★ドイツ:数十年ぶりのストライキの高揚
ドイツでは今年に入ってストライキが急増しており、6月中旬段階でストライキによる損失日数が延べ35万日を超えている。昨年は1年で15.6万日、2010年はわずか2.8万日だった。
特に5月以降、航空、鉄道、郵便、保育などの部門で相次いで全国的なストライキが起こっている。これは05年の「ハルツ第4法」(失業給付の大幅引き下げ等)に反対する闘争以来最大の高揚となっている。
鉄道運転士の組合GDL(3万人)は少数組合であるが、5%の賃上げ、団交権の拡大等を要求してこの10カ月の間に9回のストライキを行ってきた。鉄道の部分的民営化に伴ってドイツの鉄道労働者の賃金は他のEU諸国と比べて低くなっている。GDLのストライキは1日につき600万人以上の乗客と60万トン以上の貨物に影響を及ぼし、会社に約1千万ユーロの損害を与えている。
ベルリンのシャリテ病院(大学病院)では5月に、ケア労働者たちが、患者とスタッフの関係の改善のための措置を求めて2日間の職場放棄を行った。
幼稚園・保育園の教員たちは10〜15%の賃上げを要求して5月以来、波状ストに入っている。
以下は英国「ガーディアン」紙5月22日付に掲載されたウォルフガング・ストリーク氏(ドイツの社会学者)によるレポートの要約である。
かつて、「ドイツ人のストライキ」は「ドイツ人のジョーク」と同様に、形容矛盾だと思われていた。しかし、今はそうではない。ヨーロッパ最大の経済大国ドイツで最近、鉄道の運転士、幼稚園や保育園の教員、郵便労働者が次々とストライキに入っている。ストライキの波は一時的な雑音ではなく、「ドイツ・モデル」と呼ばれてきたものの不可逆的な崩壊のもう1つの表れである。
最近のストライキに参加しているのは、好調な輸出産業の労働組合ではなく、主に国内のサービス部門、特に公共部門の労働者であり、さまざまな兆候から、この傾向は当分続くと考えられる。
過去には強力なIGメタル(金属労組)が全産業における賃上げの基準を設定する役割を果たしていたが、IGメタルが最後に全国的なストライキを行ったのは1984年である。90年代には加盟組合、特に自動車産業の組合は厳しい闘いの経験から、製造業の国外移転がかつてなく容易になっていることを学んだ。特に中国や東欧の旧共産圏諸国への移転である。
今では国際競争力は市場占有率をめぐる競争だけでなく、雇用に関わる問題となっている。
ドイツの労働者の雇用への不安は、賃上げを勝ち取ることでドイツの貿易黒字を減らし、ユーロ圏におけるマクロ経済的バランスの回復に貢献するという考え方に消極的である理由ともなっている。
今日では、ストライキの中心は公共サービス部門に移っている。ドイツの再統一以降、公共部門の経営管理者たちは経営再建の一環として、従来の公共部門における団体交渉制度(職種に関わりなく一律の賃上げ率が適用される)を解体した。また、従来、列車の運転士、教員、郵便労働者等の労働者にはストライキ権が認められないが、終身雇用と経済成長率に連動した賃上げが保証されてきたが、このドイツ特有の制度も廃止された。
さらに、公共サービスの漸進的な民営化とそれに伴う失業と組織率の低下によって、公共部門の賃金が競争にさらされ、賃金の階層分化が急速に進んだ。
もう一つの要因は、保育や高齢者の介護などの新しい職業の発展である。政府はこれらの職種の重要性と道徳的価値について美辞麗句を並べるが、この部門は賃金が低く、多くの場合、雇用が不安定である。ケア労働者たちは賃金構造の中で最も弱い立場に置かれる。ヴェルディ(公共および民間部門のサービス労働者の組合)などの組合を組織しない限り、この労働者たちは、財政の逼迫を理由に、要求される高いレベルの技能に見合った賃金や雇用条件に関心を示さない政治家たちの美辞麗句に甘んじるほかない。
また、技術の進歩に伴って、経営者たちは従来は特別の職種とみなされてきた航空機のパイロットや管制官、列車の運転士などへの圧力を強めている。これらの職種は情報処理技術の発展によって専門技能の必要性が低下しているという理由で、労働者たちは賃下げや労働条件の引き下げ、不安定な雇用を受け入れるよう迫られている。将来は解雇の可能性もある。皮肉なことに、そのことが労働者の戦闘性を強めているという面もある。なぜなら、退職金や失業手当は離職時の賃金を基準とするからである。
