アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
877号

中国:オランダ資本の工場で22日間スト、20%賃上げ

 広東省深セン市のASM(オランダの半導体メーカー)の工場で5千人の労働者が賃上げと工場移転に対する補償を要求して10月31日からストライキに入り、22日に渡る闘いによって20%の賃上げを勝ち取った。
 中国労工網のウェブサイト、11月4日付は次のように報じている。


 10月31日、広東省深セン市塩田区のASM先進微電子科技有限公司の労働者が工場移転に伴う補償を要求してストライキに入った。11月4日の時点でストライキは続いている。香港紙「アップルデイリー」によると、5千人の労働者のうち6割ほどがストに参加している。労働者の不満はおもに移転手続や補償問題にあるという。報道では、塩田区政府は仲介を試みたようだが、労働者代表は会社との交渉を拒否したという。


 労働者たちによると、「私たちは10月15日に、一人一票方式での投票で16人の代表を選出し、移転に伴う労働者らの憂慮を会社側に伝えようとしました。しかし工場の既成労組は私たちが選んだ代表を認めなかったので、交渉をすることが難しくなっています」。
 ストライキの現場に掲げられている「組合を選挙で選ぼう」という横断幕のスローガンもこのような意見を反映したものだと言える。


 香港の「文匯報」によると、今年初め、塩田港区と太平洋港区にあるこの工場の営業許可契約の期限が近づき、政府はこの工場に港区から移転して、経営体制をステップアップするよう求めた。保税区である港区で一定期間操業させ、その後は優遇区外へ移転させるという政策。しかし移転の過程で、工場のある部門の労働者たちが、労働法で決められた補償が行われていないと主張し、移転を拒否してストライキに入った。


 労働者がメディアの記者たちに伝えたところによると、ASMは企業内組合の同意なしに一方的に工場移転の通知を掲示した。ほとんどの労働者は(移転を拒否して)補償金を一括で支払うか、または移転に伴う賃上げを求めているが、工場側は労働者の要求に応えようとしていない。
 ASMは世界最大の半導体設備の製造メーカーで、香港株式市場の上場企業の子会社。深セン塩田区に三つの工場を持っている。


翻訳 稲垣 豊 (APWSL日本)

 

 「チャイナ・レイバー・ブレティン」(香港)によると、(英語版、同26日付)、同20日に経営側が、移転に応じる労働者に対しては賃金と諸手当の20%引き上げ、移転に応じない労働者には法律に規定する退職金を支払うことに同意し、22日間のストライキは終結した。
 経営側はまた、200元の住宅手当または社員寮(無償)を提供し、今後は就業規則等について定期的に労働者と協議することを約束した。
 この争議はメディアでも報じられたため、香港でも連帯の行動が呼びかけられ、11月6日には職工会連盟(工盟)がASMの香港本社の前で抗議行動を行った。


 ノキアでも厳しい労務管理に輪番でスト、座り込み


 広東省東カン市のノキア工場でも、約3千人の労働者が、厳しい労務管理に抗議して、交替でストライキと座り込みを続けている。
 ノキアは9月に、全世界の携帯電話事業をマイクロソフトへ売却すると発表したが、東カン市の工場ではその直後から就業規則を一方的に変更し、違反に対する罰則も強化した。5分間の遅刻で警告、警告2回で解雇される等である。すでに100人以上の労働者が退職を余儀なくされている。
 9月19日朝、約千人の労働者が新しい就業規則の撤回を要求して職場放棄を開始した。警官隊が介入し、門の付近に集まっていた労働者を排除し、11人を逮捕した。
 労働者たちは東カン市の総工会に介入と調停を求め、また、工場内の労働組合(経営者によってコントロールされている)の改革を求めている。また、地域の支援グループと協力して、経営側との団体交渉を進めるための労働者代表の選出について検討している。

(「チャイナ・レイバー・ブレティン」11月22日付)

 

イタリア:ジェノバのバス民営化反対と5日間のスト

 ジェノバの公共バスAMTの労働者が民営化に反対して11月19日から山猫ストに入った。
 「ラ・レプブリカ」紙は一面で、「(ジェノバは)イタリアの主要都市の中で初めて、ギリシャの悪夢の始まりのアテネやテッサロニキのような雰囲気を経験している」と報じた。
 ストライキは、市議会が赤字の事業の経営立て直しのための法案を審議している中で始まった(法案は21日に可決)。マルコ・ドリア市長はAMTの民営化を否定したが、2400人の労働者は民営化を懸念して街頭デモを始めた。AMTはすでに41%がフランスのRATP社(パリの地下鉄を経営)に売却されている。当局者によるとAMTは来年、破産を回避するために800万ユーロを必要としている。


