984号
介護労働者 〉 「介護労働者の権利宣言」 共につくろう集会
全国一般労働組合東京南部ケアワーカー連絡会とはたらく女性の全国センター介護グループが連絡先の実行委員会の主催で、関西の『介護労働者権利宣言』づくりの運動を関東でも広げていこうと開催された。
集会は、第1部で「介護労働者の権利宣言」の提唱者・水野博達さん(大阪市立大学共生社会研究会)の講演ではじまった。
水野さんには、関西の運動を背景に次の運動を展望し、その中心を担うケアワーカー運動の基調を熱い思いで語っていただいた。
第2部は水野さんの講演をうけて、現場で働く3名の介護労働者から問題提起をうけました。
伊藤みどりさん(はたらく女性の全国センター・介護福祉士)・藤原るかさん(共に介護を学びあい・励まし合いネットワーク.ホームヘルパー)・南守さん(ケアワーカーズユニオン執行委員長・しょうがいしゃヘルパー)それぞれ現場の厳しい状況もまじえて、時にユーモアたっぷりに介護に対する思いを語り合っていただいた。
なかでも公務員ヘルパーからたたきあげで、今日まで30年近く現役ヘルパーを続けてきた藤原るかさんは、介護保険制度の発足から19年在宅ヘルパーの働き方・働かせられ方を振り返り、度重なる制度の改悪によって高齢者の尊厳、ヘルパーの仕事への誇りが増々奪われてきている現実を語ってくれた。
これまでの幅広い活動のなかで、毎日500円ためて毎年仲間と連れ立って「世界のヘルパーさんと出会う旅」を続け、これまで10ヵ国にもなった。その報告はホームヘルプという世界の面白さと奥深さを再認識させてくれた。
水野さんの講演にもあった「変革主体としての介護労働者」とそれに基づく「介護労働者権利宣言」を多くの仲間のもとへ届け、討論の輪をひろげ、職場からの闘いを行政闘争につなげ、運動を下から組織化し、だれもが地域社会で生きていける共生社会の実現を目指さなければならない。
それには全国のケアワーカーが連帯し団結できる労働組合運動が必要だ。新しい社会的労働運動の構築が日本の未来をも左右していく。
6・29集会は、確実にこの大きな課題の第一歩をふみだしたといえる。
加辺 正憲(全国一般京南部ケアワーカー連絡会)
天皇代替わり 〉 文科省の「祝意」通知と天皇賛美の「教育」
天皇代替わりに際して文科省より「祝意奉表」の「通知」が出された(「4・22通知」)。4月2日には5月1日(新天皇即位で休日)に学校で「日の丸」を掲揚せよという「通知」も出された。しかし22日の「通知」は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を根拠として、「天皇陛下を深く敬愛し」の意味を児童生徒に理解させるよう通知したものだ。憲法は象徴天皇制を「天皇」と表記しており、「陛下」の表現は違憲なのである。
さらに「奉表」の語は広辞苑にも出ていない造語なのである。そもそも違憲の法律が「特例法」として法令化していることに問題はあるが、一つの法を根拠に天皇制賛美を次々と拡大解釈して、既成事実化させていく端緒がこの「通知」である。
「日の丸君が代」処分事件の訴訟判断は外部的行為への命令であり間接的制約であって、憲法19条(内心の自由)に反しないとするものであった。
しかし、この「通知」は児童生徒への内心に直接介入するものであり、違憲なのである。
この「通知」を受け、全国の学校では校長等が全校集会や何らかの形で天皇代替わりや元号改定に触れたようだ。
特に大阪市の泉尾北小学校では「天皇陛下ご即位記念」の児童朝礼が行われ、校長の訓示と共にゲストとして山口采希(「愛国の歌姫」と呼ばれている)が「行くそ!日の丸」「仁徳天皇」などのオリジナル曲を唱和した。今、地元大阪の教員達がこれへの抗議文を作成し賛同を集めている。
また東京八王子市では、天皇陵に天皇が退位報告に訪れるというので地元の小学生が動員され、沿道で「日の丸」の小旗を持たされた。八王子では「天皇皇后両陛下八王子奉迎実行委員会」が結成され、住民が自主的に天皇退位を祝福するための市民の「自主的」組織の形式だ。
しかし連絡先が「教育委センター」となっており、市教委がこの組織の実態であることがわかる。そしてこの「奉迎委員会」名で小学校等に「奉迎」する旨の文書が配布され小学生の動員が行われたのである。
この文書には、沿道のルートと共に、現地で小旗を配布すること、また小学生を最前列にすることなどが指示されている。テレビのニュースで放映された小学生の小旗波はこうして演出されたものであった。
しかし、通常「授業時間の確保」を叫んでいる教育行政が授業を放棄して児童を動員することの是非は問われないままになっている。
