●トルコ
旧タバコ公社の労働者が雇用確保を要求してスト
トルコ政府は一連の民営化計画の一環として、昨年、テケル(アルコール・タバコ専売公社)をBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)社に売却した。
BATはテケルの労働者を引き続き3年間雇用することを提案したが、労働者たちは公務員としてとどまることを選択。その後、政府は昨年12月に、テケルの12の工場の閉鎖を発表した。労働者の雇用は2010年1月で打ち切られ、その後は、労働者たちは法律第657号の第4条C項に基づき、他の公共機関に臨時雇用されるが、賃金は約半分になり、いくつかの既得権を失い(退職金など)、雇用期間は最長で10ヵ月間である。
CTLU(トルコ労働組合連合)の労働者たちは、雇用と労働条件確保を政府に要求して、昨年12月16日に全国からアンカラで抗議行動を開始した。警官隊の催涙ガスや放水車にも関わらず街頭での行動を継続し、この問題への社会的な関心が高まっている。
エルドアン首相は「テケルの約1万人の労働者は仕事もせずに給料をもらっており、国家に40兆リラ(1リラは約60円)の負担を負わせている」と発言したが、CTLUのムスタファ・クムル委員長は12月23日の記者会見でこの発言を非難して、次のように述べた。「首相は、テケルの労働者が半生をこの国のために働いてきたことを知るべきだ。彼ら・彼女らは工場閉鎖に何の責任もない」。
CTLUは12月25日から毎週金曜日にデモを行うことを決定し、同日にはスローダウン(怠業)闘争に入り、1月8日まで出勤時間を1時間遅らせた(その後、1月15〜25日まで同じ戦術を行使)。
12月28日には、政府が労働者の要求を拒否したことに抗議して、数千人がアンカラ市内のギュウェンパークで集会を開いた。そのあと労働者たちは、野党の民族主義行動党(MHP)と協議するために国会へ向かったが、警官隊が国会構内への立ち入りを阻止し、代表30人だけがMHPの議員たちと会見した。MHPは2010年度予算の審議の中で、テケルの労働者への不当な扱いを阻止するための法案を提出したが、否決された。MHPの議員たちは支援を続けることを約束した。
1月8日には、与党の公正発展党(AKP)本部前での抗議行動で、42人の労働者が逮捕された。
公共部門労働組合連盟(KESK)は、1月13日から全国で支援のデモを展開することを決定した。
CTLUは同26日に、傘下の6つの単組の代表者会議を開催して、政府から期待した回答が得られない場合、2月3日に1日ゼネストに入ることを決定した。
労働者たちはCTLUの本部に立てこもり、AKP本部前にテントを張り極寒に耐えて座り込みを続けた。抗議活動についてのメディアでの大々的な報道によって、国会内でも憤りが広がった。
この圧力の下で、1月28日にエルドアン首相はムスタファ・クムル委員長と2時間にわたって会談し、その後、財務相と労働相に問題解決に取り組むよう指示した。
「ガーディアン」紙はこの進展について、次のように報じている。「トルコの戦闘的労働者たちは、ハンストや、警官隊との暴力的衝突や、政府与党の本部の包囲等の厳しい闘いの末に、政府との闘いで、考えられなかったような勝利の一歩手前まで来た。紛争は階級間の戦争へと拡大しかねなかった」。(「ハリエット」、「ザマン」、「ガーディアン」等より)
●イラク
バグダッドのホテルで200人がストライキ
バグダッドのラシード・ホテルの労働者200人が「危険手当」を要求して1月24日からストライキに入っている。
同ホテルは政治家や外交官、外国の実業家がよく使うためロケット弾などの攻撃目標とされる。8月以降に2人の従業員が、ホテルおよびホテルに近い外務省の近くで爆弾により死亡している。
労働者の一人は、「われわれは2003年以来、ずっと攻撃を受けている。もうたくさんだ」と言っている。ホテルの管理者が交渉に応じないため、労働者たちはこの管理者の辞任を要求している。労働者たちはまた、毎日X線による身体検査を義務付けられていることにも不満を述べている。
スト中もホテルは営業しているが、客室清掃は行われておらず、レストランも閉店している。
ホテルに滞在しているアズハル・アル・シェイキさん(04〜06年に女性問題相)は、「国会議員や閣僚が使うホテルでのストは非常に困るが、(ストは)イラクが民主主義の道を再発見しつつあることを示している。イラクではもっともっとデモが起こるだろうし、それはいいことだ。……この国では問題になっているのはストの権利ではなく、要求に耳を傾けてもらうことだ」と語っている(「AFP」1月27日付)
●南アフリカ
カジノ労働者がストライキで賃上げを勝ち取る
ツォゴ・サン・インターナショナル(ホテル・カジノ・グループ)で働くSACAWU(南アフリカ商業・配膳合同労組)の3千500人の労働者は昨年12月4日以来、賃上げ要求のストに入っていたが、1月27日、交渉が妥結した。
組合は当初13%の賃上げを要求していたが、9%に引き下げた。最終的には8・75%の賃上げと夜勤手当の引き上げ、住宅購入と教育への補助は合意されたが、常雇従業員の増員は勝ち取れなかった。
数ヵ月にわたる交渉の中で、組合は労働者への利益の分配を増やし、絶望的な待遇を改善することを追求してきた。サンのような企業は南アフリカの観光産業の好況の中で大きな利益を上げている。
組合の活動家によると、スト中の会社側の態度と戦術は傲慢な組合攻撃そのものだった。警備員や警察官が組合員に嫌がらせをし、組合のリーダーや職場委員を含む36人が逮捕され、労働者に対して人種差別的な中傷が行われた。
