インド:マルチスズキ「暴動」1周年、147人の釈放求めハンスト
昨年7月18日、デリー近郊マーネーサルのマルチ・スズキ社(日本のスズキの子会社)の工場で、労働者と経営者の間で暴力的衝突が発生(本誌12年8月15日・9月1日合併号)。
この事件に関して逮捕された労働者147人は現在も拘留中だ。ほか66人に逮捕状が出され、2346人が解雇されている(このうち非正規労働者が約1800人)。
この弾圧後、マルチ・スズキ労働組合(MSWU)は逮捕された執行部に代わる臨時執行部を確立、他の工場労働者と連携を強めてきた。会社側や警察の発表が一方的に流布される中で、事件の根本原因が会社側の不当な労働条件の強制や労働者への侮辱にあること、殺人容疑はでっち上げであることを全国に訴えてきた。多くの労働組合が、ナショナルセンターの違いを超えてMSWUを支援してきた。
今年5月19日には、カイタル地区で労働者2千人余がデモを行った。警察は組合員9人を殺人未遂、武器不法所持などのでっち上げ容疑で逮捕(7月24日に全員釈放)。
MSWUを支援しているNTUI(新しい労働組合のためのイニシアチブ)の7月17日付声明によると、MSWUへの警察の弾圧は非常に恣意的で、政府は執拗に労働者の決意を翻させようとし、裁判所も自らの権限を逸脱して、マルチ・スズキの労働者の闘いが外国資本に脅威を与え、投資を躊躇(ちゅうちょ)させるという理由で147人の保釈を却下し続けている。
MSWUは6月23日の総会で、「暴動1周年」の7月18日から無期限のハンストとデモの開始を決定。MSWUは全逮捕者の釈放とすべてのでっち上げ容疑の撤回、独立した真相究明委員会の設立、被解雇者の復職を要求している。
マーネーサルがあるハリヤーナー州グルガオン地区の行政長官は、「暴徒化する恐れ」を理由にMSWUのデモを禁止。当日は2千人の警察官を動員した。MSWUの7月24日付声明によると、警察はグルガオンのケルキダウラ村で、デモに参加しようとしたスズキ自動車インド従業員組合の組合員全員を予防検束した。組合員に対する電話での脅迫も報告されている。
厳重な警戒体制の中でMSWUの組合員約600人がレジャーバレー公園に集まり、平穏なキャンドル・デモを行った。
米国:デトロイト市の破産申請に反撃、次々と違憲判決
デトロイト市(ミシガン州)は7月18日、連邦裁判所に対し破産手続きの申し立てを行った。破産手続きが承認されると、指名された裁判官が市の歳出カットを強行でき、労働組合との協約を無効にできる。歳出カットの主要ターゲットは2万1千人の退職職員の年金と9千人の公務員の賃金である。
米国自動車産業の中心地のデトロイト市は、自動車産業の衰退とともに財政赤字が拡大していた。しかし、今回の破産申請の背景は、きわめて政治的である。自動車産業不況の中で、同市や同市出身の議員たちは州や連邦政府に対し雇用拡大や基本的サービス確保のための支援を繰り返し要請したが、連邦政府はGM救済の巨額な支出を行う一方で、雇用や公共サービスには一切の支援を拒否。それどころか、州はデトロイト市に配分されるはずの税収2億2千万ドルを配分していない。同市は人口70万人中、83%がアフリカ系、7%がラテン系米国人で、2011年の大統領選ではオバマ支持が98%、ロムニー支持が2%だった。
ミシガン州のスナイダー知事(共和党右派)は、同市の財政危機を管理する「危機管理官」を任命しようとした。しかし、昨年11月の州民投票では従来の「危機管理法」を無効とする提案が可決された。それにもかかわらずミシガン州議会は12月、知事に同市の「危機管理官」の任命権限を付与する法律(州民投票で無効とされたのと、ほぼ同じ)を可決。スナイダー知事は今年3月にケビン・オー(ワシントンDCで破産管理専門の弁護士)を「危機管理官」に任命。オー弁護士と債権者との交渉が不調に終わったのち、破産手続きの申請を決定した。
「ザ・ネーション」誌のジョン・ニコルス記者は次のように報じている。
「……昨年12月に反労働者的な『働く権利法』の制定を強行したスナイダー知事は、今年初めに州によるデトロイト市の乗っ取り計画を練り上げた。選挙で選ばれた市長や市議会の権限を取り上げて、自分が任命する『危機管理官』に市の財政や公共サービスについての決定権を付与するというものだ。
同月18日の午後に、スナイダーは破産申請書類を承認し、署名した。19日に州裁判所は『危機管理官』に対して破産申請を撤回するよう命じた。インガム郡巡回裁判所は知事に『危機管理官』の任命の権限を与えた12年の州法が州憲法に違反しているという判断を示した。共和党の弁護団長はこれらの判決に対して控訴すると発表。また連邦破産法は、しばしば州法における権利の保護に優先される。法廷での闘いは数ヵ月、あるいは数年かかるかも知れない。
もし裁判所がスナイダーと彼の『危機管理官』の主張を支持した場合、デトロイト市は破産に陥った米国最大の都市≠セけでなく、民主主義的な政府の基本的なやり方や手続きに従わない劇的な措置を実施した米国最大の都市≠ニなるだろう」(同誌7月19日付)
州憲法には市職員の年金を保護する規定があり、州が組合との事前協議なしに年金に関わる決定を行うことはできない。一方、最近ロードアイランド州で制定された法律では、市の財政が破綻した時には債権者への支払いが年金よりも優先されるという規定がある。
もうひとつの問題として、AFL・CIOは、「知事はデトロイト市の資産を、外部の資産家に有利な条件で売却するための条件を作り出し、地域をますます『居住に適さない』ようにしようとしている」と指摘。市のレクリエーション局の管理下にあるベル・アイランド(デトロイト側の中洲)や上下水道設備などが民営化のリストに上がっている。
デトロイトの活動家グループ「チェンジ・エージェント・コンソーシアム」の代表のデビッド・ブロック牧師は「これは民主主義への侮辱だ」と非難している。前週には緊縮財政政策の年金生活者や障害者や若者への影響を懸念して、約600人の市民が市庁舎を占拠している。公務員労組は7月25日に市内でデモを計画している。
財政危機を抱える他の多くの都市がデトロイトの帰すうに注目している。