アジア@世界
778号

●ルーマニア
「賃金引き下げに反対して75万人がゼネスト」

 10月5日、医療、教育労働者、公務員、警察官約75万人が、賃金の引き下げ、解雇をもたらす新しい法律に反対してストに入った。このストは、この国でこの20年間で最大のストとなり、地方行政機関や金融機関の活動が停止した。病院は急患のみを受け付け、教員は子どもたちを自習させた。
 社会民主党が連立政権から離脱し、少数与党となった民主自由党は、11月22日の大統領選挙を前に、IMFからの200億ユーロ(1ユーロは約132円)の緊急融資の条件を満たすために、金融改革や公務員の賃金抑制を可能にする法律を制定しようとしている。この法律には社会民主党も賛成している。
 しかし、教員や病院スタッフの賃金が他のEU諸国の数分の1の月500ドルでしかなく、賃金抑制や10日間の無給休暇の強制に対して不満が爆発している。
 労働組合は5日のストに続いて、7日にブカレストでデモ、23日に警告スト、28日からは無期限ゼネストを計画している。(「ロイター」、「B92」より)

●カンボジア
「衣料工場の閉鎖に抗議、1千800人が門前集会」

 10月8日朝、プノンペンのタク・ファト衣料工場の前で1千800人の労働者が、工場閉鎖に抗議して集会を開いた。
 労働者たちによると、工場閉鎖は突然発表され、組合代表には前日に通知された。
 リープ・チャンソウエンさん(28歳)によると、会社側は「工場が閉鎖されている間、従業員には1ヵ月10ドルが支払われると約束した」。しかし、労働者たちは工場閉鎖に憤っており、提案されている補償は全く不十分だと言っている。
 カンボジア衣料労働者民主労組のミース・サンファー委員長によると、労働者たちは9月分以降の賃金の支払いと、工場閉鎖中は基本給の50%の補償を要求している。
 現在、経営者と労働相の間で、工場閉鎖の条件について協議が行われている。
 カンボジア王国自由労働組合のチェア・モニー委員長は、会社側は完全な閉鎖を計画しているが、その際の一時金の支払いを避けるために、一時的閉鎖を装っている可能性があると指摘している。
 カンボジアでは世界経済危機の影響で、今年に入ってから約130の衣料工場が閉鎖され、3万人が職を失い、そのほかに3万人が一時的に休職となっている。(「プノンペンポスト」より)

●ペルー
「首鋼グループ(中国国営)所有の鉱山で1千200人がスト」

 ペルー南部のショウガン(首鋼)・イエロ・ペルー鉱山で労働者1千200人が賃上げを要求して9月末から無期限ストに入っている。同鉱山はペルー唯一の鉄鉱石鉱山で、中国の首鋼グループが所有。  この鉱山では、7月に10日間のストと労働省の仲介を経て、1日1・91ドルの賃上げ等が合意され、協約が締結されたが、いまだに実施されていない。労働省は、賃上げを実施しなければ罰金を科すと警告。会社側は罰金支払いを選んだ。
 ICEM(国際化学エネルギー鉱山労組)はペルー政府に対し、同社にもっと厳しい制裁を科すことを要求している。ペルーの鉱山労組は10月19〜20日に全国で連帯ストに入ることを決定した。
 ショウガン・イエロ・ペルーは、世界的不況にもかかわらず昨年50%の増益を記録しており、現在、生産拡大のために10億ドルの投資を計画中である。(ICEMのウェブより)

●アルゼンチン
「クラフト・フーヅ社の解雇に抗議し、数千人がデモ」

 9月28日、クラフト・フーヅ社(世界第2位の食品メーカー、本社は米国・イリノイ州)の解雇に反対して数千人が大統領官邸までデモを行った。同社では8月に、クッキーなどの製造工場で労働組合が健康管理の改善を要求してストに入った(当時、鳥インフルエンザが流行し、保健省が職場での衛生に関するガイドラインを発表していた)。会社側は、経営者を一時拘束したという理由で役員や活動家を中心に160人を解雇。
 解雇者の1人で、勤続8年のクリスティアン・アバルサさんは「クラフト社は、アルゼンチンで一般的に認められている労働者の権利を奪おうとしています。アメリカ式の12時間交替制を導入し、6ヵ月ごとに採用される派遣労働者を雇用し、賃金や人員を増やすことなしに生産を増やし、同業種の企業で適用されている賃金水準やその他の手当を凍結するために、私たちを黙らせようとしているのです」。
 労働者たちは解雇に抗議して8月中旬から40日間、工場を占拠したため、生産はストップした。3千人の労働者のほぼ全員がストに参加した。
 9月25日、裁判所による退去命令をうけて警官隊が労働者を排除し、64人を逮捕した。12人が負傷した。解雇された労働者や支持者たちは工場の外で抗議行動を続け、ラッシュ時の交通を数時間にわたって止めた。
 工場は鉄条網や犬を連れた警備員、警察官のパトロールに守られて操業を再開した。9月26日には、新たに100人の労働者を解雇した。
 その後、クラフト社は解雇された組合員について、「ケースバイケース」で復職を認めてきたが、組合の中心的活動家に対しては復職を認めず、工場への立ち入りを禁止している。  ブエノスアイレスの裁判所は解雇無効と解雇者の復職を求める決定を下した。州知事は同社工場からの警察官の撤退を命じた。
 組合側の弁護士によると、同社は組合のリーダーを解雇した後、750人の人員削減を計画している。
 政府は米国からの投資への影響を恐れ争議への介入を控えているため、左派の活動家の間で政府に対する批判が高まっている。
 クラフト社の本社がある米国イリノイ州では、活動家たちが労働者への連帯のキャンペーンを開始し、クラフト社の製品のボイコットを呼びかけている。(「ニューズデイ」、「ブエノスアイレス・ヘラルド」等より)

