米国
「シカゴ教員組合7日間のストを勝利的に終結」
シカゴ教育委員会(CBE)との協約交渉をめぐって9月10日からストに入っていたシカゴ教員組合(CTU)は同18日に代議員大会を開催し、暫定合意書(12年7月から15年6月の協約)の承認とストの終結を圧倒的多数の賛成によって決定した。
CTUは、ストの終結にあたって、次のように述べている。
「今回の協約闘争は2011年11月に始まり、7日間のストで終わった。この闘争は、評価への異議申し立ての権利から、授業計画における教員の裁量権に至る多くの勝利を生み出した。また、多くの有害な『改革』を阻止した。教育委員会は能力給の導入や、1日の授業時間の延長、一斉学力テストを基準とした評価について、後退を余儀なくされた。
ストや広範な大衆的支持にも関わらず、われわれはいくつかの攻撃を阻止できなかった。授業日数および時間数の延長、年金加算制度(PEP)の廃止、評価が低い教員へのペナルティーの強化などである。
シカゴの学校は依然として、職員数の不足や過剰なテストから、チャーター・スクールとの競争の圧力、さらには学校の閉鎖までさまざまな脅威に直面している。
どんな協約もすべての問題を解決することはできないが、われわれの組合は団結を強化したし、将来の課題に挑戦する上で、これまでよりも有利な立場に立っている。この暫定協約の条件はCTUの組合員に新しい権利をもたらし、よい学校とよい労働条件を求めて闘う、より能動的な組合活動に向けた一歩となる」(CTUのウェブより)。
「レイバーノーツ」誌9月19日付のテレサ・モランさんのレポートによると、CTU側の主要な成果は以下の通りである。
■教員の評価において、学力テストが占める割合を30%に制限した。これはイリノイ州議会が昨年制定した教員評価に関する法律で規定されている下限であり、教育委員会は当初、45%を提案していた。また、教員が評価に異議を申し立てる権利が初めて認められた。
■能力給導入の提案を撤回させ、従来の賃金制度の大部分が維持され、経験と等級の上昇に伴う昇給が認められた。
■レイオフされた教員の再任用について大きな成果を勝ち取った。従来は先任権は学校単位でのみ適用されていたが、今後は、学校が閉鎖された場合に、生徒が編入される学校に空きがある場合は、その学校に優先的に採用される。新規採用の半数以上は、レイオフされた教員に充てられる。
■美術、音楽、体育の担当として600人の教員を新規採用する。
その一方で、レイオフされた教員に対する手当の給付期間が12ヵ月から6ヵ月に削減され、クラスの定員削減の要求は実現されなかった(ただし、学級定数をモニターする委員会の予算が増額され、保護者の参加が必要とされるようになった)。
教育委員会は、「財源が確保できれば」という条件で、ソーシャルワーカー、カウンセラー、看護師の増員に同意。エマヌエル市長は財源としてシカゴ市営のカジノへの税の導入を求めており、イリノイ州知事が拒否権を発動している。
CTUのカレン・ルイス委員長は同19日、「デモクラシー・ナウ」のインタビューで、ストに対して広範な支持があった背景について、次のように語っている。
「…私たちは組合の役員に選出される前から、学校閉鎖に反対する運動に積極的に取り組んできました。地域に働きかけ、保護者や生徒たちと協力してきました。私たちは、学校の問題についてはすべての利害関係者が参加して決めるべきだと考えてきました。しかし、労働組合も学校システムと同じように、上意下達でした。
そこで私たちは、市のすべての地域のあらゆる学校の組合員が参加できる大きな交渉チームを作り、交渉の過程を監視できるようにしました。数人の交渉代表が小さな部屋ですべてを決めてしまうというやり方を変えたのです。これは効果がありました。なぜなら、組合員は自分たちが参加していると実感していたからです。そのために暫定合意が承認されるのに数日かかりました」。
エマヌエル市長が授業時間数の延長を大きな成果だと宣伝していることについて、ルイス委員長は次のように指摘している。
「授業時間数を増やしても教育の質は保証されません。授業時間の延長が交渉の焦点だったわけではなく(授業時間数だけなら市長の権限で決められる)、私たちは授業内容の充実を保証することを求めたのです。それは生徒のための広範で豊かなカリキュラムを含みます。私たちが懸念しているのは、学校改革が標準化されたテストや、算数と読書の指導に偏っていて、子どもたちの自発性を引き出そうとしていないことです。だから私たちは美術、音楽、体育や外国語の授業の保証を要求したのです。そのような授業が批判的思考を育てるのです。また、教室に教える喜びや学ぶ喜びを取り戻すことを要求しています」。
前出の「レイバーノーツ」誌のレポートによると、CTUがこの数年間、学校閉鎖に反対する一連の闘争を通じて確立してきた保護者や地域住民との協力関係が、今回のストの中で大きな役割を果たした。アルバーニーパーク地域住民委員会はストの第1日目に開催された連帯集会(3万5千人が参加)にバスを仕立てて参加し、住民を地域の各学校でのピケットに派遣し、ストについてのフォーラムを開催した。若者のグループは学力テスト偏重の教育に反対するデモを組織した。ローガンスクウェアー地域住民委員会は、休校中に、子どもたちのための「フリーダム・キャンプ」を組織した。
テレサ・モランさんによると「シカゴでは闘いは間もなく再開されるだろう。12月までに新たに80〜120校の廃校が発表されると予想されている」。
