最高裁が「労働者性」を認定ベスト裁判で勝利和解
偽装雇用にようやく歯止め
音楽家ユニオンが新国立劇場による団交拒否をめぐって争ってきた事件の最高裁判決が4月12日にあり、合唱団員は「労働組合法上の労働者にあたる」として労働者性を認め、財団の使用者性についても認定する画期的な判決が出された。契約を更新せず不合格としたこと及び団交に応じなかったことが不当労働行為に当たるかについては「財団との関係において労働組合法上の労働者に当たることを前提」とした上で「更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻す」とした。
判決では「決まった公演日程に従い、財団の指揮監督下で歌唱の労務を提供した。劇場に通ったのも年間230日に上り、時間や場所的にも一定の拘束があった」として原判決を破棄した。
今回の最高裁判決の意義は、八重樫さんの労働者性を否定しこれを理由に音楽家ユニオンの財団に対する団体交渉権を否定した東京地裁判決・高裁判決を全面的に覆したことだ。八重樫さんは98年から5年間、毎年のオーディションに合格し契約更新を続けていたが、03年に不合格とされたため、音楽ユニオンが劇場側に団体交渉を申し入れたが拒否された。この判決に従って財団側は、今後、音楽ユニオンとの交渉に誠実に応じ八重樫さんとの出演契約を締結(更新)することが求められる。
さらに同日、INAX(現LIXIL)の事件の最高裁判決も出され、製品修理の業務委託契約を結ぶ個人事業主であるカスタマーエンジニア(CE)らで結成した建交労との団交を拒否したことについて、不当労働行為であると認定した。
判決は「CEは事業遂行に不可欠な労働力として組み入れられ、委託契約の内容も一方的に決定されるなど、子会社の指揮監督を受けて個別の修理業務に応じる関係」だったとして労働者性を認定。待遇面の改善を求めた交渉に応じないのは不当労働行為として労働者性を認めていた東京地裁判決(09年4月)が確定した。
判決では、前提となるCEの就労実態を詳細に認定し、(1)CEはINAXの「組織に組み入れられ」ていた (2)INAXが「契約内容を一方的に決定」していた (3)報酬が「労務の提供の対価として」の性質を有していていた (4)CEがINAXによる修理補修の依頼等に応ずべき関係にあった(5)CEが指揮命令を受け労務提供を行い「業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていた」などの判断要素を示し、CEが労働組合法上の労働者であるとして東京高裁判決を破棄した。
委託や請負という契約形式の「偽装雇用」で働かされている労働者が100万人を超え広がっており、今回の判決は「個人事業主」として、労働者保護法の適用から排除されている労働者の権利を認め、労働組合に団結し交渉することを明確にしたものとして評価できる。
……寺間誠治(全労連政策総合局長)
東日本大震災労働・雇用ホットラインと
ボランティア受け入れのお知らせ
◎御礼とご報告……『労働情報』編集部
この度は、東日本大震災復興支援のためのカンパ要請に対し、、60万6千円(4月21日現在)が寄せられました。皆さまのご協力に、深く感謝いたします。
4月7日、スタッフが当日までに頂いた43万7千円を全労協中央本部に託しました。残金に関しては、東北全労協に直接お渡しする予定です。
なお、今後戴いたカンパをその交通費などにも使わせて頂くことをご了承下さい。引き続きのご協力をお願いいたします。
◎御礼とご報告 全労協議長 金澤壽
『労働情報』読者のみなさん、被災地に対する支援カンパありがとうございました。
未曽有の被害をもたらした東日本大震災発生から1ヵ月ほどたちました。大震災の死者は1万3千116人、行方不明者は懸命な捜索にもかかわらず1万4千377人に上り、いまだに約15万人が避難生活を強いられています(4月11日現在 警察庁調べ)。
一方、東京電力福島第1原発事故は収束のめどすら立っていません。それどころか、ますます深刻な状況になっています。「いつ帰れるのか」、福島原発30`圏内から各地に避難している住民も不安な毎日を送っています。
また、震災を理由とした解雇や雇止めなど雇用問題も深刻化してきています。
全労協・東日本大震災対策本部として、まず被害の状況をこの目で確かめるとともに、みなさんから寄せられた救援物資・義援金を手渡してきました。そして、被災地の最前線で救援活動にあたっている仲間から救援内容の報告を受けるとともに、後方支援として何が必要かを伺い、中央としてできうる限りの支援を行うことを約束してきました。