これらの要因のすべてが、数十年にわたってドイツ資本主義の安定の基盤となってきた賃金制度の広範な浸食をもたらしてきた。
社会民主党の労働相を擁するドイツ政府は、職種別労働組合のストライキを禁止することによって、拡大する労使紛争を抑制しようとしている。しかし、この試みは憲法裁判所で無効とされる可能性が高いし、企業や産業の構造がもはや産別組合や「1職場1組合」という原理になじまない世界において、また、鉄道運転士やパイロットたちが、法律がどうであれ、必要ならストライキに訴える決意で自分たちを守ろうとしている中で、失敗に終わるだろう。
★フランス:タクシー運転手がウーバーに抗議
米国カリフォルニア州のウーバー・テクノロジーズ社はスマホを使ってタクシーの配車依頼を受け付けるサービス(ウーバーポップ)を展開している。ウーバーポップが不当に安い料金で他の会社や個人の営業を圧迫しており、運転手の技能や資格にも問題があることから、フランスでは今年1月1日以降、このサービスが禁止されている。
しかし禁止のための効果的な措置が講じられていないため、依然としてウーバーを利用する多くのタクシーが営業を継続している。
6月25日に、タクシー運転手たちが全国でウーバーの営業禁止の徹底を求めてデモを行い、パリでは3千人が空港に向かう道路を封鎖した。各地でウーバーのタクシー運転手との衝突や、車両の破壊・放火が起こった。
ベルナール・カズヌーヴ内務相は組合との会談の中で次のように述べた。
「ウーバーポップは違法なサービスであり、禁止されなければならない。ウーバーポップの車両が公然と法律を破る場合は、押収される。ジャングルの掟で国を統治することはできない」。
タクシー運転手のイブラヒム・シッラさんは、「また口先の約束だ」と語っている。
フランス政府は同24日にパリ市内でのウーバーの営業の禁止を求める裁判を起こしたが、ウーバーは法廷で闘う、当面は営業を継続すると言明している。
同社によると、同社はフランスで数種類のカーシェアリング・サービスを提供しており、ウーバーポップの利用者数は40万人である
(AFP同26日付より)
★中国:ユニクロ工場閉鎖に300人がスト
ユニクロ向けに衣料を製造する広東省の深せんアルティガス衣料皮革社で、300人の労働者が2週間にわたって、経営者による一方的な工場閉鎖決定に抗議している。
このストライキは中国で今年1月以降に起こっている1千件余のストライキの1つである。
香港の「チャイナ・レーバー・ブレティン」誌によると、中国では14年に1370件のストライキが起こっており、前年の656件を大きく上回っている。これは中国の経済の減速と、労働者が自分たちの法律上の権利についての意識を高めていることによる。
中国の労働者たちは、労働運動活動家の助言を得ながら、団体交渉などの集団的行動を選ぶようになっているが、一方で、組織的な活動を憂慮する地方行政機関からの介入を受けている。
アルティガス社の労働者たちによると、経営側は労働者を別の工場に移転させようとしているが、労働者たちは移転についての交渉を要求している。
アルティガス社を経営しているリーバー・スタイル社はコメントを拒否しており、ユニクロは[6月17日に]平和的解決を促す声明を発表している。
ユニクロは問題が解決しない場合、リーバーとの契約を打ち切る可能性があると述べている(AP、6月25日付より)。
香港のSACOM(「企業の不当な行為に反対する学生・研究者」)はユニクロ(ファーストリテーリング)の17日付の声明について、以下のように指摘している。
「ファーストリテーリングはリーバーに対して話し合いによる平和的解決を促しており、速やかに解決しない場合は同社との契約を再検討すると述べている。しかし、現時点[26日]においてもリーバーは労働者との話し合いを拒否している。労働者たちは23日に、紛争解決と工場移転に対する補償についての交渉を求める公開状を発表している。しかしリーバーはそれを無視し、ストライキを破壊するために警察を導入した。ストライキが始まった6月8日に逮捕された女性(50歳)はいまだに勾留されている。
このような中でファーストリテーリングが取引停止を行っても効果はないだろう。ファーストリテーリングは紛争から手を引くのではなく、リーバーに(1)労働者と交渉すること、(2)賃金を支払うこと、(3)ストライキへの報復を行わないこと、(4)解決まで介入を続けるべきである」。(SACOMのウェブより)