 このストライキはジェノバの広範な住民や、他の公共部門の労働者に支持されている。清掃会社やビル管理会社の労働者もバス労働者に連帯してデモに参加した。バス労働者の組合のリーダーのアンドレア・ガットーさんは、「市長と知事が具体的な提案をもって組合との交渉に応じるまでストライキを続ける」と述べた。ドリア市長は「雇用確保のために支出削減措置は必要だ。AMTの雇用削減は検討されていない」と述べている。
 同22日には最大野党「5つ星運動」のリーダーで、ジェノバ出身のベッペ・グリッロもデモに参加した。彼はこの闘いが公共サービスや公教育を守るための闘いの一環であると指摘し、「彼らはあらゆるものを売り払おうとしている。われわれは死ぬまで闘う。舞台は整った。ジェノバから始まるのだ」と檄を送った。
 労働者たちは23日にストライキ中止を決定し、職場に復帰した。


 イタリアでは、EUが設定した債務削減目標をクリアするために政府が財政支出を削減する中で、各自治体でも公共サービスが危機に陥っている。1月にはナポリの公共バスが、燃料費の不足のために運行停止に陥った。ローマでは公共交通部門の負債が16億ユーロに達している。
 イタリアではまた、10月31日に銀行労働者が大幅人員削減に反対して13年ぶりにストライキに入った。ミラノ、ローマなど各都市で数千人の労働者が街頭デモに参加した。イタリアの主要銀行は2015年までに約3千の支店を廃止し、1万9千人の削減を計画している。(「ガゼッタ・デ・スッド」紙11月21日付、「ヨーロッパ・オンライン」誌同13日付等より)

 

カンボジア:武装警官工場常駐に抗議し2500人が3ヵ月のスト

 SLガーメント社の6千人の労働者が8月12日からストライキを続けている。直接のきっかけは、同社の経営顧問のメアス・ソタが工場内の警備のために警察官を雇用したことである。カンボジア衣料労働者民主労働組合連合(CCAWDU)は、これが組合員を威嚇(いかく)するためであると非難し、警察官の退去とソタの解雇撤回のほか、賃上げと昼食手当、8時間労働(現在は9時間)等を要求してストライキに入った。


 労使とプノンペン市政府の三者による交渉を通じて、会社側がソタと絶縁すること等が合意され、8月30日にストライキが一旦終結した。
 しかし、会社側は組合攻撃を続け、9月5日には720人の解雇(会社側は、労働者が職場に戻るのを拒否したためと主張)と、5千人の停職処分を発表した。
 CCAWDUのコン・アシット副委員長は、会社側は組合をターゲットにしていると指摘。「彼らは真の組合と真摯(しんし)に協議することなく、工場を彼らの意のままに管理できることを望んでいる」と語っている。
 コミュニティー法律教育センターのモエン・トラ氏によると、解雇通知の期間が短いこと、退職金がわずかであること(最後の月の賃金と最後のボーナスのみ)はカンボジアの法律に違反している。
 同日、約4千人の労働者が、政府の介入を求めて工場から市庁舎まで10キロに渡るデモを行った。
 会社側は同6日、解雇を撤回した。しかし19人の組合代表の解雇については、撤回を拒否している。


 10月30、31日には工場前で抗議行動を行っていた労働者を警備員たちが空気銃や投石で攻撃し、十人以上の労働者が重傷を負った。
 11月11日には、フセイン首相の私邸に向かおうとした数百人のデモ隊を警官隊がガス弾等で阻止した。この衝突の中で、近くにいた露天商が死亡した。
 この事件の後、労使と労働省の交渉が行われ、労働省は会社側に19人の組合代表の解雇の撤回を命じたが、会社側はこの命令を拒否し続けている。


 SLガーメント(シンガポール資本)はアジア最大の衣料メーカーの1つで、GAP、リーバイス、H&Mなどに製品を輸出している。ストライキの開始以降、これらの顧客からの受注が激減している。会社側は工場閉鎖の計画はないと言明している。
 CCAWDUは現在、同社の5800人の労働者のうち約2500人を組織している。少数派の組合、自由労働組合(約2千人)は、ストライキはカンボジアの産業の評判を落とすと批判している。カンボジアの衣料産業(労働者の総数は50〜60万人)には30以上の労働組合が存在する。最近ではストライキやデモが多発しており、ILOやさまざまな人権団体も政府に対して労働条件の改善に向けて働きかけている。

(「プノンペン・ポスト」9月5日、11月6日、同25日付等より)

 

 

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