たたかいの現場から

979号

山陽新聞労組 > 争議解決と自由な言論めざし住民と手つなぐ

 「越宗孝昌山陽新聞会長が加計学園理事というのは利益相反。辞めるべきである」
 2月8日、岡山市で新聞労連と、不当労働行為事件を闘う山陽新聞労働組合が開いたフォーラム「前川喜平さんと考えるメディアのあり方これでいいの?山陽新聞」の中での、元文部科学事務次官・前川さんの指摘だ。

 

 前川さんは、昨年6月の加計孝太郎理事長の会見について「出来の悪い猿芝居」とばっさり。地元紙である山陽新聞が追及すべきなのに、会長が学園理事ではしようがないと、山陽新聞の体たらくを嘆いた。
 ジャーナリスト三宅勝久さんは「(加計理事長との面談を裏付ける)愛媛県文書が出てきた時、安倍首相はコーナーに追い詰められていた。しかし、山陽新聞は(猿芝居の加計理事長会見を助けて)安倍政権を救うという役割を果たした。新聞の歴史にとっても汚点」と声を強めた。
 南彰新聞労連委員長は、他紙と比較しながら、山陽新聞が加計問題の1面掲載を避けていることや、社説が一昨年5月の問題発覚からわずか3本しか出ていないことを紹介した。

 

 山陽新聞社内に、紙面について沈黙する第二組合があることについて、前川さんは「労働者の権利を主張するだけではなくて、職能団体として、自分たちの立場、仕事、自由であるべき活動を守ることも労働組合の重要な役割だ」と指摘、奮起を促した。
 最後に、印刷別会社化反対の組合方針を理由に、印刷職場から排除された田淵信吾山陽新聞労組委員長と加賀光夫副委員長が登壇。

 「言論報道機関の中で自由な言論を封殺するかのような人事政策が行われていることが許せない」と訴え、支援と共感の拍手に包まれた。

 

 山陽新聞は、これまでも偏向報道を繰り返してきた。組合弾圧と紙面の歪みは密接不可分の関係にある。
 フォーラムには、400人もの市民が駆けつけた。労組を支援することで、市民の手にメディアを取り戻すきっかけになることを願っている。

藤井 正人(山陽新聞労働組合書記長)

 

福島第一原発 > 廃炉作業の過労死労災遺族が賠償請求裁判へ

 福島第一原発廃炉作業現場で長時間労働を強いられ、「過労死基準を超える長時間労働による心疾患死亡」として昨年10月に労災認定を受けた故猪狩忠昭さんの遺族3名が2月13日、雇用者いわきオールさらに元請け宇徳及び東電に対する損害賠償請求を福島地裁いわき支部に起こした。

 既に遺族はいわきオールに対して昨年7月、未払い残業代を請求する訴訟を起こしていた。

 

 このたびの提訴は一つ目に、過労死基準をはるかに上まわる長時間労働を強いたいわきオール及び取締役2名と宇徳の安全配慮義務違反に対する損害賠償請求である。

 二つ目に死亡当日、救急医療室において速やかに適切な診療を受けさせなかった東電と宇徳の責任を問う。そして三つ目に、忠昭さんが亡くなった当日の記者会見で過労死ではないと断定して遺族に精神的苦痛を与えた東電の責任を問いただす。

 

 このかん全国一般といわき自由労組が行った抗議に対するいわきオールの言い分は、「早出も残業も命じてなく、基本的に時間外労働は存在しない」であり、元請け宇徳の言い分は、「指揮命令した事実はないので労働時間に関する責任がない」である。

 そして東電は、「発注者だから協力会社の労働時間をあれこれ言う立場にはない、発表した死亡原因は元請宇徳等から報告されたものである」と言い訳した。3社とも責任逃れの一言に尽きる。

 

 福島原発廃炉現場では勤務中にこれまで19人の労働者が死亡した。忠昭さんの過労死の後にも2名が勤務中に心疾患等で亡くなった。

 遺族が労災認定を実現した道は、労働行政の不認定へ導こうとする態度に遭遇し一筋ではなかった。しかし、故忠昭さんの無念を晴らし廃炉現場で再び労災死を出してはならないとする固い決意が認定を闘い取った。共に闘い、司法の場で企業責任を明らかにする闘いをしよう。