短期間の滞在ではありましたが、被災現地の被害は映像などによる予測をはるかに上回る大規模なもので、復興に向けた取り組みの大変さに気の遠くなるような思いをさせられました。しかし一方、現地での着実な支援活動を行っている仲間に励まされ、私たちもしっかり支えていく決意を新たに帰京しました。
『労働情報』読者のみなさんからのご支援に感謝申し上げるとともに、引き続きのご支援をお願いします。
◎支援活動日誌(抜粋)
……大阪教育合同元副委員長の鶴丸春吉さん(鍼灸師)。3週間の滞在予定
【4月13日】 大槌高校避難所の美術室で治療開始。この日の最後に来たのが大槌北小学校の先生。教科書も何もないと聞き、教育合同からの支援物資、理科教材、粘土セット、乾電池セットをプレゼント。
【4月15日】 肩が凝ると昨日も来ていた67歳の女性は、家が流され夫は行方不明で、毎日遺体安置所を尋ね歩いていると言う。夫に似ている人を見つけたが、金歯の形が違う感じなので、流された歯科医院の技工士さんを探してるという。「お父さんだったらいいね」と言うと、「今頃来て遅いと怒るかもしれん」と。「そんなことあらへん、お父さんの好きな酒でも持って行けばいいやねん」と言うと、「そうやねビール好きやったからビール持っていくわ、でも酒屋も流れてしもたし」。「ほんなら遠野から持って来てやるわ」と言うと、「そこまでしてもらわんでも」と言ってニコッと笑ってくれました。「お母さんは関西なまりやね」と言うとニコニコして、「そうやねん、中・高と大阪育ちやねん、やっぱりうどんは細目で昆布と鰹だしやね」と関西談義。最後に、「一段落したら四国四十八ヶ所巡りをしたい」と言うのを聞いて治療を終えました。
◎支援活動日誌(抜粋)
……宮城県東名の復興と解雇された30人の職場復帰をめざす
大阪電通合同の山ア秀樹さん(大阪全労協)
4月15日、第2次緊急支援物資搬送部隊(全労協西日本)は、支援物資(自転車、灯油、タオル、食器、ガソリン携行缶、ポリバケツ、衣類、シーツ、マスク、オムツなど)をトラックに積み込み、21時、徳島の北野静雄氏、青年部の林、電通合同の加藤、渡部、宮島、山アのメンバーで出発。
16日午朝、仙台の災対本部で水を確保し、東松島市新東名の宮城全労協の組合関係者宅(全林野OB組合員)に支援物資を搬送。新東名地区の住民の方、定林寺に避難している方に支援物資を配っていたところ、老人福祉施設、NPO法人「のんび〜り すみちゃんの家」の代表・伊藤壽美子さんと知り合うことに。
伊藤代表は、30人の職員を解雇したこと、老人福祉施設の早期再開と30人の職場復帰を目指しているが、大津波で被災した施設のドロ出しさえままならないと話された。
17日早朝から、東名の復興と解雇された30人の職場復帰を目指して、仙台の仲間と共に、ドロ出し8トン、ゴミ(浸水した家具等)10トンを搬出。
伊藤代表の好意で、NPO「のんび〜り すみちゃんの家」の2階を宿泊場所として提供していただくこととなり、徳島全労協の北野さんが1週間残留して支援活動を続けています。一方、大阪では第3次支援に向け、準備中です。
◎支援活動日誌(抜粋)
……宮城県南三陸町へ3月20日から支援物資を運んでいる坂本啓太さん
第5次支援活動にあたる今回は「名無しの震災救援団」にとって初の炊き出しだったので、心配事が多かったのですが、郵政ユニオンと全統一、大学生18人が一致団結して素晴らしい炊き出しをすることに成功しました。避難者の方々から、ありがとう、おいしいなどの声をかけていただくたびにやってよかったと心から思いました。
我々の炊き出しを、「贅沢と言われるかもしれませんが…毎週楽しみに待っています!」と遠慮がちに言ってくれた志津川高校の避難者の皆さんのためにも、沢山のバラエティに富んだ炊き出しが出来れば良いなと思います。
◎支援活動日誌(抜粋)
……「名無しの震災救援団」の炊き出しに参加した
郵政労働者ユニオンの倉林浩さん
豚汁を3回もおかわりに来た小学校3年くらいの少年がいました。鍋を持って「16杯」「18杯」と申し出られる居宅避難の方。ご家族の分だけでなく、近所にも配られる由。その一方で、「ひとつ」という方が多くおられました。おそらくご家族をこの震災で亡くされたのだと思います。そのときは感情を排して作業していましたが、今はこうしていても胸が詰まります。