★タ イ:三菱電機が不当労働行為、24人の組合員を解雇
以下は、三菱電機のタイにおける不当労働行為に関するインダストリオールの声明(10月4日付)である。
2020年オリンピック・パラリンピックの公式パートナーである三菱電機は、タイの工場で組合員をロックアウトし、不当で屈辱的な扱いを行い、その後26人の組合リーダーの復職を拒否している。
17年12月にタイ三菱電機はタイ電気器具・自動車用電子部品・金属労働者連盟(TEAM)の1800人の組合員をロックアウトした。その後、組合と会社の交渉で18年1月29日に合意が成立し、紛争が終結した。
三菱電機はロックアウトされた全労働者を復職させることに同意したし、これは法律上も必要とされている。しかし、同社は労働者を復職させる前に、労働者たちを「態度チェック」のための面接に呼び出し、組合リーダーに関する情報を提供するよう脅した。
同社はまた、労働者に軍の基地での4日間のキャンプに参加させ、外部の人材企業による「規律と秩序を学ぶ」ための5日間の研修を受けさせた。この研修では「自分の間違った行動について反省する」ことが求められ、老人ホームや仏教寺院の清掃奉仕を指示された。
さらに労働者たちは自分のソーシャル・メディア・アカウントに会社への謝罪文を投稿するよう求められた。
このような屈辱的な手続きに耐えたにもかかわらず、全労働者が復職したわけではない。同社は新しい求人広告を始めた。その上で、6月に選出された新しい組合役員10人を含む24人を解雇し、さらに2人について労働裁判所に解雇許可を申請した。
同社は復職した労働者に対して、18年9月で失効した団体協定に代わって個人雇用契約に署名することを求めている。個人雇用契約は組合員ではないことの表明を求めており、もし組合員である場合は個人雇用契約に規定される賃上げその他の便宜が適用されないこと規定されている。
三菱電機は脅迫と嫌がらせによって組合を弱体化させようとし、組合員に屈辱を与えた。これは国内法や国際労働基準に違反し、労働者および労働組合の基本的権利を侵害している。
同社は2020年オリ・パラ公式パートナーとして「人権、労働者の権利、公正なビジネス慣行」を誓約している。
インダストリオールは三度にわたって同社に対して解雇された労働者を復職させることを求める書簡を送ったが、現在まで同社からの返答はない。
★フィリピン:大地主の土地を占拠・耕作中の農業労働者9人が射殺される
10月20日夜、サガイ市(ネグロス島北部)のブラノン村で、農地を占拠して耕作している全国砂糖労働者連合(NFSW)の9人の組合員(2人の未成年者を含む)が、仮設小屋で休んでいるところを約40人の武装集団に襲われ、射殺された。
NFSWのジョン・ミルトン・ロサンデ書記長はドテルテ政権とフィリピン軍がこの農民の虐殺に責任を負っていると非難した。
NFSWの同21日付の声明によると、NFSWは砂糖農園の農閑期における飢餓を防止するため、農地改革の対象になっているがまだ分配が実施されず、放置されている土地を土地開拓区域(LCA)として利用し、農民の自家消費用の野菜、バナナ、トウモロコシ、根菜を栽培することを計画していた。この農場では20日に耕作が開始された。
政府軍の第303部隊長は今年4月に、LCAは新人民軍が不法占拠していると非難した。この土地の所有者のカルメン・トレンティーノは暴力集団を雇っている。サガイ市では昨年12月と今年2月にもNFSWの2人のリーダーが殺害されている。
NFSWによると、ネグロス島の砂糖農園42万ヘクタールのうち、34%が50ヘクタール以上の農園で、わずか1860人の大地主が所有している。30%が10~50ヘクタールの農園で、6820人の大地主および小地主が所有している。5万3千人の農民・農業労働者が所有する土地はわずか36%である。
しかも、土地改革によって分配された砂糖農園の70%が、賃貸されている。政府から耕作のための支援やサービスを得られないために土地の分配を受けても自分で耕作できないからである。
土地改革の実施率はまだ40%にとどまっている。
砂糖農園で雇用されている労働者の賃金は年平均で週500~750ペソ(1ペソは約2円)である。農業労働者の最低賃金は1日245ペソと定められているが、いまだに多くの農場で1日80~120ペソという超低賃金が横行している。
