●ギリシャ
「公共部門の労働者が緊縮政策に反対し24時間スト」
2月10日、公務員連合(ADEDY)が政府の財政緊縮政策に抗議して24時間ストに入った。
ギリシャの経済危機の拡大を恐れるEUは、パパンドレウ政権(社会党)に対して財政赤字削減を強く迫ってきた。同政権は月収2千ユーロ以上の公務員の賃金の凍結と諸手当の削減(実質3〜4%の賃下げを意味する)、増税などの政策を提案している。
昨年10月の選挙でパパンドレウが率いる社会党は、貧困層支援と富裕層への増税を公約にして勝利した。公約に反する一連の政策に対して、公務員だけでなく、民間部門の労働総同盟(GSEE)も2月末にストライキを計画している。
2月10日付「ガーディアン」は、次のように報じている。
「デモ参加者たちはそれを『怒りの河』と呼んでいる。政府の財政方針をめぐって今日デモに参加した人々の、果てることのないかのような流れは、たった1つの力によって動機づけられていた。それは怒りである。アテネの怒りは深夜の落書きから始まり、明け方までには、市内各所の銀行や商店や官庁の正面に戦闘の宣言が塗りたくられた。正午までには、左翼の活動家やストライキ中の公務員たちが旗を掲げ、ドラムを鳴らし、スローガンを叫びながら街頭に繰り出した……」。
組合のリーダーの一人であるワシリス・スタモーリス氏は「危機を招いた連中に代償を支払わせるべきだ。それは銀行家や産業資本家、船主、大商人、寡頭支配者が」と話している。
●米国
「トヨタの工場閉鎖にUAWが抗議」
トヨタ自動車のNUMMI工場(カリフォルニア)の閉鎖と4千500人の失業に反対しているUAW(全米自動車労組)のボブ・キング副委員長は2月12日に開催された集会で「トヨタは基本に戻るべきだ。世界の大衆は目覚めつつある。トヨタは道に迷っている。その成功を築いてきた基本を忘れてしまっている」と発言した。
この集会は、トヨタが世界的なリコールの渦中にある時期に開かれ、労働者が掲げるバナーにはトヨタのロゴの中に頭骸骨が描かれていた。品質と安全についてのトヨタの名声が疑問視されるようになっている。
NUMMIは1984年にトヨタとGMの合弁会社として設立されたが、経営危機に陥ったGMが昨年6月に撤退を決定。トヨタもこの工場で生産しているカローラとタコマ(トラック)を他の州へ移転することを決定した。
NUMMI工場の労働者は工場前でのピケット闘争を計画、消費者にトヨタ不買を呼びかけている。(「ロイター」2月12日付)
●ハイチ
「震災後の投資機会狙う外国企業と復興の核となる住民の組織」
ハイチでは、緊急の救援活動や、遺体の運び出し、瓦礫の撤去が続く中、復興後にどのような国を作るのかをめぐって、外国企業の動きと住民たちの下からの動きが交錯している。カナダの映像ジャーナリストのアヴィ・ルイスさんは、パートナーのナオミ・クラインさんと協力して震災後のハイチを取材し、現地の政府関係者や外国企業の経営者、そして自分たちの力で救援と復興の活動を組織している住民たちの声を収録した。その映像は「ハイチ復興の政治」と題して「アルジャジーラ」で放映され、「デモクラシー・ナウ」でも紹介されている(英語、約25分)。以下はその抜粋である。
……政府の中でも、外国企業の会議室の中でも、この国の再設計の作業がすでに始まっている。倒壊した建物の撤去を担当している政府関係者によると、ポルトープランスで堆積したすべての瓦礫を取り除くには、1千台のトラックを動員して1日12時間作業をしても1年はかかる。ハイチ復興の長期にわたるプロジェクトはまだ始まったばかりだ。しかし数十億ドルの海外からの支援と投資が期待されている中で、新しいハイチのビジョンをめぐる論争はすでに全面的に展開されている。
