アジア@世界
804号

●パレスチナ
「10・28〜31世界教育フォーラムに5千人が参加」

 10月28〜31日、WEF(世界教育フォーラム)・パレスチナが、ヨルダン川西岸、ガザ地区、イスラエル、レバノンの各地で開催され、5千人のパレスチナ人と外国からの活動家300人が参加した。
 主会場となった各地の大学がインターネットで結ばれ、参加者たちは困難な分断状況を超えてリアルタイムの映像を通じて問題を共有した。世界各地で関連イベントが企画され、日本でも同30日に大阪で「ネットでつなぐパレスチナ・おおさか」が開催され、ガザ、ベツレヘムの活動家とスカイプを通じた交流が実現した。  WEFがパレスチナで開催された背景として、イスラエルによる占領・包囲がパレスチナの子供たちの教育に持続的に深刻な影響を及ぼしているという事実がある。
 7月に発行されたIREN(国連人道ニュース・情報サービス)ニュースによると、ガザではパレスチナ人の子どもたち約3万9千人が学校に行けない。08〜09年のイスラエル軍による侵略戦争によって280の学校・幼稚園が損壊し、封鎖による建材不足のため修理や再建できていないためである。UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が運営する学校の88%、公立の学校の82%で交替制が導入されている。
 WEFのガザ地区の組織委員の1人で、アル・アズハル大学の教員のマゼン・ハマダさんは、「ガザ地区の封鎖の影響は経済、農業、健康、環境だけでなく教育にも及んでいます。学生たちの学業の成績はすべてのレベルで低下しており、授業を欠席する学生が増えています。封鎖によって紙や教材の輸入すら禁止されています。…WEFパレスチナでは、このような問題のほかに、パレスチナの文化や歴史をカリキュラムや教育活動の中に組み込む必要性についても取り上げます」と語っている(「インタープレス」10月31日付)。
 アブ・アラブさん(30歳)は、「私は学校でエジプトの歴史と地理を習ったが、学校ではパレスチナの地図すら見たことがなかった。当時、パレスチナの文化はカリキュラムにも入っていなかった」と語り、アブ・バセルさんは「私がパレスチナのことを学んだのは学校よりも獄中ででした」と語る。
 ガザ地区の南東部にあるガララ小学校は、イスラエルとの国境からわずか1キロのところにあり、生徒たちは日常的にイスラエル兵による発砲を目撃している。多くの生徒はクラスメートがイスラエルの攻撃によって殺されたり負傷したことを知っている。この学校の教員のウム・モハメドさんは、「…そのことが子どもたちの心理状態や学習能力に影響を及ぼしている」と指摘する。
 TCC(創造的教育者センター)のインテサル・ハムダンさんは「フォーラムの焦点は、教育についての支配的な考え方、機関、システムに挑戦することによって、新しい世界の可能性を促進することでした。つまり、新自由主義的経済、競争、市場主導のグローバリゼーション、消費主義、人間と自然に対する支配に対する挑戦です」と述べている(同11月1日付)。
 フォーラムでは、教育、芸術、文化、アイデンティティーなどのテーマで約140のワークショップや文化イベントが企画された。
 人々を動員することの困難さ、特に占領の結果として世界各地に離散したパレスチナ人ディアスポラを団結させることの困難さが話し合われた。最近ではイスラエルによる占領に反対するデモや行動が停滞しており、会議では運動を再活性化する方法が議論された。
 「自分たちを組織する能力の確立と教育システムの強化が2つの主要な目標です」とハムダンさんは言う。WEFはまた、教育の商業化、民営化に反対する国際的なキャンペーンを計画している。会議の最後に、WEFはアラブ・パレスチナ人たちの独立国家の実現とガザ包囲の解除に向けた闘争への連帯を強調した。

