パキスタン
「衣料労組リーダー6人に『テロリスト』容疑で長期刑」
パキスタンの反テロ裁判所(ATC)は11月1日、昨年7月にパンジャブ州ファイサラバードの動力織機工場でのストに関連して逮捕されたLQM(「労働者全国運動」)のリーダー6人に、工場への放火などのでっち上げ容疑で合計490年の刑を宣告。LQMはコミュニティーを基盤にした組合で、主に衣料労働者の権利擁護を闘っている。
ファイサラバードでは昨年7月20日、10万人の衣料労働者が政府発表の最賃17%引き上げ実現のためにストを実施。工場経営者は暴力集団を雇い、労働者に襲いかかり、工場に放火した。この弾圧に抗議して、LQM、NTUF(全国労働組合連盟)、LPP(パキスタン労働党)、LEF(労働者教育基金)は国際的なキャンペーン(欄外参照)と、救援カンパを呼びかけている。
11月26日には、不当判決に抗議して6人の釈放要求の集会に7千人が参加。地域の大部分の動力織機工場の操業が止まった。
国際繊維被服皮革労働者連盟(ITGLWF)のクラウス・プリーグニッツ書記長は同15日、弾圧への抗議声明を発表。「(経営者による暴力への)警察や裁判所の加担は、パキスタンの国家機関が基本的人権を抑圧する経営者との積極的な協力を示している」と非難。「リーダーの即時釈放と労働組合の団結権・団交権」を要求した。
ポルトガル
「財政赤字削減計画反対のゼネスト」
11月24日、政府の緊縮政策に反対して数十万人の労働者がゼネストに参加。航空管制、地下鉄などの交通マヒ。多くの学校の休校や緊急医療を除く病院も休業。ゴミ収集や郵便配達も止まった。リスボンでの大規模デモのほか、全国約30ヵ所でデモが行われた。
ポルトガル政府はEUとIMFからの780億ユーロ(約8兆円)の緊急融資の条件として、財政赤字削減計画を含む2012年度予算を国会に提出し、パソス・コエリョ首相(社民党)の連立与党が多数の国会での議決が翌週に迫っていた。
政府は広範な公共サービスの支出削減(特に医療費)と増税、公務員のクリスマスや休日の手当(1ヵ月分の賃金に相当)廃止を計画している。さらに、民間企業には超勤手当なしに1日30分の労働時間延長が認められる。同日のBBCニュースでは、2大労組が参加した今回のゼネストは、ポルトガル史上最大のものだった。ポルトガル労働者総連盟(CGTP、共産党系)のマヌエル・カルバロ・デ・シルバ書記長は、「強い怒りを感じる。ゼネストはポルトガルを貧困に導こうとする政府へのレッドカードだ」と語っている。労働者総連合(UGT、社会党・社民党系)のリーダーのジョアオ・プロエンサ氏は、「前回のゼネスト(昨年10月24日、300万人)より参加者は多いだろう。……政府はゼネストの効果を考慮しなければならないだろう」と述べた。
ポルトガルは2011年度末までに公的債務のGDP比5.9%引き下げを求められているが(前年は9.8%)、今年度前半で8.3%になったにすぎない。ヴィクトル・ガスパル蔵相によると、12年は3%のマイナス成長が予想され、失業率は13・4%という記録的水準に達すことが予想される。
英国
「年金改悪に反対し公務員200万人がスト」
キャメロン首相が進めようとしている公務員年金制度改悪(受給資格となる勤続年数の延長)に反対して11月30日、200万人がストに入った。62%の学校が休校となり(教育相発表)、病院では緊急性が少ない6千人の手術が中止された。全国の数百ヵ所で集会が開かれ、バーミンガムでは3万人、ロンドンでは2万5千人が参加した。
TUC(労働組合会議)によると、ストはこの30年間で最大規模だが、キャメロン首相は影響はほとんどないと述べた。労働党のエド・ミリバンド党首は「生活に支障があった人たちには同情するが、給食調理人や教員や看護師たちは、政府が誠意ある交渉を拒否したため、ストしかなかった」と述べた。
最大労組ユナイトのレン・マクルスキー書記長は「11月30日は労働組合が過去60年間の経済的、そして社会福祉のために闘った日として歴史に残るだろう。労働者たちは、強欲なロンドンシティーのエリートによる経済的混乱のツケの支払いを求められている。意気地なし政府は、金融エリートの規制に何度も失敗してきた」。(「BBCニュース」、「ガーディアン」より)
エジプト
「反軍政デモと最低賃金、労働組合改革をめぐる闘いが発展」
ムバラク政権打倒後の初の国会議員選挙が目前の11月25日、軍によるデモ弾圧に抗議し、最高軍事評議会の即時解散を求める「最後のチャンスの金曜日」集会がタハリール広場で開かれ、推定80万人が参加した。
最高軍事評議会はこの日、11月19日以降のデモ弾圧の責任を取って辞任したシャラフ首相の後任に、ムバラク政権の下での首相職だったエル・ガンズーリを指名したが、人々はガンズーリの演説に大きな不満の声を上げた。最高軍事評議会は2012月7月に政権を移譲すると約束したが、軍政への批判はますます強まっている。
一方、2月革命後も治安や経済混乱が続く中で、政治の安定を望み、最高軍事評議会政府支持のデモも始まっている。(「アーラム・オンライン」11月26日付より)。
多くの地域で労働者の最低賃金(最賃)をめぐる闘争が拡大。7月に民間部門に最賃制が導入、公共部門労働者と同基準(月700エジプト・ポンド、約9千円)が設定された。
しかし、労働組合は1200ポンドへの最賃引き上げを要求している。
ガス・メーター検針員のイブラヒム・バラカットさんは、「誰が月700ポンドで生活できるのか? カイロでは運がよければ700ポンドで小さなアパートを借りられるかも知れない。だけど食べ物はどうするんだ。食べ物の値段も高いのに」と言う。
政府は公共部門の最賃を5年間で段階的に1200ポンドまでの引き上げを決定しているが、現在、都市部ではインフレ率が12%で、この程度の賃上げでは物価上昇に吸収されてしまう。しかも最賃は従業員数10人未満の企業や、支払能力がないことを証明した企業には適用されない。そのため、最賃制度が適用されるのは労働者の1割程度と推定される。(「インタープレス・サービス」同21日付等より)
ムバラク政権時代に政府の支配下にあった労働組合の改革運動も拡大している。
エジプト・エンジニア組合の新世代のエンジニアたちは、ムバラク政権下で16年にわたり組合の国家からの独立を主張してきた。この組合はムバラク政権打倒後の8月に国家による任命制廃止の裁判所命令を勝ち取り、11月25日に組合員投票による役員選出を行う。
選挙には、この間の闘いを主導してきた「独立派」と、95年以降組合の実権を握ってきたモスリム同胞団の支持者の2つのグループが候補者リストを発表している。
「独立派」の候補者たちは組合員が宗教や政治主張ではなく、労働者の経済的・政治的利益を基礎にした団結を呼びかけ、年金引き上げ、政府の教育プログラム拡充、主要な技術プロジェクトへのエンジニアの発言権拡大などの要求を掲げている。
9月に実施されたエジプト医師組合の役員選挙では、独立的な活動家と医師のグループが、20年余にわたって組合の実権を握ってきたモスリム同胞団の支持者のグループに勝利した(「アーラム・オンライン」11月16日付より)。