★アメリカ
女性労働者が性暴力告発の先頭に
米国でハリウッドの映画プロデューサーによるレイプへの告発をきっかけに、性暴力告発の声が広がり、#Me
Too(私も被害者だ)運動が大きな共感を呼んでいる。
この背景には、女性労働者たちの長年にわたる職場における性暴力・セクシャルハラスメントとの闘いがある。
サービス産業における闘い
「ザ・ネーション」誌のカイ・ライト記者は同誌17年11月3日付のレポートで次のように述べている。
「私たちはようやく職場における性的嫌がらせについての全国的な議論を始めるようになった。女たちは力を持つ男たちの野卑な言動を暴露しただけでなく、彼らが計算ずくの略奪者であることを暴露した。これは党派を超えた問題であり、ホワイトハウスからハリウッドまでに渡っている。多くの女性たちが勇敢に発言することによってドナルド・トランプやハーヴェイ・ワインスタイン(映画プロデューサー)のような言動があらゆるコミュニティに蔓延していることが明らかになった。
もはやセクシャルハラスメントは性の問題ではなく権力の問題であることをはっきりと認識すべきだ。これほど多くの女性が職場でこれほど多くの嫌がらせを受けているのは、それが男による経済の支配を維持するための多くの手段のーつだからである」
「ジャマイカ生まれのジューン・パレットさん(54歳)は性的マイノリティーとして職場で迫害され、安全を求めて01年に双子の姉妹が住むマイアミに移住した。
彼女はそれ以来ずっとケア労働者として働き、その仕事に誇りを持っている。しかし、彼女が求めてきた安全が保証されることは稀だった。……ケアは米国で最も低賃金の仕事のーつであり、罵倒を受けたり、賃金が盗まれたり、深夜まで休みなしで働かされることも日常茶飯であり、性的嫌がらせも受けてきた。ある時は、人材派遣業者から紹介された雇い主からレイプされそうになったが拒絶した。しかし仕事を失うことを恐れて沈黙を保った。
…ニューディール時代に連邦政府が労働者保護の措置を導入し始めた時、議会は女性や黒人が多い職種、つまり家事労働と農園での労働を明確に適用除外とした。それから数十年後にパレットさんが家事労働を始めた時、この部門の労働者には最低賃金も残業手当も職業上の安全に関する規則もなかった。彼女たちはあたかも雇用主の所有物のように扱われ、雇用主が望む通りにすることを求められていた」
「全米レストラン職業機会センター(ROC)の調査によると、レストランで働く女性労働者の52%が毎週のようにセクシャルハラスメントを受けている。
米国ではケアや飲食などのサービスは労働者数が最大の部門であり、サービス産業だけで12OO万人が雇用されており、その大部分は女性である。
サービス産業の女性たちはセクシャルハラスメントに抗して、21世紀の労働経済を作り直すための闘いの先頭に立ってきた。
ジューン・パレットさんは単に性的嫌がらせに耐えるのではなく、マイアミ労働者センターに加入し、家事労働者の権利のための急拡大する運動のリーダーとなった。この運動は8つの州で家事労働者の権利を保証する法律の制定を勝ち取った。
……このように、性暴力への抵抗はトランプ政権の下で始まったのではないが、この機会に女性とその労働が低く評価されてきた歴史の見直しが促進されることが期待される」
農場労働者の闘い
「イコール・タイムズ」紙のサラ・ラザレ編集委員は同紙17年12月28日付でフロリダ州イモカリーのトマト農園の女性労働者の20年余にわたる性暴力との闘いについて報告している。
「ルペ・ゴンサロさんはフロリダ州イモカリーのトマト農園で働いている。セレブたちの#Me Tooの告発が広範な性暴力を暴露し、強い男たちをなぎ倒しているハリウッドは遠い世界だが、ゴンサロさんは、『私たちのような舞台も発言力もなく、誰の目にも留まらない、弱い立場にいる女性こそが職場での性暴力の苦痛を受けており、それを打ち負かすために団結する方法についての教訓を提供している』と語る」
ゴンサロさんはこの地域の約5千人の農園労働者(主にメキシコ、グアテマラ、ハイチからの移住労働者)を組織しているイモカリー労働者連合(CIW)のメンバーである。CIWは約
20年前に「現代の奴隷制」そのものである農園における労働条件の改善のために結成され、タコベル(大手ファストフード)に対する4年にわたるボイコット運動などを通じて要求を実現してきた。
「『厳しい移民規制と搾取的な産業構造の下で、農場労働者は性暴力に対して非常に弱い立場に置かれている』とゴンサロさんは言う。