●メキシコ
「電力会社の民営化に向け、警官隊が未明に発電所を接収」

 10月10日夜から11日朝にかけてメキシコ連邦警察がメキシコ中央電力会社の発電所を接収した。この電力会社はメキシコシティーやメキシコ中部の州に電力を供給している。カルデロン大統領は同社の解散、労働者の解雇を発表した。
 「Zネット」に掲載のダン・ラ・ボッツ氏のレポートによると、政府の今回の行動は、政府の政策、特に電力民営化に反対してきたメキシコ電力労組(SME)の排除と、この電力会社を連邦電力委員会に統合し民間企業への売却を目的としている。
 SMEのマルティン・エスパルサ書記長は政府の行動を「憲法に反する行動」であると非難。6万5千人の組合員(退職者を含む)に対して冷静に対処し、挑発に対して抵抗することを呼びかけた。組合員たちは組合本部と革命記念塔の前に集まり、国営の電力会社と雇用と組合を守る決意を示した。
 SMEは3要求を掲げている。
@メキシコ中央電力会社の解散の撤回、A発電所からの連邦警察の撤退、B会社の経営と管理に関し政府と労働組合が話し合うこと。
 政府の今回の行動は、予想されていたものだった。9月にハビエル・ロサノ労働相は、SMEの役員選挙が無効であり、選出された役員を承認しないと宣言した。役員が承認されなければ組合は協約交渉やその他の行動を行うことができない。また、政府に支持された一部組合員は組合本部を襲撃、書類や小切手を奪った。
 政府はメキシコ中央電力会社の経営効率が悪く膨大な赤字を出していると主張。労働者の退職金として200億ペソ(1ペソは約7円)の用意があると提案している。
 メキシコでは、カルデノン大統領就任以降の3年間に、鉱山労働者や鉄鋼労働者のストに連邦警察が導入されている。
 SMEは国際的な支援・連帯を呼びかけている。

●ギニア
「反政府デモ参加者への発砲・157人の虐殺に抗議のゼネスト」

 西アフリカのギニアで9月28日に軍事政権に反対するデモに軍が発砲し、157人が虐殺された。全国自由労働組合機構(ONSLG)は他の反政府グループと協力し、10月12日から2日間ストに入った。
 同12日付のBBCによると、首都コナクリでは大部分の店舗、オフィス、銀行が閉まり、通りには自動車がほとんど走っていない。
 BBCがインタビューしたコナクリの住民は、「前と違って、警察や軍隊は姿を見せていない。人々は怖がっている」と語っている。
 ONSLGの代表のヤモドウ・トーレ氏は、「公共部門、民間部門、インフォーマルセクターのすべての労働者に対して、9月28日の虐殺の中で銃弾に斃れた人たちを追悼するために、自宅で過ごすよう呼びかけている」と語っている。
 ギニアでは昨年12月にカマラ陸軍大尉が率いる軍がクーデターを起こした。軍事政権は来年1月に選挙を実施し、カマラが立候補を予定している。UFDG(ギニア民主勢力連合)などの反政府派は、抗議運動を拡大、9月28日の虐殺に抗議してアブドゥルラフマン・サノ農業相が辞任した。
 ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)委員会のモハメド・イブン・チャンバス委員長は、ナイジェリアのアブジャで開催中のギニアの危機に関する会合の開会にあたり、「軍事政権がその計画を進めるなら、新しい独裁体制が確立される危険がある」と警告した。
 米国のクリントン国務長官も、政府軍による虐殺、レイプ、掠奪を非難した。旧宗主国のフランスは国際的介入を提案している。
 同13日付のアルジャジーラによると、ストの2日目も大部分の人は自宅に留まり、街にはほとんど人通りがなかった。治安部隊が街をパトロールした。ストは鉱山やアルミニウム精錬工場にも拡大し、主要な外貨獲得源であるボーキサイトの積み出しも止まった。
 ギニア・ボーキサイト社(英国とオーストラリアの大手鉱山会社リオ・ティント社とUSアルコア社の合弁会社)の経営者は、ストのために最小限の供給しかできなくなっていると述べている。

●バングラデシュ
「船舶解体工場の安全と労働者の権利のための国際キャンペーン」

 米国の全米労働者委員会(NLC)は、バングラデシュにおける船舶解体作業の実態を調査し、国際的な機関が労働者の権利を擁護していないことを告発するレポートを発表した。
 このレポートによると、今年7月にバングラデシュの海岸に112隻の石油タンカーが、解体のために到着した。バングラデシュでは3万人の労働者が世界各国からの、有害物で汚染された船舶の解体作業に従事しており、その多くは10〜13歳の子どもである。この作業は世界中で最も危険な労働であると言われており、1日12時間、週7日間の労働の対価は1時間22〜32セントである。労働者は安全のための設備や器具も与えられず、労災による犠牲者は3週間に1人の割合である。
 昨年7月14日には、ナシルッディン・モラ君(13歳)がスルタナの解体工場で落下した大きな鉄板に押しつぶされて死亡。大量のアスベストや鉛、水銀などによる被害もNLCのレポートに詳しく報告されている。
 IMF(国際金属労連)は、船舶解体作業に従事する労働者、特に子どもたちの権利を擁護し、安全で健康な作業環境を要求する国際的キャンペーンを支持し、積極的に呼びかけることを決定。特にG20諸国の政府に対して、労働者の権利を擁護することを求める電子署名を呼びかけている。

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