキに入り、パリで発着する航空便の5分の1が運休した。


 また、CGT(フランス労働総同盟)はオランド政権による一連の歳出削減策に抗議して560万人の公務員にストライキを呼びかけた。CGTによると公務員の約30%がストに参加し(政府の発表では10%)、12年にオランド政権が成立して以降最大の動員となった。

 パリでは「緊縮はもうたくさんだ」、「株主の配当ではなく賃金を増やせ」などのスローガンを掲げて約1万5千人(警察発表は6千人)がデモに参加した。

 学校でも、教育省の発表によると小学校で12%、高校で22%の教員が賃上げや教育制度改革(11歳から15歳が対象)反対を掲げてストライキに参加した。
 農村では農産物価格の下落に怒った農民たちがトラクターでデモを行い、税務署の前に堆肥をぶちまけた。

(1月26日付「AFP」より)

 

 

 

★バングラデシュ
   日本輸出衣料工場で組合攻撃

 以下はソミリト・ガーメント・スラミク連合(衣料労働組合連合)のナズマ・アクテル委員長から「おおさか社会フォーラム」実行委員会宛に届いた緊急支援要請の要旨です(1月18日付)。

 

*会社の概要

 ダッカのアシュリア地区にあるドングリアン・ファッション社。本社は中国。工場は中国とバングラデシュ。バングラデシュの工場の従業員数は450人、うち女性が320人。
 製品のラベルから、ノアワールド(大阪中央区)、コーナン商事(大阪・堺市)、イオン(本社・千葉県)の「トップバリュー」部門など日本の小売チェーンや通販業者が主な取引先と推定される。

 

*経過

■14年11月27日  組合を結成。結成時の組合員数は310人で、そのうち女性が201人。組合登録を申請。
■15年1月29日 組合登録が認められる。
■4月 5日 組合が経営側に組合結成を通知、役員名簿を提出
■5月14日 (1)組合がアシュリア警察に、「会社役員が組合についての誤解を招く情報を流布することによって労働者に組合登録撤回を求める署名を強要している」と訴える。

(2)組合が上記の行為に対し不当労働行為の申し立てを行う。
■5月26日 労働組合登録官(RTU)から組合に、「経営者から、組合は虚偽の情報を提供することによって組合登録を取得したとの申し立てがあったため、工場と組合事務所に立ち入り調査を行う」との通知。
■5月27日 終業後に工場外で8-10人の外部者が組合委員長に暴行。同日、1人の組合員が自宅近くで暴徒に襲われる。
 組合はこの事件について不当労働行為を申し立て、犯人への適切な処置を要求。
■6月2日 RTUからの5月26日付の通知に対して、組合は抗弁のため、経営側の申し立てのコピーを請求。また、以前に提出した不当労働行為の申し立てに関連して適切な措置を取るよう要求。 (RTUはいまだにこの要求に応じていない)
■12月5日 組合は経営側に14項目の要求書を提出。
■同10日 組合は経営側が11月30日に高裁に組合登録無効の決定を申請したことを知る。労働省が組合登録を認めたのは違法であるという内容。被告は労働雇用相、労働/組合登録官(JDL)他となっており、組合は被告となっていない。
 高裁は経営側から聴取した後、11月30日に被告に対して12月28日までに組合登録を認めた根拠を提示するよう求める決定を出した。裁判所は、この申し立てに関する審理中、組合登録の効力が6カ月間停止されると決定した。
 組合側は、(1)組合は全ての法律上の手続きを経て正当に結成された、(2)経営側は裁判所に誤解を招く情報を提供することによって、効力停止の命令を獲得した、(3)RTUとJDLは不当労働行為の申立に対して何の措置も取っていない。

 

*最近の動き(12月12日から16年1月4日まで)

■12月12日 経営側が組合のラザック委員長に退職と組合委員長の退任を強要。白紙の書類に署名させる。故郷に帰らないと、殺されるぞと脅す。彼は恐怖の中でアシュリアを退去し、その後の消息は不明。
■同22日 経営側が組合の マムン書記補佐に暴行、殺すぞと脅迫。退職と組合役職の退任を強要。退職金を渡して写真とビデオを撮った後、それを取り上げる。彼を工場から追い出し、以降の立入りを禁止した。
■同23日 経営側が組合執行委員のジハッドと3人の組合員にに退職と組合脱退を強要。同様の行為を行う。
■同24日 経営側が組合員のラキブ に退職を強要、工場から追い出す。
■同31日 組合は一連の違法行為についてJDLに、労働者の原状回復と、労働組合の要求書に基づく三者会合のために必要な措置を取るよう要求する書簡を送付した。
■同日 経営側が組合のシャリフネシア書記長に退職と組合役職の退任を強要。
■1月1日 経営側が組合員のルシアに退職と組合役職の退任を強要、白紙の書類への署名を強要。彼女は署名を拒否した。翌日も経営者は彼女の部屋に押しかけ、生命の危険があると脅した。同4日、彼女は出勤したが、工場に入れなかった。
■同4日 上記の組合役員・組合員全員が、バングラデシュ労働法(06年改定)のセクション33に基づき、原状回復とそれまでの期間の賃金の支払いを求める請願書を送付した。
■同7日 経営側はルシアの夫を脅迫して、ルシアに組合活動をやめさせるよう強要し、そうしなければ彼を痛めつけ、彼の薬店を破壊すると脅した。


 現時点で組合はJDLからの回答を受け取っておらず、経営側からの回答も受け取っていない。経営側は労働者に対する脅迫を続けており、組合を脱退しなければJMB(テロリストの組織)のメンバーとして刑事告発すると脅している。経営側は警察を労働者の出身地へ送り、JMBに関係したことがあるかどうかを調査させている。それによって家族も恐怖に巻き込んでいる。

 

*緊急の要請

(1)ドングリアン・ファッション社に要請(抗議)の手紙を送ってください。輸出先の国からの手紙は大きな圧力になります。宛先と抗議文の見本は「レイバーネット」のホームページ等から入手できます。
(2)日本の企業や業界団体への申し入れ。

 バングラデシュの衣料産業は今やこの国の基幹産業であり、400万人の労働者の大半が女性労働者であり、そこでの労働に貧困からの脱却の夢と人間としての尊厳を託してきました。
 日本とバングラデシュの貿易・投資関係が急速に広がっている今、日本企業に対してもバングラデシュの衣料産業の健全な発展と継続的関係のための責任を求めたいと考えます。

 本誌読者の皆さんの協力をお願いします。 

 

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