アレン・ビラード氏(工場主)、「ハイチは外国からの投資を赤じゅうたんを敷いて待っている。どんどん来てくれ」。
カミーユ・シャルマーズ氏(経済学者、「ハイチのオルタナティブな発展のためのプラットフォーム」)、「別のやり方での工業化を考えるべきだ。国内市場向けの、人々の役に立つ投資が必要だ」。
エドゥアルド・アルメイダ氏(米州開発銀行)、「ハイチは労働力コストが安い。だから投資のチャンスだ」。
アマソン・ジェラード氏、「真っ先に必要なことは、農業にお金をかけることだ。人々が必要としているのは食べ物であって、援助ではない。農業に役立てるためのお金が必要だ」。
パトリック・エリー氏、「国を再建しなければならない。強い国が必要だ。クーデターは困る」。
震災の後、政府は消滅した。国連と米国が救援活動を主導している。援助物資の配給の遅れが目立っているが、物資が届いているところでは規律が保たれており、それがこれからの復興プロジェクトにもつながっていく可能性がある。
パトリック・エリー氏、「同情しないでほしい。助けはほしいが、憐れみはごめんだ。人々の連帯と規律と回復力に注目してほしい」。
……大部分の人々は仮設のキャンプで生活している。多くのキャンプで、住民委員会が組織され、食糧や水の配給、仮設住宅の建設、衛生、治安を管理している。
カミーユ・シャルマーズ氏、「150万人もの人々が路上で暮らしており、危機に対処するために自分たちで組織を作っている。人々は食べ物や衣類、毛布を分け合っている。この経験はこれからの復興に生かさなければならない。そこに新しい未来の可能性の1つがあるはずだ」。
国連軍と米軍は救援物資の迅速な配給よりも治安を優先しているとして批判されている。ジャン・マックス・ベルリブ首相も、援助活動が遅いことに苛立ちを表している。彼は「人々にとって治安部隊なんかどうでもよい。水と食料と医薬品がほしいだけだ。なぜ水と食料と医薬品がまだ空港や倉庫に積まれたままなのかを尋ねているだけなのだ」と訴えている。
……ハイチではこの十数年間、米国や国際金融機関の圧力の下で国営企業が民営化され、多くの産業が衰退し、輸入への依存が深まった。外国企業は復興プロセスの中での投資機会を狙っている。
エドゥアルド・アルメイダ氏、「大きな建設会社がすでにわれわれに接触してきている。巨大な投資機会が見込まれるからだ」。
ヒラリー・クリントン米国務長官、「米国は、雇用を創出するために、ハイチで製造された衣料品への関税を撤廃する法律を06年に制定した。昨年10月には、この特別措置を10年間延長した。衣料産業はハイチの最大の産業であり、雇用創出が見込まれる分野である」。
ハイチの衣料産業への投資はブームになっており、この産業の雇用が2万5千人から15万人と急増している。しかし、労働者たちは、あまりの低賃金と劣悪な労働条件のために、次々と工場を去っている。パルム・アパレル社の工場は地震で倒壊し、約千人の従業員が犠牲となった。まだ遺体が埋もれているにもかかわらず、会社側の人間は埋もれていた製品を先に運び出している。
……震災後、数十万人がポルトープランスを去って農村へ戻った。山の中の、ラバに乗って2時間半ほどの村で、農民たちが集まって、危機への対応策を話し合っていた。
農民のオルガナイザー、「村で仕事があったなら、若者たちはポルトープランスまで行って死ぬこともなかっただろう」。
アマソン・ジェラード氏、「農民は、ポルトープランスから帰ってきた人々のために、もっとたくさん生産しなければならない。政府の権力を農村にも分散させるべきだ」。
パトリック・エリー氏、「農村に戻ってきた人たちには、避難所ではなく、働くことができ、豊かになることができるコミュニティーを提供しなければならない」。
