たたかいの現場から

939号

◎「同一賃金」求め涙で証言  メトロ20条訴訟で証人尋問

 地下鉄の売店で働く非正規労働者4人が、売店を運営する東京メトロ子会社の「メトロコマース」(本社・東京都台東区)を相手取り、正社員との賃金格差分約4250万円(3年分)の損害賠償を求めている裁判で、6月23日、東京地裁で被告、原告の証人尋問が行われた。
 裁判は有期契約であることを理由に正社員との不合理な労働条件の相違を禁じた、改正労働契約法(13年4月施行)20条を根拠とした初めての提訴で注目を集めた。

 訴えていたのは、全国一般東京東部労組メトロコマース支部のメンバーの後呂(うしろ)良子委員長ら非正規の組合員4人。
 訴状などによると、4人は同社の売店で8〜10年間、3ヵ月から1年の契約を更新して物品販売などの仕事をしてきた。販売員には正社員から契約A、契約Bの三種類の雇用形態がある。同じ仕事をしているが、正社員と契約Aは月給制で、後呂さんら契約Bは時給制だ。賃金額に差があり、住宅手当などの諸手当もない。ボーナスは正社員が年間約150万円なのに対して契約Aは59万円、契約Bは26万円、契約Bには退職金もない。

 尋問では、正社員と契約Bに差を付けることに合理的な理由があるかを中心に行われた。契約Bがなぜ時給制なのかを問われた会社側証人(元総務部長)は「わからない。世の中で(有期労働者の時給制は)珍しくない」と証言。住宅手当がBだけないことにも「なぜかと言われても、そういうふうになっている」。正社員と非正規では「役割と責任が違う」と繰り返したが、具体的な説明はなかった。
 原告の尋問では、「一つの店で早番が正社員で遅番がB、またはその逆をやり商品の発注も同じようにしていた」など仕事内容がまったく同じであることを証言。時給制のため「正月や5月は休日が多く収入が激減する」と、月給制を求める理由を証言した。

 原告の1人、疋田節子さんは尋問の最後に涙をこらえて証言。
 「正社員やAと雇用形態、賃金の大きな違いに気づき、会社に『おかしい』と言うと『そんなに金が欲しいならダブルワークしたら』と言われた。(体力的に)できないし、会社はAと正社員には兼業を禁じている。そう言われた時の屈辱は忘れられない」。

 会社の疋田さんへの発言は、まともな賃金を払っていないことを認めるようなものだ。同一労働同一賃金を求める声の背景を見据えなければならない。

 

東海林 智(team rodojoho)

 


◎賃金未払いのカレー店シャンティ  インド人労働者らが組合結成

 賃金が半分以下しか支払われない状態が2年以上続いている中で、店の運営を任されていた都内カレーレストラン「シャンティ」のインドやバングラデシュ出身の労働者ら15人が、6月23日に組合を結成し、会社の社長に団体交渉を求めた。

 労組結成は、解雇と店舗閉鎖の通告を受けた数日後。シャンティ5店舗の料理長として8年間働いてきたインド人の組合員は、本来支給されるはずの給料25万円のうち5万円ほどしか支払われていないため、母国にいる家族への仕送りが滞り、子どもが休学を余儀なくされた。また妻からは離婚も要求されているという。仕送りができなくなってから、家族だけでなく自分の生活さえままならないという組合員ばかりだ。

 日本における滞在許可がシャンティで働くことを条件としているため、従業員は他に行く先がなく、カレー店をなんとか運営しながら支援を求めていた。
 6月27日には、ずっと音信不通だった経営者の児玉政之社長が組合の団交に現れ、組合からの要求に対して「従業員を家族のように思ってきた」と回答。会社と個人の破産はすでに承認されている。保健所への届け出が社長名義だったため、現在レストランは休業しているが、組合員は占拠を続けている。

 今後は池袋店を除いた4店舗の経営者を探し、管財人との間で交渉が進む予定。組合員らは、未払い賃金の回収と雇用を守るために闘っていく。

松元 千枝(team rodojoho)

ニコン雇い止め争議が和解  声上げた勇気、非正規雇用に一石

 ニコン契約社員雇い止め事件が東京地裁で和解が成立した。
 この事件は、2014年3月末に大手光学機器メーカー・ニコンで契約社員として働いていた濱谷さんの雇い止め撤回を求める事件である。


 濱谷さんがニコン相模原製作所で働き始めたのは2008年で、当時はニコングループにある派遣会社ニコンスタッフサービスの登録スタッフだった。派遣労働者として3カ月契約を20回以上更新し、5年6カ月ニコンで派遣労働者として働き、2013年には労働者派遣法の抵触日を迎えるため、「よほどのことがない限り落ちることはない」と派遣先であるニコンの正社員から言われ、同年9月に直接雇用に切り替わった。

