ギリシャ
EU・IMF主導の緊縮財政に怒りのゼネスト
2月10日、EUとIMFの「ギリシャ救済」計画で強行されようとしている緊縮財政政策に反対して公務員労組ADEDYと民間労働組合GSEEが48時間のゼネストに突入、造船所、地下鉄・バス、病院、学校、銀行などがストップした。
EUは、最低賃金の22%引き下げ等の厳しい要求をしている。同日付のロイターによると「…それ(EUやIMFの要求)は行き過ぎかも知れない。5年連続の景気後退に苦しんでいる多くのギリシャ人は、5人に1人が失業中で、店が次々と廃業し、家計の苦しさを改善するとは思えない措置に怒りを募らせている」。
国会前広場では数万人が「レイオフにNo!」、「賃下げにNo!」、「年金カットにNo!」、「屈服を拒否し、抵抗しよう!」と唱和した。
公務員労組ADEDYの声明は「EU・IMFの新しい覚書に含まれていて、3つの政党のリーダーと政府とトロイカ(EU、欧州中央銀行、IMFの三者)の間で合意されている一連の措置はギリシャ社会の墓標である。今こそ、人々が声を上げる時だ」と述べている。
同12日には、翌日の国会採決に備え、警察が国会前広場にいたデモ参加者を解散させ、立ち入り禁止にしようと大量の催涙弾などを使用。数時間にわたり若者を中心に激しい抵抗が行われた。この騒ぎの中で、近くのビルへの放火も発生。他の都市でも警官隊との暴力的衝突が起こっている。
*ITUCの声明
ギリシャに強行的に導入されようとしている緊縮財政策に対しITUC(国際労働組合総連合)が2月7日発表した声明。(抄訳)
ITUCは、ギリシャ政府に対するEUとIMFの要求に含まれる労働者の権利への攻撃を非難する。ITUCはギリシャが合意に基づく方法で経済回復に着手できるように、すべての関係者による誠実な対話を呼びかけてきた。
IMFとEUは特に、民間部門における労働者の権利に関わる規制緩和、最低賃金引き下げを含む賃金の柔軟化、人員削減を容易にするための法改正や自由な団体交渉への介入を強く要求している。
これはITUCにとって、全く受け入れられない。正当な社会的対話や国際的に承認されている労働者の権利が無視されてきた。それは雇用の回復をもたらすどころか、ギリシャを長期にわたる緊縮政策とそれに伴う失業の増大に追いやろうとしている。……
国際機関とギリシャ政府は社会的対話、団体協約、雇用と所得の保証を破壊しようとしている。彼らは民主主義の基盤を破壊しつつある。ITUCはギリシャや、労働者の権利が攻撃にさらされているあらゆる地域の労働者と共にある。
*不正な債務の監査・債務帳消しを
ギリシャの債務危機は、同国の政財界と国際金融機関により不正に作られたものという観点から、市民による債務監査と不正な債務支払い拒否を要求している「ギリシャ債務監査キャンペーン」は2月12日付で、声明を発表した。(要旨)
「…われわれはただちに、無条件に債権者に対する支払いの中止、債務記録の公開を要求する。そのことで問題の多くを回避できる。第1に、年金基金の問題である。PSI(民間部門関与)合意案が実施された場合に、年金基金から120億ユーロが引き上げられ、基金は破産する。第2にトロイカ(注)からの第一次救済融資1千100億ユーロの返済問題である。この融資は議会の承認を得ておらず、しかも一切減額されていない。第3に、ギリシャがナチスの支配下で受けた融資の問題も長年にわたって取り上げられてこなかった。
われわれが非常事態下にあり、債権者への支払いと公共サービス(保健・医療、教育、社会保障)の同時遂行は不可能であることを考えれば、債権者への支払い停止は、ギリシャ国家の憲法上の要件である。非常事態を理由として国際的義務、特に支払いの停止宣言は国連国際法委員会およびハーグの国際司法裁判所で承認されている。
政府およびトロイカが導入している政策は破滅的で、非人道的であるだけでなく、不正かつ憲法違反で、将来、その全責任が問われるだろう。ギリシャ国民の生活条件を根本的に変える国際条約・協定は、国民投票によってのみ正当化されるのであり、今回のトロイカとの覚書は国民投票による承認を経ておらず、しかもギリシャ国民を隷属に縛り付けるものであることから考えて無効である。……