SACAWUによると、「会社側の対応は、すでに過ぎ去った時代の名残のようだった。組合員たちは会社側との闘争で、アパルトヘイト体制に対して闘ったのと同じぐらいのエネルギーを費やさなければならなかった」。(「レイバーノーツ」のウェブより)
SACAWUは1月27日付の声明の中で、COSATU(南アフリカ労働組合会議)とその地域組織の支援や、「レイバー・スタート」によるネット上での連帯キャンペーンへの感謝を表明した。
●中国
南ア・ワールドカップのマスコット人形は児童労働での製造
1月28日、南アフリカCOSATU(南アフリカ労働組合会議)は、同国で開催されるFIFAワールドカップの公式マスコットの「ザクミ」が中国で児童労働によって製造されていることに抗議する声明を発表した。
英国の大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」紙の報道によると、FIFAの公式ライセンスの下でザクミを製造している工場で、労働者は月800元の賃金(基本給)で働いている(1元は約13円)。そこから部屋代と食費が差し引かれる。この工場は、上海市の中心部から480キロの所にある上海ファッション・プラスチック・プロダクツ社の工場で、労働者の多くはティーンエージャーである。
同社の経営者によると、南アフリカの組織委員会とFIFAは、4回にわたって工場を視察した後に、230万個のライセンス生産を許可した。同紙の記者は次のように書いている。「彼らは、労働者が薄暗い工場で夜の11時まで、寒さに震えながら、小物を型から取り出し、色を塗っているところを見たはずだ。彼らはまた、この工場が排水を裏の川へ流し、川を腐ったような黒い色に染めるのを見たはずだ。それでもこの工場にライセンスを許諾したのだ」。
同社はすでに南アフリカ向けに3万個が完成し、スイスから30万個、南米から7万個の注文を受けている。ライセンス料として、売上の17%をFIFAに支払う。
COSATUのパトリック・クラバン代表は次のように述べた。
「……これは、新たな偽造品が見つかったというような問題ではない。FIFA公認の製品なのだ。
これはワールドカップやサッカーが、どれほどひどく企業に乗っ取られているかを示している。FIFAはスポンサー企業との取引を通じ、彼らに製品や高額の入場料、公認の衣料品や記念品の販売の権利を与え、民衆のスポーツを巨大な利益をもたらす詐欺行為に変えようとしている。
COSATUは、ワールドカップ関連のすべての用品は南アフリカ国内で製造するべきだと主張してきた。雇用を創出し、ワールドカップが南アフリカの労働者の生活の永続的な改善をもたらすようにするためである。われわれは公式のマスコットであるザクミさえ、中国で、このような悲惨な条件の下で作られていることに強い衝撃を受けている」。
米国
オバマ政権の移民制度改革は治安優先
以下は「NACLA(北米ラテンアメリカ会議)レポート」1〜2月号掲載のジョセフ・ネビン氏のレポートの抄訳である。
ジャネット・ナポリタノ国土安全保障省長官は、09年11月13日、ワシントンの「アメリカ進歩センター」での演説の中で、オバマ大統領はまもなく移民制度に関する効果的な法案を提出するだろうと語った。同長官は、これは米国の「移民の国」、「法律の国」という両方のアイデンティティーに適った法案になると約束した。
政府の移民制度改革への意欲は、移住者、とくに許可証を持たない移住者の絶望的な状態への一筋の光のように見えるかも知れない。しかし、深刻な不況、反移民感情の高まりの中で、抑圧的な法律を緩和し、社会的排除を克服しようとする法律が議会を通過することは非常に困難だろう。
もっとも大きな障害は、民主党が支配する議会とホワイトハウスそのものの中にある。オバマ大統領自身、上院議員時代の一連の法案への態度から判断する限り、移住者の権利よりも治安優先の立場であり、前政権の立場に近い。
また、ナポリタノ国土安全保障省長官は、アリゾナ州知事だった05年にメキシコとの国境地区に「不法移民取り締まり」のための非常事態宣言を出した。
オバマ政権は前政権の下で2万人まで増員された国境警備隊をさらに強化しようとしている。
09年8月の時点で、移民税関捜査局(ICE)が拘束した許可証のない移住者の数は18万1千人に上り、前年同期より6%増えている。強制退去させた移住者の数は21万5千人で、25%の増加である。ブッシュ政権時代の、職場への強制捜索のような強権的な方法は取られていないが、やり方が変わっただけである。オバマ政権の下では、当局は人権団体を刺激しないように、経営者を説得して許可証のない移住者を解雇させている。たとえば、同9月に、国土安全保障省長官はロサンゼルスのアメリカン・アパレル社に対して、身分証明書に問題がある1千800人の労働者(全従業員の4分の1)を解雇するよう指示した。
しかし、暴力的な捜索がなくなったわけではない。「外国人犯罪者」の取り締まりと称して、従来であれば軽犯罪として扱われていた行為(万引きなど)が重大犯罪とされるようになった。令状なしの家宅捜索や冤罪での逮捕が横行している。取り締まりは在留許可を持つ者にも及んでいる。
強制送還(在留資格取り消しを含む)は家族を分断する。1998年から07年の間に、国外追放され、米国市民権を持つ子どもと引き裂かれた外国人の数は10万8千500人に達している。オバマ政権はこの問題を放置している。
現在議会には2つの法案が提出されている。ルイス・グチエレス議員(下院、民主党)の法案は、労働者の権利や家族の結合などに強調を置いており、チャールス・シュメル議員(上院、民主党)の法案は、法秩序を重視している。いずれの法案も、オバマ政権の治安優先の考え方の枠内である。