★英 国
マクドナルドで初のスト
9月4日、英国で初めてマクドナルドの労働者がストライキに入った。この日ケンブリッジとクレイフォード(ロンドン南東部)の店の労働者たちが午前0時から24時間アクションを開始した。
ベーカリー・食品労組連合(BFAWU)によると、労働者たちは時給10ポンド(1ポンドは約140円)と「ゼロ時間契約」(就業時間が決まっておらず、会社側からの指示がある時だけ出勤する)の廃止を要求している。
会社側は「ストに賛成投票をした組合員33人のうちストに参加したのは14人だけだった。ストが行われたのは英国の1270の店舗のうち2店舗だけであり、参加したのは全従業員の0.01%未満だ」と述べている。
ロンドンの国会議事堂前での集会に参加していたシェン・バトマズさん(クレイフォード店に勤務)は、ゼロ時間契約のため一部の仲間は職場でのいじめを心配していると言う。
彼女によると、「ゼロ時間契約によって悪質な管理者は私たちの勤務時間を大幅にカットできる。管理者に逆らったら4時間の就労が1時間にカットされる。ある友人は5年間同じシフトで働いていたのに、管理者のいじめに抗議したとたんに週5日の就労を1日に減らされた」。
ケンブリッジ店で働くスティーブ・デイさんは、「仲間を組合に誘い、ストに参加するよう働きかけるのは非常に難しかった。90人のうち10人がロンドンでの行動に参加した」と語っている(「BBCニュース」9月4日より)。
同日付「ガーディアン紙」でコラムニストのスザンヌ・ムーアさんは「すべての力をマクドナルドのスト参加者たちに―若者たちはこんな条件で生きていけない」という見出しで、次のように書いている。
「マクドナルドのようなファストフード店は若者と、彼ら・彼女らが元気よく注文を取る声が頼りだ。だとすれば、今日ストライキに入った同じ若者と彼ら・彼女らの元気を目にしても驚
くことではない。彼ら・彼女らの要求はささやかなものだ。時給10ポンド、ゼロ時間契約の廃止、労働組合の承認である。
これは誰が見てもダビデとゴリアテの闘いだ。一方には巨大な富を築いているグローバル企業、他方には時給5ポンド未満のティーンエージャーたち。これは億万長者と、気まぐれなシフトに翻弄されながら生活を組み立てようとしている学生たちの闘いである。突然出勤の指示があるので病院の予約や家庭教師の時間調整も難しい。
これは小さなストライキだが、非常に重要だ。賃金をめぐる問題だがそれだけではない。それは若者たちがどれほど冷淡に扱われているかに人々の注目を集めた。会社の説明ではゼロ時間契約はフレキシブルな労働を保証するものとされているが、現実には不安定そのものである。
マクドナルドは17年末までに固定労働時間のオプションを導入すると発表している。しかし多くの労働者はすでに週35時間以上就労していて、それでも生活賃金には足りず、何の権利もなく、常に不安定な状態に置かれてきた。
それで十分なのか?20歳の若者が時給6.85ポンドでどうやって家賃を払えるのか?
