登録型派遣の原則禁止を!
格差・貧困化の根源である派遣法の抜本改正を求める声が高まり、政府・与党は昨年11月4日に労働者派遣法改定案を閣議決定し国会に上程したが、それはまったくのマヤカシ改正案であった。
一方、野党間では改正案の協議での登録型派遣の禁止をめぐって、民主党が消極的姿勢をつづけてきた。これは、連合傘下の電機連合やUIゼンセンなどの意向を反映したものであった。しかし民主党は、5月13日になって、登録型派遣で通訳など専門性の高い業務以外では原則禁止への転換の検討を始めた。同日の朝日新聞によれば「製造業や一般的な事務への派遣は派遣会社が労働者を長期に雇用し、仕事がない時も賃金が払われる『常用型』に限って認め、登録型は通訳や秘書など専門性の高い業務に限定する」というものである。早期の抜本改正実現を全国的な大衆運動のもりあがりで実現していかなければならない。
5月14日には、日比谷野外音楽堂に1千名が結集して「実現しよう今国会で! 労働者派遣法抜本改正を求める5・14日比谷集会」(主催・労働者派遣法の抜本改正を求める共同行動)が開かれた。
全国ユニオン会長の鴨桃代さんは、今国会で改正を実現しようとあいさつ。
労働弁護団の棗一郎弁護士は、今国会への野党共同で法案提出、その成立を求めた。
共同行動の呼びかけ人の鎌田慧さんと湯浅誠さんがあいさつし、民主党・高山智司衆院議員(雇用対策本部長)、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島みずほ党首の発言、現場からの報告が行われた。
続いて参加者の拍手で採択された集会アピールでは、(1)登録型派遣は政令指定業務を除き原則として禁止すること、(2)常用型派遣は原則として期間の定めのない雇用とすること、(3)職安法・派違法に違反する働かせ方をした場合に派遣先との直接雇用が成立する「みなし雇用規定」を創設すること、を求めている。
小田川義和全労連事務局長の閉会あいさつで集会を終わり、国会請願デモに移った。
(本誌編集委員 木島淳夫)
★全国各地でメーデー
▼日比谷メーデー
5月1日、東京・日比谷公園野外音楽堂で行われた第80回日比谷メーデーには、1万2千人が参加した。今年のオープニングは韓国の労働歌謡「コッタジ」の歌とトヌムの力強い演奏。
集会では、主催者を代表して国労東京地本の石上浩一委員長があいさつを行った。構造改革・新自由主義政策の結果、日本では19万人を超える人が職を失った。「労働組合は労働者同士が助け合うことから始まったという原点を再確認したい」と述べ、幅広い連帯を訴えた。
続いて来賓のあいさつを行った都労連の武藤弘道委員長は、新自由主義に対し組合は有効な闘いをしてこなかったことの反省の上に、憲法25条を実現するための闘いや国鉄闘争の重要さに触れた。世界では分断と差別(正規と非正規)、都市と農村の格差などへの反撃がはじまっている。変革の時だ、と訴えた。
いすゞ自動車に対し雇用継続を求めていた近藤博光さん(全造船関東地協いすゞ自動車分会)の勝利報告、日系ブラジル人労働者の新海ミエコさん(埼京ユニオン)が労災認定や不当解雇などの損害賠償をかちとるために勝利するまで闘うと発言。また、均等待遇アクション21、全労協女性委員会の柚木康子さんが、同一価値労働同一賃金の均等待遇を求める大切さをアピール、国労闘争団(東京)の松本繁崇さんが国鉄闘争の解決を訴えた。集会の後、2つのコースに別れてデモ行進を行った。
▼中之島メーデー
5月1日の晴れた青空の下、大阪城公園・教育塔前に1千人を越える参加者を得て第80回中之島メーデーが開催された。前段行動として、全日建関西生コン支部が石原産業へ、全港湾大阪支部とゼネラルユニオンがクボタへそれぞれ抗議・要請行動を行い、さらに10時半には大阪府の橋下知事への申し入れも行った。11時20分から「唄う浪花の巨人・パギやん」こと趙博さんのミニライブ。そして、前日に急死した全日建連帯労組近畿地方本部・副執行委員長川村賢市さん(享年61歳)への黙祷をした後に本集会に突入。来賓挨拶のあと、争議アピールでは、全港湾大阪支部クボタ分会、教育合同夕陽丘支部、関西生コン支部石原産業分会、そしてゼネラルユニオンのブラジル人組合員が支援要請と決意表明を行った。本町通りから御堂筋をデモした後、交流会も賑々しく行われた。
▼野宿者、失業者、持たざる者は団結する
中国の好景気時には1s150円だったアルミ缶が1s30円まで下がり、1日働いて500円にもならないアルミ缶集め。賃金をまったく払わずに奴隷労働させる飯場もある。「それでは」と最後の頼みの綱の生活保護を申請すれば、第2種宿泊施設に収容させられる。宿泊施設は保護費をピンハネするために食事は劣悪で、規則だらけ、自分らしく暮らすこともできない。野宿の仲間を取り巻く環境は、厳しい。
ところがどっこい。昨年秋には、タダ働きさせた三生建設に、賃金清算を要求、労働争議の末に働いた分のカネを勝ち取った。生活保護申請はこの1年半、施設収容を許さず、アパートでの生活を要求し、東京の各地で勝ち取ってきた。路上からの排除にもねばり強く闘っている!