 

 安倍政権は8年目の3・11を前に東日本大震災復旧と福島原発事故収拾を宣伝し、東京オリンピックを復興の象徴にしようとしている。しかし、今も4万人の福島の人々が避難生活を送っているし福島原発廃炉作業でも労働者の犠牲が続いている。

 裁判の勝利を通して国と企業の欺隔を明らかにしたい。

 

星野 憲太郎(東北全労協幹事)

 

関西生コン > 憲法28条破壊の弾圧 屈しない決意共有

 2月5日、滋賀県警は関西生コン支部に対し、6回目になる刑事弾圧を行った。16名の組合員がビラまきをしたというだけで威力業務妨害を適用、不当逮捕された。

 これで昨年7月以来のべ55人が不当逮捕、21人が起訴、長期拘留されるという戦後史の中でも他に類を見つけにくいほどの弾圧が続いている。

 

 2月8日、東京・全水道会館で「全日建連帯労働組合・関西生コン弾圧事件・緊急報告集会」が開かれ、怒りをこめた約160名の参加者で埋め尽くされた。

 冒頭の報告を行った小谷野毅全日建書記長は「弾圧をかけているのは組織犯罪対策本部で、ストをしたら逮捕、ビラを撒いても逮捕、その場にいただけで逮捕という異様さ。このままでは赤い腕章をしただけで逮捕されかねない」と訴えた。

 

 大阪地裁での第1回公判を傍聴した海渡雄一弁護士は「違法行為に対し法令遵守を求めたことが『軽微な不備に因縁をつける行為』であり、恐喝未遂とされる。ストライキで生コン車を止めたことが『車の前に立ちふさがる行為』であり、威力業務妨害とされている」と述べた。
 宮里邦雄弁護士は「これは平成労働運動史上最大の異常な弾圧で、警察が先頭に立っている。裁判所もその警察をチェックできていない」と告発した。

 

 続けて平和フォーラム・藤本共同代表、全国ユニオン・鈴木会長、けんり春闘・中岡事務局長、全国港湾・松本さん、東部労組・矢部書記次長、木下武男さんらが「当たり前の組合活動をする労働運動への弾圧であり、全ての労働者にかけられた弾圧だ。絶対にはね返そう」と連帯と支援の決意を表明した。

 関生支部代表の決意表明に続き全日建連帯労組・菊池進委員長が「不当な弾圧に屈しないために、1.不当弾圧反対の団体署名、2.接見禁止解除申し立て等への協力、3.財政的支援のための全国カンパ、この3点に多大な協力をお願いしたい」と要請し、満場の大きな拍手を受けた。

水谷 研次(team rodojoho)

 

国際自動車 > 長時間労働変えたい  組合差別はね返し運動

 2012年5月、全国際自動車労組(国際全労)の組合員15名が給料から差し引かれていた残業代、深夜手当、休日手当、通勤手当など計1900万円強の支払いを求め東京地裁に提訴(第1次訴訟)してもうすぐ7年。裁判では、1審・2審とも会社に対して、1人当たり100万円程度の未払い残業代の支払いを命じたが、最高裁からの差し戻審で逆転敗訴、現在最高裁で判断を待つ状況となっています。

 

 国際自動車残業代不払い裁判は、第1次訴訟勝訴後、第2~第4次まで訴訟が広がった。しかし、第2次訴訟では地裁・高裁と不当判決が出され、最高裁に上告中だ。このため、第3・4次訴訟は地裁での審理が長期化し、この2月27日に漸く判決が出されることになった。

 

 国際全労の闘いは、09年9月、運転手の過労防止措置を繰り返し怠ったことで赤坂本社が事業許可取り消し処分を受けながら、その後も懲りない国際自動車で「違法行為に対して麻痺した会社」(指宿昭一弁護士)を変えようとして始まった。