170億ポンドの売り上げがあり、その役員が1182万ポンドの年収を得ている企業が、貧困を強いるような賃金を支払っているだけでなく、若者たちを不安定で、服従的な存在に追いやっている。これは許されないことだ。
グローバル化はどこか遠い国の労働者の搾取を意味しているだけでなく、こいけにえの国の若者を生賛にしているのだ。
だからこそ彼ら・彼女らの反撃は人々を鼓舞する。それは勇気を必要とする。そしてこの一握りの若者たちはその勇気を示した。多くの人はストライキは時代遅れで効果がないと言う。
現在の職場の孤立化された環境の中で労働組合の活動は困難になっている。
しかし、『マックストライキ』(ツイッターのハッシュタグになっている)はストライキが不可能でないことを示した。
このストライキは過去への回帰ではない。それは過去ではなく現在を象徴している。ローカルな行動だが全世界のファーストフード労働者から支持された。これはもちろん階級の問題であるが、同時に、若者が使い捨てにされるのを拒絶したということでもある。
★インドネシア
アブラヤシ農場の搾取労働に労働組合と環境団体が抗議
インドネシアのアブラヤシ(パーム油の原料)・プランテーションの労働条件に関する調査で、違法な低賃金、農薬散布などの危険な作業での労働者の安全の無視、経営者による日常的な嫌がらせなどの実態が明らかになっている。
生産されたパーム油はペプシコのクエーカー・グラノーラバー、チートスやレイズのポテトチップなどの世界的に有名な製品に使われている。現在、国際的な労働組合と環境運動が協力してプランテーション労働者の権利を要求している。
米国・カナダのトラック運転手を中心とするチームスター労組(IBT、140万人)と国際食品労連(IUF)はペプシコのインドネシアにおける主要取引企業のーつであるインドフードが経営するプランテーションにおけるさまざまな労働権や人権の侵害に対する闘争を呼びかけている。
熱帯雨林行動ネットワーク(RAN)の最近のレポートによると、インドネシアのペプシコに関係するいくつかのプランテーションで労働権が日常的に侵害されている。RANの活動家のパール・ロビンソン氏は「ペプシコは供給元の企業がプランテーションの労働者をだまして不当に低い賃金・手当で働かせ、危険な化学物質にさらし、労働者に子どもや配偶者も働かせるよう強制しているのを黙認している」と指摘している。
パーム油は今世紀初め以来、世界で最も人気のある消費者向け作物へと急成長した。しかし、原料となるアブラヤシの栽培はインドネシアの森林破壊、労働者の搾取、地域共同体の土地の強奪をもたらしてきた。
ペプシコは16年に改善策をまとめた方針書を発表したが、RANによるとそれらの方針は抜け穴だらけであり、合弁事業のパートナーに対しては実効性が及ばない。
労働組合とNGOはペプシコの株主総会会場での宣伝活動や、ニューヨークの同社の大看板の下にバナーを垂らすなどの行動を展開し、また、チームスターの参加のペプシコや他の食品労働者の組合(約2万人)がインドネシアの当該企業に申し入れ書を送っている。
(「イコールタイムズ」8月9日付より)
★フランス
解雇規制を撤廃する「労働改革」
マクロン大統領は「労働改革」を重点的な政策として位置づけているが、8月31日にフィリップ首相とペニコー労働相が「労働改革」の内容を発表した。「改革」の主要な目的は企業が労働者を雇用および解雇しやすくすることである。
フランスは伝統的にヨーロッパでもっとも労働者の権利が保護されている国のーつであり、政府は企業により大きな自由を与えることで停滞した経済の再生を促すと説明している。
現在、フランスの失業率は9・5%で、ドイツや英国の2倍近い。マクロン大統領は労働安全から賞与まで詳細に規定した3000ページにわたる規制を簡素化し、企業・組合・従業員が労働条件を自由な交渉によって合意できるようにすると述べている。
このような「労働改革」はオランド前大統領の下でも提案され、全国で数ヵ月にわたって反対デモが展開された。マクロン大統領はこの失敗を教訓化して、「改革」を政令によって進めようとしている。
すでに与党が過半数を占める議会は、政令による実施を承認しており、財界・労働組合とも協議が行われている。「改革」案は9月22日の閣議で採択される予定であり、その後に国会での承認が求められる。
発表された36項目の新しい措置の中で、小・零細企業の経営者にとって特に有利なものは、いくつかの間題について企業レベルで、従業員と直接に交渉する〈産業労働組合を介さない〉オプションの導入である。
小企業(従業員250人未満)、零細企業(同50人未満)は全労働者の半数以上を雇用し
ている。
そのほか、不当解雇に対する補償金の上限、不当解雇の申立の期限(解雇後1年以内)、労災補償の上限(雇用期間や企業の規模に応じて)などが導入される。一方、退職金は月給の25%に雇用年数をかけた金額(現行は20%)に増額される。
短期契約の期間、更新回数、更新間の待機期間についての制限は業種ごとに調整できるようになる。
経営団体はこの改革を現実的で、業界の自信回復の重要なステップになると歓迎している。
労働組合はそれほど積極的に支持しておらず、CGTは9月12日に「労働改革」反対のデモを呼びかけている。
CFDTは「労働改革」への懸念を表明しているが、デモには参加しない。
社会党は「改革」案が労働者の保護を切り捨てると批判している。共産党と国民戦線も「改革」案に反対しており、メランション元大統領候補の「不屈のフランス」は9月12日と23日のデモへの参加を呼びかけている(CGTは23日のデモには不参加)。
(「フランス24」9月1日付より)