●ブラジル
「ジルマ次期大統領に対する社会運動の期待と要求」

 10月31日に実施された大統領選挙第2回投票で、ルラ大統領の後継のジルマ・ルセフ候補(労働党)が当選した。
 第1回投票で緑の党のマルナ・シルバ候補が19%の得票を獲得したことが示すように、ルラ政権の従来の支持基盤の中からの批判が高まっており、とくにアマゾンの開発に伴う環境破壊や先住民の生活破壊は深刻な状況になっている。
 以下はMST(「土地を持たない農業労働者運動」)のウェブサイトに掲載されている11月1日付および同5日付レポートからの抜粋である。
 MSTの全国委員のジルマル・マウロ氏は、社会運動は次の政権に対して独立的な関係を保ち、農地改革などの要求のために闘わなければならないと指摘している。マウロ氏によると、農地改革をめぐって、@土地と自然資源の利用(商品化されるべきではない)、A国民がどのような食糧を消費するか、Bこの分野の技術が誰のためのものか、という3つの問題が論争されている。彼は、「農地改革は農業のモデル、生産モデル、食糧のタイプ、技術のタイプの変革を必要とする。これは社会全体で論争されるべきであり、私たちはジルマ政権がそのような論争のためのスペースを作りだし、社会全体がブラジルの農業構造の転換のための真の農地改革についての論争に参加することを希望する」と語った。
 アフリカ系国民(奴隷として連行されたアフリカ人の子孫)の運動団体「黒人・労働者階級のための人民教育センター連合」(UNEafro)は、労働党政権を批判的に支持し、社会的政策を擁護するよう政府に圧力をかけるという立場である。この団体の顧問であるダグラス・ベルチョワ氏は、ジルマ政権が黒人を犯罪者扱いしている各州の治安政策を見直し、黒人の教育へのアクセスを拡大し、人種平等法を具体的に活用することを要求している。
 CUT(ブラジル中央統一労組)傘下の金属労組の組合員のミルトン・ビヤリオ氏は、ルラ政権の8年間に雇用が増えたことを評価し、新政権の下では経済発展を基礎に民主主義の拡大、労働条件の改善、週40時間労働を目指していくと語っている。
 PSB(ブラジル社会党)の副委員長のルイサ・エルンディナ氏は、ジルマ政権の課題はブラジル社会の民主化であり、政治改革とメディアの民主化が最重要であると指摘している。
 ジルマ候補が選挙運動の中で掲げ、大きな争点となった中絶の権利や、ホモセクシュアルの権利のための運動も重要な課題となっている。
 MSTや多くの左派は、第2回投票でPSDB(ブラジル社会民主党)やメディアの反動的な攻撃に抗し、社会運動の成果を擁護するためにジルマ候補への投票を呼びかけた。MSTはジルマ政権の下でも、ルラ政権下と同様に、農地改革のための闘争を進め、新政権に対して改革の綱領を提案し、交渉を継続する。MSTの全国調整員のハイメ・アモリム氏は、「ブラジルはもはや、自然資源を破壊し、土壌を破壊し、すべての富を劣化させる農産物輸出モデルを継続することはできない」と強調している。また、ブラジルの一部の農場では今でも奴隷制が存続しており、アモリム氏はそのような農場の接収を可能にする法律を制定すべきであると主張している。

●インド
「電子部品工場のストライキで300人余が逮捕される」

 10月9日、タミルナドゥ州チェンナイの特別経済区のフォックスコン電子部品工場の労働者のストライキに警察が介入し319人の労働者を逮捕した。その後、大部分の労働者は釈放されたが、12人のリーダーは同22日まで拘留された。
 フォックスコンは台湾のホンハイ(鴻海)精密工業が生産する電子部品のブランド名で、アップルやデルなどの大手メーカーが供給先である。
 同社の中国の工場では絶望的な労働環境の中で今年1月から8月までの間に13人の労働者が相次いで自殺したことが伝えられている(本誌7月15日号参照)。
 チェンナイの工場では約千200人の労働者が賃上げと組合の承認を求めて数週間にわたって闘争を続けている。
 会社側は警察にピケットの排除を要請したほか、ストライキへの報復として8日分の賃金の天引き、組合員や組合リーダー23人の停職、団交拒否(別の組合とだけ協約を締結)などの不当労働行為を繰り返している。
 ITUC(国際労働組合総連合)のシャラン・バロー書記長は「フォックスコンの顧客であるアップル、HP、デルのような大手のグローバル・ブランドは、従業員の自殺や、組合の承認を求める労働者の投獄を特徴とするようなビジネス・モデルがもはや受け入れられないことを明確にするべきだ」と述べている。
 フォックスコンの労働組合が加盟しているCITU(インド労働組合センター)のタミルナドゥ州評議会のサウンダララジャン書記長によると、インドの労働法は特別経済区の多国籍企業にも適用されるが、実際には法律が守られていない。
 経営者たちは州政府与党と結託して、親資本的な組合のLPFにテコ入れしてきた。フォックスコンの工場でもLPFの組合が結成されているが、労災事故や労働条件への不満から、労働者がCITUに支援を求めるようになった。
 同州のBYDエレクトロニクス(中国資本、携帯電話部品をノキア等へ供給している)でも、10月28日に組合承認と交替制の改善等を要求する労働者が座り込みストに入り、11月2日に会社側は2千人の労働者をロックアウトした。

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