債務の支払いを停止し、雇用や社会サービスに充てることは可能であり、それは経済成長の再開につながる可能性すらある。そのためには社会全体が街頭に出て、抗議し、銀行家を政府から追い出す必要がある。国会での採決が終わった今でも、何も終わっていない。彼らの法律は人々の闘争により覆すことができる。
*総合病院を占拠し労働者管理
2月6日、キルキス(ギリシャ北部、中央マケドニア地方)の総合病院の労働者が、病院予算削減に抗議して病院を占拠、労働者管理の下に置くと宣言した。
労働者総会が開催され、同日以降、未払い賃金が支払われ、賃金が緊縮政策導入以前の水準に回復されるまで急患以外の診療は行わず、医療従事者の社会的使命と道義上の責任から、困窮者に対しては無償医療の提供が決定された。
パキスタン
工場の爆発事故で30人以上が死亡
2月6日朝、ラホールの住宅地区にあるオリエント・ラボ社(獣医科用の注射液を製造・販売)の3階建てビルで爆発が起こりビルが崩壊、少なくとも11人が死亡した[その後の報道では30人以上死亡]。11人中8人は女性で、3人は10代の少年だった。崩壊したビルの下敷きになった50人余の労働者の救出活動が深夜まで続いた。目撃者や救助隊員の証言によるとボイラー室のボイラーかガス・シリンダーが爆発原因と考えられる。
住宅地域での事業は違法で、工場撤去を求める住民訴訟の結果、これまでに少なくとも2回、立ち入り禁止処分を受けているが裁判所の決定を無視して、操業を続けていた(「ドーン」紙2月7日付)。
事故発生の数時間後、労働団体・労働組合の活動家数百人が工場前で、工場所有者の逮捕、救出活動の促進、犠牲者・被害者への補償等の要求を掲げた。
同7日、女性労働者ヘルプ・ライン、全国労働組合連盟(NTU)、全国労働組合連盟(NTUF)など5つの労働団体が州政府の反労働者的対応を共同記者会見で非難した。
パンジャブ州では、数百の小規模工場が法律を無視して住宅地域で操業している。これらの工場では労働法違反、児童労働(2月6日の事故の犠牲者中、5人は16歳未満)、不当な賃金カット、女性へのセクシャルハラスメントが繰り返され、多くの工場では労働協約は未締結で、労働者の健康と安全に関する措置が取られていない。
全国労働組合連盟(NTUF)パンジャブ州委員会のニアジ・カーン書記長は09年6月に州政府に対し、労働者による立ち入り検査禁止の取り消しを求める訴訟を提起した。ラホール高裁の判事は訴えを認めて州政府に対して是正を命じた。しかし州政府は裁判所の命令に従うことを拒否。もし州政府が労働者による立ち入り検査を禁止していなければ、2月6日の犠牲は回避できただろう。
女性労働者ヘルプ・ラインの代表アズラ・シャドさんは、以前に労働者を組織するためにこの工場を訪れている。アズラさんによると、女性労働者たちは非常に低賃金で、大部分が16歳未満である。彼女は次のように語っている。
「工場のオーナーはいつも私に工場に入るのはやめた方がいいと忠告した。それは彼が工場に労働組合を作らせたくなかったからだ。私たちは労働者を孤立させはしない。私たちは経営者を即刻逮捕することを要求する。警察は工場所有者を殺人罪で告発するべきだ」。
米国
「働く権利」法に反対し「スーパー・ボールを占拠せよ」行動
インディアナ州上院は2月1日、共和党提出の「働く権利」法を可決。この法律は、労働組合の活動のために経営者が新規に労働者を雇用するのをためらい、企業誘致ができず、若者の働く権利が奪われているという無茶苦茶な論理で、労働組合の活動にさまざまな制限を設ける法律で、同様の法律はすでに全米22州で施行されている。民主党はこの法律を州の住民投票にかけるという修正案を提出したが否決された。
同2日、数千人の活動家が州議事堂からのデモに参加した。
労働組合活動家と「オキュパイ運動」の活動家は同5日にインディアナポリスで開催されるフットボールのスーパー・カップを宣伝の機会として利用するため「スーパー・カップを占拠せよ」と呼びかけている。
当初この行動への支持を表明していたAFL・CIOは、徐々にトーンダウン。同州の委員長は「意見を言う場はスタジアムではなく投票所だ」と述べた。
同州の「働く権利」法では、組合に加入しても組合費の支払いを保留できる条項など、組合を財政的に締め付け、組合員と非組合員の分裂を煽る条項が盛り込まれている。他の州でも同様の法律制定の動きが加速している。(「レイバー・ノーツ」2月2日付より抄訳)