たたかいの現場から
770号

JR東日本は明確な説明を
JRウォッチが不正取水の現地調査

 JRウォッチは6月8日〜9日、JR東日本の信濃川発電所における不正取水問題で揺れる新潟県十日町市の現地調査を行った。13名が参加。
 JR信濃川発電所とは、「宮中ダム」と「千手・小千谷・新小千谷」の3つの発電所等の総称。この3発電所と川崎火力発電所で首都圏の90%の電力を賄う。当初は、1秒あたりの最大取水量167トンであったが、1984年に十日町市は維持流量(放流)を2・18トンから7トンと僅かに改善したものの、さらに150トンを認める協定書に同意し、合計最大取水量は317トンとなった。
 問題となっている不正行為とは、JR東日本が計器に細工を施し、最大取水量が1秒あたり317トンを越えても317以上を示さず、維持流量(放流)が7.0トン以下でも7.0トンと7.1トンを交互に表示するよう改ざんされていたことと、河川法違反や許可条件違反となる工作物の設置が250件以上あったというものである。
 07年、国交省からの自主点検の求めに対し、2度にわたり「適正」との報告をしていたが、08年7月に十日町市が国交省に情報開示を請求。その開示審査段階で国の担当者が数値に不審を抱き、JRに点検を指示したところ、今回の不正が発覚。その結果、今年3月に国土交通省から取水許可を取り消されたのである。
 私たちは8日午後、地元の市民団体「信濃川をよみがえらせる会」の山田努事務局長と根津東六副会長(前市議会議員)と交流。  根津さんは言う。「十日町は大河信濃川の恵みにより古代から発展した美しい豊かな国だった。信濃川は水力発電という吸血鬼に命の水を奪われ死の石河原と化した」と。
 また、山田さんは「JRの幹部が謝罪に来たが、今後どうするのかと聞くと、『コンプライアンスの社員教育を徹底する』と言う。社員教育より幹部自身の問題ではないか。JRは勘違いしているようだ」とJR東日本への不信感を隠さない。交流後、2人の案内で宮中ダム、浅河原調整池、千手発電所を見学。
 9日には、十日町市役所の発電所問題の窓口・克雪(こくせつ)維持課の課長補佐らと意見交換。会議の冒頭には、丸山副市長も挨拶に。市側は「損害賠償以前に、過去の清算と市民への謝罪が先決だ」と言葉を選びながらも語気を強めた。
 東京電力の西大滝ダムから下流の小千谷発電所までの約64キロが減水区間だが、JR宮中ダム以降の下流部分が特に酷く、“枯れ川”といわれ、夏には水溜りのヘドロ状態である。JRの取水許可取り消しに伴い、1秒あたり200トン弱が放流されている現在、サケ・マスなどが豊富で川漁も回復し、大河「信濃川」の面影を少しだけ取り戻している。
 97年6月、十日町市長とよみがえらせる会代表が、維持水量(放流)増加の要請にJR東日本本社を訪れたが、須田取締役は「新潟県立会いの下に協定書が交わされている。維持水量の話し合いは既に終わったこと」と木で鼻をくくった回答だった。
 また、この協定書締結は新小千谷発電所開業に焦点を合わせたものと思われるが、当時の国鉄信濃川工事局は「信濃川の2発電所と川崎を合わせ65・1万キロワットの発電量だがが、川崎発電所2号機の老朽化に伴う廃止により17万キロワット不足するから」と説明。17万キロワット不足では、総出力48・1万キロワットになるので、新小千谷発電所を造り20・6万キロワットの発電により68・7万キロワットの出力を得たいとしている。
 しかし現在は、信濃川3発電所と川崎4基で110・4万キロワットの出力。十分すぎる電力はどこに使われていたのか?
 2度にわたる虚偽報告と計器の改ざんは看過できない問題であり、「誰が」「どのような動機で」「指示」したのかが明らかになっておらず、清野社長の減給50%3ヵ月などの処分はあまりにも軽すぎる。
 私たちは、JR東日本の明確な説明と処分を求めるとともに、信濃川をよみがえらせる会と協力し、首都圏の便利さが信濃川の苦悩の上に成り立っているという事実をも含め、近い将来、東京で「信濃川問題を考える」市民集会を持ちたいと考えている。
(JRウォッチ 三好登)

(JRウォッチ 三好登)

危ない教科書を採択させない運動を

 今年は、2010年から2年間使用する中学校教科書を採択する年である。すでに各教育委員会では採択に向けた準備が始まっている。文科省による教科書検定の問題はあるものの、中学校教科書採択が問題となるのは、01年から新規に参入してきた扶桑社版教科書がひどすぎるからである。
 西尾幹二、小林よしのり、藤岡信勝、八木秀次といった右派の論客は「新しい歴史教科書をつくる会」を結成し、扶桑社版教科書の全国採択率10%をめざした。01年最初の挑戦は0・039%、05年の2度目は0・43%で目標を大きく下回った。そのせいもあって、「つくる会」は分裂し、扶桑社も「つくる会」と縁を切った。「つくる会」に残った藤岡グループは、自由社から「新編新しい歴史教科書」を発行して、今年の採択に乗り出してきた。「つくる会」から別れ扶桑社版を継承する立場の八木グループは、2年後の本格的採択にあわせて「育鵬社」から出版する予定である。
 「新しい歴史教科書」の歴史観はナショナリズムで一貫している。「国の数だけ歴史があっても、不思議ではない」(01年扶桑社)、「世界のどの国民も、それぞれ固有の歴史をもっているように、日本にもみずからの固有の歴史がある」(05年扶桑社、09年自由社)というように、歴史は国ごとにあるというのが基本である。
 リーマン・ショックやインフルエンザ・パンデミック現象から、否応なしにグローバリゼーションを実感している今日、歴史を国ごとに捉える教科書は時代遅れである。これらの教科書はイデオロギーでしかない。
 大阪では、01年から「危ない教科書」を採択させないために、強力な取り組みを行ってきた。今回も、各種市民団体が学習会や要請行動を行っている。ユニオンネットに結集する労働組合は手分けして44府市町村全ての教育委員会に要請行動を展開中である。色よい返事がない場合には、全体で申し入れを行う。
 また、韓国の教科書問題市民団体との交流も継続している。教育合同は、7月に済州で行われる韓中日平和教育交流会に積極的に参加する予定である。

(大阪教育合同労働組合副執行委員長 山下恒生)

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