教育委員会に問い合わせると、小学校6年生社会科の学習指導要領に「天皇の地位」について記述されており、これを根拠にしているという。しかし同「要領」では「天皇の国事行為」を理解させる趣旨で書かれているが、文科省は7月9日の全労協との交渉の席で、天皇代替わりに伴う諸儀式を「国事行為として示した」と回答した。
代替わりの儀式を国事行為に拡大解釈して「通知」したと述べているのである。例えば、3種の神器を継承する「剣璽等継承の儀」を児童生徒にどのように理解させるというのだろうか。
このように見ると、「4・22通知」は現代における教育勅語のようなのである。
永井 栄俊
放射能汚染ごみ 〉 生活平穏権掲げ地域住民が裁判
福島第一原発事故で放出された放射能で汚染された稲わらなどの焼却処分に反対する宮城県大崎市の焼却場周辺の住民124名が原告となり、大崎地域広域行政事務組合を被告として、放射能汚染廃棄物の試験焼却に関して、被告の焼却施設の処理等の経費の支出(公金の支出)をしてはならないという差止請求訴訟を起こして闘っている。
大崎地域広域行政事務組合と焼却場周辺の住民組織は、「ごみ焼却場の機能・設備等を変更する場合は地元住民に事前に説明し合意を得るものとする」等の「申し合わせ」を交わしており、「試験焼却の実施決定」がその「申し合わせ」や覚書(被告が建設する最終処分場に搬入する一般廃棄物は、水質汚染のおそれのある廃棄物は一切搬入しないものとする)を無視して行われたのは違法であり、違法行為のために公金を支出してはならないとする住民訴訟である。
覚書や申し合わせは、周辺住民の環境や健康を保護するものであり、生活平穏権を維持するものである。
放射能汚染廃棄物の焼却が周辺住民の環境や健康等に及ぼす影響及び安全性を考えた時、被告には覚書や申し合わせの見直しに合意を得ない限り、試験焼却を実施しない義務があるのは当然であろう。
住民訴訟は、7月末で5回の口頭弁論を数え、試験焼却が覚書や申し合わせに反していること、試験焼却により放射能汚染の健康被害が生じ、人格権を侵害することについて、具体的な主張をしていくことにしている。
住民訴訟と同時に、生活平穏権を侵害する試験焼却の差し止めを求める「仮処分申立」も同時に起こしている。
4月26日仙台地裁は、「800bq/㎏以下は、一般廃棄物として処理できる。バグフィルターで99・9%捕捉できる。1msv/年以下の被ばくで健康被害は生じない」と債務者(大崎地域広域行政事務組合)側の主張を鵜呑みにし、住民側の訴えを退けた。
5月10日即時抗告し、現在仙台高裁で審議されており、最後の試験焼却(第6クール)が7月22日から実施される前に高裁の判断が出される状況にある。
大崎市の焼却に反対する住民団体は、市民放射能監視センター「ちくりん舎」の協力で焼却場(市内三ヵ所)の30地点で昨年10月~本年3月まで、リネン(麻布)を吊るし、「リネン吸着法」で焼却場からのセシウムを監視しセシウムが漏出していることを確認している。風向が逆向きになる夏場も同様、監視を続けることにしており、夏場も漏出が確認できれば、確かな証拠になる。
一方、仙南地域では5月から本焼却が開始され、3年以上燃やし続ける計画になっている。
県内の焼却に反対する住民団体は、大崎、仙南の闘いを支援して焼却を中止させる取り組みを共同で進めている。
日野 正美(放射能汚染廃棄物の焼却処分に反対する石巻地域の会)
東電株主訴訟 > 大津波予見しながら金のため対策怠る
9月19日に「東電福島第一発電業務上過失致死傷事件」=東電刑事裁判の判決が言い渡されようとしている現在、同様の内容を争っている「東電株主代表訴訟」も佳境に入ってきている。
7月11日、2012年3月5日の裁判提起以来48回目の株主代表訴訟口頭弁論が行われた。
大津波を予見できたか否かが大きな争点になっている両裁判だが、こちらの裁判でも刑事裁判に使われた書証や刑事裁判での証言などが使われ、その過程で、東電勝俣元社長らが社内での津波対策を必要との確認を経済的理由から握りつぶしてきた事実が明らかになってきた。
太平洋の日本海溝沿いで大規模な津波地震の可能性について報告した地震対策推進本部のいわゆる「長期評価」を当初方針通り採用していれば、15メートルを超える津波にも対応できたことが刑事裁判での証人尋問でも明らかにされている。
今回はこの「長期評価」の信頼性について準備書面を提出、趣旨説明が行われた。
原発をめぐる無責任体制を許さぬためにも両裁判で勝利したい。
次回は9月26日、10時30分~。東京地裁103号法廷。
瀧 秀樹(労働情報事務局長)