 運転手の賃金明細には残業代の項目があり、金額は計算され表示されているが、その残業代は歩合給から引かれ、実際は支払われていなかった。労基法37条等に定められた方法によって残業代を支払わせる判決を勝ち取ることで、時間外労働に対する歯止めをかけ、業界全体の長時間労働を変えていくことにつながる。

 

 国際全労が組合事務所や掲示板の設置、残業代不払い裁判など職場から闘いを拡げてきたことに対して、会社側は「労働者供給事業」認可も得ている国際全労組合員の再雇用を拒否する組合差別も仕掛けてきた。この組合差別も東京都労働委員会で不当労働行為として勝利命令を勝ち取っている。

(全国際自動車労働組合―国際全労・首都圏なかまユニオン)

 

反貧困 > 垣根こえつながろう 派遣村10年で課題探る

 反貧困ネットワークの全国集会が2月16日、東京・四谷の上智大学デ開かれ約200人が参加。昨年末に「年越し派遣村」10周年を迎えたことを受けて、その後の活動を点検しつつ今後のあり方を探るための討論を行った。

 

 冒頭あいさつに立った宇都宮健児・集会実行委員長は、「年越し派遣村は、広がりつつあった貧困を可視化し社会全体に訴える取り組みとして重要であり、政権交代にも連動して行ったが、その後の10年の間に、格差社会も自己責任社会も変えることはできなかった」と指摘。
 「賃金の低下、非正規雇用の増大の一方で、企業の内部留保の増大、防衛費の増額など、事態はむしろ悪化している」として、この方向を変えていくため「当事者が声を」げていく」運動を作っていこうと訴えた。

 

 集会では、「生活保護、社会保障の切り下げに現場から抗議し現場から変える」をテーマとした第1分科会と、「年越し派遣村から10年、自己責任社会は変わったか」をテーマとした第2分科会に分かれて討論を実施。
 第2分科会では、河添誠さんを進行役に、猪股正さん(弁護士)、関根秀一郎さん(派遣ユニオン)、龍井葉二さん(元連合非正規労働センター)、和久井みとるさん(元生活保護利用者)と雨宮花凛さんによるディスカッションが行われた。

 

 このなかで、「労働運動と社会運動など運動の枠を越えた連携」(宇都宮)、「労働者派遣法の抜本改正」(関根)、「地域づくりや社会再生の一環としてそれぞれの運動を結びつけていくこと」(龍井)、「誰もが利用しやすい社会保障制度の改善とわかりやすい説明」(和久井)、「自己責任社会を克服していくための連携の広がりと男性正社員が家族を扶養するような働き方モデルの変革」(雨宮)などの点が強調され、河添さんは、引年越し派遣村は非常時の取り組みとして画期的だったが、今は平時における運動の展開が求められている」と提起した。

 

 一方、第1分科会では、白石孝さんを進行役に、田川英信さん(社会福祉士)、西田えみこさん(1型糖尿病患者障害年金訴訟原告)、佐藤和宏さん(首都圏青年ユニオン)、安藤周平さん(ワーカーズコープ)らが討論を行った。

 

 集会は最後に、「生きづらさを抱えた者同士を分断させる『自己責任』の罠に陥らず、垣根を越えてつながろう」との大会宣言を採択して閉会した。

(編集部)

 

大阪 > 前日の高裁勝訴にわく民法協・権利討論集会

 2月16日、大阪近郊の労働組合、市民団体、弁護士、学者・研究者が参加し、第47回権利討論集会が開かれた(民主法律協会主催)。
 「非正規労働者をめぐる情勢と労働組合の役割」をテーマに記念講演した南山大学の緒方桂子教授は、前日(15日)に大阪高裁が出した、非正規に賞与支払いを命じた大阪医科歯科大・労契法20条裁判にもふれ、「20条裁判の本丸ともいうべきコース区分型で、賞与を認める判決が出たのは画期的だ。不合理な格差は個人の尊厳の侵害で許してはならない」と語った。
 その後7分科会に分かれ、現場報告や討論が行われた。

 

北 健一(出版労連書記次長)

 

 

 

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