●インドネシア
フリーポート社(世界最大の鉱山会社)の労働者に連帯を
パプア州(ニューギニア島西部)南部のティミカで、フリーポート・インドネシア社のグラスバーグ鉱山の労働者1万人が賃金の大幅引き上げ(現行の5倍)を要求して9月15日からストに入っている。10月10日には、スト破りの臨時労働者輸送バスに乗り込み説得活動をしようとした労働者に警官隊が発砲。2人が殺され多数が負傷した。
親会社のフリーポート・マクモラン(米国)は、労働者ら数百人による鉱山への道路封鎖のため、「不可抗力」によって供給契約の履行が不可能になったとして10月26日に契約不履行の損害賠償の免責を宣言した。
以下は「フリーポート労働者のためのインドネシア人民連帯」の10月20日付の声明である(抄訳)。
フリーポート・インドネシアは世界最大の鉱山企業フリーポート・マクモラン社の子会社で、同社による金の生産の95%と銅の生産の多くの割合を占めている。
この会社はスハルト政権下の1967年にパプア州での探査・採掘権を取得。91年の契約更新(2040年まで)で、探査・採掘権は州の総面積の6.5%まで拡大された。
採掘の開始は71年で、金、銅、銀、モリブデン、レニウムの合計産出量は年間100万トン余だったが現在は340万トン、年間純利益は41兆ルピアである(1ルピアは約0・01円)。
フリーポート・インドネシアの全労働者(2万3千人)の賃金総額は1兆4千億ルピアで、時間給は2.1〜3.5ドルだが、他の国では約15ドルだ。純利益の60%はフリーポート・マクモラン社に移されている。このような搾取では、全インドネシア労働組合(SPSI)が大幅賃上げを要求するのも当然である。
しかし経営者は、労働者の要求に「分離主義者」(パプア州のインドネシアからの独立をめざす運動を指す)という非難を浴びせ、脅し、スト参加を禁止し、労働者を犯罪視した。最近の警察による弾圧で、2人の労働者、ペトラス・アヤミセバさんとレオ・ワンダガウさんが射殺され、数人が負傷した。
これまでもフリーポートがらみの労働者やパプア先住民への暴力事件が繰り返されてきた。1970年代以来、治安のために巨額資金を投入してきたフリーポートは98年〜04年5月にインドネシア軍とパプア州の警察に2千万ドルを献金、証拠書類が多数確認されている。最近も軍と警察に1千万ドルの追加献金を行い、採掘現場に派遣されている軍・警察部隊720人には、賃金のほかに月125万ルピアの特別手当が支給されている。
政府統計によると2011年のパプア州の貧困率は80・07%(約150万人)で、フリーポートがパプアの人々の福祉に全く貢献していないことをはっきり示している。
世界最大の金・銅採掘企業であるフリーポートはインドネシアの天然資源を盗み、民主主義を封殺、人権を侵害し、パプアの人々を困窮化させるだけでなく、自然を破壊している。アグハワゴン川などへ、1日に23万トンの酸性岩や酸を含む排水を垂れ流し、すでに2つの谷が破壊された。
以上の事実に踏まえて、私たちは次のことを要求する。
◎フリーポートの採掘地域およびパプア州からのすべての軍・警察治安部隊の撤退
◎フリーポートの責任者の逮捕
◎パプアの人々との民主主義的な対話
◎フリーポートの採掘地域およびパプア州における人権侵害の調査
◎労働組合への攻撃の中止
◎請負労働者の採用の中止
◎国際基準に適合した賃金
◎環境破壊への責任を取ること
私たちはすべての人々に、団結を呼びかける。私たちは世界の99%の、抑圧された人々である。フリーポートとそのCEO(最高経営責任者)のジェームズ・モフェット、ユドヨノ大統領、ブディオン副大統領やフリーポートから便宜を受けた政治エリート、政党は私たちを抑圧する1%だ。ペトラス・アヤミセバさんとレオ・ワンダガウさんの次は私たちかも知れない。だから私たちは団結し、連帯して行動し、反撃しなければならない。
44年間にわたる窃盗行為、44年間にわたる国家による保護を終わりにして、暴力を終わりにし、フリーポートを閉鎖せよ。
カンボジア
H&Mの工場で労働者240人が失神、化学薬品が原因?
プノンペンから約50キロのコンポンスプー県にあるアンフル・ガーメント社(衣料)の工場で、10月24日に労働者100人が相次いで失神。3日間の操業停止後にも140人が倒れた。この会社はスウェーデンのファッション・ブランドH&Mに納入する衣料品を製造している。
地元の警察によると「労働者たちは突然気分が悪くなり、頭痛を訴えた」。チェア・チャンリーさん(29歳)は「私は体が震えて、息ができなくなり、吐いた。多くの人たちが吐いていた」と言う。
この工場では最近、ゴキブリ駆除に化学薬品を使用している。H&M社は原因調査を開始、労働者から状況について聴取している。
他の衣料工場でも同様のことが起こっており、今年、この地域でH&Mに製品を納入している他の2つの工場でも労働者が集団で失神している。
カンボジアの衣料産業は約30万人を雇用、昨年は28%の成長を記録。多くの工場の所有者は中国や台湾企業である。主に低賃金女性労働者を雇い、劣悪な労働条件のため、最近ではストやデモが続発している。(スウェーデンの「ザ・ローカル」紙10月28日付より)
ブラジル
経済成長とインフレで、労働組合運動とストが復活
ブラジルでは9月以降、銀行、郵便、金属等の産業の労働者が賃上げを要求しストに入っている。
米国の「ソリダリティー」誌のダン・ラ・ボッツ氏によると、ブラジルの労働運動はルラ大統領の下で、MST(土地なき農民運動)以外は戦闘性を失っていたが、この間の経済成長と雇用増で、ルラ政権の第2期目以降、復活してきた。ストの増加、他の社会運動との連携、新しいリーダーの形成、政府に圧力をかけるという立場の明確化がその特徴である。
サンパウロとオサスコの銀行労組の21日間ストは10月15日に終結し、9%の賃上げ・収益分配率の引き上げなどの要求を勝ち取った。
一方、郵便労働者の28日間ストは裁判所の命令により中止され、賃上げは物価上昇率(6.9%)プラス45ドルに抑えられた。しかもスト中の7日分の賃金をカットし、21日分は週末出勤で埋め合わせ、スト中の滞貨を一掃することが求められている(拒否した場合は罰金)。
ヨルダン
バングラデシュ人労働者が賃金カットに抗議
10月30日に、ヨルダン北西部イルヴィドのエル・ハッサン工業団地の衣料工場のバングラデシュ人労働者が不当な賃金カットに抗議する声明を人権団体に送った。
声明によると、今年初めに行った2ヵ月間のストに参加した400人の賃金から210ドルを天引きした(名目はスト中の寮費と食費)。人権団体代表リンダ・カラシュさん(弁護士)によると、このストは労働者の権利侵害への抗議で、スト終結の際にスト参加者への報復は行わないという合意がなされている。
労働省の担当者は会社側の措置は合法的だとしている。
別の衣料工場で昨年8月27日から10月20日まで、241人のインド人労働者が労働条件改善要求のストを行った。会社側はストによる損害を理由に工場閉鎖を発表。3ヵ月半の賃金とインドへの片道航空券を支給した。(「ヨルダン・タイムズ」10月31日付)