マキシ・レイモンドビル氏(「医療パートナー」)、「われわれは20年前から、医療サービスの提供を通じて、そのことに取り組んでいる。地域の人々の声を聞き、いっしょに働くことを通じて、医療や飲み水にアクセスできるようになり、住宅建設の支援などの社会的サービスも提供しようとしている。
『医療パートナー』は今では10の病院と26の学校を運営しており、コミュニティー活動家の大きな全国ネットワークを組織している」。「医療パートナー」は、医療従事者をはじめ4千人を雇用している。最近では実験的な農業プロジェクトも始めている。ここには、人口過密の都市の工場での労働に代わるオルタナティブなモデルがある。
ポルトープランスで自主的に運営されている450の避難所と、この農村における実験は、絶望から生まれたものだが、集団的な知恵の源泉となるかも知れない。
●米国
「アフガン派遣拒否のシングルマザーへの実刑判決を断念」
昨年11月、ジョージア州フォートスチュワート(陸軍)基地の第3歩兵師団所属のコックでシングルマザーのアレクシス・ハッチンソン特殊技官(21歳)が生後10ヵ月の息子、カマニちゃんの世話をする人がいないことを理由に、アフガニスタンへの派遣を拒否した。
アレクシスさんはカリフォルニア州オークランドに住む母に息子の世話を頼んでいたが、彼女は自宅でデイケアセンターを運営しているほか、自分の子どもと病気の姉の世話をしており、カマニちゃんを1年間にわたって世話する余裕がなかった。アレクシスさんは上司に相談したが、カマニちゃんを養育サービスに預けるよう言われた。彼女は息子を残して出発することが心配だったので、出発予定の11月5日に出勤せず、翌日出頭し、逮捕された。息子は軍のデイケアセンターへ送られた。
軍はシングルマザーまたはシングルファーザーの戦闘区域への派遣に際しては、扶養対象の児童の養育計画の提出を求めているが、アレクシスさんの場合、実母に預けるという養育計画が破綻した。したがって、本来はアフガニスタンへの派遣から除外されるべきである。しかし、軍は彼女を逮捕し、2ヵ月余にわたり拘留、釈放後の1月12日に「従軍命令拒否、職務怠慢、反抗的行為」などの理由で提訴した。アレクシスさんが申請した正規の手続きによる(育児を理由とする)除隊は却下された。予審で正式に軍法会議にかけることが決定された場合は最高1年の禁固刑が適用され、前科が残る。
米軍では、昨年の時点で海外に派遣されているシングルマザーまたはシングルファーザーの兵士の数は1万人以上であり、両親とも海外に派遣されているケースも多い。近年、数百人あるいは数千人の兵士が育児を理由に任務を解除されている。アレクシスさんのケースでの軍の対応をめぐって大きな論争が起こった。
ほぼ同じ時期(昨年12月)に、イラク北部に駐留している同じ師団の司令官が、赴任地で妊娠した兵士とそのパートナーを、既婚か未婚かに関わりなく処罰するという命令を下したことも大きな議論を呼んだ。
2月11日に軍はアレクシスさんの「不名誉除隊」を決定した。アレクシスさんは退職金、年金の権利を失うが禁固刑は免れた。彼女は「監獄に入らずにすんでうれしい。これで子どもと一緒にいられる。それが一番大事だ」と語る。
アレクシスさんを支援した兵士グループ「抵抗する勇気」の代表のジェフ・ピーターソンさんは「アルクシスさんはアフガンに行かなかったし、負傷もしなかった。投獄もされなかった。子どもと引き離されることもなく、軍から除隊できた。これは大きな成功だ」と語る。
アレクシスさんの弁護人のスー・ススマンさんは、「アレクシスさんのケースは、軍が実際には家族に優しくないということを示した」と指摘する(「ニューヨークタイムズ」09年11月15日、10年2月12日付、「トゥルースアウト」のウェブ等より)