スペイン
炭鉱労働者が補助金削減反対の行進
スペイン北部の40余の炭鉱で8千人の労働者が、政府の補助金削減計画に反対してストを続けている。ラホイ首相は、EUや欧州中央銀行の強い圧力の下で、財政再建策の一環として炭鉱への補助金を3億ユーロから1.1億ユーロへの削減(64%減)計画を強行しようとしている。
スペインではこの20年間に、相次ぐ炭坑の閉鎖により4万人の雇用が失われており、今回の削減は、残っている炭鉱に壊滅的な打撃を与えると懸念されている。
2つの労組ナショナル・センター(CCOOとUGT)傘下の鉱山労組は、計画撤回を求め5月末からストに入っており、坑内座り込みや道路封鎖などが続けられている。
6月15日には、アストリアス州の州都オビエドの近くで、道路のバリケード撤去のために警官隊がゴム弾と催涙ガスで攻撃、数時間にわたる闘いで数人が負傷した。
同22日には、80人の組合員がオピエドから首都マドリードへの450キロにわたる行進に出発。マドリード到着は7月11日の予定である。この日は、首相がスペインの「救済策」の条件となる一連の政策を国会に提案する日である。
6月23日付の英国「ガーディアン」紙は、次のように報じている。「クリスティアンは、黄色と青のアストリアス自治州の旗を、塵埃にまみれた作業着に巻きつけていた。彼の母のオリガが、その旗に寄せ書きを書いていた。『お前は炭鉱の村の誇りだ』と。
クリスティアンの父のホセ・マヌエル(49歳)は遠くから見ている。彼は元炭鉱労働者で早期退職している。2人の息子も炭鉱労働者だ。彼は、『炭坑が閉鎖されたらどうなるかわからない。マドリードへ出発する者たちが私たちの最後の希望だ』と語っている。 アンナ・サンチェス(45歳)はひざまづいて、3歳の孫マリナに別れを告げた。アンナは炭鉱で9年間働いており、行進に参加した4人の女性の1人である。彼女の2人の娘のうち1人は11月に出産の予定である。アンナは炭鉱が閉鎖になったら『何もかもおしまいだ』と言う。エル・エントレゴ村では、他の村同様に、すべての仕事が炭鉱に依存している」。
行進の途中で、各地から炭鉱労働者が合流し、最終的には200人が首都に到着する。
バングラデシュ
350の衣料工場で賃上げ要求のスト
6月10日、ダッカから南東に16キロのナラヤンガンジのレックワーク社の労働者が賃上げと交通手段への補助を要求してストに入り、高速道路上でタイヤを燃やして、道路を封鎖した。
同11日、ダッカ近郊のアシュリアで、ハミーム・グループ子会社の梱包工場で労働者数千人が賃上げを求めスト、高速道路を7時間封鎖、近隣工場の労働者数千人が合流。100社以上の工場が騒ぎに巻き込まれるのを恐れ休業した。警官隊の棍棒による攻撃で約30人の労働者が負傷した。
翌日も警官隊との衝突が続き、アシュリアの350の工場のうち半数が休業した。政労使の三者による協議が行われ、ストを回避し、工場の操業再開が合意された。
ストの背景には、食費と住宅費高騰による生活の困難と、約束された賃上げが実行されない不満がある。たとえば、衣料労働者のタカ・ラヒマさん(仮名)は、賃金が月4千500タカ(1タカは約1円)で、家賃に月1千タカを払っている。家主は1千400タカを求めている。家賃が年に4回も値上げされるケースもある。また、この数ヵ月間、彼女は貧しい労働者にとっての唯一のたんぱく源である卵も買えない。前回賃上げされた2010年当時、4個24タカだった卵が40タカになるなど、賃金が上がっても、全く生活向上にはつながらない。
ハミーム・グループの工場で働くシャミマ・アクテルさんによると、経営者は約束した賃上げを守らない。彼女たちは労働組合や、そのリーダーたちが経営者と協調して、闘争の現場に現れないことにも不満を述べている。闘争は多くの場合、自主的、自然発生的である。
同13日朝、労働者が工場に戻ろうとしたが、ハミーム・グループの工場をはじめ多くの工場が閉鎖されていた。労働者たちは再び街頭デモや道路を封鎖、警官隊と衝突した。
同14日、政府は7月からの賃上げを実施約束の一方で、ストや街頭行動への弾圧強化を指示。労働者側の抵抗もエスカレートし、道路封鎖、工場への放火、車両の破壊が頻発した。
事態収拾のためハミーム・グループの経営者は賃上げを約束し、政府は家賃値上がり規制の措置を取ることを約束した。(ウェブ紙「libcom」6月18日付より抜粋)
米国
TPPはNAFTAの太平洋版
以下は「レイバー・ノーツ」誌に掲載されたシンシア・フィニーさんのレポート(「労働運動はオバマがこっそり進める『NAFTAの太平洋版』とどのように闘えるのか?」、6月20日付)の抄訳である。
TPP交渉について、今週、消費者団体「パブリック・シティズン」によって公開された漏えい文書によると、提案文書は投資家の利益の保護を強調し、労働者や環境や民主主義への保護を弱める内容になっている。
TPP交渉の内容は国民には非公開とされている一方、企業ロビー・グループには公開されている。
6月にダラスで行われた交渉に対しては、さまざまな活動家グループが交渉テキストの公開を求める署名や、直接行動を展開した。
NAFTA(北米自由貿易協定)と同様に、TPPは低賃金の国への雇用の流出を促進するだけでなく、多くの小規模農民を破滅させる。また、民主主義的に選出される政府が公共の利益のための政策を実施するのを妨げる。自由競争や企業の利益に反する政策に対して、企業が国家を訴えることができるようになるからである。すでに企業はNAFTAや他の貿易協定におけるこの種の規定を使って、政府を訴え、高額の賠償金を要求してきた。訴訟の脅しだけでも大きな効果がある。
このような通商協定に対し個別対応でなく、公正な通商をめぐる広範な論争展開のために、メイン州では02〜03年に、労働組合などの提案により「メイン州市民通商政策委員会」設立の州法が制定された。同委員会は、通商協定の州への影響について調査し、定期的に公聴会を開催してきた。その成果として、州選出の2人の上院議員(共和党)が05年の中米諸国との自由貿易協定をはじめ、いくつかの協定に反対票を投じた。現在ではメイン州の大部分の住民は、自由貿易協定が州のパルプ、製紙、製靴産業における雇用喪失をもたらすことを理解している。さらに公聴会を通じて、この州のリンゴ栽培農家も窮地に立たされることが明らかになった。
自由貿易の影響についてのこのような評価と大衆教育は、多国籍企業の利益よりも地域社会や環境上のニーズを優先する公正な国際貿易のための新しい枠組みを確立するために必要な(ただし、十分ではない)努力である。