そんな09年。5月2日の野宿者メーデーに230人が参加し、連休でごった返す新宿駅周辺を1時間かけてデモ。アルミ缶を集めた鈴や鍋の太鼓を響かせて、「仕事をよこせ」「追い出しやめろ」「住まいをよこせ」「飯をよこせ」を訴えた。
集会では、立川・三鷹・渋谷・新宿・中野・山谷・上野の野宿の仲間のほか、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」「埼玉の派遣村」「府中派遣村」「自由と生存のメーデー」なども発言した。
(よまわり三鷹 荒瀬礼子)
「取材に応じたら解雇」への「文化人・言論人一言アピール」運動に協力を!
登録型派遣で働く旅行添乗員の過酷な労働環境と労働組合結成の経緯を取り上げた『週刊金曜日』(2月20日号)が「虚偽」だとして、大手旅行会社「阪急交通社」の子会社で、添乗員を派遣する「阪急トラベルサポート」は3月18日、取材に応じた同社所属の添乗員で、全国一般東京東部労組HTS支部の執行委員長である塩田卓嗣さん(46歳)に対して「今後、添乗業務のアサイン(仕事の割当)をしない」と事実上の解雇処分を通告しました(本誌765号4頁掲載)。
記事に対する「虚偽」の指摘自体、まったく事実に反するものですが、それ以前に、記事への抗議であれば、発行元である金曜日や、ライターに行なうべきものを、それを一切せず、取材を受けた人を解雇するという今回の事件は、出版社やライターを飛び越えて、インタビューに答えた労働者本人のクビを直接切ることで、企業への批判や不満の声を上げることそのものを萎縮させるのが最大の目的です。派遣社員の待遇改善の闘いと、これを報じるメディアに対して、「メディアに告発したらこうなるぞ」とした見せしめであり、「言論の自由」、および報道に対する挑戦でもあります。
こんなことがまかり通ったら、メディアの取材に応じて職場の問題を訴える人はいなくなります。こんなことが許されれば、働く者にとって言論の自由が奪われます。
労働組合つぶし、言論の自由・報道に対する重大な挑戦でもある今回の不当解雇事件について、私たちは「文化人・言論人一言アピール」運動を行い、いただいたアピールを冊子やチラシにして配布あるいは会社に突きつけることで、会社を社会的に包囲していく取り組みを行っていきたいと思っています。
(全国一般東京東部労組書記長 菅野存)
私たちが呼びかけます
◎佐高信(評論家、『週刊金曜日』発行人・編集委員)「私はもともと平和主義ですが、売られたケンカは買わざるをえません。最低でも、相手と刺し違える覚悟でやります。『阪急』創始者の小林一三が泣いているのではないでしょうか」
◎中島岳志(北海道大学准教授、『週刊金曜日』編集委員)「労働者に対する不当な処遇というだけでなく、ジャーナリズムの根本を崩しかねない極めて悪質な行為だ。大阪人として『阪急』というブランドに信頼と親しみをもっていただけに、裏切られたという思いが強い」
◎宇都宮健児(弁護士、『週刊金曜日』編集委員、反貧困ネットワーク代表)「取材に応じた塩田さんをいきなり解雇するやり方は、卑怯であり、許せない。言論の自由に対する重大な挑戦だ」
◎湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)「告発したら解雇とは筋違いも甚だしい。解雇撤回するまで、内部の労働運動とともに、『阪急トラベルでは旅行しない』という市民の包囲が必要と思います」
◎雨宮処凛(作家、『週刊金曜日』編集委員、反貧困ネットワーク副代表)「話を聞いた時、これじゃあもう誰も声を上げられなくなる、と思った。というか、私の取材が誰かの仕事を奪うことになるのであれば、自分自身がもう『取材』そのものができなくなる、こんなことを放置していれば何も書けなくなり、言えなくなる。すべての書き手の問題であり、こんな『見せしめ』に私は絶対に屈したくない」
■「塩田さんへの事実上の解雇を許さない!文化人・言論人アピール」に、みなさんからのメッセージをお寄せください!
お名前、肩書き、メッセージをご記入いただき、事務局までお送りください。
【郵便の場合】
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