アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
878+9号

グルジア(ジョージア):11.14鉄道ストは労働運動再生のはじまり

 以下は世界の労働運動の報道を集めているウェブサイト、「レイバースタート」運営のエリック・リーさんによるレポートの抄訳である(「イコールタイムズ」12月4日付)。

 

 11月中旬の2日間、グルジア(「ジョージア」はロシア語発音に基づく表記)の鉄道をめぐり展開されたドラマは、黒海とコーカサスの山々に挟まれた小国での労働運動の息吹きを全世界に示した。
 6千人以上の鉄道労働者は、経営者が超勤手当、ボーナス、その他の条件についての交渉を拒否したためストに入った。
 グルジア鉄道労働者新労働組合(GRWNTU)のヴィタリ・ジョーガッゼ委員長は「われわれは約1年間、団体交渉を求めてきた。われわれは労働法で認められているすべての行動を取ることを決定した」と語っている。
 組合は法律に従って21日前にストを通知し、さらに10日間の猶予を与え交渉を要求したが、経営側は応じなかった。そのため11月14日午前10時にストに突入。そのわずか6時間後に、国内および国際的連帯が広がる中で、経営側は交渉に応じると組合に通知し、翌朝3時に合意が成立した。


 グルジアでは2003年11月に「バラ革命」が起こり、サアカシュヴィリが政権に就いたが、同政権の下でも労働者の闘争は厳しく抑圧されてきた。
 11年にはヘラクレス製鉄所の労働者の闘争で、グルジア西部の中心都市、クタイシの知事と警察は強硬な弾圧でストを圧殺した。
 同年に鉄道労働者の組合の大会が経営者によって妨害された(多くの代議員が出席を阻止された)。
 その一方で、サアカシュヴィリの下で、労働法改定をめぐって労働組合と政府の交渉が進み、13年夏に新しい労働法が発表された。これは労働組合が当初同意していた内容からは大きく後退していた。それには在グルジアの米国商工会議所による圧力も関係していた。しかし、ITUC(国際労働組合総連合)によると、新しい労働法は労働組合差別に対する保護や、危険な職種での有給休暇の増加、妊娠を理由とする解雇の禁止などの改善も含んでいる。


 鉄道ストが示したように、グルジアの労働組合には新たな活力の兆候が見られる。
 鉄道ストは首都トビリシでは完全に成功したが、西部では経営側による強力な妨害があった。組合リーダーに対する脅迫もあったと伝えられている。GTUC(グルジア労働組合連盟)からの支援要請を受け、ITUCはグルジアの当局者に強い懸念を表明した。
 交渉の妥結を受けて、GTUCは「6時間にわたる交渉の結果、GRWNTUが掲げた3つの要求のすべてについて合意に達した」とする声明を発表した。

 

 

イギリス:リオティント社の不当労働行為にグローバルな反撃

 以下はインダストリオールの特別レポート「リオティントの持続不可能なビジネス慣行」(11月27日付)の要約である。

 

 リオティントはロンドンに本社を置く多国籍鉱山開発会社で、世界の40余の国で約7万1千人を雇用している。
 リオティントはグローバルな倫理規定を設けており、業界の間では社会や環境への責任について高く評価されているが、実態はそのような評価とはほど遠く、多くの労働組合や環境団体、人権NGOから非難されてきた。

 リオティントは鉱山労働組合との交渉を避け、「直接交渉」と称して「第三者」(労働組合など)抜きに労働者と個別に労働条件について交渉するやり方を進めてきた。1990年代にはオーストラリアで労働組合の排除に成功した。


 12年にはカナダ・ケベック州アルマのアルミニウム精錬工場で780人の労働者に対して、半年間にわたってロックアウトが行われた。労働者たちが賃金の50%引き下げとアウトソーシングの計画を拒否したためである。最終的にはUSW(全米鉄鋼労組)が勝利して、新しい労働協約が締結された。
 13年8月にはモンゴルのレッドパス・モンゴリア社が約1700人の労働者を解雇した。同社はリオティントとモンゴル政府が共同で所有する銅山・金山で働く労働者を雇用している請負会社である。解雇の理由は、モンゴル政府との間での利益分配に関する交渉の遅れである。
 ニュージーランドでは、エンジニアリング・印刷・製造労働組合(EPMU)が、ニュージーランド・アルミニウム精錬会社(リオティント・アルキャンが多数株主)に対して、年休に対する賃金不払いの是正を求める訴訟を起こした。


 米国・カリフォルニアでは10年に、リオティントが残業の増加や、先任権制度の廃止、雇用や労働時間に対する管理者の権限の強化を内容とする新しい協約条件を提案し、ILWU(全米港湾倉庫労組)がこの提案を拒否した翌日、ロックアウトを行った。ILWUは緊急に国際的支援を呼びかけ、最終的には会社側は提案を撤回した。

 モンゴルでは、オユトルゴイ鉱山で、リオティントが地元住民の同意も政府の許可もなしに、ウンダイ川に廃棄物を流し、地元住民やNGOからの抗議が広がっている。
 さらに、インダストリオールのモンゴル調査団の報告によると、リオティントはモンゴルの前政権との間で不正な投資契約を交わし、その結果、モンゴルは今後20〜30年間にわたってオユトルゴイの銅生産による利益を享受できない。モンゴル政府はこの契約の改定を求めており、先述のレッドパス社による1700人の解雇はこの問題に関連している。

 マダガスカルでは、リオティントとマダガスカル政府の合弁企業であるQITマダガスカル・ミネラルズ社が保安要員の外注化を進めている。13年7月に300人が1ヵ月の通知期間で解雇された。


 リオティントの一連の不当労働行為と闘うため、インダストリオールとその加盟組合は「リオティント・グローバル・ネットワーク」を設立した。リオティントは膨大な資産を保有しているため、個別組合との紛争の解決を引き延ばすことができ、また、強力なロビー活動によって立法にも影響を及ぼすことができる。さらに、優れたコーポレート・ガバナンス(企業統治)という評価を受けている。
 リオティント・グローバル・ネットワークはNGOや地域の住民との広範な連合によって、リオティントが労働組合に対する対応を改めるように、力関係を根本的に転換させることを目指している。

 

 

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 東京都千代田区三崎町2-13-5 影山ビル501号 Tel.03-6675-9095 Fax.03-6675-9097