 しかし、最初に示された雇用契約書には「契約期間は6カ月、更新上限は5年」と明記され、直接雇用になっても更新されるかどうかはニコン次第というものだった。


 濱谷さんが行っていた仕事は半導体露光装置のレンズを研磨する仕事で、クリーンルーム内でのたいへん緊張を要する作業だ。時には濱谷さんが行った作業改良手順を正社員の前でプレゼンテーションをすることもあり、基幹的非正規社員という扱いをされていた。にもかかわらず、ニコンは減産を理由に一方的に雇い止めをしてきた。派遣労働者でも直接雇用されても時給は変わらず、同じ作業着で仕事をしていて、間接雇用でも直接雇用でもほぼ同等の仕事をしていた。


 2015年の労働者派遣法「改正」で、派遣労働者の保護規定はさらに形骸化された中での裁判であり、多くの職場では派遣労働者は間接雇用ゆえに声を上げづらくなっている。そんな中で今回の和解成立は画期的だ。権利が侵害されている多くの非正規雇用にとって、希望の光を照らすことができた。またこういった不当な状況の中、声を上げた濱谷さんの勇気を讃えたい。


山田 真吾(首都圏青年ユニオン事務局長)



「安全のため、被解雇者を戻せ」  JAL株主総会で争議解決迫る声

 去る6月22日、舞浜アンフィシアターにて日本航空の第67期株主総会が開催された。原告団、支援共闘会議は総会に出席する株主などに向け、舞浜の駅頭で8時過ぎから宣伝を開始、若者でごった返す舞浜駅前は黄色のJAL争議団の旗が乱立してなびき、いつもと違った風景が展開された。


 株主総会には当該を含め13人が株主として出席し、6名が争議解決に向けさまざまな角度から質問・意見を述べることができた。
 安全の確立のためには抱えている争議を一日も早く解決することが重要であること。パイロット・客室乗務員(CA)の流出と大量の新規採用による機内サービスの低下、これらを解決するためには原告を職場に戻すことが重要であること。エンジントラブルの頻発とその対策の具体的内容、「部門別採算性」がもたらす安全軽視。採用でもANAに後れを取っていること。「国内線の再利用希望」アンケートで5位と後塵を拝している問題等々、主に安全問題と争議を絡めての質問意見を述べた。


 植木社長はしかし、解雇問題については「整理解雇問題は最高裁で決着している。破たんの際、1万7千人がJALを去った。(整理解雇した)165人だけを戻すことはできない」との理屈を展開し、争議解決への姿勢を示さなかった。
 今後もさまざまな闘いを展開し、争議解決を。


瀧 秀樹(全石油昭和シェル労組)

フジビ・スラップ、高裁も不当判決  被解雇者個人狙った提訴を容認

 倒産・解雇争議でクビを切られた労働者が加入する組合が親会社の責任を問うたら、組合ではなく被解雇者3人を狙い撃ちにして親会社が2200万円払えと請求。東京地裁がこの請求を一部認め、被解雇者3人に350万円の支払いを命じる異例の判決を出したことから「訴訟を悪用した争議権の侵害では」と問題になっているフジビ・スラップ訴訟で、2審の東京高裁は7月4日、被解雇者ら3人(フジ製版元社員、東京労組フジビ分会組合員)の控訴と親会社・富士美術印刷(フジビ)の附帯控訴をともに退け、1審判決を維持する判決を言い渡した。


 中西茂裁判長は判決で、組合として活動したのに、組合ではなく、クビにされた組合員個々人を訴えるのはおかしい旨の組合側の主張に対し、「(不法行為では)違法な行為を行った個人が第一次的に責任を負い、労働組合は……使用者責任などにより重ねて責任を負うことになる」とし、被解雇者に対する威嚇的提訴にお墨付きを与えた。


 判決後、組合側代理人の古川健三弁護士は、「不当な判決だが、その如何にかかわらずあくまで争議は現場で解決すべき。きょうの傍聴や、現場での集会・デモが力になっている」と指摘。
 フジビ闘争支援共闘会議の久保聡議長は、「労働者が納得できない不当な判決がフジビに限らず相次いでいるがひるむことなく、地域住民、世論に訴え、話し合いの場にフジビ会長を引き出したい」と語った。


 ストライキや争議が訴えられた裁判では、これまで、会社側の訴えを退けた例が多い(ベルリッツ・スト損賠事件、GABA・組合ホームページ損賠事件、AIGスター生命・ビラ損賠事件など)。フジビ支援共闘会議は「団体行動権(スト・争議権)は労働組合の命」とし、力を合わせて反撃しようと呼びかけている。


北 健一(team rodojoho)


 

◎日日刻刻  良心に反して上司に従う (6.14〜27)

 

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