「ネグロスの砂糖労働者と農民が土地耕作区域を占拠するのは道義的にも正しいことで、正当である。特に、現政権が何の農地改革計画も示していないとき、それは当然のことである。ところが政府は土地の権利を主張する人たちに対する『赤狩り』攻撃を続けている」とNFSWは非難している。
★米 国:全国に広がる労働者協同組合
アメリカ電気・ラジオ・機械労働組合(UE、約3万5千人)は1980年代以降の倒産をめぐる闘争の経験をもとに、労働組合自身による雇用の確保・創出を目指す労働者協同組合の設立を進めてきた。
09年にオハイオ州シンシナティのUE組合員が地域活動家たちと協力して、労働者が共同で経営する企業の設立を目指して、シンシナティ・ユニオン・コープ・イニシアチブ(CUCI)を設立した。
労働者協同組合は組合員(労働者であり、所有者でもある)が1人1株を保有し、経営に関する支配を保持する。
同様の事業はニューヨーク市ブロンクス地区でサービス従業員組合(SEIU)の2千人の組合員が経営する在宅医療組合、メイン州の機械工組合に加盟する海産物加工労働者が設立したロブスター207、コロラド州の通信労働組合千人の運転手が設立したグリーン・タクシー協同組合など全国で広がっている。
以下はUEのウェブ掲載レポート(9月20日付)の要約である。
CUCIがめざす経済モデルについての質問に対して、執行役員のクリステン・パーカーさんはスペインのモンドラゴン訪問の印象を語った。
「そこには立派な邸宅はないけれど、ホームレスの人もいません」。モンドラゴンは世界中のどこよりも高い水準の経済的平等を実現しており、労働者協同組合の連合であるモンドラゴン協同組合は現在7万人以上の従業員を雇用している同国第10位の企業である。CUCIは同協同組合をモデルとしている。
CUCIは12年に最初の労働者協同組合として、アワ・ハーベストを設立した。アワ・ハーベストはシンシナティの2つの農場で農薬や化学肥料を使わずに野菜・果物を栽培し、この地域の他の農場に倉庫・流通サービスを提供することを通じて、家族を扶養できる賃金での雇用を提供している。
2番目の労働者協同組合であるサステナージーは14年に設立され、住宅所有者にエネルギー効率を改善する改修サービスを提供している。来年にはノースサイド地区に総合食料品店、アップル・ストリート・マーケットを開設する。この地区では13年に唯一の食料品店が閉店し、「食料砂漠」となっていた。
CUCIはまた、シンシナティ教員連盟や公務員労組AFSCMEに加盟する保育労働者と協力して、「共用サービス」協同組合の設立を準備している。これは1人の在宅保育労働者を4つの家族で費用を分担して雇用し、生活できる賃金を保証するという仕組みで、それによって低所得世帯向けの公的補助金を受給している在宅保育労働者を組合に組織し、時給15ドルの実現を促進することをめざしている。
CUCIのリーダーたちは労働組合の組織化がこのビジネス・モデルの成功のカギだと考えている。これはモンドラゴンの協同組合の経験によって裏付けられている。そこでは連帯の文化、共通のグッド(良いこと)のために協力するという意志が協同組合事業の成功に不可欠であることが強調されている。
モンドラゴンは09年に全米鉄鋼労組(USW)と正式な協力関係を確立し、12年にはモンドラゴンとUSW、オハイオ従業員所有制センターが共同で「持続可能な雇用、持続可能な地域社会ーユニオン・コープ・モデル」を発表した。
パーカーさんはCUCIの活動について、「愛着を持てる地域社会を作り上げることを目指しています。そこでは資源が公平に共有され、すべての声が聞き届けられ、評価されます」と語っている。
CUCIの労働者協同組合には非常に多様な労働者が集まっている。アワ・ハーベストでは以前に懲役刑を受けた人たち、小学3年生までしか教育を受けていないグアテマラからの移民、修士号を持つ労働者が一緒に働いています。うまく協力できるために、すべての会合はまず全員の発言を聞くことから始める。「イライラすることもありますが、この種の参加型のプロセスを通じて互いを再発見します」と彼女は言う。