「レイバー・ノーツ」のテレサ・モランさんは同誌ウェブ版9月7日付のレポート(「シカゴの教員がストへ」)で、民主党は企業主導の教育改革の推進のために、自らの支持基盤である労働組合を見捨てたようだと批判している。民主党全国大会に出席したエマヌエル・シカゴ市長は、檀上で、オバマ大統領の「トップに向けた競走」政策を称賛した。
民主党内では、教育市場への進出を狙うヘッジファンドの経営者を中心とする「教育改革を支持する民主党員」(DFER)グループが教員組合を激しく非難する宣伝を強めている。
公立学校の廃止、チャータースクール(公立・民営)への改組を進める企業経営者グループは「ペアレント・トリガー法」(生徒の親の半数以上が支持すれば公立学校の改組が可能になる)を推進しており、すでに7つの州で同法が制定されている。全国市長会も、民主党市長の主導の下で、この法律の推進を支持している。「ペアレント・レボリューション」なる団体が、学校の改組のために親たちからの署名を集めている。これに対してフロリダ州では33万人の会員を擁するフロリダPTAを中心として反対運動が起こっている。「ペアレント・トリガー法」は親たちの参加を促進するのではなく、単に学校の民営化を狙っているだけである。
エマヌエル・シカゴ市長は、十年余にわたる民主党の下での公教育と教員への攻撃を継続し、最近では授業日数の増加を押し付けてきた。米国の教員は、毎日の授業のほかに、授業の準備や、保護者との面談、試験の採点、学習が困難な生徒への一対一の指導などで平均で週53時間働いている。教育予算を削減して、教員の負担を増やすことでは公立学校の問題は何も解決しない。
モランさんによる(9月11日付レポート)と、CTUは当初は教育改革に対する闘いに積極的でなかったが、08年に公立学校の閉鎖に反対する現場組合員たちを中心に「現場教育者コーカス」が結成され、地域のさまざまな団体と連携して反撃を進めてきた。その成果によって、10年に、このグループが組合の役員選挙で勝利。CTUは昨年11月の協約交渉開始以前から各学校に協約交渉のための行動委員会を組織し、闘いを準備してきた。4月には試験的なスト投票が行われ、その後、組合員全員へのアンケートが実施され、90%がストに賛成することが確認された。改悪された労働法により、75%の賛成が必要となったが、ストは98%の組合員の圧倒的な支持で承認された。
ギリシャ
「新政権下で初のゼネスト(歳出削減計画反対で)」
9月26日、115億ユーロの歳出削減計画に反対して、二大労組が1日ゼネストに入った。6月の再選挙を経て保守派の連立政権成立以降、初めてのゼネストである。
サマラス首相は、歳出削減策として、年金の削減と定年の67歳への引き上げを計画している。
アテネでは銀行や観光地、官庁、学校などが休業。デモには医師、教員、税務労働者、フェリー操縦士、航空管制官など5万人が参加し、「トロイカ(EU、欧州銀行、IMF)に屈しない」、「IMFは出て行け」などのスローガンを唱和した。
国会付近で、デモ参加者の一部と警官隊の間で暴力的な衝突が起こり、十数人が逮捕された。
MRB(世論調査会社)が前週に行った世論調査によると、ギリシャ国民の90%以上が、支出削減計画は不当で、貧困層にとって負担になると考えている。
ギリシャのゼネストは、同25日のスペインでの大規模な国会デモや、前週のポルトガル各地でのデモ(50万人が参加)―いずれも厳しい緊縮政策に反対するデモ―に続くものである(「ガーディアン」紙同26日付)」
パキスタン
衣料工場で管理者のセクハラに抗議
9月11日、カラチのアリ・エンタープライズ社(衣料品製造)の工場で火災が発生し、258人の労働者が死亡した。ラホールでも4階建ての製靴工場で火災が発生し、約25人の労働者が死亡した。
種々の報道によると、工場は基本的な火災防止基準を満たしておらず、非常出口がなかった。アリ・エンタープライズの火災では、多くの犠牲者は地階に閉じ込められ、窒息死した。多くの労働者が窓から飛び降りて重傷を負った。
この4階建て工場は違法建築であり、工場法に基づく登録が行われていない。出口は1つだけで、防火および消火設備は全くなかった。窓には金網が張られ、通路や階段は製品や半製品で塞がれていた。この日は給料日で、工場内にいた約千人の労働者の多数は派遣労働者であり、社会保障や労働保険機関に登録されていない。
ラホールの製靴工場の火災は、発電装置からの火花が製靴に使用される化学薬品に触れたことが原因であると報道されている。工場は住宅地域の中にある。
インダストリオール(製造業の労働組合の国際組織)と、その傘下のNTUF(全国労働組合連盟)、PMF(パキスタン金属労連)等の組合は、政府機関の怠慢を批判し、工場所有者に対する処罰と、犠牲者の家族や被害を受けた労働者に対する賠償と無償の医療を要求している。
NTUFのナシル・マンスール書記長は、「パキスタンの工場は働く場所というよりも、死の罠である。労働者は人間としてではなく奴隷として扱われている」と述べている。
9月12日には抗議デモが組織され、NTUFは労働者を代表する組織との共同での厳格な調査の実施、工場法に基づく全ての工場の登録、健康と安全に関する法律の遵守、派遣労働の廃止、全ての労働者への雇用証明書の発行と社会保障機関への登録を要求した。NTUFはまた、パキスタン労働党が犠牲者家族との連帯のために呼びかけている9月15日の全国的ストの呼びかけを支持した。(インダストリオールのウェブより)
同15日にはラホール、イスラマバードなど各地でデモが行われた。パキスタン労働党のリーダーのファルーク・タリク氏は、パキスタンの宗教指導者たちがイスラムへの侮辱に対して抗議デモを煽る一方で、パキスタンの多くの労働者の犠牲について沈黙していると非難した。(「エクスプレス・トリビューン」紙、同16日付)