……2012年に発表されたヒューマンライツ・ウォッチのレポートは米国の農園の女性移住労働者に対する職場でのレイプ、性暴力、性的嫌がらせの発生率が高いことを明らかにしている。労働者の70%近くが労働許可証を持っておらず、報復や本国送還を恐れて被害を告発できないことが多い。
全米女性農業労働者連合(ANC)は11月にハリウッドの性暴力のサバイバーたちに次のような書簡を送った。
『私たちは明るいステージライトや大きなスクリーンとは無縁です。私たちはこの国の大部分の人たちに注目されることも記憶されることもない日陰の、孤立した農場や作業場で働いています。あなた方と私たちは互いに全く違った環境の中で働いていますが、雇用、解雇、ブラックリストやその他の方法で私たちの経済的、身体的、感情的な安定を脅かす権力を持っている人たちの餌食にされたという共通の経験を持っています』」
CIWは暴力と奴隷労働と性的嫌がらせのない職場の実現に向けた「フェアフード」.フログラムを進めており、現在までにマクドナルドを含む14の大手外食チェーンに要求を認めさせてきた。18年の最初のターゲットはウェンディーズ(ハンバーガー・チェーン)である。CIWの「労働者主導による企業の社会的責任(CSR)というモデルは他の産業にも広がっている。
「『草の根のグローバル・ジャスティス連合』のジェンダー・ジャスティス担当オルグのアナ・オロスコさんは次のように語っている。
『#Me Tooが一時的なブームではなく運動となることが重要です。それはイモカリーの労働者のようなグループから直接に話を聞くことを意味します』
CIWのメンバーで、メキシコ出身のネリー・ロドリゲスさんは『私たちがフェアフード・プログラムでやろうとしていることは、沈黙と恐れの文化と決別し、労働者たちに私たちはもう過去の世界にいるのではないと伝えることです。私たちは声を上げ、沈黙を破る力を持っています。私たちは沈黙と恐れがいつまでも続くことを望んでいません』と語っている」
★ドイツ
金属労組が「週28時間労働オプション」導入求め24時間スト
ドイツ最大の労働組合、IGメタル(金属労組、390万人)は6%賃上げを要求して1月8日に24時間の「警告スト」に入った。
ノルトライン・ヴェストファーレン州のキルヒホフ(自動車部品)、クラース(農業用車両)、ベルリンのオーチス(エレベーター)など80の企業で、合計1万5千人余の組合員がストに参加した。
ポルシェ、ダイムラー、ポッシュ(自動車部品)などの工場があるバーデンーーヴュルテンベルク州では11日に労使会談が予定されており、10日に2万5千人の組合員がストライキに参加した。
BMW、シーメンスなどの本社があるババリア州では15日に労使会談が予定されており、11日にストライキなどの行動が計画されている。
IGメタルの今回の賃上げ闘争は、ドイツ経済の好況と失業率の低下を背景としており、高収益の企業が「2%」という低水準の回答に固執していることに労働者の憤りが高まっており、同労組のイェルク・ホフマン委員長は企業側が要求に応じないなら警告ストから全面ストヘエスカレートし、無期限ストも辞さないと宣言している。
IGメタルはまた、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活のバランス)」を掲げて、「週28時間労働オプション」の導入を重点目標としている。
同労組の提案は、労働者が子どもの世話や親の介護のために週28時間勤務を選択した場合、2年間まで月200ユーロの特別手当を受け取ることができ、その後自動的に元の勤務に戻ることができるという制度の導入である。
組合の広報担当者は次のように述べている。
「私たちは経営者が家族における伝統的なジェンダー役割の変化を認識すること、また、労働者が社会にとって意味のある仕事をするようになることを望む。これまでは柔軟な労働時間という要求は労働者に犠牲をもたらすものだった。私たちはスイッチを切り換えて、柔軟な労働時間が労働者にも恩恵をもたらすようにしたい」
経営側は高技能の労働力が不足していることを理由にこの要求を拒否している。
IGメタルは1980年代に週35時間労働を要求して数カ月にわたるストライキを闘い抜いたが、その後は03年に旧東ドイツ地域への35時間労働の適用を求めるストライキ(敗北し、旧東ドイツ地域では現在も週37時間労働)を除いて大きなストライキを行っていない。
(「ロイター」1月8日および10日付、英国「ガーディアン」同10日付より)